遊戯王GX-音速の機械戦士-
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
-Generation neXt-
『……卒業生代表、黒崎遊矢』
ダークネスとの決戦の折、成り行きでなった卒業生代表だったが、それでも役目は果たす必要がある。卒業生の答辞を読み終えると、緊張から解放されたことに胸をなで下ろしながら、マイクを鮫島校長に返していた。
『では、話はこれぐらいに。パーティー会場へ移動しましょう……卒業生の皆さんは、アカデミアで過ごす最後の日です。楽しんでいってください』
そう、鮫島校長の言った通り、今日は……俺たちがアカデミアで過ごす、最後の日となった。
「卒業おめでとう、遊矢」
「……三沢」
思い思いの感情を浮かべながら、生徒たちは用意されたパーティー会場に向かっていく。そんな中、スーツ姿の三沢に声をかけられ、俺は生徒たちの列から外れていく。
「何が卒業おめでとう、だ。他人事みたいに」
「実際、他人事のようなものだからな」
二年生の際にアカデミアから離れ、ツバインシュタイン博士の助手となった三沢は、確かにもはやアカデミアの学生ではない。俺たちより遥かに早く自立していった親友に、小さく笑いながらある物を投げつけた。
「これは……」
「他人事じゃないんだよ。クロノス先生からだ……卒業おめでとう、三沢」
三沢に渡したものは、クロノス先生から託された卒業証書。アカデミアからただ去るのではなく、「卒業」したという証のソレに、三沢は珍しい目を白黒させていた。
「まったく……適わないな、クロノス先生には」
「ああ、最高の先生だ」
「そうだな……さて、遊矢」
そうしてひとしきり笑った後、三沢は真面目な表情に戻ると、自らの背後を指差した。まるで俺が何を求めているのか、分かっているようだった。
「あいつなら向こうに行った……そう簡単に負けるなよ?」
「ああ!」
最後にそう言葉を交わして、俺は振り向くことはなく三沢と別れた。パーティー会場に向かう列からも外れた俺が向かったのは、今は誰もいない筈のアカデミアの本校舎。その中でも、デュエルキング・武藤遊戯の当時のデッキのコピーが保管されている部屋から出て来た、真紅の制服を着た人物が目当てだった。
「……遊矢?」
「よう、十代。やっぱりパーティーには参加しないで、どっか行く気だったな」
そう決めつけるように言った俺の問いは図星だったようで、十代はばつが悪そうに顔を背けた。とはいえ、そんなことは仲間の中で分かっていない人物はおらず、それが十代の選択ならば受け入れてやる、というのがみんなの総意だった――俺以外はだ。
「……ダークネスとの戦い、俺はトドメを刺しただけだった」
世界を救ったあのタッグデュエルにおいて、ダークネスの切り札をことごとく破っていったのは、俺ではなくどれも十代だった。もちろん結果的にそうなっただけであり、十代も何か言いたそうにしていたものの、それを遮って言葉を続けていく。
「だから、まだお前を卒業させるわけにはいかない。俺とデュエルしろ、十代!」
「……ああ、いいぜ。オレも今、誰かと戦いたくてウズウズしてたところだ!」
そうして二人は、それぞれのデュエルディスクを構えて向かい合うと、デュエルの準備を完了させる。お互いに同じ場所で三年間の日々を過ごし、その日々の全てを相手にぶつけるデュエル。
……そしてその三年間で、俺たちは、デュエルは楽しいだけのものではないと知った。時に辛いことも、苦しいことも、悲しいことも、あった――だがいずれにしても、デュエルはお互いの魂のぶつかり合いだった。
どんなデュエリストにも信念があり、その信念を貫くための譲れないことがあった時、お互いの魂をぶつけ合って相手を打ち倒す。それこそが俺が見つけたデュエルの本質であったが、どうせやるなら――
「楽しんで勝たせてもらう!」
「楽しいデュエルをしようぜ!」
――そうだ、どうせやるなら、楽しい方がいい。
十代LP4000
遊矢LP4000
「俺の先攻! 《カードガンナー》を召喚!」
先にデュエルディスクが選んだのは十代。まずは《カードガンナー》を召喚すると、その効果でデッキから三枚のカードを墓地に送る――と思いきや、そんな様子はない。
「さらに《機械複製術》を発動し、デッキからさらに二体の《カードガンナー》を特殊召喚! 三体の《カードガンナー》の効果を発動するぜ!」
こちらも多用する魔法カード《機械複製術》によって、十代のフィールドには三体の《カードガンナー》が揃う。さらに揃って効果を発動することで、十代のデッキから9枚のカードが墓地に送られた。
「墓地に送られた《E・HERO シャドー・ミスト》の効果。デッキからHEROを手札に加え……カードを三枚伏せて、オレはターンを終了するぜ!」
「……俺のターン、ドロー!」
《機械複製術》と《カードガンナー》のコンボによる9枚の墓地肥やしと、サーチしたHERO以外の、三枚の手札全てをリバースカードとしてセットと、相変わらず――いや、破天荒なデュエルぶりにますます磨きがかかっている。それに気圧されまいと、気合いを込めてカードを引き、ドローしたモンスターをデュエルディスクにセットした。
「俺は《ドドドウォリアー》を妥協召喚し、攻撃する!」
ドローしたモンスターは《ドドドウォリアー》。レベル6だが攻撃的を1800に減ずることで、手札から妥協召喚する効果を持つ。さらに攻撃時に、ダメージステップ終了時まで相手の墓地で発動する効果を無効にする効果を持ち、《カードガンナー》の破壊された際の効果を無効に出来る。
「《カードガンナー》に攻撃だ、ドドドアックス!」
「リバースカード、オープン! 《ハイレート・ドロー》! 自分フィールドのモンスターを全て破壊し、その数だけドローする!」
召喚されるや否や《ドドドウォリアー》は攻撃するものの、《カードガンナー》は他ならぬ十代のリバースカード《ハイレート・ドロー》によって破壊されてしまう。まさか三枚のリバースカードの中で、容易く攻撃が決まるとは思っていなかったが、自分から全て破壊するとは予想外だった。
「さらに《カードガンナー》が破壊された時、カードをドロー出来る。よって俺は、6枚のカードをドローするぜ!」
「……だが、《ドドドウォリアー》の攻撃は直接攻撃となる!」
「いいや、速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》を発動する!」
