魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~
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XV編
第238話:包まれる拳
『『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl────』』
7人の歌姫達の歌声を背に受けながら、颯人達3人の魔法使いがシェム・ハの力と戦っていた。蔦の様な触手を開いたシェム・ハの力は、頭が異様に大きな胎児のような物の背から生えた6本の触手を縦横無尽に振るい攻撃を仕掛けてくる。
その触手が主に狙っているのは、颯人達が背後に庇っている7人の装者達。その中でも特に触手が向かおうとしている先に居るのは、今回の作戦の中心にいると言っても過言ではない響であった。
――神とか言うのも強ちデタラメやハッタリじゃねえってか? 的確に自分の弱点になる響ちゃんを集中して狙ってやがる――
響は神の力に唯一対抗できる神殺しの拳を持っている。その力があれば、シャトーの全ての機能を使う前にシェム・ハの力を消し去る事も不可能ではないかもしれない。それを相手は本能的に察しているのか、それとも実は世界の裏から彼らの戦いを覗き見て知っていたのかは分からないが、とにかく響の事を脅威と見なしているのか集中的に狙って来ていた。
尤もそれならそれである意味対処しやすい。何処を狙われているのかが分かれば、そこに戦力を配置して守りに徹すればいずれ勝利は転がり込んでくる。
「――――と、簡単にいけば良かったんだけどな」
とは言え物事そう甘くはない。シェム・ハの力の攻撃の矛先は分かっても、それを完全に往なす事が出来るかは別問題。実際神の力と言う言葉に嘘偽りはなく、嘗てアダムとの戦いで相対したディバインウェポンに匹敵する攻撃は幾度となく颯人達を押し退けて装者達に攻撃が届きそうになっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「透ッ!?」
シェム・ハの力が振るった触手の一つが透を横から殴りつけ、シャトーの屋上から外へと弾き出そうとしていた。触手の一つがクリスに飛んでいきそうになったのを見て咄嗟に自身の体でそれを受け止めようとした結果、逆に彼の方が攻撃に耐えきれず弾き飛ばされてしまったのである。
目の前で最愛の少年がハエを払うように打ち払われた光景に、クリスの口から紡がれていた絶唱が思わず止まる。だがそれを即座に翼が叱責した。
「狼狽えるな雪音ッ!」
「え、あ……!?」
目の前で起きた出来事にクリスが狼狽するのを見て、咄嗟に厳しい声を上げてしまった事に気付いた翼は直ぐに小さく息を吐き気持ちを落ち着けると先程とは対照的な穏やかな声で諭した。
「落ち着け。北上があの程度でどうにかなるような男ではない事は、お前が誰よりも分かっている筈だ。例え地獄の底からでも、彼はお前の所へ戻って来る。今までだってそうだったろう?」
優しく穏やかな翼の声に、クリスも数回深呼吸をする事で心を落ち着けた。
「ふぅ……すまねえ、先輩。少し、取り乱しちまった」
「気にするな。それに、雪音の気持ちも分かる。だが心配はやはり無用だったようだぞ?」
「え?」
翼が指さした先では、透から分離したデュラハンが剣を足元に突き立て、片手で透を遠心力を利用してシャトーの上に投げる様に戻している光景があった。デュラハンは透をシャトーの上に戻すと、そのまま鎧に戻って彼の体を覆い、アーマードメイジとなった状態で再び戦線に復帰していた。クリスはその光景に肩から余分な力が抜け、緊張がほぐれた顔になった。
「透……! そうだな、アタシも頑張らねえとな!」
クリスが調子を取り戻している一方で、今度はセレナの方が不調を見せ始めた。アリスからの治療と、調整を受け負担が大幅に軽くなったアガートラーム。それらを用いても、まだリハビリが足りていないのかセレナの体には負担が大きかったのだ。
