| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

-Endless Dream-

 
前書き
※一部、機種依存文字を似た文字で代用している場所があります 

 
「十代!」

 エドとのデュエルで次元を超えた俺が最初に見たのは、どこまでも続いていく闇――その中に立っていた、炎のような真紅の制服だった。

「……遊矢」

「十代も来てたんだな。アカデミアの方は大丈夫だ……任されたしな」

 十代はアカデミアを俺たちに任せていき、童実野町を助けに行っていた。あちらには海馬コーポレーションがあるので、次元移動のシステムがあったとしても不思議ではなく、童実野町を守ることが出来たのだろう。

「なら、あとは世界を救うだけだ」

「……ああ!」

 そして闇を見つめていた十代はこちらに振り向くと、力強くそう言っていた。お互いに様々な人たちの力を借りて、ようやくこの場に立っているのだと、そう感じさせる表情に頷いて。

「来るぞ!」

 すると十代はデュエルディスクを構え、今まで見つめていた方向を再び向いた。俺も十代の隣に並び立ちながらデュエルディスクを構えると、闇の中に『ソレ』はいた。『ソレ』自体も暗い闇であるにもかかわらず、何故か巨大な質量を感じさせ、悪魔のイメージを形にしたような全身が俺たちを睥睨する。

『我が名は――ダークネス』

 その轟く声に世界が響く。いや、俺たちが声だと認識しているだけで、本来はもっと別の物かもしれないが、それ以上の会話をする気はあの『ダークネス』にはないらしい。俺たちの構えたデュエルディスクに反応したように、闇の中に五枚のカードが浮かび上がった。

 恐らく、あのダークネスは現象のようなものなのだろう。目的も何もあるわけではなく、世界を闇で被うだけのシステムのような存在であり、故に話し合っての和解など成り立たない。ならばこそ俺たちには、何をするにしてもずっと使ってきた、デュエルという手段がある。

「行くぞ遊矢!」

「ああ! 余計なお世話だってことを、この闇に分からせてやる!」

『デュエル!』

遊矢&十代LP8000
ダークネスLP8000

『我のターン……』

 しかしこのダークネスの存在意義がどうあれ、こちらの世界をこの闇しかないダークネス次元に同じにするなどと、余計なお世話に他ならない。それを分からせてやるためのデュエルが開始し、俺のデュエルディスクには2ndと表示された。俺と十代が二人がかりで挑む変則タッグデュエルであり、俺→ダークネス→十代→ダークネスの順でデュエルは進行する。

『我は《邪神官 チラム・サバク》を召喚する』

「攻撃力2500だと!?」

 つまりデュエルはダークネスから開始し、まずはお手並み拝見というところだったが、そこで現れたのは攻撃力2500の大型モンスター。レベル8を何の代償もなく呼び出したにもかかわらず、そのステータスには何の変更もない。

『《邪神官 チラム・サバク》は、自らの手札が五枚以上の時、リリースなしで召喚出来る……ターンエンドだ……』

「……俺のターン、ドロー!」

 そういうカラクリか――と内心で一人ごちながらも、ダークネスの初手を警戒しながらカードを引く。確かに攻撃力2500のモンスターには驚かされたが、それをただ単体で出すだけでは驚異にはなりえない。まさかそれだけではなく、ミスターTのように変幻自在のデュエルをしてくるだろうが……

「俺は《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札を一枚捨てることで、デッキからレベル1モンスターである《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 何にせよ、俺は俺のデュエルをするだけだ。そう自らに言い聞かせるように手札を動かしていき、まずはデッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚する。

「そして装備魔法《リビング・フォッシル》を発動し、墓地の《音響戦士ドラムス》を特殊召喚! さらに《機械複製術》を発動することで、デッキから二体《チューニング・サポーター》を特殊召喚する!」

 そして《チューニング・サポーター》の特殊召喚に使用した魔法カード《ワン・フォー・ワン》により、墓地に送っていたチューナーモンスター《音響戦士ドラムス》を、墓地のモンスターに装備することで蘇生する《リビング・フォッシル》で特殊召喚する。さらに《機械複製術》によって《チューニング・サポーター》を三体に増殖させることで、フィールドには容易に四体のモンスターが揃う。そしてそのモンスターたちは、すぐさまチューニングの態勢を取っていた。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 そしてシンクロ召喚される先陣、《パワー・ツール・ドラゴン》。機械竜が闇にも響くいななきを放ち、その叫びは新たな力を誘発する。

「シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》の効果で三枚ドロー! さらにパワー・ツール・ドラゴンの効果を発動し、デッキから三枚の装備カードを裏側で見せ、相手が選んだカードを手札に加える! パワー・サーチ!」

『右のカードだ……』

 そしてシンクロ素材となった時にカードを一枚ドローする、という《チューニング・サポーター》の効果で手札を補充しながら――墓地で発動する効果のため、もはや《リビング・フォッシル》のデメリット効果は関係ない――《パワー・ツール・ドラゴン》の効果で、新たな装備魔法カードを手札に加える。

「装備魔法《団結の力》を《パワー・ツール・ドラゴン》に装備し、バトル! 《邪神官 チラム・サバク》に攻撃だ、クラフティ・ブレイク!」

『…………』

ダークネスLP8000→7400

 そして装備魔法《団結の力》を装備した《パワー・ツール・ドラゴン》は、狙い通りに《邪神官 チラム・サバク》の攻撃力を超え、そのシャベルの一撃で闇に返してみせる。ダークネスにも微々たるダメージがいくが、特に堪えた様子はない。

『なるほど……素晴らしい……それだけの力があれば、さぞ心の闇を生み出して来ただろう……』

「なに?」

 そこで俺にもう攻め手はない。メインフェイズ2に移行しようとした瞬間、ダークネスが俺に――いや、十代を含めた俺たちに語りかけた。

『我を構成するは闇……デュエルで勝ちたい、負ければ全てを失う、どうしても勝てない……デュエルによって生じる心の闇こそ我が正体の一つ……』

「…………」

 ――確かに、デュエルとは勝負事だ。勝者がいれば敗者もおり、エドの後見人だったDDのように、勝利への渇望から身を落とした者もいる。

『貴様らには分かるまい、この闇が……敗北者の痛みが、苦しみが……世界を闇に包むのは、一握りの勝者以外の望みなのだ』

「……そうかもしれない。だけどそれだけじゃない!」

 だが確かに、ダークネスの言ったことは事実ではあるが。勝っても負けても相手を尊重する亮や翔のように、いくら負けても這い上がってくる万丈目のように、お互いの全てをぶつけ合う十代のように。デュエルの勝ち負けは、心の闇が全てじゃない。

『……《邪神官 チラム・サバク》が戦闘破壊された時、このモンスターは守備表示で特殊召喚される……』

 しかしダークネスはこちらからの問いかけには応えようとせず、先程《パワー・ツール・ドラゴン》が破壊した筈の《邪神官 チラム・サバク》を蘇生させる。高い攻撃力に反して守備力は0であるが、警戒しながらメインフェイズ2に移行する。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

『我のターン、ドロー……更なる《邪神官 チラム・サバク》を召喚する……』

 そしてダークネスの二ターン目となり、またもや《邪神官 チラム・サバク》がリリースなしで召喚される。手札が五枚以上という条件により容易く召喚され、同名モンスター二体から俺はエクシーズ召喚だと確信したが。

『自身の効果で蘇生した《邪神官 チラム・サバク》は、レベル8のダークチューナーとなる……二体のチラム・サバクでダークチューニング……!』

「ダークチューナー? 遊矢、確か……」

「ああ、あの時の闇の力だ……!」

 もはや随分と昔のことになってしまったが、忘れもしない一年生の時のセブンスターズの戦い。その一員となっていた者が使っていた、ダークチューナーを用いたダークシンクロモンスター。通常のシンクロ召喚とは違い、非チューナーからダークチューナーのレベルを引くことで降臨する、シンクロ召喚であってシンクロ召喚でない召喚方法。

『混沌の次元より湧き出でし力の源……この現世でその無限の渇望を暫し潤すがよい……神降せよ!』

 闇が、闇が、闇が。光を放ち輝くシンクロ召喚とは対照的に、二体の《邪神官 チラム・サバク》が闇を放ち続ける。それに世界を構築する闇までもが加わっていき、いつしか闇は新たなモンスターの姿をかたどっていた。