《カードガンナー》と《ハイレート・ドロー》のコンボによって、使い切った筈の十代の手札が枚数を増やして再生する。せめてライフポイントにダメージは与えてやろうとするが、速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》によって、フィールドに《ハネクリボー》が特殊召喚された。
――いや、まだリバースカードが一枚――
「さらに速攻魔法《進化する翼》を発動! 手札二枚をコストに、ハネクリボーを《ハネクリボー LV10》に進化させる!」
最後のリバースカードに気づいた時にはもう遅く、ハネクリボーは最強の形態へと進化する。《カードガンナー》によって、二枚の手札コストなど支払うのは容易いことなのだから。
「《ハネクリボー LV10》は自身をリリースすることで、相手モンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!」
「手札から速攻魔法《インスタント・チューン》を発動! 相手モンスターが特殊召喚に成功した時、レベル1のチューナー扱いのトークンを特殊召喚出来る!」
《ハネクリボー LV10》の効果は、まさに究極進化形態と呼ばれるに相応しい効果。ただしこちらもただやられる訳がなく、手札から速攻魔法《インスタント・チューン》を発動する。
「そしてチューナートークンと、フィールドのモンスターでシンクロ召喚する!」
「何!?」
《ハネクリボー LV10》が起こした破滅の光から、《ドドドウォリアー》は特殊召喚されたチューナートークンとともに、光の輪と化すことで避けてみせる。もちろんただ避けただけではなく、合計レベル7のシンクロ召喚として。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」
そしてシンクロ召喚され竜の雄叫びをあげる、ラッキーカードこと《パワー・ツール・ドラゴン》。十代の《ハネクリボー LV10》が破壊するのは、あくまで攻撃表示モンスターのみであり、守備表示でシンクロ召喚された《パワー・ツール・ドラゴン》は無傷。
「メイン2。《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動!」
ただしそれは、こちらも攻撃のチャンスを失ったということだ。《パワー・ツール・ドラゴン》の効果によって、十代にランダムで選ばれた装備魔法を手札に加え、そのまま《パワー・ツール・ドラゴン》に装備する。
「《パワー・ツール・ドラゴン》に装備魔法《ミスト・ボディ》を装備し、カードを二枚伏せてターンエンド!」
「オレのターン、ドロー! 《コンバート・コンタクト》を発動し、手札とデッキからネオスペーシアンを墓地に送り、二枚ドロー!」
最初のターンから息をつく間もない攻防が展開され、お互いにダメージは与えられずにいた。ただし結果としては、大量のドローと墓地肥やしを同時にこなしてみせた十代が有利であり、俺はフィールドを防御で固めていた。
「よし……通常魔法《コクーン・パーティー》、永続魔法《コクーン・リボーン》を発動! 来い、ネオスペーシアン!」
対する十代は、こちらの防御など知らないとばかりに攻めの姿勢。墓地のネオスペーシアンの種類だけ『コクーンモンスター』を特殊召喚する魔法カード《コクーン・パーティー》と、『コクーンモンスター』をリリースすることで墓地のネオスペーシアンを特殊召喚する永続魔法《コクーン・パーティー》のコンボにより、十代のフィールドはあっという間に五体のネオスペーシアンで埋まっていた。
「《N・エア・ハミングバードの効果発動! 相手の手札×500ポイント、ライフポイントを回復する! ハニー・サック!」
十代LP4000→5000
ネオスペーシアン。ダークネスと共に戦った時は心強い仲間だったが、今はただの相手モンスターだ。《N・エア・ハミングバード》を皮きりに、さらに効果を発動していく。
「《N・アクア・ドルフィン》の効果! 手札を一枚捨てることで、相手の手札のモンスターを破壊し、500ポイントのダメージを与える!」
「手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果を発動し、アクア・ドルフィンの効果を無効にする!」
《エフェクト・ヴェーラー》の羽衣が《N・アクア・ドルフィン》を包み込み、そのハンデス効果を無効にする。無効にしようがしまいが《エフェクト・ヴェーラー》は墓地に送られてしまうが、500ポイントのバーンダメージを受けないだけマシだ。
「なら通常魔法《NEX》でアクア・ドルフィンを《N・マリン・ドルフィン》に進化させ、さらに効果を発動する! エコー・ロケーション!」
「くっ……!」
対して十代はその防御を読んでいたかのように、ネオスペーシアンを進化させる魔法カード《NEX》によって《N・マリン・ドルフィン》を特殊召喚。変わらぬハンデス効果によって、俺の手札は全て捨てられてしまう。さらに手札を捨てられた際に、こちらにダメージまで与えてくる効果により、ライフまでもが引き離されてしまう。
遊矢LP4000→3500
「さらに魔法カード《スペーシア・ギフト》を発動! フィールドのネオスペーシアンの数だけ、俺はカードをドローする!」
ハンデスの代償として十代の手札も二枚コストとなったが、《スペーシア・ギフト》によって二回目の6枚ドローに成功したことにより、十代とこちらのアドバンテージの差が広がっていく。焦燥感を感じざるを得ないが、まだネオスペーシアンたちの攻撃は続けている。
「《N・ブラック・パンサー》の効果! 《パワー・ツール・ドラゴン》の名前とモンスター効果を得るぜ、パワー・サーチ!」
「……右のカードだ」
ずっと相手に三枚の装備魔法を選ばせてきたが、《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を俺が選ぶのは初めてだ――などと感傷に浸っていると、今し方《パワー・ツール・ドラゴン》となった《N・ブラック・パンサー》の姿が、再び別の姿に変わっていく。あの姿は――
「魔法カード《ヒーロー・マスク》! 行くぜ遊矢、ネオスとなった《N・ブラック・パンサー》と、《N・マリン・ドルフィン》と、《N・エア・ハミングバード》でトリプルコンタクト融合!」
