真ゲッターロボ・地球最凶の日 第一部「滅亡への夜明け!」
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燃えよ!ゲッター篇第二話 「白銀が行く!」
前書き
今回は武さんの本領が発揮されます。
1973年、第一次月面戦争最終決戦にて……
月へと前線を構えたBETAに対し、機械化歩兵装甲部隊による防衛戦は虚しくも敗れ、BETAの地球降下はすぐ目の前まで迫っていたのだ……が、
「行くぜぇ!チェーンジ!!ゲッター1ッ!!!」
ロケットブースターを取りつけられた三つのゲットマシンは一斉に真上の空へと飛び立ち、大気圏通過後にブースターを切り離すと、三機の機体は一体のスーパーロボットへと合体する、それがゲッター1だ。
BETAの大群に向かい僅か0.数秒で変形合体を遂げたゲッターシリーズの称号機タイプ「ゲッター1」には、ゲッターチームの流竜馬が一人、搭乗していた。
本来ゲッターロボは三名のパイロットが操縦してこそ本来の力を発揮できる物の、肝心のゲッターチームの消息は不明であり、かつて非道な国連の士官を殴り殺して幽閉された犯罪者、流竜馬のみが戦える戦力とされて月面へと投入された。
役者不足と思えるようだが、今のゲッターに竜馬が搭乗さえすればそのような事はどうでもいいように、思えた。この戦況を見れば一目瞭然である。
「ゲッタートマホークッ!!」
取り出したのは双方の分厚い斧、それを両手にBETAを次々と薙ぎ払って行き、無双を繰り広げる。
「どうした?化け物共!テメェらご自慢の物量とやらで、このゲッターと俺を飲みこんでみろぉ!?」
好戦的な笑みを浮かべ、竜馬が乗るゲッター1は月のハイヴへと攻め続ける。
ゲッターの振るうトマホークによって大量のBETAが肉片となって宙を舞う。
しかし、BETAもこの赤い巨人を自分たちの巣へ攻め込まれないよう必死になって押し戻そうと粘り続ける。
しかし、彼らはこのゲッターの本当の恐ろしさを知らない……
「ケッ!キリがねぇ……」
どれほど薙ぎ払おうと、次から次へと湧いて出てくるBETA群。
「ゲッターウィングッ!」
竜馬の叫びが音声入力として伝わり、ゲッターの背からは真紅のマントが生えだし、ゲッター1は空中へと浮上して、真下から覗くBETAの塊向けて再びこう叫ぶ。
「くらぇ!ゲッタービームッ!!」
ゲッターの白い腹部から円状の発射口が開き、そこから新緑の図太いビームが放たれた。
この光をもろに食らったBETA群は、一瞬のうちに勢力の約80パーセントを失ってしまう。
だが、そのときゲッターの懐に幾つもの光線が放たれる。BETA最大の防衛種、レーザー級である。しかし、懐を直撃したとはいえ、ゲッター1の懐には傷一つもつけられていなかった。
「何だぁ?その攻撃は。そんなヘナチョコビームなんざぁゲッターの足元にも及ばねぇぜ!?」
ゲッターは、そのまま浮上したまま月ハイヴへと突っ込んで行く。レーザー級の弾幕を物ともせずに。
「オラオラァ!!」
そして、ゲッターはハイヴへと体当たりして巣の内部へと突入した。しかし、殴り込んだのもつかの間、真上から無数のBETAが雨のように降り落ちて、ゲッターへ張り付いてくる。兵士級や戦車級の強靭な歯がゲッターの装甲に齧りつく者の、ゲッターの装甲に負けて齧りついた途端に歯が粉々に砕けてしまった。
「ゲッターを食おうってか?ふざけんじゃねぇ!!」
すると、竜馬はBETAを振り払うのを面倒くさがり、ゲッターの動力パワーを全開に上げ出した。ゲッターの体から動力炉であるゲッター線の光が発し、その光をもろに浴びたへばり付くBETA共はゲッター線によって溶解していく。いや、そればかりではなく、周辺を囲うハイヴ内のBETA達も一斉に消滅していくのだ。
「どうだ?かつて、お前達とその文明を滅ぼしたこの光を味は!?」
ゲッター線に包まれるゲッター1、しかし……その後の流竜馬は消息を絶ち、彼の地球からの帰還はなく、かわりにBETAの地球降下という結果へとつながってしまった。
しかし、竜馬は死んではいなかった、今も尚早乙女研究上のレーダーにはゲッター1の反応が弱くも反応を示している。ゲッター線を発しながら……
*
1998年現在、京都にて
「ここはどこ何だ……」
とりあえず、俺は長ランに着替えてこの街並みを見物するかのように歩き回った。
そして、街中でとあるタワーを見つける。あれは……たしか「京都タワー」だよな?巨とのシンボルらしく、東京タワーみたいなものだ。修学旅行で確かそう言っていたな?