彼女の姉であるマリアは妹の不調にいち早く気付くと、この場で彼女を唯一癒せる存在であるガルドを急いで呼び寄せた。
「はぁ……! はぁ……!」
「マズイッ!? ガルドッ!」
「ッ!! セレナッ!」
夜空の下に響くマリアの声に、ガルドもセレナが不調になった事を察し戦闘を中断すると一目散にそちらへと向かっていった。当然その間シェム・ハの力への対処は颯人に集中する事になり、彼は装者とセレナの元へ向かおうとするガルドに攻撃が向かわないよう苛烈な動きが要求されていた。
「んの野郎ッ!」
〈インフィニティー!〉
咄嗟に颯人はインフィニティースタイル特有の超高速移動により装者へと向かう触手に対処する。しかし通常攻撃がほぼ意味をなさない相手に対しては、ただ単に目にも留まらぬ速度で動けると言うだけでは力不足であり多少の時間稼ぎにしかならなかった。
結果、彼の奮闘も空しく触手の一つがガルドの背に追いつき背後から彼を押し潰そうとしている。気付いたマリアが思わず手助けしようとした、その時である。
「させるかよッ!」
〈デュープ、プリーズ〉
突然颯人が魔法を使ったかと思えば、ガルドに襲い掛かろうとしていた触手を《《2人の颯人》》が押さえ付けていた。その光景に響も思わず目を見開く。
「うぇぇっ!? は、颯人さんが2人ッ!?」
「その魔法は、まさか……!」
颯人は一応コピーと言う分身魔法を持っているが、あれは術者の動きを完全コピーするだけしか出来ない分身を作り出すしか出来ない。だから複数の敵を同時に仕留めたい時や、単純に広範囲を一斉に攻撃したい時などにしか使えない。これとは別にドラゴタイマーを用いる事でも分身する事は出来るが、4属性に属さないインフィニティースタイルでは使えなかった筈。
だが現実に今颯人は分身しており、しかも分身が本人とは別の動きをしている。となると、考えられる可能性は1つしかなかった。
「いや~、父さんもやっと重い腰を上げてくれて助かったぜ」
そう、この分身魔法デュープは輝彦が今回に限り颯人に貸し出してくれたものだったのだ。普段から颯人にはこれだけは絶対に渡さないと誓っていた輝彦だったが、今はそんな事を言っていられる状況ではないと渋々だが貸してくれたのである。
尤も、颯人にこの指輪を渡す際輝彦は口を酸っぱくして耳に胼胝ができるほど何度も念押しして、この戦いが終わったら必ず返す様にと告げていた。もし返さない事があれば、その時はいつぞやの様に頭の形が変わるのではないかと言う程の拳骨が待っていると言う言葉も告げて。
「さぁて、タネも仕掛けも無いマジックショーはこれからだぜッ!」
〈デュープ、プリーズ〉
颯人は追加で分身を3人作り出し、合計5人の颯人が一斉にシェム・ハの力へと攻撃を仕掛けた。5人の颯人はそれぞれ別々の方法で攻撃し、ある颯人は魔法の鎖でシェム・ハの力を押さえ付けようとし、また別の颯人はアックスモードのアックスカリバーで胎児の胴体を深く切り裂いた。その攻撃自体は即座にダメージを無かった事にされたが、流石に胴体への一撃は怯まされるものがあったのか触手の動きが鈍った。
その隙にガルドはセレナの元へと向かい、肩で苦しそうに呼吸をしているセレナの右手を取ると彼女に魔力の補充を行った。
「セレナ、待ってろ」
〈プリーズ、プリーズ〉
ガルドの体からセレナの体に魔力が流れ込んでいく。温かな魔力の流れに、セレナの顔色も良くなり呼吸も安定してきた。
「はぁ、ふぅ……ありがとう、ガルド君。もう大丈夫だよ」
「あまり無理するなよ、セレナ」
「うん!」
束の間、仮面越しにガルドとセレナが熱く見つめ合う。こうして共に戦場に出る機会が無かったからだろうか。場を弁えず2人の世界に入ろうとする妹と義弟を前に、マリアが大きく咳払いをした。
「ん゛ん゛ッ! 2人共? 状況を考えて頂戴?」
「「あッ!?」」
「そう言うのは家でやれッ!」