『ダークシンクロ……《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》……!』

 しかしてそこから生み出されたモンスターは、真紅の鱗によって構成された龍。いや、正確には龍の形をしたエネルギー体のような――そんな巨大な龍モンスター、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》が俺たちを睥睨する。

『《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》が存在する限りお互いに、一ターンに一度しかカードをセット出来ない……だが、このフィールド魔法《ダークネス》の効果は、発動時に五枚の罠カードを同時にセットする……』

 そして降臨した《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果は、お互いに一度しかリバースカードをセット出来ない効果。防御札を満足に伏せることは出来ないデュエルになるかと思いきや、自身の名を冠するフィールド魔法《ダークネス》の発動に、五枚の罠カードが一度にセットされた。

「なんだ……?」

 デッキから五枚の罠カードをセットする、というフィールド魔法《ダークネス》ももちろん驚異だったが、何よりその五枚のセットに《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》が反応する。その巨大な体躯が光り輝いていき、明らかに異質な何かが始まろうとしていろうとしていた。

『そして《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果……我がフィールドにカードがセットされた時、エクストラデッキから決闘竜をシンクロ召喚扱いで特殊召喚出来る……』

「ッ……!?」

 明かされた《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果。カードがセットされた際に、特定のカテゴリーのモンスターを特殊召喚する――というものであり、カードは一枚しかセット出来ないという自身の制約によって、一ターンに一度しか発動出来ないはずだった。

『いでよ……四体の決闘竜!』

 しかしフィールド魔法《ダークネス》の効果により、同時に五枚のリバースカードがセットされた。よって《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果は五回発動し、突如としてダークネスのフィールドを《決闘竜》たちが埋め尽くす――

『《閃光竜 スターダスト》……《月華竜 ブラック・ローズ》……《妖精竜 エンシェント》……そして《機械竜 パワー・ツール》……我が手の元へ……!』

 モンスターカードゾーンという限界はあるために、エクストラデッキから現れたのは四体までだったが、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》を守るように四体のドラゴンが降臨する。そして見たこともないドラゴンの中、一体だけ見知ったドラゴンの姿があった。

「《パワー・ツール・ドラゴン》……?」

『紛い物には消えてもらうとしよう……《月華竜 ブラック・ローズ》の効果。シンクロ召喚に成功した際、相手モンスターの一体を手札に戻す……』

「なに!?」

 正確には《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》による効果だったが、それはシンクロ召喚扱いの特殊召喚となり、『決闘竜』のうちの一体《月華竜 ブラック・ローズ》の効果が発動する。それは相手モンスターを一体バウンスする、というシンプルながら強力な効果であり、紛い物と呼ばれながら《パワー・ツール・ドラゴン》は耐性を活かすことなく手札に戻されてしまう。

『バトル……《妖精竜 エンシェント》でダイレクトアタック……!』

「くっ……リバースカード……」

 そしてその効果によって、こちらのフィールドにモンスターはおらず、俺は決闘竜たちに晒される。しかし伏せていたカードを発動すれば、その一撃を防ぐことは出来る――が、そちらに動く指を止め、手札からモンスター効果を発動する。

「手札から《速攻のかかし》を発動! 相手モンスターのダイレクトアタック時、手札からこのモンスターを捨てることでバトルフェイズを終了させる!」

 決闘竜たちの攻撃は手札から飛び出した《速攻のかかし》が逸らし、なんとかワンショットキルは防いでみせた。幸いにも決闘竜たちは《速攻のかかし》を無効にする類の効果は持っていなかったらしく、ダークネスのバトルフェイズは終了する。

『我はこれでターンエンド』

「オレのターン、ドロー!」

 これでダークネスのフィールドは、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》と、究極神によって呼び出された四体の決闘竜と呼ばれるモンスター。さらに自身の名を冠するフィールド魔法《ダークネス》と、その発動とともに現れた五枚のリバースカード。ダークネスのフィールドは、ペンデュラムゾーン以外は全て埋まっており、伏せカード一枚のみのこちらとは圧倒的なボード・アドバンテージの差があった。

「オレは手札を全て捨てることで、永続魔法《守護神の宝札》を発動!」

 それに対する十代が取った手段は、自らの手札を全て捨てること。正確には永続魔法《守護神の宝札》の発動条件である、手札を五枚捨てるというものであるが、一見して自殺行為にも等しく感じられる。

「墓地に送られた《E・HERO シャドー・ミスト》の効果。デッキからE・HEROをサーチする。そして《守護神の宝札》によって二枚ドロー!」

 しかして十代は、ダークネスとの圧倒的なアドバンテージ差に怯むことはなく、《守護神の宝札》の発動時の効果によって二枚ドローする。さらに墓地に捨てた際に効果を発動する、《E・HERO シャドー・ミスト》によって新たなヒーローをサーチし、十代の手札はハンドレスから三枚となる。

「《E・HERO バブルマン》を召喚し、速攻魔法《バブルイリュージョン》を発動!」

 そしてサーチしたヒーローこと《E・HERO バブルマン》を召喚し、さらに専用サポート魔法《バブルイリュージョン》を発動する。《E・HERO バブルマン》がフィールドに存在する時のみ発動出来る、確かあのサポート魔法の効果は、一枚限定ながら手札からの罠カードを発動出来る。

「《バブルイリュージョン》の効果により、手札から《裁きの天秤》を発動! 相手フィールドのカードの数と自分の手札・フィールドのカードの差分、カードをドローする!」

 そして発動された罠カードは《裁きの天秤》。発動条件の厳しいカードではあるが、それは《守護神の宝札》によって満たしている。十代の手札を含めたフィールドは、《E・HERO バブルマン》に《守護神の宝札》と《裁きの天秤》、そして俺が伏せていたリバースカードで四枚。対するダークネスは、決闘竜が五体にセットカードが五枚にフィールド魔法《ダークネス》で十一枚。その差分でドロー枚数は決定し、よって十代のドロー枚数は7枚。

「よし……魔法カード《二重融合》を発動! ライフを500ポイントを払い、二回の融合を可能とする!」

 永続魔法《守護神の宝札》で墓地を肥やしながらも、《裁きの天秤》により初期手札よりも大きな枚数をドローしてみせる十代に、これがタッグデュエルであることに何より嬉しく思う。さらに魔法カード《二重融合》により、十代の十八番が早くも炸裂する。

遊矢&十代LP8000→7500

「融合召喚! 《E・HERO マッドボールマン》! 《E・HERO ワイルドジャギーマン》!」

 フィールドにいた《E・HERO バブルマン》も含めたヒーローたちが融合素材となり、《二重融合》の名の通りに二体の融合ヒーローが姿を現した。

『《月華竜 ブラック・ローズ》の効果を発動! 相手がレベル5以上のモンスターを特殊召喚した時、相手モンスター一体を手札に戻す!」

「相手ターンも使えるのか!?」

 ただしそこでダークネスの《月華竜 ブラック・ローズ》の効果により、《E・HERO ワイルドジャギーマン》はエクストラデッキに戻ってしまう。守備表示のマッドボールマンでは対抗手段はない……が、十代は手札から新たな魔法カードを発動する。

「《ミラクル・フュージョン》を発動! 再び現れろ、《E・HERO ワイルドジャギーマン》!」

 ただし《二重融合》によって、融合素材は既に墓地に送られている。つまりヒーロー専用の墓地融合カード《ミラクル・フュージョン》によって、再び《E・HERO ワイルドジャギーマン》が融合召喚される。流石に《月華竜 ブラック・ローズ》の効果は一ターンに一度らしく、今度は融合召喚を妨害されることはなく。

「バトル! ワイルドジャギーマンは、相手モンスター全てに攻撃出来る!」

 そしてその効果こそが、十代が再度《E・HERO ワイルドジャギーマン》を融合召喚した理由。たとえ決闘竜が五体フィールドに存在していようと、《E・HERO ワイルドジャギーマン》の効果ならば一掃できる。

「《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》に攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー!」

『《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》は、決闘竜がいる限り攻撃されない……』

 ただし第一の目標であった《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》は、自身が呼び出した決闘竜の影に隠れて攻撃目標にすることが出来ない。ただし《E・HERO ワイルドジャギーマン》は、先述の通りに決闘竜を一掃できる全体攻撃効果を持つ。