「するってぇと……ここは京都なのか?」
つまり、俺は知らない間に京都にいたということだ。いや!まてまて!?何時の間に俺は京都にいたんだ?いくらなんでも辻褄が合わない。
「あ、もしかして冥夜の仕業が……?」
ふと思った。あいつは財閥の令嬢。だったら俺が寝ている間に京都へ連れ込んだと言うのも考えられる。そういえば今日は思い出の場所を一緒にまわって歩くとか行っていたな?おもしかして思い出の場所とは京都の事なのか?しかし……
「肝心の冥夜がいねぇ……」
そう、俺がこうも一人で歩き回っていると言うのに、彼女は一向に姿を現さない。一体どこにいるんだ?
グゥ~……
「あ……」
そのとき、俺の腹の虫がなってしまった。そういや、あさから何も食ってねぇや?どっかコンビニでもよって飯でも買うか?いや、懐を覗いたら財布を部屋に忘れちまった……
今から行くにも、悪い事に来た道を忘れちまう不始末……ついてねぇよ?
「あ、そこおアンタ?」
「あん……?」
すると、俺は隣に立つ托鉢僧に呼び止められた、案外体格のデカイ大柄な野郎で太った坊主だ。そんな奴が俺に小鉢を向けてくる。恵んでくれって言ってんのか?
「空腹のようだな?もしよかったら食うか?」
「え?」
俺は小鉢を除くと、そこには大量の小銭と菓子にコンビニの握りが大盛りに詰まっていた。
「お、おお……!?」
「遠慮せずに食えよ?そのようすだと朝飯を食い忘れたようだな?」
「あ、ああ……図星だぜ?」
俺は遠慮なく小鉢にある食い物を食わせてもらうことになった。坊主から恵んでもらうのだから、いつものように両手を合わせてから手を付ける。ちなみに言うが、俺はこれでも飯を食う時は他のDGN共とは違って行儀よく食事をしている。ガキの頃、まだ親父とお袋が生きていたころだ。俺は、二人に飯食う時の行儀や礼儀などをしっかり躾けられた。親が死んでからは他のチンピラと一緒にされたくないため、己の流儀と礼儀だけは弁えている。
「お、アンタ他のチャラチャラした奴と違って結構礼儀がなっているね?それに、今のご時世長ランとは古風だぜ?」
傘から覗く坊主の顔を見ると、まだ俺と同い年の青年だった。
「ああ……他の奴らと一緒にされたくねぇからな?」
俺は半分ほどもらい、満足したところで坊主に礼を言う。
「ありがとよ?おかげで助かったぜ!坊さん」
「いいってことよ?京都はけっこう坊主達が溺愛されるから毎日こうして托鉢に出かけるとこんなに大量よ?」
「へぇ?俺も坊さんになろっかな?」
「ハッハッハ!早朝に起きて掃除と飯炊きをやらされるんだぞ?それが終わったら夜遅くまで経の猛勉強さ?」
「うわ……やっぱ下りるわ?」
「まぁ、俺も修行をサボって托鉢に出かけたりするからな?他の連中もそうさ」
「そんなスパルタスケジュールについていけるかよな?」
俺はこの坊主と意気投合し、しばらくは雑談を続けた。
「そういやアンタ、今日は平日だって言うのに学校はどうしたい?」
「はぁ?そんなもん俺には無縁だい」
「まぁ……このご時世だからなぁ?」
「ご時世だ?」
「そうさ?数十年前に「奴ら」が来てから……」
坊主はそう言って頭上の空を眺めた。
「奴らって誰だよ?」
俺はその「奴ら」とやらが気にかかり、訪ねる。
「何だ?奴らも知れないのか?」
「奴らってだけじゃわからねぇよ?」
「大抵は通じるが……「BETA」だよ?」
