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ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~

作者:白崎黒絵
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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
  Data.17 勝者は誰だ

 アスナは正確さ(アキュラシー)を上げるつもりだったらしく、狩の対象は《ウインドワスプ》となった。

 この《ウインドワスプ》というのは蜂型のモンスターで、アインクラッドのMobの中では比較的小型だが、なにせ蜂型のモンスターなだけあって飛ぶ。ぶんぶん飛ぶ。

 魔法のような遠隔攻撃手段に乏しく、基本的に近接武器で戦うSAOにおいて『飛行』というのはそれだけで厄介な特徴だ。

 攻撃しようにも届かないし、タイミングを読み間違ったら自分がダメージを喰らう可能性が非常に高い。つまり、死ぬほど面倒くさい相手なのだが――――

「四十九!」

 ――――《投剣》スキルを主武器(メインウェポン)としている俺には関係ないのであった。だって普通に射程距離内だし。

「五十!」

 というわけで俺は他の三人より遥かに早く、ノルマである五十匹を狩り終わった。

「ちょ、ルリくん早くない!?」

「不公平だ!」

 ぶーぶー文句を言ってるキリトとシズク。悔しかったら自分も《投剣》取れよ。スキル上げアホみたいに大変だけどな。

「……」

 俺がぶっちぎりで一位の賭けは、残りの三人であと一人の奢られる側を奪い合っている。

 現状、アスナが二番でシズクが三番。キリトがビリといったところだろうか。

 アスナは持ち前の正確さによるクリティカル攻撃で与ダメージを大幅にブーストし、シズクは怪物級の速さによる手数で一撃の火力不足を補っている。キリトは通常攻撃の威力はトップなのだが、いかんせん羽に邪魔されてクリティカルを出せないのと、モンスターを見つける速さが他の二人より遅いこと。なによりソードスキルの冷却状態(クーリングタイム)のせいで、高火力の技を安定して撃てないことがネックだ。

「クソッ……このままじゃ……」

 このままでは勝てないことは分かっているのだろう。キリトは何度か逡巡してから、面白いものを見せた。

 まず最初の一撃は今までと同じ《バーチカル・アーク》。しかしその後に、左拳を赤いライトエフェクトが覆い、キリトはその左手を高速で敵に向かって突き出す。

 ザシュッ、という小気味良い音と共に《ウインドワスプ》のHPゲージが減少する。

「ほう……」

 俺の知る限りSAOにあんな技は無かったが、キリトが使っているということあれもソードスキルなのだろう。大方、特殊な条件を満たさないと手に入らない《エクストラスキル》の一つといったところか。

「面白い、後で取得条件を聞いておこう」

 そうしてキリトは徐々に追い上げ始めたが、結局開いていた差は埋まらず、俺とアスナにキリトとシズクがデザートを奢ることが決まった。

「確か《ウルバス》には美味いケーキを売ってる店があったな。今晩はあそこで飯にしようぜ」

「本当?とっても楽しみ♪」

「あのケーキって値段もバカみたいに高かった気が……」

「ルリくんの鬼!悪魔!ちひろ!」

 わいわいがやがや騒ぎながら歩く俺達を、夕暮れの光が鮮やかに照らしていた。 
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