「なら《機械竜 パワー・ツール》に攻撃する!」

『リバースカード、オープン……《虚無》……』

 だがダークネスがそれを容易く許す筈もなく、《E・HERO ワイルドジャギーマン》の攻撃に合わせて、ついに謎のままだったリバースカードが発動する。

『《虚無》が発動した際……《無限》が同時発動し、その間のカードを全て発動する……』

「何?」

 《E・HERO ワイルドジャギーマン》の攻撃が届く前に発動していくそれらに、十代らしくもなく怪訝な声を出していた。《虚無》と《無限》――その意味深な名前を持つカードの間にあった罠カードは。

『《ダークネス2》……このカードが発動した時、フィールドのモンスターの攻撃力を、エンドフェイズまで1000ポイントアップする……迎撃せよ、機械竜!』

「っ……ワイルドジャギーマン!」

遊矢&十代LP7500→7000

 発動した《ダークネス2》からエネルギーを送られた《機械竜 パワー・ツール》が、攻撃をしようとしていた《E・HERO ワイルドジャギーマン》を破壊してしまう。そして五枚のセットカードは俺が使う《くず鉄のかかし》のように、永続罠にもかかわらず再びセットされていく。

「悪い、遊矢……カードを一枚伏せ、ターンエンドだ!」

『お互いのエンドフェイズ……セットカードはランダムにシャッフルされる……』

 ダークネスがフィールドに伏せた五枚のカード、《虚無》と《無限》とダークネス罠カード。エンドフェイズ時にランダムに位置がシャッフルされることも含めて、恐らくは三種類あるであろうダークネス罠カードを使い分ける、様々な効果を与えてくるトリッキーな戦術。

『我のターン、ドロー……』

 そしてダークネス罠カードのサポートを絡めながら、五体の決闘竜の一斉攻撃で決着をつける。パワーとトリッキーが混ざったその戦術に、十代が担当するこちらのフィールドを改める。守備表示の《E・HERO マッドボールマン》と、リバースカードが二枚に《守護神の宝札》。

『《妖精竜 エンシェント》の効果を発動。フィールド魔法が発動している時、相手モンスター一体を破壊できる……』

「くっ!」

 決闘竜のいずれの攻撃力よりも守備力が高かった《E・HERO マッドボールマン》だったが、《妖精竜 エンシェント》の効果によって破壊され、こちらのフィールドにモンスターはいなくなってしまう。

「《妖精竜 エンシェント》でダイレクトアタック……』

「速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》! 頼む、ハネクリボー!」

 しかしダイレクトアタックをくらう直前に、十代のデッキから速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》を介して現れた《ハネクリボー》が、《妖精竜 エンシェント》のダイレクトアタックを十代から庇う。全く適わずに破壊されてしまうが、そのまま俺たちに半透明のバリアが貼られていく。

「《ハネクリボー》が破壊された時、このターンの戦闘ダメージを無効にする!」

『ならば発動せよ……《虚無》……《無限》……』

 先のターンの《速攻のかかし》のように、このターンは十代の相棒こと《ハネクリボー》に助けられる。これ以上の戦闘ダメージは無効となったものの、再びダークネスの罠カード《虚無》と《無限》が発動され、その間には二枚のカードが存在していた。

『発動したのは《ダークネス3》……そして更なるダークネスカードがある時、更なる効果を得る……』

「ぐあっ!?」

遊矢&十代LP7000→5000

 《ダークネス3》が発動した瞬間、俺たちに闇の雷撃が放たれた。どうやらダークネス3は相手に効果ダメージを与える罠らしく、《ハネクリボー》の効果による半透明のバリアを貫通してしまう。

『《ダークネス3》は相手に1000ポイントのダメージを与える効果。そしてダークネス罠カードが発動する度に、1000ポイントずつその火力は上がっていく……ターンを終了』

「……まだだ! 遊矢が伏せた罠カード《トゥルース・リインフォース》を発動! デッキからレベル2の戦士族《ヒーロー・キッズ》を特殊召喚!」

 そして再びダークネス罠カードは、再セットされて魔法・罠ゾーンがシャッフルされる。これで破壊しようにもどの罠カードか分からず、更なる効果が発動することになるだろう。しかして十代もやられただけではなく、俺のリバースカードを使って新たなヒーローを特殊召喚する。

「そして《ヒーロー・キッズ》が特殊召喚された時、新たな《ヒーロー・キッズ》をデッキから特殊召喚する!」

「俺のターン、ドロー! 《守護神の宝札》によって二枚ドロー!」

 俺のリバースカード《トゥルース・リインフォース》を起点に、十代のデッキから《ヒーロー・キッズ》が三体特殊召喚される。そして十代が発動していた永続魔法《守護神の宝札》は、通常のドローを二枚とすることが可能となる。

「俺はチューナーモンスター《クリア・エフェクター》を召喚!」

 これで二枚のドローに加えて、さらにフィールドに《ヒーロー・キッズ》が三体。十代に託されたそのフィールドに加え、かの《エフェクト・ヴェーラー》に似たチューナーモンスターを召喚してみせる。

「レベル2の《ヒーロー・キッズ》二体と、同じくレベル2の《クリア・エフェクター》でチューニング!」

 そしてその中から三体のモンスター、合計レベル6のチューニング。確かにダークネス罠カードは強力だが、五枚の罠カードを使っているために、新たな魔法・罠カードは発動されない。さらにダークネスがそれら罠カードを発動するのは、こちらがあちらが攻撃する時を狙っているらしく、今のタイミングに妨害されることはない。

「集いし星雨よ、魂の星翼となりて世界を巡れ! シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」

 その隙を突いてシンクロ召喚されるは、深緑の鎧に身を包んだ槍を持った機械戦士。ただし魔法・罠カードによる妨害がないが、それ以外の妨害があることは十代が見抜いてくれている。

『月華竜 ブラック・ローズの効果……相手モンスター一体を手札に戻す……』

「墓地の《ブレイクスルー・スキル》の効果を発動! このカードを除外することで、相手モンスターの効果を無効にする!」

 ただしそれは《守護神の宝札》の効果によって、十代が潤沢に墓地を肥やしたカードの中に対抗策が存在し、《ブレイクスルー・スキル》で《月華竜 ブラック・ローズ》の効果を無効とする。よって《スターダスト・チャージ・ウォリアー》は無傷であり、その効果は先の十代の《E・HERO ワイルドジャギーマン》とほぼ同じ効果だが、決闘竜たちを相手にするには攻撃力が足りない。ならば、どうしてこのモンスターをシンクロ召喚したのか。

「《スターダスト・チャージ・ウォリアー》と、《クリア・エフェクター》の効果発動! シンクロ召喚に成功した時とシンクロ素材になった時、カードをドローする!」

 シンクロ召喚に成功した《スターダスト・チャージ・ウォリアー》と、シンクロ素材になった《クリア・エフェクター》には、それぞれカードをドローする効果がある。さらにカードを二枚ドローすると、そのうちの一枚をデュエルディスクにセットする。

「さらに《マジカル・ペンデュラム・ボックス》を発動! カードを二枚ドローし、それがペンデュラムモンスターならば手札に加える……二体の音響戦士でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 ペンデュラムモンスターのサポートカード《マジカル・ペンデュラム・ボックス》を発動し、さらにドローした二枚のカードのうち一枚を手札に、一枚を墓地に送る。しかし手札には二対のペンデュラムモンスターが揃い、そのままペンデュラムスケールにセッティングされ、二体の音響戦士は赤と青の光柱を作っていく。

「《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果! 手札を一枚捨てることで、デッキから音響戦士を特殊召喚する! 来い、《音響戦士ピアーノ》!」

 そして《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果によって、新たにデッキから《音響戦士ピアーノ》がフィールドに現れる。そしてまだ残っている《ヒーロー・キッズ》とともに、まだシンクロ召喚は出来る。