「何だ……それ?インベーダーの親戚か?」
「まぁ、そうだな?坊主以外の男たちはみんな徴兵で連れて行かれちまってよ?今じゃあ俺たちぐらいの年頃の女の子達が戦術機に乗って戦う時代になっちまったな?」
「戦術機?」
「おいおい?戦術機も知らねぇって言うんじゃないだろうな?」
「まぁ……」
「まぁ、そうさな?俺も世間の事はよく知らないからお互い様だ。戦術機ってやつぁいわゆる人が乗り込んで戦うロボットらしい。それに乗ってBETAとやり合っているらしいぜ?」
「へぇ……何か、マンガやアニメみてぇな展開だな?つうか、そんなの信じられるかよ」
「まぁ、俺は生まれた時からそう言うことになってっから、始めて知る奴なら信じられないのは当然だよな?」
「ふぅん……ま、じゃあな?食いモンありがとよ!」
そういって俺は坊主と別れた。案外いいやつだな?こんな俺でも助けてくれる奴が居るだなんてちょっと驚きだ。普段なら怖がられるのによ?
「さて、そんじゃあとりあえず家を探しに行くか?」
まだ辺りを探索したい気分だが、よけい家に帰れなくなったら困るので今のうちに帰り路を覚えておかなくてはならない。しかし……
「……あれ?ここどこだ」
何度も同じ道を歩いていた。これって……
「完全に迷子だな?」
我ながら恥ずかしかった。交番に寄ろうとするが、居間の家の住所なんてわかるはずもない。
「おっかしいな……確かにここのような気が?」
何度も同じ道を歩いているうちに、俺はとある裏路地へと出てしまい、そこから駐輪場の屋根を歩いて塀の穴を幾つも潜り。そして気がつけば見覚えも無い立派?な敷地内へと行きついてしまった。気がつくと、俺はつい不法侵入を犯してしまっていた。
「やっべ……早くしねぇと」
慌てて来た道へ引き返そうとするのだが……
「貴様!そこで何をしている!?」
「マズ……!」
俺はすぐさま逃げようとするが、あっちは軍人か?すぐさま取り押さえられてしまった。
「何者だ!?」
「い、いや……俺はただの一般市民で……」
「一般市民だと?ここが帝都城だと知っての狼藉か!?」
「はぁ?帝都城!?」
そんな城あるわきゃねぇだろ!?京都に城なんて聞いた事ねぇ……
「侵入者だ!」
もたもたしている間にも騒ぎが広まり、増援が駆けつけてくる。俺はつい逃げ出したい一心で、怪力を出して取り押さえていた兵士の一人をぶん殴った。
「ぐぁ……!?」
兵士は予想以上に吹っ飛ばされる。しかし、抵抗したことで俺は兵士達に拳銃を向けられるはめになってしまった……ここは、一先ず抵抗せずに大人しく捕まってやったほうがいいのだろうか?いくら俺でも拳銃ならともかく、マシンガンの弾を避けられる自信はない。過去にヤクザの事務所で銃撃に見舞われるも、拳一つでどうにか切り抜く事が出来た。
しかし、周辺に居るのはヤクザのような民間人に銃を持たせたレベルじゃない。列記として兵士で、それも戦いだって仕込まれている。いくら俺でも束になって掛ってこられては……
「チッ……!」
俺は観念して両手を上にあげた。
後ろ手に手錠をかけられて取り調べを受けることになる。が、その取り調べは結構酷いものだった。
「名は?」
「白銀武・・・・・・」
「ここで何をしていた?」
「迷っただけだよ?」
「嘘をつくな!?」
一方的に大柄な軍人野郎がしつこく怒鳴ってくるだけ。まったく、冤罪を着せるつもりかよ?