「でもそう言う先輩も、さっき透先輩に気を取られてたんじゃ?」
「デース」
「いや、あれはだな……」
一気にその場が和気藹々とした雰囲気に近くなったが、それを颯人は悪い事とは思わなかった。状況はまだ最悪と言う程ではなく、現状分身した颯人と透でシェム・ハの力を押さえられている。そして束の間漂った気楽な雰囲気に、この戦いが始まった時にあった嫌な緊張感は大分薄れていた。未来と奏を何としても助け出すと言う意気込みが変な方向に流れて硬くなっている様に感じられた空気もなくなり、まるで重石が取れた様にリラックスできていた。
本番に大事なのは適度な緊張もだが、こういうリラックスでもあると言う事を颯人は良く知っている。故に、彼は響達の様子に安心感を抱き、この戦いを早々に終わらせるべく一声かけた。
「さぁさぁ、お嬢さん方ッ! そろそろシャキッと決めてくれッ!」
颯人の言葉に響達は頷き、改めて絶唱を口にし始めた。
『『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl────』』
美しくも何処かもの悲しさを感じさせる唄が周囲に響く。それが自分にとって良くないものであると察しているのか、シェム・ハの力は装者達を止めようと触手だけでなく頭部からの光線をも放とうとした。光が頭部の中心にクリスタルに集束していく様子に、颯人はそれがディバインウェポンの放った衛星をも粉砕した一撃に近いものであると察し分身を総動員して攻撃を中断させに掛かった。
「やらせるかよッ!」
〈〈〈〈〈チョーイイネ! キックストライク、サイコー!〉〉〉〉〉
5人の颯人が一斉に放ったストライクウィザードは、触手の大半と胎児の頭部に炸裂。一気に吹き飛ばして見せた。見た目かなりの大ダメージを与えた様子に、ガルドと透も思わずガッツポーズを取りそうになる。
だが不完全とは言えやはり神の力は強大であった。受けたダメージは即座に無かった事になり、それどころか再生した触手は素早く動きそれぞれ5人の颯人の体を捉えるとそこから放電の様な攻撃を加えて彼を苦しめた。
「ぐぉ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ハヤトッ!?」
「あれはッ!?」
一見するとただの電撃にしか見えない攻撃だったが、それがどういうものかは攻撃を喰らっている本人だけが分かった。
「こ、コイツ……!? 俺の魔力を、吸い上げて……!?」
ほぼ無敵に近いインフィニティースタイルだが、これには明確な弱点があった。それは本人が意図せず放出させられた魔力は戻らないと言う事だ。使用した魔法の魔力を還元して再使用できるのがこの姿の強みだが、無限に湧き出る訳ではない為魔力自体を消耗してしまってはいずれ必ず限界が来る。
或いはこの場に奏が居れば、彼女とのタッグで颯人も何時もの全力を出す事も出来ただろう。だが生憎と今この場に奏は居らず、彼女の歌を聞けない事で颯人も彼の中のドラゴンも本調子とは言い難い状態であった。
そんな状態で魔力を強制的に放出させられては、さしものインフィニティースタイルでも堪ったものではない。抵抗も空しく颯人の分身は次々と姿を消し、残った本体も限界まで魔力を放出させられ変身すら解除させられてしまった。
「ぐ、ぁ……」
「颯人さんッ!?」
「マズイッ!」
このままでは颯人が触手で絞殺される。そうはさせじと、ガルドは最大出力の砲撃を颯人を捉えている触手の根元に向けて放った。
〈クアトロマジック、ブラストストライク!〉
「行け、トオルッ!」
「はいッ!」
ガルドの狙いを理解した透は、彼が砲撃すると同時に颯人へと向け駆けていく。4つの属性を含んだ砲撃が一撃で触手の根元を吹き飛ばすと、拘束が緩んだ隙に透が颯人の体を引っ張り出しそのまま離れて安全な所に退避させた。
「颯人さん、大丈夫ですか?」
「うぐっ!? い、つつつ……クソ、情けねえ。こんなんじゃ、奏に笑われちまうぜ」