「墓地の《音響戦士ドラムス》を除外し、《音響戦士ピアーノ》の属性を変更する。そして《ヒーロー・キッズ》に《音響戦士ピアーノ》をチューニング!」

 合計レベルは5。墓地の《音響戦士ドラムス》を自身の効果によって除外しながら、最後の《ヒーロー・キッズ》とシンクロ召喚の光となって輝いていく。

「集いし勇気が、仲間を護る思いとなる。光差す道となれ! 現れろ! 傷だらけの戦士、《スカー・ウォリアー》!」

 シンクロ召喚される傷だらけの機械戦士。攻撃力は及ばないものの、五体の決闘竜に対して怯むことなく立ち向かう。

「さらに墓地の《音響戦士サイザス》の効果。このモンスターを除外することで、除外された《音響戦士ドラムス》を特殊召喚する!」

 さらに除外されていた《音響戦士ドラムス》を、《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果によって墓地に送っていた、《音響戦士サイザス》の効果によってフィールドに特殊召喚する。さらに今度は《音響戦士ピアーノ》を除外しておくが、もはや《ヒーロー・キッズ》はおらず、シンクロ召喚することは出来ないが――俺のフィールドに魔法陣が現れる。

「ペンデュラム召喚! 《マックス・ウォリアー》よ、現れてシンクロ素材となれ!」

 だがこちらには、召喚権をもう一つ増やすことが出来るペンデュラム召喚がある。魔法陣から《マックス・ウォリアー》が現れ、《音響戦士ドラムス》とともにシンクロ素材となっていく。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

 闇の中の大地に鋼の獣を模した機械戦士《グラヴィティ・ウォリアー》がシンクロ召喚され、こちらのフィールドにはシンクロモンスターが三体並ぶ。対してダークネスのフィールドには、五体の決闘竜が存在しているが、《守護神の宝札》などのドロー効果によってまだ手札に余裕はある。

「グラヴィティ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功した時、相手モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 そして《グラヴィティ・ウォリアー》のシンクロ召喚時の効果により、ダークネスのフィールドの五体の決闘竜に反応し、自らの攻撃力を1500ポイントアップさせる。よって攻撃力は3600となるが、他の二体のシンクロ機械戦士は、決闘竜と戦うには攻撃力が心もとない。

「よし……装備魔法《ファイティング・スピリッツ》を、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に装備す……!?」

 そこで攻撃力の劣る《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に対し、装備魔法による補強をしようと発動した瞬間、《ファイティング・スピリッツ》のエネルギーが他のモンスターに流れていく。

『《機械竜 パワー・ツール》の効果……相手の装備魔法を奪い、カードを一枚ドローする……』

「……紛い物に相応しい効果じゃないか。だが狙いはこっちだ! 通常魔法《拘束解放波》を発動!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》に似た相手のモンスターに怒りを募らせながら、元々の目的でもあった魔法カードを発動する。その効果は、一発逆転の策にもなりうる効果。

「装備魔法をコストに、相手のセットカードを全て破壊する!」

 ダークネスの操る《機械竜 パワー・ツール》に奪われた装備魔法《ファイティング・スピリッツ》をコストに、相手のセットカードを全て破壊する魔法カード。強力ではあるがあくまでセットカードのみであり、本来ならばフリーチェーンのダークネス罠カードには無力。

『リバースカード、《虚無》。そして《無限》を発動……』

 ただしダークネス罠カードはその特性上、《虚無》と《無限》に挟まれたセットカードしか発動しない。つまりそれ以外のカードはセットされたままということであり、《拘束解放波》の破壊対象とすることが出来る。

『発動したのは《ダークネス1》……さらにもう一枚のカードが発動されているため、相手フィールドのカードを二枚破壊する……!』

 最後のダークネス罠カードの効果は、相手フィールドのカードの破壊効果。その効果が二度に渡って発動されたことで、俺のフィールドの《グラヴィティ・ウォリアー》と《スターダスト・チャージ・ウォリアー》が標的となる――が、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の前には、羽衣を着た少女が立ちはだかっていた。

「《クリア・エフェクター》をシンクロ素材にしたモンスターは、相手モンスターに効果破壊されない! そして《拘束解放波》によって、お前のリバースカードを破壊する!」

 残念ながら《グラヴィティ・ウォリアー》は破壊されてしまったが、破壊効果の対象となった《スターダスト・チャージ・ウォリアー》だけは、なんとかシンクロ素材となった《クリア・エフェクター》の効果によって守り抜く。そして一枚だけセットされたままのダークネス罠カードに対して、《拘束解放波》による破壊効果が返された。

『く……』

 すると、ダークネスがこのデュエルが始まって初めて、苦悶の声のようなものを漏らした。その理由は《拘束解放波》によってダークネス罠カードが破壊された瞬間、他の発動していた《虚無》や《無限》も破壊されていたからだった。どうやらダークネス罠カードは、五枚で一つのセットのようなものらしく、一枚が破壊されれば揃って全てが破壊されるらしい。

「バトル! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》で、《妖精竜 エンシェント》に攻撃!」

『……迎撃せよ、妖精竜……』

 幸運にも《拘束解放波》は思った以上の働きをもたらし、ダークネス罠カードを全て破壊するという戦果をもたらした。さらに《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に攻撃を命じると、その攻撃力が勝る《妖精竜 エンシェント》が迎撃に移る。

「墓地から《スキル・サクセサー》の効果発動! このカードを墓地から除外することで、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の攻撃力を800ポイントアップさせる!」

 またも十代が《守護神の宝札》によって墓地に送ってくれていた、墓地から発動しモンスターの攻撃力を上げる罠カード《スキル・サクセサー》によって、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の攻撃力を2800ポイントアップさせる。その効果によって《妖精竜 エンシェント》の迎撃を弾くと、槍の一突きによって破壊していく。

ダークネスLP7400→6700

「さらに《スターダスト・チャージ・ウォリアー》は、特殊召喚された相手モンスター全てに攻撃出来る! スターダスト・クラッシャー!」

 ダークネスのフィールドに残る四体の決闘竜は、もちろん全て特殊召喚されたモンスター。それらは《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の射程圏であり、あの《機械竜 パワー・ツール》を含め槍による連撃が貫く――筈だった。その連撃を防いでいる決闘竜がいたのだ。


『《閃光竜 スターダスト》の効果……自分のモンスター一体に、一度だけ破壊耐性を付与する……」

 《閃光竜 スターダスト》の効果は、自分のモンスターへの破壊耐性付与。それを自らに作用することで《スターダスト・チャージ・ウォリアー》には破壊されず、決闘竜が他に残ったことで《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》にその槍は届かない。

「……だがダメージは受けてもらう!」

『……ぬぅ!」

ダークネスLP6700→5500

 《閃光竜 スターダスト》と《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》は破壊できなかったものの、それ以外の決闘竜を破壊することに成功し、その戦闘ダメージがダークネスに襲いかかった。その連撃によってお互いのライフはほぼ並び、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》はこちらのフィールドに戻ってきた。

「エンドフェイズ。《音響戦士マイクス》のペンデュラム効果によって、除外ゾーンから《音響戦士ピアーノ》を手札に加える。カードを一枚伏せ、ターンエンドだ!」

『我のターン……ドロー……』

 これでこちらのフィールドには、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に《スカー・ウォリアー》の二体のシンクロモンスター。さらに永続魔法《守護神の宝札》と今し方伏せたリバースカードに、二対のペンデュラムスケール。対するダークネスは、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》に《閃光竜 スターダスト》とフィールド魔法《ダークネス》、ライフポイントはお互いにほぼ互角。

『よくぞ我が眷属たちを破壊した、が……闇は不滅だ……新たなフィールド魔法《ダークネス》を発動……!』

「ッ!?」

 二人がかりでようやく互角。その事実に舌を巻いていると、ダークネスが自身の名を冠するフィールド魔法を張り直した。その効果はもちろん、先程と変わることはなく。

『フィールド魔法《ダークネス》が発動した時、デッキから五枚の罠カードを同時にセット……そしてカードがセットされたことで、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果が発動する……』

 せっかく《拘束解放波》によって破壊したにもかかわらず、二枚目のフィールド魔法《ダークネス》により、再び五枚のダークネス罠カードがセットされる。そして何より、そのセットに反応して《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果――カードがセットされた時、決闘竜を特殊召喚する効果が発動することだ。