「もう一度聞く!」
ドン!と、大きく机をたたく軍人は俺の面を睨みつける。威嚇のつもりかよ?
「だからよ?俺はしらねぇ間に入っちまったわけだよ?まぁ、アンタらの敷地だとは知らずには行っちまったことは詫びるよ?けどよ?俺は別に悪気があって……」
「白状しろ!!」
「はぁ?」
「正直に話せ!貴様はあそこで何をしていた!?」
相手のデカイ腕が俺の胸倉を掴んでさらに威嚇してくるようだ。
「待てって?俺はこの通り学生だ?」
「そんな丈の長すぎる制服などあるはずがなかろう!?」
「はぁ?だから長ランっていうんだよ?オッサン、しらねぇのか?」
「き、貴様……!?」
片手を震わせて激怒寸前のようだ。軍人には長ランがわからないのか?
「そっちこそ、肩っ苦しいような軍服着てるな?おい」
俺は相手の身形を見てつい口が滑っちまった。
「帝国軍人を愚弄するかぁ!?」
軍人は胸倉を掴んだまま片手の拳で俺をぶん殴ろうとする。しかし、俺はその腕をガッチリ掴んで、逆に殴り返してやった。
「おいおい?一般市民に暴力振るうたぁ、軍人も落ちたもんだな?」
冗談じゃない。俺はとっととここから逃げ出そうと個室のドアを食い破って通路を走る。
しかし、こっそり逃げればいい物を、それが原因で施設内の兵士達に目を付けられて前代未聞の鬼ごっこをやるはめとなった。
「ああー!!どうしてこうなっちまうんだ!?」
俺はとにかく逃走を続けて敷地から逃げ出そうともがき始める。
通路を出てようやく外の敷地から出た俺は辺りを見回す。周囲はもう夜中だ。
「くそぉ……こうも庭が広いとどうもわからねぇぜ?」
さっき張って来た場所を探すが。何平方キロメートルあるんだ?広すぎてわかったもんじゃねぇ……まさか、東京ドームよりも広いのか!?
「どこだよ!?」
「居たぞ!?」
「やっべぇ……!」
俺はとりあえず周囲から身を潜めるため敷地にある屋敷のような建物へ入った。まるで平安時代の殿様が住んでいるかのような屋敷のようだ。ひょっとして、これが「帝都城」?
いや、今は隠れることに専念しねぇと……
*
帝都城、寝殿にて
「XFJ計画……」
今回、日米共同で行われる新型戦術機の開発計画を目に、ふたたび考え事が一つ増えてしまった。この事以外ならまだしも、今日の午後に行われた会議で、軍の上層部から発表された非道な作戦報告を嫌と言うほど聞かされた。本当に、我々人類に勝利が見えてくるのでしょうか?中央アジアを制圧された今、BETAが次に向かう目標は此処、日本。
祖国と各国の情勢、そして一部の国民に反感をかってしまう自分への罪悪感。帝国の皇帝として生まれてくるためにはこのような覚悟も背負わなければならないとはとても辛いことです……
「……」
ため息をつく私は、先ほど夜まで続いた会議をようやく終えて寝殿で一息ついており、しばらくしてから眠りに就こうとしていたところ、何らかの物騒ぎが聞こえたのです。
「……!?」
ゴトゴトッ……寝殿の隅で何らかの物音を捉え、恐る恐るそこへ歩み寄ってみると、
バリッ!
突如、誇りと共に畳みを食い破ってそこから雄々しい方腕と拳が突き出して、
「だ、だれ……!?」
両手で口を押さえて悲鳴を抑える私は、畳を捲って出て来た一人の青年を目にした。丈の長い学生服でしょうか?
