ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~
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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
Data.16 再開は広場で
アインクラッド第一層が突破され、第二層が開通してから早四日。
第二層主街区《ウルバス》にある広場で俺は、趣味の悪いバンダナを頭に巻いた怪しい知り合いに出くわした。
「お前何やってんのこんなところで」
「あ、ルリか。いや、ちょっと武器の強化を……」
趣味の悪いバンダナ男、略してSWBOことキリトはそう言って広場の隅の方を示す。
そこでは数人の男たちが、商人らしきプレイヤーに怒鳴り散らしているところだった。
「……三行で解説頼む」
「あのプレイヤーが武器の強化を依頼して
けどそれが四回連続で失敗して+4だったアニールブレードが+0のエンド品になったから
キレた依頼側が怒鳴り散らしてる
ってわけだよ、ワトソン君」
「三行でって言ったろうが」
生意気にも四行で語りやがったキリトに宇宙CQCを叩き込みつつ、俺は脳内で先程から気になっていたことが解決されたことに気付く。
「なるほど。どうりでさっきからカンカンなってたわけだ」
「NPCより腕のいい鍛冶屋が現れたって聞いて、わざわざここまで戻ってきたんだよ」
「四回連続で失敗してるけどな」
始まりの街にいるNPCでももうちょっと頑張ってるぞ。
「あれは運が悪かっただけだろうさ。NPCより熟練度が高いプレイヤーなんて現段階じゃ珍しいからな。この機会は逃したくない」
「へぇ。大変なんだな、武器強化ってのも」
俺の場合、だいたい一発限りの投剣を使っているので、武器強化はあまり意味がないためしていない。
「まぁな。それよりシズクはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
「途中まで一緒だったんだがな。買い物してくるから適当にブラついてこいって言われた」
「……何でだ?買い物くらい一緒にすれば――――」
「入ったのが女性プレイヤー向けの服屋だったんだが」
その言葉を聞いてようやくキリトはなるほど、と納得した顔になった。
「ちなみにいつ別れたんだ?」
「二時間くらい前だったと思う」
「長っ!?」
「女の買い物なんてそんなもんだろ」
実際、俺も何度か女の買い物に付き合ったことがあるが、奴らは4~5時間見て回って、結局一着も買わないなんてことをザラにする。
「そういえばスグの買い物に付き合った時も、やけに長い時間掛かったなあ……」
「妹と一緒に買い物に行ったのか」
「色々あったんだよ」
今日からキリトのあだ名はシスコンになったとアルゴに伝えるべきか悩むな。
と、男二人でアホな会話をしていると、正反対の方向から――――
「ルっリくぅ~ん!おっ待たせー!」
「あれ?キリトくん?ルリくん?」
シズクとアスナが現れた。
「はにゃ?キリトくんとアスナちゃん?どしたん?」
「どしたん?の前に俺に謝罪は無いのか。二時間も待たせやがって」
「はうっ!痛い!痛いであります!」
二時間ぶりに現れたと思ったらいきなり脳天気な発言をした馬鹿のこめかみをグリグリする。これは地味に痛いのだ。
「ふふっ。二人は相変わらず仲良しだね」
「そういうアスナも変わらないみたいだな」
「たった四日間でそうそう人は変わらないさ」
「お前には言ってねえよ底辺センス男」
俺にdisられてションボリしてるキリトを余所に、俺とアスナは会話を続ける。
「で、アスナはどうしたんだ?」
「ちょっと武器の強化に来たら、二人を見かけたから」
「……アスナも武器強化か」
一人のゲーマーとして、周りが当たり前にやってることをしてないと、何だか置いてかれたような気分になってしまうのはよくあることだろう。俺もたまには強化してみるかな、どうせ使い捨てだけど。
「強化素材はどれくらい持ってきた?」
立ち直ったキリトがアスナに訊く。
「えっと、成功率80%くらいは持ってきたけど……」
「80%か……」
それを聞いたキリトの顔が曇る。少し考えて思い当った。
「さっきの奴からの流れの心配か?」
「ああ。なんだか嫌な予感がするんだ」
こういう時のキリトの勘は大抵当たる。いつもは鈍いくせに、肝心なところで鋭い奴なのだ。
「?さっきの奴って?」
「さっきそこで強化を四連続で失敗した奴がいたんだよ」
「へぇ、でもその人と私の強化は関係ないでしょう?」
「それがそうとも言い切れないんだよなぁ……」
キリトが歯切れ悪く言うのを受けて、アスナの頭上のクエスチョンマークがさらに増える。
「簡単に言うとな、こういうMMOにおける運が絡むシステムには流れってのがあるんだ」
「流れ?」
「失敗したらまた次も失敗、成功したらその後も成功……みたいな感じでな」
「ふーん……」
俺とキリトによる『流れ』の解説を聞いて、表情を曇らせるアスナ。そんな中、今まで黙っていたバカが言う。
「それならさ、もうちょっと確率を上げて出来るだけ運の要素を排除しようよ」
「あ?」
「だーかーらー!みんなでアスナちゃんの強化素材をもっと集めようってこと!」
「え、わ、悪いよそんなの!」
アスナは慌てた様子で手をパタパタと振るが、俺はシズクの意見に賛成だった。
「お前はどうする?」
「まあ、やってもいいんじゃないか?」
「というわけだ。手伝うぜ、アスナ」
「……ありがとう」
こうして再びはぐれ者たちの四人パーティが結成された。目的はボス討伐ではなく素材集めだが。
「お礼に今晩は私が奢るね」
「ただ狩るだけじゃ面白くないから、討伐ノルマのタイムアタックで勝負しよ!負けた二人は勝った二人にデザートを奢ること!」
「乗った」
「望むところだ」
「じゃ、ノルマは一人五十匹の合計二百!がんばろー!」
「「「おー!」」」
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