――《E・HERO ネオス》。デッキからHEROを墓地に送ることで、フィールドのモンスターは、そのHEROの名を得る効果を持つ魔法《ヒーロー・マスク》により、《N・ブラック・パンサー》はネオスに姿を変えたのだ。
「現れろ、《E・HERO ストーム・ネオス》!」
ネオスの名前を得たということは、つまり――と、俺が理解した瞬間、そのモンスターは十代のフィールドに現れていた。ネオスの究極進化系の一種、水と風を司るトリプルコンタクト融合体、《E・HERO ストーム・ネオス》。
「ストーム・ネオスの効果! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」
「チェーンしてリバースカード、オープン! 《トゥルース・リインフォース》を発動!」
その効果は、名前通りに文字通り《大嵐》。役目を終えた十代の《コクーン・リボーン》と、こちらの二枚のリバースカードと装備魔法《ミスト・ボディ》を破壊せんと吹き荒れる嵐に、なんとかチェーンして《トゥルース・リインフォース》を発動する。
「来い、《希望の創造者》!」
「《希望の創造者》……? いや、魔法カード《O-オーバーソウル》を発動! 墓地から《E・HERO アナザー・ネオス》を特殊召喚!」
デッキからレベル2以下の戦士族を特殊召喚する《トゥルース・リインフォース》により、守備表示で特殊召喚された《希望の創造者》に対し、十代は見たことがないとばかりに不審げな表情を見せた。ただしそれも一瞬のことで、すぐさま新たなHEROを墓地から特殊召喚する。
「《E・HERO アナザー・ネオス》は、再度召喚することで、《E・HERO ネオス》へと進化する! トリプルコンタクト融合!」
ネオスとして扱う《E・HERO アナザー・ネオス》と、フィールドに残る二体のネオスペーシアン。二回目のトリプルコンタクト融合によって、新たなモンスターが時空の穴からコンタクト融合召喚される。
「融合召喚! 《E・HERO マグマ・ネオス》!」
炎と地を司るトリプルコンタクト融合体。フィールド上のカードの数×400ポイント攻撃力を上げるハイパワーは厄介だが、俺のモンスターはどれも守備表示。今に限っては脅威ではない――とまで考えた俺が見たのは、十代が新たに発動した魔法カードだった。
「《ミラクル・コンタクト》! 墓地から《E・HERO カオス・ネオス》をトリプルコンタクト融合!」
「――――ッ!?」
墓地融合のサポートカード《ミラクル・コンタクト》によって、十代のフィールドに闇と光を司るトリプルコンタクト融合体が召喚され、十代のフィールドには三体のトリプルコンタクト融合体が揃う。いずれも攻撃力は3000を超えており、その圧倒的なプレッシャーは俺を震わせていた。
「カオス・ネオスの効果発動! 相手モンスターを全て破壊する!」
さらにトリプルコンタクト融合体と戦闘することも出来ずに、俺のフィールドにいた守備モンスターは《E・HERO カオス・ネオス》の効果により、鎧袖一触に破壊されてしまう。破壊耐性を持つ《パワー・ツール・ドラゴン》も、先んじて《E・HERO ストーム・ネオス》によって装備魔法を破壊されてしまっていた。
「バトル! 《E・HERO マグマ・ネオス》でダイレクトアタック! スーパーヒートメテオ!」
これで俺のモンスターとリバースカード、さらには手札すらも全て破壊された。まるで何もない俺に対して、こちらのライフを一撃で削るマグマ・ネオスの攻撃が迫る。
「墓地から罠発動! 《光の護封霊剣》!」
――ただし、デュエルはまだ始まったばかりだ。墓地から除外することでダイレクトアタックを無効にする、先にストーム・ネオスによって破壊される罠カード《光の護封霊剣》の効果によって、トリプルコンタクト融合体たちは身動きを封じられる。
「こんなので終わりに出来ると思うなよ、十代!」
「……へへ。やるな遊矢、防がれるとは思ってなかったぜ」
そう言いながらも十代はメインフェイズ2に移行すると、二枚のリバースカードを伏せてみせた。なんとか攻撃を防いだとはいえ、あちらのフィールドにはトリプルコンタクト融合体が三体に、リバースカードが二枚という盤石な態勢。
「さらにフィールド魔法《疑似空間》を発動! このカードは、墓地のフィールド魔法を除外することで、同じ効果を得る。オレは《ネオスペース》を除外するぜ」
十代が発動したのはフィールド魔法《疑似空間》。エンドフェイズまで墓地のフィールド魔法を得る効果を持ち、《ネオスペース》を除外することでトリプルコンタクト融合体をフィールドに保つ。
「どうやって逆転するか、見せてもらうぜ。ターンエンド!」
「俺のターン……ドローをする前に、破壊された《希望の創造者》の効果が発動する!」
《トゥルース・リインフォース》で特殊召喚されていた《希望の創造者》は、相手モンスターに破壊された次のターン、デッキトップに好きなカードを置く効果を持つ。次なるドローカードを逆転の一打に確定させる、文字通りに《希望の創造者》。
「シャイニング・ドロー! ……《逆転の宝札》を発動する!」
そして発動されたのは《逆転の宝札》。文字通りに逆転の一手となる可能性を秘めた魔法カードであり、相手のフィールドの表側表示カードの数だけ、カードをドローする魔法カード。ただし発動条件は厳しく、このカード以外のカードが自分のフィールドと手札にないことであるが、十代のおかげでその発動条件は満たされる。
「さらに《マジカル・ペンデュラム・ボックス》を発動! カードを二枚ドローし、ペンデュラムモンスターの場合に手札に加える……よし、二体の音響戦士をペンデュラムスケールにセッティング!」
《逆転の宝札》と《マジカル・ペンデュラム・ボックス》によって、何とか体勢を整えるとともに、二体のペンデュラムモンスターをスケールにセッティングする。《マジカル・ペンデュラム・ボックス》によって来てくれた二体に感謝しながら、三体のトリプルコンタクト融合体を睨みつけた。
「《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果! 手札を一枚捨てることで、デッキから音響戦士を特殊召喚し、《チューニング・サポーター》を召喚する!」
「ペンデュラムか……」
「《機械複製術》を発動し、さらに《チューニング・サポーター》を二体特殊召喚! 四体のモンスターでチューニング!」