『我が元に出でよ……《炎魔竜 レッド・デーモン》……《魔王竜 ベエルゼ》……《玄翼竜 ブラックフェザー》……!』

 そしてさらに現れた三体の決闘竜により、あっという間にダークネスのフィールドは先のターンと同じ状況となり、俺の前に五体の決闘竜と五枚のダークネス罠カードが迫る。不幸中の幸いとでも言うべきか、フィールド魔法《ダークネス》によってセットされたターンのため、ダークネス罠カードはこのターンには使えない。

『さて……バトルだ。《閃光竜 スターダスト》で、《スカー・ウォリアー》を攻撃する……』

「《スカー・ウォリアー》は、一度だけ戦闘では破壊されない!」

遊矢&十代LP5000→4700

 自身の効果によって《スカー・ウォリアー》は、まず相手の一斉攻撃の矢面に立つ。そして一度限りの戦闘破壊耐性を使い、その攻撃を防いでみせた――が、ダークネスのフィールドには、次なる決闘竜がすぐさま控えている。

『さらに《玄翼竜 ブラックフェザー》で攻撃する』

「墓地の《シールド・ウォリアー》の効果発動! このモンスターを除外することで、一度だけ戦闘破壊を無効にする!」

遊矢&十代LP4700→4000

 しかしこちらも《スカー・ウォリアー》一人ではなく、墓地から盾を持つ機械戦士がその攻撃を防ぎ、《スカー・ウォリアー》を庇ってみせる。そして《スカー・ウォリアー》は、新たな決闘竜の矢面に立った。

『《魔王竜 ベエルゼ》で攻撃する……』

「ありがとう、《スカー・ウォリアー》……」

遊矢&十代LP4000→3100

 そして遂に《スカー・ウォリアー》は、三回目の決闘竜の攻撃によってその身を崩壊させた。それでも俺のライフポイントを守ってくれたことに礼を言うと、最後の一撃に対して身を引き締める。

『《炎魔竜 レッド・デーモン》で、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に攻撃……」

「ぐああっ!」

遊矢&十代LP3100→2100

 決闘竜五体の攻撃を《スカー・ウォリアー》の奮戦で何とか防いだものの、ライフポイントは初期値から6000ポイントをも削られてしまう。炎魔竜から放たれた獄炎に包まれながら、がら空きになってしまったフィールドを見つつなんとかその身を持ち直す。

『我はこれでターンエンド……』

「くそっ……頼む、十代……」

「あとは任せろ。オレのターン、《守護神の宝札》で二枚ドロー!」

 そして再び十代のターンに移行し、こちらのフィールドには二対のペンデュラムスケールと、永続魔法《守護神の宝札》にリバースカード。その効果によって二枚ドローすると、ダークネスも罠カードの発動準備が整った。

「魔法カード《ミラクル・コンタクト》を発動! 手札と墓地のモンスターでコンタクト融合を行う!」

『来るか……ネオスペーシアン……』

 かつての斉王もそうだったが、敵はネオスペーシアンに対して警戒心を抱いており、ダークネスもその例外ではないらしく。墓地からコンタクト融合を行う魔法カード《ミラクル・コンタクト》により、《守護神の宝札》で墓地に送っていた二体のモンスターが、デッキに戻りつつ融合を果たしていく。

「コンタクト融合! 《E・HERO グロー・ネオス》!」

『リバースカード、オープン……《虚無》。そして《無限》……』

 相手のカードを破壊する効果を持つ融合ネオス、《E・HERO グロー・ネオス》の融合召喚に成功するが、ネオスペーシアンの効果をダークネスは把握しているのか、その効果が発動する前にダークネス罠カードを発動する。そして発動する効果は――

『発動したのは《ダークネス1》……そして二枚のダークネスカード……よって、三枚の相手のカードを破壊する!』

 ――最悪の位置。最初に発動した《ダークネス1》に発動が連鎖し、三枚の破壊効果となってこちらのフィールドを襲う。今し方コンタクト融合したE・HERO グロー・ネオス》、《守護神の宝札》、伏せていた《ダメージ・ポラリライザー》の三枚がだ。

「甘いな、ダークネス。どうやら心の闇って言っても、デュエリストの駆け引きって奴は、オレたちの方が上のようだぜ。《E・HERO プリズマー》を召喚!」

『なに……?』

 それに対して十代は――笑っていた。そう、《E・HERO グロー・ネオス》は、ダークネス罠カードを誘発する囮だと言わんばかりに。

「《E・HERO プリズマー》の効果! デッキから融合素材となるモンスターを墓地に送ることで、そのモンスターの名前を得る! リフレクト・チェンジ!」

 そして新たに召喚されたヒーローこと《E・HERO プリズマー》は、自身の効果によって新たなモンスターへと姿を変える。その鏡面のような身体が変質していき、残ったのは先程デッキに戻っていたヒーローの姿だった。

『ネオス……!』

「そして《ラス・オブ・ネオス》の効果発動! ネオスをコストにすることで、フィールドのカードを全て破壊する!」

 そして発動される《ラス・オブ・ネオス》。十代のフィールドに存在するのは《E・HERO プリズマー》であるが、自身の効果によって《E・HERO ネオス》ともなっている。鏡で反射されたようなネオスが飛び上がると、フィールド全体を壊すような一撃を轟かせた。

『《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》と《閃光竜 スターダスト》の効果! どちらも自身の破壊を一度だけ無効とする!』

 ただしその一撃には、二体のモンスターが耐え抜いていた。破壊を無効にする効果がある《閃光竜 スターダスト》はもちろんだが、どうやら《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》も、そのような類の効果を持っていたらしい。それでも他三体の決闘竜と、フィールド魔法《ダークネス》とダークネス罠カードは破壊され、お互いのフィールドは焼け野原となった。

「さらに魔法カード《闇の量産工場》を発動し、墓地から二体の通常モンスターを手札に加え、《融合》を発動!」

 ただしダークネスが《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》と《閃光竜 スターダスト》を持ちこたえさせたように、十代にもまた、まだ新たなモンスターを召喚出来る。《二重融合》、《ミラクル・フュージョン》、《ミラクル・コンタクト》と来て、今度は通常の《融合》として。

「《E・HERO ネオス》と《E・HERO クレイマン》を融合し、《E・HERO ネオス・ナイト》を融合召喚!」

 《E・HERO プリズマー》の効果で墓地に送っていた《E・HERO ネオス》と、《E・HERO マッドボールマン》の融合素材となっていた《E・HERO クレイマン》が融合し、甲冑を着込み剣を持ったネオスが現れる。新たなネオスの融合体は、どうやらネオスと戦士族の融合体らしく。

「《E・HERO ネオス・ナイト》が融合召喚に成功した時、融合素材となった戦士族モンスターの攻撃力の半分を得る!」

 融合素材となった《E・HERO クレイマン》が元々壁モンスターのため、上昇する攻撃力は400ポイントと微々たるものではあったが、それでも攻撃力2900と《閃光竜 スターダスト》を上回ることに成功する。どちらも先の《ラス・オブ・ネオス》によってリバースカードもなく、後はただモンスター同士がぶつかるのみだ。

「バトル! 《E・HERO ネオス・ナイト》は、戦闘ダメージを犠牲に二回攻撃が出来る! いけ、ラス・オブ・ネオス・スラッシュ!」

 デメリット効果によって戦闘ダメージは与えられないものの、《E・HERO ネオス・ナイト》は難攻不落だった《閃光竜 スターダスト》を一刀のもとに斬り伏せてみせた。もはや《閃光竜 スターダスト》の破壊を無効にする効果を使うことは出来ずに、ただ斬り伏せられるのみだった。

「さらに《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》に攻撃する!」

『《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果を発動! フィールドに決闘竜が存在しない時……このモンスターが攻撃された場合、攻撃モンスターの攻撃力をこのモンスターの攻撃力とする……』

 そして《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》を守る決闘竜は全て破壊され、遂に《E・HERO ネオス・ナイト》の刃が届く。ただしタダでは破壊されないとばかりに、究極神は残された最後の効果を発動する。

「速攻魔法《融合解除》! 《E・HERO ネオス・ナイト》の融合を解除し、ネオスとクレイマンを特殊召喚する!」

 あわや相打ち――というところで、十代の手札から《融合解除》が発動され、《E・HERO ネオス・ナイト》がエクストラデッキへと戻る。よって戦闘は無効となって相打ちは発生せず、文字通り融合が解除されたネオスとクレイマンが十代のフィールドに特殊召喚された。