「ゲホッゲホッ……かぁ~!狭かったぜ?……ん?」
厳つい瞳と、凶暴に見える表情、どこをどうみてもいい人には見えなさそうな若者が、私の方へと視線を向け、その視線を向けられた私はつい悲鳴をあげてしまいそうになり、
「だぁー!ちょっとタンマ!?」
突然目の前に現れた青年を見て私は思わず悲鳴を上げてしまう。
「あ、怪しいモンじゃねぇんだ!何もしねぇから、ちょっとかくまってくれ!?」
「……?」
青年のその必死な救い声に私の警戒は和らぎ、そして寝殿へ「殿下!」と叫んで使いの者が押し寄せて来た。
「殿下!ご無事ですか!?」
「ま、摩耶!?」
そこには私の護衛隊長を務める女性、月詠摩耶が駆けつけて来た。
「貴様ぁ!殿下から離れろ!?」
摩耶は私の後ろにいる青年へと怒号を上げる。
「ま、待ってくれよ?俺はただ悪気があってやったわけじゃ……」
「黙れ!無許可で帝都城へ不法に忍び入るとは重罪に値する!!」
「だから、わざとじゃ……」
「お待ち下さい、摩耶……?」
「え?」
そのとき、必死に誤解を解こうとする俺の前にお姫様のような女の子が立ちあがって追手に向かって言う。
「この者は、悪意があって我が城へ侵入したわけではないようなので、許してはくれぬか?」
「殿下、この輩に何をたぶらかされたのですか!?」
「帝都城の敷地内は広大である。それゆえに迷い込む者たちが居たとて過言ではない。この若者を許してはくれぬか?」
「……」
追手の女は少し黙り、戸惑っていた。なるほど、つまりこのお姫様みたいな娘がこの城の頭ってことだな?ちょっと可哀想だけど、これなら……!
「!?」
俺は前の彼女の首周りに片手を絡めて人質にとって彼女を盾にすることに成功した!
「そ、そなた?なにを……!?」
女の子、別名お姫様は俺の行動に驚いている。俺だってこんな事をしたくはない。だが、
「貴様!何の真似だ!?殿下から離れろ!?」
「ハン!どうせこのお姫様が許したところで、度の道俺は免罪で牢屋にぶち込まれんだろ!?」
「うぅ……」
「ケッ!図星かよ?」
そして、俺はお姫様の耳元でこう囁いた。
「すまねぇ……けど、本当に俺はアンタの庭だったなんて知らなかったんだ。外へ出たらちゃんとこの腕を離すから暫く人質になってくれ?」
「……」
……私は、予想外の行動に出た青年の行為に恐怖と少しの避難を感じていますが、その目を見る限り、悪気があったようには思えなくなり、半信半疑で彼の言うとおりに従うことになりました。
「オラオラ!早く道を開けねぇとお姫様が大変な目になっちまうぜ?」
俺は敷地に居る兵士の塊に彼女を向けて道を開けさせる。警備の兵士だって下手に後ろから飛びかかろうとはしないだろう?なにせ、自分達のカシラが俺の人質なんだからな?
俺はお姫様を連れて数時間、どうにか入ってきた塀の場所へとたどり着けた。
「ふぅ~どうにか見つける事が出来たぜ?」
そうすると、俺はお姫様の首に絡めていた腕を離す。自由に立ったところで彼女は俺に尋ねる。
「まだ……庭園の中では?」
「いいや、ここまで来りぁもうわかるよ。それと……さっきは本当にすまなかったな?偶然迷い込んじまって、その上こんな目に会うなんて思わなかったからよ?」
「仕方ありません……皆、私を守るために必死なのです。あとから私が摩耶達に注意をしておきます」
「ハハハ、そうだな?俺以外の奴がまた入ったらそいつが可哀想だからな?」
そういうと、俺は塀へと近付きよじ登ろうとするが、その前に彼女へ振り向いて別れを告げる。
「あばよ?お姫様」
「はい、お元気で?」
別れを言い終えて俺は塀へとよじ登ろうとした……が、突如ここで最悪の事態が起こってしまう。それは、
「……ん?」
こちらへ向かって地響きが近付いてくる。それもまるで足音のようにドスドスと小走りで近付いてくる。そして、その主は現れた。
「な、何だ!?」
そこには真っ赤に彩られた巨大な……ロボット!?