ペンデュラムを警戒する十代をよそに、まず召喚されるは、シンクロ召喚の構えたる《機械複製術》によって三体が揃う《チューニング・サポーター》。デッキから特殊召喚された《音響戦士ベーシス》とともに、シンクロ召喚でもって反撃の狼煙をあげる。
「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《セブン・ソード・ウォリアー》!」
《音響戦士ピアーノ》と《チューニング・サポーター》のシンクロ召喚によって生まれた光を斬り裂きながら、七つの刃を持つ機械戦士がフィールドに現れる。三体の《チューニング・サポーター》がシンクロ素材となったため、効果によってカードを三枚ドローしつつ、デュエルディスクに新たなカードをセットする。
「《セブン・ソード・ウォリアー》に装備魔法《パイル・アーム》を装備。このカードが装備された時、相手の魔法・罠カードを一枚破壊する!」
「……チェーンして罠カード《ヒーローバリア》を発動するぜ!」
「だが同時に《セブン・ソード・ウォリアー》の効果を発動! カードが装備された時、相手に800ポイントのダメージを与える! イクイップ・ショット!」
「っ……」
十代LP5000→4200
《パイル・アーム》の効果は残念ながらフリーチェーンの《ヒーローバリア》によって外れてしまったが、《セブン・ソード・ウォリアー》の効果ダメージは炸裂する。とはいえ、《N・エア・ハミングバード》で回復されてはいるが。
「ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスターたち!」
そして《セブン・ソード・ウォリアー》の召喚だけで終わることはなく、三体のモンスター――《ガントレッド・ウォリアー》、《音響戦士サイザス》、《音響戦士ドラムス》が手札からペンデュラム召喚される。
「墓地の《音響戦士ピアーノ》を除外し、二体の音響戦士モンスターでチューニング!」
墓地の《音響戦士ピアーノ》はフィールドに音響戦士がいる時に除外することができ、それを受けつつ二体のモンスターがシンクロ素材となっていく。合計レベルは6、光がフィールドに溢れ出した。
「集いし星雨よ、魂の星翼となりて世界を巡れ! シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」
槍を持つ星屑の機械戦士、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》。そのシンクロ召喚に成功した時、カードを一枚ドローすることが出来る効果とともに、墓地の《音響戦士サイザス》の効果が発動する。
「墓地の《音響戦士サイザス》は自身を除外することで、除外された音響戦士モンスターを特殊召喚出来る! 《音響戦士ピアーノ》を特殊召喚し、チューニング!」
フィールドに残っていた《ガントレット・ウォリアー》に、除外ゾーンから特殊召喚された《音響戦士ピアーノ》がシンクロ素材となり、三体目のシンクロモンスターが現れる。シンクロ召喚の光の中で、対面の十代が笑っているのが見えた。
「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」
「三体のシンクロモンスター……仕返しのつもりか?」
「いいや……仕返しなら、まだもう一体足りないな! 魔法カード《ジャンク・ディーラー》を発動! 墓地から戦士族と機械族モンスターを、それぞれ一体ずつ特殊召喚する!」
《グラヴィティ・ウォリアー》がシンクロ召喚され、トリプルコンタクト融合体に反応しその攻撃力を上げていくのを確認しながら、魔法カード《ジャンク・ディーラー》を発動する。その効果によって、攻撃力が半分になりアドバンス召喚の素材に出来ないデメリットが追加された《ガントレット・ウォリアー》と《音響戦士ドラムス》が、再びフィールドに蘇った。
「さらに通常魔法《シンクロ・グリード》を発動。シンクロモンスターが三体以上いる時、カードを二枚ドロー出来る。墓地の《音響戦士ピアーノ》を除外し……二体のモンスターでチューニング!」
《シンクロ・グリード》や《音響戦士ピアーノ》の除外などの下準備を済まし、フィールドの二体のモンスターがさらにシンクロ素材となっていく。素材となるのは《音響戦士ドラムス》と、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》……合計レベルは8のシンクロ召喚である。
「集いし決意が拳となりて、荒ぶる巨神が大地を砕く。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ギガンテック・ファイター》!」
シンクロモンスターからのシンクロ召喚に、大地を震わせながら巨人が降臨する。十代のフィールドの三体のトリプルコンタクト融合体と、こちらのフィールドの三体のシンクロモンスターが睨み合い――ぶつかり合った。
「《セブン・ソード・ウォリアー》の効果発動! 装備魔法を墓地に送り、相手のカードを一枚破壊する!」
「マグマ・ネオス……だが《ギガンテック・ファイター》以外じゃ、ネオスには適わないぜ!」
「それはどうかな。俺には、ずっと一緒に戦ってきたコイツがいる! 《ガントレット・ウォリアー》の効果発動! このカードをリリースすることで、他の戦士族モンスターの攻撃力を500ポイントアップする!」
《ジャンク・ディーラー》によって蘇生していた《ガントレット・ウォリアー》の効果により、三体のシンクロモンスターたちにそれぞれ攻撃力が加算される。特に《ギガンテック・ファイター》は、お互いの墓地の戦士族の数だけパワーアップするため、十代の墓地のHEROたちの力も得ることとなり、攻撃力は4500という数値にまで上昇する。
「バトル! まずは《セブン・ソード・ウォリアー》で攻撃!」
「《ヒーローバリア》の効果が発動する!」
「分かってるさ。《グラヴィティ・ウォリアー》で、カオス・ネオスを攻撃! グランド・クロス!」
十代が発動していた罠カード《ヒーローバリア》によって、最初の攻撃が防がれてしまうことは分かっていた。ただし次なるグラヴィティ・ウォリアーの攻撃が防がれることはなく、カオス・ネオスを鋼鉄の爪が引き裂いた。
十代LP4200→3700
「続いて《ギガンテック・ファイター》でストーム・ネオスに攻撃! ギガンテック・フィスト!」