「まだだ! 《E・HERO クレイマン》で、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》に攻撃! クレイナックル!」

『……《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果! このモンスターと相手モンスターの攻撃力を同値とする!』

 そして《融合解除》は速攻魔法のため、まだ十代のバトルフェイズは続いている。《E・HERO クレイマン》が果敢にも究極神に一撃を与えていき、自身の身を犠牲にしながらももろともに破壊された。

 そしてフィールドに残ったモンスターは、ただ一体。

「ネオス! ダイレクトアタックだ!」

『ぐぅぅ……!』

ダークネスLP5500→3000

 遂にダークネスへの直接攻撃が炸裂し、ネオスの一撃がそのライフポイントを大きく削った。これでライフポイントは拮抗と言わないまでも近づき、十代はバトルフェイズを終了する。

「カードを二枚伏せ、ターン終了!」

『我のターン、ドロー……!』

 そして《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の効果の一つであった、リバースカードを一ターンに一度しか伏せられない、という制約も解除され。十代は二枚のリバースカードを伏せたが、先のターンの怒涛の連続攻撃もあって手札は心もとない。

『このカードは、自分フィールドの攻撃力値の合計が0の時、特殊召喚出来る……現れろ、《ダークネス・スライム》……』

 だが重要なのはここからだ。《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》を失ったダークネスが、これからどんな戦術を取ってくるのか――そして召喚されたのは、攻撃力、守備力ともに0の下級モンスター。フィールドにモンスターがいないのだから、もちろんその攻撃力の合計は0となる。

『さらに《ダークネス・アウトサイダー》を召喚する……』

 さらに召喚されるのは、またもやステータスの低い下級モンスター。決闘竜たちを使わないダークネスのメインデッキのモンスターは、どうやらそのようなモンスターが中心らしい。

『《ダークネス・アウトサイダー》の効果。手札を一枚捨てることで、自らのモンスターと相手のデッキのモンスターを、入れ替える……』

「何!?」

 そしてその効果は、あのフィールド魔法《ダークネス》などと同様に、他に類を見ないトリッキーかつ独特の効果。ダークネスは二枚のカードを手札から捨てると、《ダークネス・スライム》と《ダークネス・アウトサイダー》を代償に、十代のデッキから二体のモンスターを奪い取った。

『我が手の元に……《ユベル》。そして《ハネクリボー LV10》』

「ユベル、相棒……貴様ぁ!」

 二体のモンスターが奪われた十代が、らしくない叫び声をあげる。闇の鎖によって封じ込められているのは、十代の相棒が成長した姿である《ハネクリボー LV10》と――先の異世界での黒幕だった、《ユベル》。

「……っ」

 その姿を見ると反射的に怒りが湧いてきてしまうが、今はそれどころではないと自分を律する。ダークネスに奪われたその姿に、本気で怒りを覚えている十代を見て、何かあったのだろうと思ったこともあるが。

『すぐに我が力の糧となる……魔法カード《陰陽超和》を発動。モンスター一体、《ユベル》をダークチューナーとする』

 モンスターをダークチューナー化する魔法カードに、ダークネスが《ダークネス・アウトサイダー》で奪ったモンスターのレベルが、どちらも同じだということに気づく。そして先の《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》の時のように、二体のモンスターが生け贄の如く闇に包まれていく。

『このモンスターは、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》が墓地に存在する時のみ、ダークシンクロ召喚出来る……二体のモンスターで、ダークシンクロ!』

「くっ……」

『決闘の地平に君臨する最初にして最後の神……混沌を束ね姿無き身を現世に映さん……ダークシンクロ! 《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》!


 ――自らのモンスターが召喚に利用された十代の怒りの感情とともに、新たなダークシンクロモンスターがフィールドに君臨する。墓地に《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》が存在することを召喚条件としたそのモンスターは、究極神を人型にして肥大化させたようなモンスターだった。その威圧感はかつて相対した神のモンスターにも匹敵し、あくまで究極神など前座であったと感じさせた。

『《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果。一ターンに一度、フィールド全てに《邪眼神トークン》を特殊召喚する……』

「な……?」

 十代のフィールドのネオスと、ダークネスのフィールドの究極幻神を除いた、フィールドのモンスターカードゾーン。それら全てに《邪眼神トークン》が守備表示で特殊召喚され、一瞬にしてモンスターカードゾーンが全て埋まる。こちらのフィールドに特殊召喚されたモンスターのために、効果の確認が可能だが、そのトークンはリリース出来ないというデメリット効果のみ。さらにステータスは、攻撃力に守備力がどちらも0と、明らかにロックを目的としたトークンだった。

『そして《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の攻撃力は、お互いのモンスターの攻撃力×1000ポイントとなる……』

「つまり――」

 ――攻撃力10000。計算するまでもなく、先の《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》自身の効果により、フィールドは《邪眼神トークン》で埋め尽くされている。よってモンスターの数は十体であり、究極幻神の攻撃力は10000となる。

『バトル……《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》で、《E・HERO ネオス》を攻撃!』

「ッ……伏せてあった《ヒーローバリア》を発動! 攻撃を無効にする!」

 E・HERO専用の防御カードで何とか防ぐが、その一撃をくらえば明らかにひとたまりもない。そう確信できる《ヒーローバリア》が防いだ衝撃に対して、無意識に唾を飲み込んだ。

『カードを一枚伏せ、ターンを終了する……』

「遊矢……」

「……俺のターン、ドロー!」

 そしてターンは俺に移行し、ダークネスのフィールドの《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》がこちらを睥睨する。対するこちらのフィールドは、十代が残してくれた《E・HERO ネオス》と、押し付けられた四体の《邪眼神トークン》。そしてリバースカードが一枚と、守備に回ることが脳裏によぎる。

「……攻撃力10000がなんだ」

 亮ならさらにその上を行く――などと自らにそう言い聞かせながら、手札のカードを一枚、デュエルディスクにセットする。

「装備魔法《魔界の足枷》を発動! 《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》に装備することで、装備モンスターの攻撃力を100ポイントに固定する!」

『ふん……』

 いくら攻撃力を増す効果があろうとも、この装備魔法《魔界の足枷》は装備モンスターの攻撃力を100ポイントに固定する。よって究極幻神はその圧倒的な攻撃力を維持できずに、ネオスの前に竜の頭を垂れる。

「バトル! ネオスで究極幻神に攻撃だ、ラス・オブ・ネオス!」

ダークネスLP3000→600

 ネオスの一撃は究極幻神に直撃し、ダークネスのライフポイントは風前の灯火となった。そのまま究極幻神は破壊される――ことはなく、むしろ徐々に身体を起こして力を増していく。

『《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》は、戦闘と効果では破壊されない。そして耐性効果が発動した時、相手モンスターを全て破壊し、その数×200ポイントのダメージを与える……!』

「なっ……ぐあっ!」

遊矢&十代LP2100→100

 ――《E・HERO ネオス》の攻撃によるエネルギーが、全てこちらに反射されてしまう。そのエネルギーは攻撃したネオスだけではなく、こちらのフィールドに特殊召喚されていた《邪眼神トークン》を全て巻き込み、こちらのライフポイントが残り100ポイントにするほどの火力となった。

『そして《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果……フィールド全てに《邪眼神トークン》を特殊召喚する……』

 そして間髪入れずに発動された究極幻神の効果によって、こちらのフィールド全てに《邪眼神トークン》が特殊召喚され、あっという間にモンスターゾーンがロックされる。リリースすることも出来なければ、俺に打つ手はない……が、ダークネスの狙いはロックなどという、生易しいものではなかった。

『リバースカード、オープン……《トークン謝肉祭》! トークンが特殊召喚された時、フィールドのトークン全てを破壊し、破壊した数×300ポイントのダメージを与える!』

「――手札から《シンクロン・キーパー》の効果を発動! このモンスターを手札から捨てることで、効果ダメージを無効にする!」

 ダークネスが狙っていたのは、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》と《トークン謝肉祭》のコンボによる、直接のバーンダメージでの決着。それを何とか手札からの《シンクロン・キーパー》によって効果ダメージを防ぎ、さらに《シンクロン・キーパー》の第二の効果に繋いでいく。