「奏さんだったら、笑うよりも先に心配しますよ」
「心配で済んでくれればいいけどな」
あまり心配させすぎると今度は無茶しすぎと殴られそうだ……何て事を考えていると、絶唱を歌い切り更にS2CAでフォニックゲインを力に変え、二つのアガートラームで調律されたエネルギーが7人の装者達のギアの姿を変えた。
待ちに待ったその瞬間に、颯人も安心したように笑みを浮かべる。
「へっ……後は任せたぜ、皆」
エクスドライブを起動させた7人の装者達の姿に、颯人は満足そうな笑みを浮かべるとそのまま意識を手放した。透がそれを支えていると、白く輝くギアを纏った7人の戦姫が魔法使い達と交代と言わんばかりにシェム・ハの力に立ち向かった。
颯人達と違って自由自在に空中を舞えるエクスドライブのシンフォギアは、光の軌跡を残しながらシェム・ハの力を四方から追い立てる。
これまでの戦いであればその輝きは希望の象徴、勝利が確定したに等しい光景だっただろう。しかし今回の相手は一味違った。不完全とは言え神そのものの力は、エクスドライブのシンフォギアであっても圧倒しきれるものではなく一進一退の攻防を繰り広げていたのだ。
「小日向を、奏を、返してもらうぞッ!」
翼が長大な刀を振り下ろし触手を薙いでも、それらは即座に再生しその間に放たれた無数のホーミングレーザーが降り注ぐ。危うい所をマリアとセレナが張ったシールドで防ぐが、大抵の攻撃を防げるはずのエクスドライブのシールドであっても完全に受け止めきれず罅割れ突破を許してしまった。
その間に別方向から切歌と調が触手を切り落としながら接近するが、シェム・ハの力はホーミング性を犠牲にして火力を上げた光線の横薙ぎで2人を消し飛ばそうとした。2人がそれを回避すると、それを待っていたように薙ぎ払われた触手により2人はシャトーの屋上に叩き付けられてしまう。
「うわっ!?」
「あうっ!?」
シェム・ハの力は直ぐに動けない2人に狙いを定めたのか、集束させて高出力にした光線を放とうとエネルギーをチャージさせる。それをさせじと、クリスがマリアと協力して二つのギアの力を合わせたビームを放ちシェム・ハの力を一時的にだが弱らせる事に成功した。
勿論そのダメージは直ぐに回復されてしまったが、その間に響がシェム・ハの力に近付く余裕は出来た。
「未来ぅぅぅぅッ!!」
未来を救い出すべく、邪魔なシェム・ハの力を消し飛ばそうと響が拳を握り締める。
その光景を眺めながら、ガルドはある疑問を抱いていた。
――おかしい……予定ではこのフォニックゲインを使ってシャトーが起動する筈。だがシャトーに動きが見られないのは何故だ?――
本来の予定では、装者が絶唱を唄うのはチフォージュ・シャトーを起動させる為であった。だが実際には、絶唱で練り上げたフォニックゲインはシャトーの起動ではなく装者をエクスドライブにする為のエネルギーとして使われてしまった。
最初ガルドはそれを、フォニックゲインが装者のシンフォギアに優先的に流れてしまったからだと結論付けた。あの時響達が絶唱を唄いきる直前、颯人が触手に囚われ魔力を放出させられ変身が解除されてしまった。その光景を見た装者達の心が、颯人の救出で一瞬統一されそれがフォニックゲインをシンフォギアに集めてしまったのだと。
だが同時にこうも思った。下の方がそれどころではない状況に陥り、シャトーの起動準備が整っていなかったのではないか? 今シャトーの内部には多数の魔法使いに、ワイズマンまで存在している。これらの邪魔が入れば、シャトーの方で準備が整っていない可能性は十分考えられる。
実際今シャトー内部では、キャロルがハンスと共にワイズマンの相手で手一杯となっており、シャトーの起動の為の操作に手を出していられる状況ではなかった。ヴァネッサ達が儀式の中断の為の作業を行っているが、肝心のシャトーの起動までは手が回らなかったのである。