「ぐあっ!」
十代LP3700→2200
《ギガンテック・ファイター》の一撃とともに、ストーム・ネオスは砕け散った。これで《ヒーローバリア》によって妨害されたため、十代へのダイレクトアタックにまではたどり着かなかったものの、三体のトリプルコンタクト融合体の全滅に成功した。
「エンドフェイズ、《音響戦士マイクス》の効果により、除外されている音響戦士モンスターを手札に加える。カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
「……まさか本当に逆転されるなんてな……だけど、勝負はこれからだぜ! ドロー!」
こちらのフィールドには《ギガンテック・ファイター》と《セブン・ソード・ウォリアー》、《グラヴィティ・ウォリアー》に、音響戦士ペンデュラムが二枚、リバースカードが一枚という布陣。対する十代は、リバースカードが一枚と《ネオスペース》のみだが……
「《疑似空間》の効果! 墓地のフィールド魔法《摩天楼2-ヒーローシティ》を発動! 一ターンに一度、戦闘破壊されたHEROを特殊召喚出来る!」
フィールド魔法が宇宙空間から未来的なビル群へと書き換えられ、そこからは先のターンに破壊した《E・HERO ストーム・ネオス》がフィールドに蘇った。ビル群の屋上から飛び上がったストーム・ネオスは、その翼で全てを破壊する旋風を巻き起こしていく。
「《E・HERO ストーム・ネオス》の効果発動! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する! アルティメット・タイフーン!」
「っ……!」
先のターンに引き続き、ストーム・ネオスが起こした旋風が全ての魔法・罠カードを破壊する。こちらのセットカードだけではなく、二体の音響戦士ペンデュラムカードすらも。対する十代も、フィールド魔法《摩天楼2-ヒーローシティ》と化した《疑似空間》と、一枚のセットカードが破壊されていくが。
「チェーンして《リミット・リバース》を発動! 墓地から《ジャンク・コレクター》を蘇生し、その効果を発動する!」
ただしこちらとてただやられるだけではなく、伏せていた《リミット・リバース》によって墓地の《ジャンク・コレクター》を特殊召喚し、更にその効果を発動する。
「フィールドのこのモンスターと墓地の罠を除外することで、除外した罠カードの効果を発動する! 来い、《マッシブ・ウォリアー》!」
《ジャンク・コレクター》によって墓地から除外したのは、罠カード《トゥルース・リインフォース》。その効果によって、デッキから戦闘破壊耐性を持つ《マッシブ・ウォリアー》を特殊召喚する。
「こっちもチェーンして罠カード《融合準備》を発動! 墓地から《融合》カードと、デッキから《E・HERO スパークマン》を手札に加える。さらに《闇の量産工場》を発動し、二枚のモンスターを手札に加える」
伏せていたのは通常罠カード《融合準備》。ストーム・ネオスに破壊される前に発動し、ともに発動した《闇の量産工場》と同じく手札を補充していく。
「今度はこっちの番だぜ! 手札から《融合》を捨て、魔法カード《融合破棄》を発動! エクストラデッキから《E・HERO フェニックスガイ》を墓地に送ることで、手札からその融合素材を特殊召喚する!」
十代の反撃の準備は整った。とはいえその初手は《融合破棄》による、フェザーマンとバーストレディの特殊召喚という、あまり想像のつかない一手――いや、十代のあの二体と言えば。
「500ライフをコストに《二重融合》を発動! このターン、二回の融合を可能とする!」
十代LP2200→1700
――いや、十代はさらに想像を越えていた。フェザーマンとバーストレディ、そして先程《融合準備》で手札に加えていたスパークマンで、二回の融合召喚が行われていく。
「融合召喚! 《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》!」
十代のフェイバリットカード、その進化系。墓地のE・HEROの数だけ攻撃力をアップする効果を併せ持つあのカードに、無意識に舌を巻く俺の脳裏に――あの《融合破棄》のことが頭をよぎる。
「さらに《ミラクルフュージョン》を発動! 墓地のスパークマンとフェニックスガイを融合し、《E・HERO シャイニング・フェニックスガイ》を融合召喚!」
――さらに融合召喚されたのは、以前にエドが使用していた光り輝くもう一体のHERO。シャイニング・フェニックスガイと、シャイニング・フレア・ウィングマンの二体がフィールドに並び、HEROたちが再び機械戦士たちと対峙した。
「装備魔法《ライトイレイザー》をシャイニング・フェニックスガイに装備し、バトル! 《ギガンテック・ファイター》に攻撃だ、シャイニング・フィニッシュ!」
シャイニングシリーズは墓地のE・HEROの数だけ攻撃力が上がり、現在の攻撃力はともに4300。同じく墓地の戦士族モンスターの数を攻撃力に加算する《ギガンテック・ファイター》の攻撃力は4500と、攻撃力はこちらが勝っているが――問題は、装備された《ライトイレイザー》の効果だった。
「《ライトイレイザー》を装備した相手モンスターは、ダメージ計算後に破壊されるぜ!」
「《ギガンテック・ファイター》!」
十代LP1700→1500
《E・HERO シャイニング・フェニックスガイ》と《ギガンテック・ファイター》の攻防は、ギガンテック・ファイターの一撃が炸裂する――ものの、シャイニング・フェニックスガイは戦闘では破壊されない効果を持つ。そしてカウンターのように放たれた《ライトイレイザー》によって、《ギガンテック・ファイター》は、蘇生効果を使うことも出来ずに除外されてしまう。
「さらにシャイニング・フレア・ウィングマンで、《グラヴィティ・ウォリアー》に攻撃! シャイニング・シュート!」
「墓地の《シールド・ウォリアー》の効果を発動! このモンスターを除外することで、戦闘では破壊されない!」
「ぐっ……!」
遊矢LP3500→2200
シャイニング・フレア・ウィングマンには、説明不要の戦闘破壊時に相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える一撃必殺の効果を持つ。何とか《シールド・ウォリアー》の効果で防いだものの、戦闘ダメージまで防ぐことは出来なかった。