「さらに《シンクロン・キーパー》は、この効果で墓地に送られた時、墓地のチューナーモンスターとシンクロ召喚出来る!」

 墓地から《シンクロン・キーパー》と、チューナーモンスターである《音響戦士ドラムス》を除外することで、このタイミングでのシンクロ召喚を可能とする。ただしシンクロ召喚されるモンスターは、守備表示な上に効果を無効にされてしまっているが、それでも狙う手には何の問題もない。

「再び現れろ! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 除外された《音響戦士ドラムス》と、《シンクロン・キーパー》の合計レベルは7。デュエルの序盤にエクストラデッキに戻されてしまっていた、《パワー・ツール・ドラゴン》が再びフィールドに現れた。

「そして《エフェクト・ヴェーラー》を召喚し、《パワー・ツール・ドラゴン》とチューニング!」

 そして効果は無効にされてしまっていたとしても、《パワー・ツール・ドラゴン》は《パワー・ツール・ドラゴン》だ。チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》を特殊召喚させることで、二体のモンスターにチューニングさせる。

「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

 《エフェクト・ヴェーラー》が力を失った《パワー・ツール・ドラゴン》の周囲を旋回していき、力を戒めている装甲板を一枚一枚取り外す。そして全ての装甲板から解き放たれた時、炎とともに《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が飛翔する。

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》がシンクロ召喚に成功した時、俺のライフポイントを4000にする! ゲイン・ウィータ!」

遊矢&十代LP100→4000

 そして《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果によって、こちらのライフは普通のデュエルにおいての初期値にまで回復する。《魔界の足枷》で攻撃力が100ポイントに固定された《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》は、今が絶好の攻撃チャンスだったが、あいにくともはやメインフェイズ2のタイミング。既にネオスで攻撃をしている以上、もはやバトルフェイズはなく、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》も守備表示でのシンクロ召喚となる。

「……ターンエンドだ」

『我のターン、ドロー……そして《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果で、《邪眼神トークン》を特殊召喚する……』

 こちらからダークネスにターンが移行した瞬間、再び《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果が発動し、お互いのモンスターカードゾーンが全て《邪眼神トークン》で埋まる。これでこちらのフィールドは、《邪眼神トークン》が四体に《ライフ・ストリーム・ドラゴン》、リバースカードに究極幻神に装備された《魔界の足枷》となった。

『我は《アカシックレコード》を発動……カードを二枚ドローし、そのカードが既に発動したカードだったならば、ドローしたカードを除外する……』

 そして魔法カード《アカシックレコード》で、二枚のカードをドローした――《アカシックレコード》は、ドローしたカードに既に発動したカードと同名カードがあった場合、除外されるというデメリットがあるが、その効果は発動しないようだ――ダークネスのフィールドは、同じく四体の《邪眼神トークン》と、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》。残るライフポイントは600という僅かな数値だったが、究極幻神がいるからか意識している様子はない。

『通常魔法《トークン復活祭》を発動……自分フィールドのトークンを全て破壊し、その数だけフィールドのカードを破壊する……』

 そして発動された魔法カードは、トークンの数だけカードを破壊する《トークン復活祭》。四体の《邪眼神トークン》を代償に破壊されるカードは、装備魔法《魔界の足枷》に十代が伏せていた《英雄変化-リフレクター・レイ》と、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》――そして、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》。

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果発動! このカードが破壊される時、代わりに墓地の装備魔法を除外する!」

『《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》は破壊されず、このカードが耐性を発動した時、相手モンスターを全て破壊し……その数×200ポイントのダメージを与える……!』

 まずは《トークン復活祭》によって破壊されかかった《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を自身の効果で防いでいると、自ら耐性効果を発動したことで《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の全体破壊効果が発動する。先の《トークン復活祭》の比ではない威力が、こちらのフィールドを覆い尽くした。

「まだだ! 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果により、墓地の装備魔法を除外して破壊を免れる!」

『だが《邪眼神トークン》を四体破壊した……1000ポイントのダメージを受けてもらう……』

 これまでのデュエルの流れで、墓地に装備魔法はまだ送られており、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は自身の耐性効果によって破壊を免れる。ただし《邪眼神トークン》まで守ることは出来ず、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》のバーン効果が発生するが、それはこちらに届く前に《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が受け止めた。

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》がいる時、俺はバーンダメージを受けない!」

『ほう……ならば、カードを一枚伏せてターンを終了する……』

 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果をフル活用して、何とかダメージなくダークネスのターンを終わらせる。ただし守ってばかりでデュエルに勝てるわけもなく、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の耐性も有限だ。

「オレのターン……ドロー!」

『《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果……お互いのフィールドに《邪眼神トークン》を特殊召喚する……』

「…………」

 そしてターンは、十代へと移行する。このターンで《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》を倒さなくては、俺たちに未来はない。そんな局面で回ってきたターンで、十代は――

「遊矢……あとは任せたぜ。オレは《左腕の代償》を発動! 手札を全て除外することで、デッキから通常魔法を手札に加える!」

 ――どこか、悲しい決意を秘めたような表情を見せていた。そして発動したのは、文字通りに手札全てを代償とする魔法カード《左腕の代償》であり、手札から一枚の通常魔法カードを手札に加えた。

「十代……?」

「オレは《ネオスペーシア・ウェーブ》を発動! 自分フィールドのモンスターを全て破壊し、その数だけデッキからネオスペーシアンを特殊召喚する!」

 十代は俺からの問いかけに答えることはなく、《左腕の代償》でサーチした魔法カード《ネオスペーシア・ウェーブ》を発動する。《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と四体の《邪眼神トークン》を全て破壊し、代わりにフィールドには、五体のネオスペーシアンがフィールドに現れていた。

『ネオスペーシアン……!』

「《N・ブラック・パンサー》の効果発動! 相手モンスター……《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果を得る!」

 そして忌々しげなダークネスの声とともに、まずは《N・ブラック・パンサー》の効果が発動される。相手モンスターの効果を得るという特異なソレは、ダークネスの《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果を得ていく。

「これなら……!」

「バトル! 《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》となった《N・ブラック・パンサー》で、お前の究極幻神を攻撃する!」

 そして《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果は、フィールドのモンスターの数×1000ポイント攻撃力を上げる効果。よって《N・ブラック・パンサー》の攻撃力も10000ポイント増し、元々の攻撃力だけダークネスの究極幻神よりも攻撃力が上回る。

『リバースカード……オープン! 《ガード・ブロック》……!』

 ――しかしここで、ダークネスが伏せていたリバースカードが正体を現し、《N・ブラック・パンサー》の攻撃を受け止めた。ダークネスへの戦闘ダメージは0となり、さらに《究極幻神 ビシバールキン》が戦闘破壊耐性を発動したため、バーン効果が発動する――

『…………』

 ――ことはなかった。何故ならここでダークネスが究極幻神のバーン効果を発動すれば、こちらの究極幻神の効果を得た《N・ブラック・パンサー》もまた、同様の耐性効果とバーン効果を発動する。そうなればバーン効果はそのままダークネスに跳ね返り、先にライフポイントが尽きるのはダークネスとなる。

「これで終わりだ、究極幻神! 《N・グラン・モール》で攻撃する!」

 故に《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》のバーン効果は発動することが出来ず、二体の究極幻神のぶつかり合いの隙に、一体のネオスペーシアンがダークネスの究極幻神に近づいてきていた。

「《N・グラン・モール》の効果発動! このモンスターが戦闘する時、その相手モンスターとグラン・モールを手札に戻す!」

『ぬ……ぐぅぅぅ……!』

 確かに《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》は、戦闘と効果破壊への耐性を持ってはいたが、その一撃には無力だった。究極幻神に特攻した《N・グラン・モール》は自らの役割を果たし、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の打倒を果たしてみせる。

「メインフェイズ2、《N・エア・ハミングバード》の効果を発動! ハニー・ザック!」

 そしてメインフェイズ2に移行すると、残るネオスペーシアンたちが効果を発動する。まずは《N・エア・ハミングバード》の効果により、相手の手札×500ポイントのライフを回復する。