尤も、これ自体はそこまで大きな問題ではない。エクスドライブが発動し維持されるだけのフォニックゲインは未だ周囲に満ちているので、この後シャトーが起動してくれれば何とかなる。
問題は、それまで響達が持ち堪えられるかだが…………
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「立花を援護だッ!」
「よっしゃあッ!」
そんなガルドの懸念を他所に、響がシェム・ハの力へ向け一気に突撃していく。それを援護すべく他の装者達が次々と攻撃を仕掛け、傷付きながらも響を送り届ける事に成功した。
そして、遂に神殺しの拳が胎児の頭部の様な箇所に振り下ろされた。
同時刻、シャトー内部ではヴァネッサ達が儀式を中断させようと機材を操作していた。だがその表情は険しい。何故なら、彼女達の目の前で想定外の事が起こっているからである。
「ヴァネッサ、マズイでありますッ!?」
エルザが叫ぶその前で、今正に未来が体を光の粒子に変えて頭上へと昇っていっていた。ヴァネッサとミラアルクが色々と操作をしてそれを止めようとしているが、まるで何かに遮断されたかのように儀式は操作を受け付けない。
「一体、何が起こってるんだゼッ!?」
「これは……違うわ。依り代となっているこの子に力を宿してるんじゃなく、この子自身を力の方が取り込んで……!?」
未来の身に何が起きているかをヴァネッサが理解した瞬間、逆流してきたエネルギーにより計器が次々に振り切れ火花を上げ始める。まるでこれ以上の邪魔はさせないと言わんばかりの状況に、ヴァネッサはこれ以上この部屋に留まるのは危険と2人と共に部屋から飛び出した。
「いけない、2人共ッ! 今すぐここから出るわよッ!」
「言われなくてもッ!」
「ガンスッ!」
大慌てで部屋から飛び出した3人。その直後、未来の姿は完全に消え、同時に儀式の部屋は跡形もなく吹き飛んだ。
「未来ぅぅぅぅぅッ!!」
その頃、響は握り締めた拳を胎児の頭部の部分に直撃させ、神殺しの力を持ってシェム・ハの力を打ち破りその内部へと入り込んだ。
そして、彼女はそこで黒衣に身を包んだ未来の姿を見た。
「――――え?」
シャトーの中で儀式に使われている筈の未来がここに居る事に、響は理解が追い付かず呆けた声を上げてしまった。
「何で、そこに……」
響が呆然と呟くと、それに反応したように未来が目を開いた。その瞳は、明らかに何時もの未来のそれではない。
そして彼女が目を開くとそれに呼応するように胸元の結晶の様な蕾も開き、紫を帯びた白い光が彼女の体を包むと次の瞬間そこには王冠の様な物を頭に着けた白銀と紫のローブに身を纏った未来の姿があった。何処か神獣鏡のシンフォギアを連想させる姿をした未来に、響は思わず拳を突き出した姿勢のまま近付いてしまう。
「未来……!」
響が拳を開いて未来に手を差し出そうとする。しかし、その拳が完全に開かれるよりも前に、未来の手が彼女の拳を受け止めてしまった。
そして、信じられない程冷たい視線を響に向けながら未来が口を開いた。
「遺憾である。我が名はシェム・ハ……人が仰ぎ見るこの星の神が、我と覚えよ」
後書き
と言う訳で第238話でした。
本作でのインフィニティーの初敗北です。原作ウィザードではカーバンクルにより魔力を強制放出させられて敗北したインフィニティーでしたが、本作ではシェム・ハの力を前に敗北を喫してしまいました。デュープを解禁してまで勝ったような雰囲気を作りましたが、勝ってばかりでいさせるわけにもいきませんのでね。
一方未来の方は原作通りシェム・ハに乗っ取られてしまいました。原作だとこの後翼が操られて裏切ったりと色々大変な訳ですが、こちらはそれとはまた別方面で大変な事になる予定です。
執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。
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