「最後だ、ストーム・ネオスでセブン・ソード・ウォリアーに攻撃!」
遊矢LP2200→2100
ストーム・ネオスの一撃に《セブン・ソード・ウォリアー》は破壊されてしまうものの、《ガントレット・ウォリアー》の効果による強化のため、何とか被害は最小限に抑えることに成功する。これで十代も攻撃を終了したらしく、メインフェイズ2へと移行していく。
「ストーム・ネオスに装備魔法《インスタント・ネオスペース》を装備し、カードを二枚伏せ、ターン終了!」
ストーム・ネオスに装備魔法《インスタント・ネオスペース》を装備し、リバースカードを二枚伏せることで、十代の手札にも限界が見え始める。
「俺のターン、ドロー!」
そして俺のターンに移行し、こちらのフィールドには《グラヴィティ・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》。十代のフィールドには、《インスタント・ネオスペース》を装備した《E・HERO ストーム・ネオス》と、《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》に《E・HERO シャイニング・フェニックスガイ》とリバースカードが二枚。
「俺はカードをセットし、魔法カード《ブラスティング・ヴェイン》を発動! カードを二枚ドローし、破壊した《リミッター・ブレイク》の効果により、《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」
「来たな、スピード・ウォリアー!」
「……慌てるなよ。魔法カード《シフトアップ》を発動!」
セットカードを破壊して二枚のカードをドローする通常魔法《ブラスティング・ヴェイン》により、《リミッター・ブレイク》を破壊して《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する。さらに発動された魔法カード《シフトアップ》は、自分のモンスター全てのレベルを、最も高いレベルに合わせる効果――よって、《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》のレベルは、《グラヴィティ・ウォリアー》と同じ6となった。
「俺は《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》で、オーバーレイ・ネットワークを構築!」
「今度はエクシーズか!」
「集いし魂よ、熱き一撃となりて敵を貫け! エクシーズ召喚! 《ガントレット・シューター》!」
十代が驚きながらも言うように、このデッキに出来ることはシンクロ召喚だけではない。融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム……四つの召喚方法のどれもが、俺と機械戦士が身につけた成果の一つ。
「《ガントレット・シューター》の効果! オーバーレイ・ユニットを取り除いた数だけ、相手モンスターを破壊する!」
「何!?」
そして現れた《ガントレット・シューター》に装備された砲台から、《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》を撃ちだしていき、《シャイニング・フェニックスガイ》と《シャイニング・フレア・ウィングマン》を破壊する。いくら攻撃力が高かろうと、戦闘破壊耐性を持っていようが関係ない。
「まだ俺は通常召喚していない! 《音響戦士ピアーノ》を召喚し、装備魔法《継承の印》を発動! 墓地から《チューニング・サポーター》を特殊召喚し、チューニング!」
《音響戦士マイクス》のペンデュラム効果で手札に回収していた《音響戦士ピアーノ》と、装備魔法《継承の印》で蘇生した《チューニング・サポーター》によるシンクロ召喚。合計レベルは4と、このデッキに唯一入っているレベルのシンクロモンスター。
「集いし願いが、勝利を掴む腕となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」
機械戦士たちの装備カードとなる異色のシンクロモンスター、《アームズ・エイド》のシンクロ召喚とともに、シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》の効果によって一枚ドローする。
「《アームズ・エイド》を《ガントレット・シューター》に装備し、バトル! 《ガントレット・シューター》で、《ストーム・ネオス》に攻撃する!」
《ガントレット・シューター》は装備した《アームズ・エイド》を撃ち出すと、ロケットパンチが如くストーム・ネオスに炸裂させ、ストーム・ネオスはその一撃の下に倒れ伏した。そして守られる者のいなくなった十代に、《アームズ・エイド》はそのまま向かっていく。
「《アームズ・エイド》を装備したモンスターが相手モンスターを破壊した時、その攻撃力分のダメージを与える!」
「そいつはやらせない! カウンター罠《フュージョン・ガード》を発動!」
十代LP1500→1100
しかし《アームズ・エイド》の一撃は、十代が伏せていたカウンター罠《フュージョン・ガード》によって防がれてしまう。エクストラデッキから融合モンスターを墓地に送ることで、相手からのバーンダメージを防ぐというものであり、《アームズ・エイド》をネオスの融合体が防いでみせた。
「さらにストーム・ネオスが装備していた《インスタント・ネオスペース》の効果! デッキから《E・HERO ネオス》を特殊召喚する!」
「だが、まだバトルは終わってない! 《グラヴィティ・ウォリアー》でネオスに攻撃!」
《インスタント・ネオスペース》で特殊召喚されたネオスを《グラヴィティ・ウォリアー》が切り裂いたものの、守備表示での特殊召喚だったため、ダメージを与えることは叶わない。
「……ターンエンドだ」
「オレのターン、ドロー! 魔法カード《HEROの遺産》を発動! 融合HEROを三枚エクストラデッキに戻し、カードを三枚ドローする!」
そしてターンは再び十代に移行していき、まずは《HEROの遺産》で手札を補充し――笑みを浮かべた。
「リバースカード、オープン! 《ヒーローズルール1 ファイブ・フリーダムス》! お互いの墓地から合計五枚のカードを除外する!」