遊矢&十代LP4000→5000

「そして《N・アクア・ドルフィン》の効果! エコー・ロケーション!」

 ダークネスの手札は二枚、よって1000ポイントのライフを回復しながら、続いて《N・アクア・ドルフィン》の効果が発動する。手札を一枚捨てることで相手の手札のモンスター一体を破壊し、500ポイントのダメージを与えるハンデス効果。相手の手札のモンスターの攻撃力より、こちらのフィールドのモンスターの攻撃力が低かった場合、こちらが500ポイントダメージを受けるデメリットこそあるが、今こちらには《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》となった《N・ブラック・パンサー》がいる。

ダークネスLP600→100

「そして《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》となった、《N・ブラック・パンサー》の効果! フィールド全てに《邪眼神トークン》を特殊召喚する!」

 そしてハンデスとともに500ポイントのバーンダメージを与え、《N・アクア・ドルフィン》はダークネスの残るライフポイントを100ポイントにしてみせる。最後に《N・ブラック・パンサー》が《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果を使い、今度はダークネスのモンスターゾーンをロックしてみせた。

「ターン……終了だ」

『我のターン……ドロー』

 そして十代のエンド宣言とともに、《N・ブラック・パンサー》の効果が効力を失う。ネオスペーシアンたちの活躍によって、ダークネスの残るライフポイントは100、切り札の《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》はエクストラデッキ。おおよそ最高なターンだったが、十代の表情は晴れなかった。その理由は、ダークネスの更なる手を、なんとなく予感していたのかもしれない。

『我は二枚目の《トークン復活祭》を発動! 消え去れ……ネオスペーシアン……!』

 そして発動した魔法カードは、二枚目の《トークン復活祭》。十代が《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》の効果を使ってロックしたのが裏目となり、ダークネスのフィールドの《邪眼神トークン》と十代のネオスペーシアンたちがもろともに破壊された。

『《ダークネス・ネクロスライム》を召喚する……』

 そしてダークネスの最後の手札から召喚されたのは、やはりステータスは好守ともに0のモンスター。しかしそのモンスターが何をもたらすかは、すぐに分かることとなった。

『《ダークネス・ネクロスライム》は、このモンスターをリリースすることで、ダークネスと名の付くモンスターを墓地から特殊召喚する……現れろ、我が切り札……《ダークネス・ネオスフィア》!』

 ――遂に降臨する、ダークネスの切り札。自らの名前を冠するそのモンスターは、《ダークネス・ネクロスライム》の内部から引き裂くように現れた。そして攻撃力4000を誇るモンスターから身を守る手段は、今の十代には、ない。

『《ダークネス・ネオスフィア》でダイレクトアタック!』

「――――」

遊矢&十代LP5000→1000

「十代!」

 ライフポイントは共有とは言えども、今のターンプレイヤーは十代。その一撃は守られるもののない十代に直撃し、十代は闇の世界の中に消えていく。こちらからの呼びかけに答えることもなく、ただただ闇だけがこの空間を支配していた。

『倒れたデュエリストにターンは回って来ない……さあ、貴様のターンだ……』

 十代を探しに行こうとした俺の目の前に、ダークネスの巨大な姿が現れた。まだデュエル中だと言わんばかりであり、こちらにターンが移行する。

『そして《ダークネス・ネオスフィア》の効果……お互いのターンのエンドフェイズ時、我がライフポイントを4000とする……』

ダークネスLP100→4000

「……あとは任された、十代――ドロー!」

 十代はこうなることを予期してあんなことを言ったのか、それは今は分かるわけがない。ただし十代はその身とネオスペーシアンたちを犠牲に、《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》を倒し、後は俺に任せると言ってくれたのだ。ならば、あとは――このデュエルを終わらせるのみだ。

「俺は《スピード・ウォリアー》を召喚!」

 たとえ相手のライフポイントが4000にまで回復していようと関係ない、そんな決意とともに呼び出される、マイフェイバリットカード。伝説のカードや神のカード、ましてやレアカードですらなく、ネオスペーシアンたちやネオスのように曰く付きのカードでもない。それでもずっと一緒に戦ってきた、永遠のマイフェイバリットカード――

「ダークネス! 俺はただの人間だ。負ければ相手を妬み、嫌なことがあれば苛立ちを覚えて、さっきユベルを見た時には、状況も考えずに怒りを覚えて、俺に出来ないことをやれる皆に嫉妬してる!」

 そんな《スピード・ウォリアー》を傍らに、《ダークネス・ネオスフィア》に身を隠すダークネスに啖呵を切る――このターンで終わらせる、という意志を込めて。

「そんな人並みに心の闇を持ってる俺が言ってやる! お前の出番はまだ先だ! 俺は……俺たちは、まだ何にだって諦めちゃいない! ――《スピード・ウォリアー》に装備魔法、《進化する人類》を装備する!」

 装備魔法《進化する人類》。このカードに託された名前のように、俺たちはまだそれぞれに、闇を抜けて光の中に完結する物語を持っている。ならば未来を闇に包むダークネスなど邪魔なだけであり、俺とマイフェイバリットカードがやるべきことは一つ。

「闇を斬り裂け、スピード・ウォリアー! バトルフェイズ、《スピード・ウォリアー》の元々の攻撃力は二倍となる!」

 攻撃力を二倍にする、などと言えば聞こえはいいが、《スピード・ウォリアー》の元々の攻撃力は僅か900。二倍にしたところで1800にしかならない――本来ならば。

 ただし、装備魔法《進化する人類》を装備していれば、話は別だ。元々の攻撃力を2400ポイントとする効果を持つ《進化する人類》とのコンボにより、《スピード・ウォリアー》の攻撃力は一瞬にして《ダークネス・ネオスフィア》を超えて4800ポイントとなる。

『だが《ダークネス・ネオスフィア》には戦闘破壊耐性がある。闇たる我を倒すことは不可能だ!』

「それはどうかな……《スピード・ウォリアー》で、《ダークネス・ネオスフィア》を攻撃!」

 ダークネスの言った通りに、《ダークネス・ネオスフィア》と《スピード・ウォリアー》の攻撃力は僅か800ポイントであり、到底4000ポイントにライフを回復したダークネスのライフを削りきる威力はない。二回攻撃などを加えたとしても、戦闘破壊耐性を持つ《ダークネス・ネオスフィア》には通用しない。それでも攻撃を仕掛けていく《スピード・ウォリアー》の前に――半透明の戦士が姿を現した。

「墓地から《ネクロ・ガードナー》の効果を発動するぜ、遊矢!」

 闇の中から姿を現した十代が、最初の《守護神の宝札》によって墓地に送っていた《ネクロ・ガードナー》によって、《スピード・ウォリアー》の戦闘を無効とする。《ネクロ・ガードナー》は墓地から除外することで、その戦闘を無効とする効果を持っており――そこで俺の手札に残された最後の一枚の、発動条件を満たすこととなった。

「速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》を発動! モンスターの攻撃が無効になった時、攻撃力を倍にしてもう一度攻撃する!」

『攻撃力……9600!?』

 《ダークネス・ネオスフィア》を遥かに超える攻撃力に、初めてダークネスから明確な驚愕の声が漏れた。しかしてもう遅いと示すかのように、《スピード・ウォリアー》は神速でダークネスに近づいていく。

「――ソニック・エッジ!」

『ぐあああああ!』

ダークネスLP4000→0

「ダークネス。お前の出番は、ずっと後だ」

「……いや、来させないさ」

 《スピード・ウォリアー》の一撃に破裂するダークネスに対して、俺たちが最後にそう言った瞬間、耐えられないとばかりに世界が崩壊を始めた。世界を構築していた闇が、まるでガラスのように砕けていき――

「ここは……」

 ――気づけば、俺たちはデュエル・アカデミアに帰ってきていた。十代がよくサボって寝ていた屋上で、俺が異世界から帰ってきてアカデミアを一望した場所でもある。この場所に帰ってきたい、守りたいという一心で、俺はダークネスとの戦いに足を踏み入れたのだ。

「……ただいま」

 そしてようやく、異世界に行く前のアカデミアに帰って来れた気がして。隣でアカデミアを一望する十代に聞こえないように、無意識に小さくそんなことを呟いていた――十代もそんなことを、思っていたのかもしれないが。

 ただ今は、みんなで守りきったこの場所の美しさに、少しばかり見とれていても罰は当たらない。

 ――もうすぐこの場所とも、別れる日がやってくるのだから。

 
 

 
後書き
ダークネス戦、完。残るは…… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