「なぜ……戦術機が?もしや、摩耶!?」
お姫様が叫ぶと俺はギョッとする。まさか……あの坊主が言っていた「戦術機」とは、あの人型兵器のことだったのか!?
「殿下!すぐにその輩から離れてください!!」
すると、ロボットは背から長刀を取り出してその先を俺に向け出した。もしかして、それを使って俺と喧嘩するのか?っていうか、これは喧嘩っていうレベルじゃないだろ!?
「お、大人気ねぇぞ!?このとおりお姫様は返すから降りて来いって!?」
「黙れ!土足で帝都城へ入り、その上殿下を連れ去ろうとした外道め!!」
「ちょ、ちょっと待てって!?」
「問答無用!!」
「やべ……逃げるぞ!?」
「え……?」
そういうと、彼は私を抱き上げて摩耶の専用戦術機吹雪から逃げ出す。私はそんな逃げる若者に抱きあげられている事、それも憧れの「お姫様だっこ」をされて顔を赤くしてしまった。なにせ、父様以外の殿方に抱かれているのだから無理はありません……
私は、私を抱いて逃げ出すこの青年の胸に耳を当ててその鼓動を聞いていた。
「殿下を再び人質に取るとは……この卑怯者め!!」
「だーかーらー!お前がそのロボットから降りれば済む事なんだよ!?」
「貴様!さては我が帝国への反逆を企てる反乱分子の者か!?」
「何でそうなんだよ!?」
俺は、これではラチがあかないとして一旦お姫様をおろしてあのロボットと徹底抗戦する覚悟を決めた。
「お、おやめなさい!生身の人間が戦術機に……」
「けど……あの姉ちゃん、完全に頭に血が上ってるぜ!?」
ここは一端頭を冷やしてもらわないといけないようだ。
俺は戦術機の元へ突っ走り、相手の振るう長刀をギリギリに避けたところをその長刀へ飛び付いて薙刀から、それを持つ腕へと走って駆けのぼる。
「なに……!?」
相手の姉ちゃんが気付いたころには、俺は戦術機の肩ら編までよじ登っていた。
「な、何をする!?」
振り落とそうとブンブン体を激しく揺らすが、俺はそれに耐えながら戦術機のデッカイ頭部へと張り付く。
「離れろ!?」
巨大な戦術機の手が頭部に居る俺を捕まえようとするが、俺はそれを素早く交わし続ける。
そして、俺は戦術機の顔面からVの字のレンズを見つけた。どうやらこれが戦術機のアイカメラとなっているようだ。それなら……
「これでも……」
俺は顔面へと張り付いて、渾身の一撃を込めた拳をカメラへ撃ちつける!
「くらえぇ!!」
「ひぃ!?」
すると、案の定……乗っていた姉ちゃんはが除くモニターの視界は俺の拳によって戦術機の目玉がひび割れたために砂嵐となり、その勢いで戦術機の足がよろめき地響きを立てながら倒れてしまった……
「ふぅ……間一髪だったぜ?」
もう少しで頭部の下敷きになるところだった……しかし、とんでもない器物破損を起こしてしまったものだ。部品一つでどれくらいの値が張るんだ?
「そ、そなた……」
おどおどしながらお姫様が俺の元へ歩み寄って来た。やばい……これは嫌われたかもしれない。
「吹雪を一撃で倒すとは、ステキ……」
「あ、あの……」
俺はこちらをじろじろ見てくる彼女の様子を見て苦笑いするしかなかった……
「フッフッフ……ようやく見つけたぞ?ゲッターにふさわしい人間をついに!」
そんな二人を遠くの木から身を潜めて覗く白衣の老人が一人……
老人は笑みを浮かべて不気味に笑いだした。
「博士、あの若者に致しますか?」
老人の隣には数人の黒ずくめの男が居る。その内の一人が彼に尋ねた。
「無論!近いうちに研究場へ連れてまいれ!!」
老人は夜空を見上げて笑みを浮かべた……
後書き
次回予告
謎の老人に魅入られて連れて込まれた白銀は宿命の存在と出会う。
次回
「龍牙が行く・・・」
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