十代が浮かべた笑みにこちらが戦慄している間に、十代はもう一枚のリバースカードであった《ヒーローズルール1 ファイブ・フリーダムス》を発動し、自身の墓地から五枚のカードを除外する。もちろんそれだけでは何の意味もなく、更に発動されるカードは――
「《平行世界融合》を発動! 除外ゾーンのHEROたちを融合し――オレの最強のHEROを融合召喚する!」
《ヒーローズルール1 ファイブ・フリーダムス》は、このカードのための布石。除外ゾーンのモンスターたちがネオスに集まっていき、一つになって融合していき――時空の穴を破壊しながら、最強のHEROとしてこのフィールドに舞い戻る。
「融合召喚! 現れろ、《E・HERO ゴッド・ネオス》!」
「ゴッド・ネオス……」
金色の鎧と翼を纏ったネオス――文字通りに神々しい存在となったその美しい姿に、一瞬だけ言葉を失ってしまう。こちらを睥睨するゴッド・ネオスから俺の意識を取り戻したのは、皮肉にも十代の言葉だった。
「ゴッド・ネオスの効果発動! 墓地のHERO、ネオス、ネオスペーシアンのいずれかを除外することで、攻撃力を500ポイントアップさせその効果を得る! オレはカオス・ネオスを選択し、効果発動! 相手モンスターを全て破壊する!」
「なっ……!?」
ゴッド・ネオスに墓地にいた筈のカオス・ネオスが乗り移ったかと思えば、その効果によってこちらの《ガントレット・シューター》と《グラヴィティ・ウォリアー》は、一瞬にして破壊されてしまう。よって俺のフィールドにカードはなくなってしまい、がら空きなままゴッド・ネオスを迎え入れる。
「バトル! ゴッド・ネオスで遊矢にダイレクトアタック!」
ゴッド・ネオスの効果。それは、墓地にいる仲間たちの効果を得る、まさに十代のこれまでの集大成と言えるモンスター。ならば、あのモンスターこそが――
「――まだだ! 手札から《速攻のかかし》を墓地に送り、バトルフェイズを終了させる!」
――ゴッド・ネオスこそ、俺が、俺と機械戦士が、最後に倒すべきモンスターに相応しい。
「カードを一枚伏せ……ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー! ……《貪欲な壺》を発動し、カードを二枚ドロー!」
通常のドローに加えて《貪欲な壺》を発動し、カードをさらに二枚ドローする。ドローしたカードと手札のカードを確認し――先程の十代のように、不敵にもニヤリと笑ってみせた。
「今度は俺が集大成をぶつける番だ、十代!」
「ああ、来い遊矢!」
「魔法カード《エクストラ・フュージョン》を発動! 自分のエクストラデッキのモンスター二体を融合する!」
まず発動されたのは、魔法カード《エクストラ・フュージョン》。シンクロ、ペンデュラム、エクシーズに続いて融合召喚も活用すると、エクストラデッキの二体のモンスターが時空の穴に吸い込まれていく。
「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》! 《スカー・ウォリアー》! お前たちの力を一つに! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」
ゴッド・ネオスと競うように融合召喚される、このデッキの切り札たる《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》。旋風とともに融合召喚された波動竜騎士は、その風で持って新たなモンスターが召喚される道を開く。
「来い、マイフェイバリットモンスター――《スピード・ウォリアー》!」
『トアアァァッ!』
雄々しい叫び声とともに召喚される、マイフェイバリットモンスター。その召喚を待っていたかのように、十代はニヤリと笑っていた。
「さらに魔法カード《ヘルモスの爪》を発動! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》を融合素材に、《真紅眼の黒竜剣》を融合召喚する!」
そしてフィールドに並び立っていた《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》は、《ヘルモスの爪》の効果によって、《スピード・ウォリアー》が振るう剣へと変化する。吹雪さんとのデュエルで生まれたその剣は、吹雪さんの意志が込められたかのような意匠が施されていた。
「《真紅眼の黒竜剣》を装備したモンスターは、攻撃力を1000ポイントアップさせ、さらにフィールドと墓地のドラゴン族×500ポイントアップする!」
しかしドラゴン族ともなれば、俺と十代の墓地を合わせたところで、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》ぐらいのものだろう。しかしこのカードがその全てを引っくり返す――
「速攻魔法《コード・チェンジ》! 《真紅眼の黒竜剣》に記されたドラゴン族を、戦士族に書き換える!」
「何だと!?」
最後の一枚――速攻魔法《コード・チェンジ》の効果は、カードに記された種族を変更する効果。よって《真紅眼の黒竜剣》に記されたドラゴン族は戦士族へと変わり――《スピード・ウォリアー》の攻撃力は、お互いの墓地の戦士族×500ポイントアップする。
「これが俺と《スピード・ウォリアー》の、これまでの全てだ! ……バトル!」
機械戦士とHERO。お互いの墓地に眠った力を託され、《スピード・ウォリアー》の攻撃力は自身の効果を発動しつつ――8800という数値にまでたどり着く。《スピード・ウォリアー》が跳躍すると、ゴッド・ネオスを斬り裂かんと黒竜剣を振るう。
「攻撃力……8800!?」
「《スピード・ウォリアー》でゴッド・ネオスを攻撃! 真紅眼一閃!」
十代の驚愕の声とともに、スピード・ウォリアーの一撃がゴッド・ネオスの元に届く。黒竜剣は一刀の元にゴッド・ネオスを斬り裂いてみせ、切り札を破壊された衝撃が十代を襲う――
「流石だぜ、遊矢……だが、まだ終わりじゃない! リバースカード、オープン! 《ビッグ・リターン》!」
――寸前、ゴッド・ネオスの金色の翼が、みるみるうちに虹色へと変わっていく。十代が発動した速攻魔法《ビッグ・リターン》は、一ターンに一度と記された効果を発動する、というカード。もちろんゴッド・ネオスの効果を発動したのだろうが、ゴッド・ネオスはどのHEROの効果を発動したのか――?
「オレが発動したのは《レインボー・ネオス》の効果! レインボー・ネオスは自分のモンスターをリリースすることで、相手モンスターを全てデッキに戻す! オレはゴッド・ネオスをリリース!」
「――――!?」
虹色に輝いた《E・HERO ゴッド・ネオス》の自身をリリースすることによる衝撃に、《スピード・ウォリアー》が巻き込まれて消えていく。その光が収まった頃には、フィールドには何も存在してはいなかった。
「そうか……《フュージョン・ガード》の時……ターン、エンドだ」
「オレのターン、ドロー!」
エクストラデッキから融合モンスターを一体墓地に送ることで、バーンダメージを無効にするカウンター罠《フュージョン・ガード》。その際にエクストラデッキから送られていたのは、十代とヨハンとの友情の証たる《レインボー・ネオス》であり、その差が勝敗を分けた。
「オレは《彼方からの詠唱》を発動! 除外した魔法カードを手札に加え――《ミラクル・フュージョン》を発動!」
ギリギリだった、などと言い訳をするつもりもない。先のターンに発動された罠カード《ヒーローズルール1 ファイブ・フリーダムス》によって除外されていたのだろう、《ミラクル・フュージョン》を魔法カード《彼方からの詠唱》で回収しつつ、十代は新たな――いや、彼のフェイバリットHEROを融合召喚する。
「フェザーマンとバーストレディを融合! 現れろ、《E・HERO フレイム・ウィングマン》!」
《HEROの遺産》で回収していたらしく、再び十代の隣に《E・HERO フレイム・ウィングマン》が融合召喚された。巨大な火炎放射装置となっている腕をこちらに向けると、デュエルに終わりを告げる一撃が放たれる。
「フレイム・ウィングマンでダイレクトアタック! フレイム・シュート!」
「くっそぉぉぉ!」
遊矢LP2100→0
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
悔しさがありありと込められた叫びは、フレイム・ウィングマンの一撃にかき消され、十代に聞こえることはなかったらしい。十代に助け起こされながら立ち上がると、どちらからともなく握手をしていた。
「……次は負けないからな」
「楽しみにしてるぜ」
そこから確か、十代はどこかに去っていき――
「遊矢!」
「おわっ!?」
――彼女の声で途端に意識が目覚める。どうやらまたソファーで寝てしまったらしく、明日香がため息をついている様子が見て取れる。
「まったく……あっちのアカデミアと違って、オシリス・レッドで進級させてくれる、なんてないんだからね!」
「分かってる、分かってるって明日香……」
「……なら、早く準備するのね。私、先に行ってるから」
呆れ顔の明日香がリビングの扉から出て行くのを見届けて、ソファーから立ち上がって目を覚ますように大きく伸びをする。窓の外から景色を眺めてみれば、俺が知っているものとは違うアカデミアの景色が見えていた。
アメリカ・デュエル・アカデミア。デュエルアカデミアの中でも新興の学校であり、故に旧来のアカデミアに囚われない、自由な風習とレベルの高い授業が有名な学校だった。
海外留学を通してアカデミアの教師になる明日香とともに、俺はこのアメリカ・アカデミアへと留学して来ていた。デュエルモンスターズの本場であるアメリカのデュエルを体験し、自らと機械戦士を高めていき――
――ゆくゆくは、デュエルモンスターズそのものに、何か進歩を加えることが出来たなら。
そんなことを思っている自分に苦笑いしながらも、すぐにアカデミアへ行く準備を整えていく。留学生用に用意された一室であり、まるでホテルのようで大きな不満はない。強いて言えばソファーの寝心地が最高すぎて、こうして寝落ちしてしまうことぐらいだろうか。
「はい、ドローパン」
「……悪いな」
そうして玄関を開けてみれば、外で待ち構えていた明日香にドローパンを分けてもらう。先に行くんじゃなかったのか――などと意地悪なことではなく、素直に礼を言いながらドローパンにかじりつく。
「うーん……肉入りか」
「なかなか黄金の卵入りは出ないわね。私のはジャムだったわ」
残念そうに教師用のスーツ姿の明日香が笑い、期せずしてドローパンを買い込んでいることを白状する。昔はあんなにドローパン好きなことを、恥ずかしいからと周囲にひた隠しにしていたというのに――などと、今更隠し事も何もないが。
「それじゃ、今日も――楽しんで勝たせてもらうか!」
後書き
全115話、これにて《遊戯王GX-音速の機械戦士-》は完結となります。今は亡きにじファンから足掛け五年、処女作であるこの作品が完結したとあって、作者も感無量であります。
ラストデュエルが近いということもあって、最近は三万文字越えもザラになって来ていましたが、今回の話はテンポよくを目標に執筆していました。最終話にして今更、な感じもしていますが。
アメリカ・アカデミア編に続きそうな感じではありますが、現時点では未定……というか、今のところはさっぱり構想がありません。ですが、またどこかでお会い出来ることを祈って。
では。ガッチャ!
ページ上へ戻る