ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第33話 一日目
「まず、私の創る魔剣には一部の例外を除いて始動キーが設定されています」
模擬戦の後、私たちはリビングに戻って休憩しつつ氷輪丸の使い方をレクチャーしていた。ちなみにそろそろ体力が限界の祐斗と、同じくかなり疲弊しているイッセーは黒姉が手を肩において仙術で回復中。朱乃さんも白音を膝の上に乗せて抱きしめつつ回復してもらっている。
「始動キー?」
「はい、これらの魔剣はこの始動キーを言うことによって能力開放状態になります。さっき私が初めて能力を使った時にも最初に叫んでましたよね? あれがそうです。実際に見せますね。『霜天に坐せ、氷輪丸』」
そう言うと私の持つ氷輪丸の柄頭から鎖が伸びて能力開放状態、原作通りに言うなら始解状態になった。
「あら? あの時は同時に氷の龍が一緒に出てなかったかしら?」
「それについては後から説明します。とりあえずみなさんはまず能力開放状態にしてみて下さい。あ、魔力とかは込める必要はないんで込めないでくださいね? 込めたら大変なことになりますから」
そう言うと私達神裂姉妹以外の全員が恐る恐るといった感じで氷輪丸を抜き放ち、構えた後始動キーを唱えた。
「「「「「「霜天に坐せ、氷輪丸」」」」」」
すると全員の持つ氷輪丸が能力開放状態になった。
「では無事に能力開放が出来たところで氷輪丸の能力について説明します。能力は大まかに分けて2つ、『氷結』と『氷龍召喚』です。まず『氷結』ですが、このように……」
そう言って私は目の前の紅茶のカップの中身に氷輪丸の切っ先をチョンと漬けてすぐに引き上げる。するとペキンッという音と共に一瞬で紅茶が凍った。
「このように刀身と柄頭から伸びる鎖が使用者以外に触れた場合、触れたものを問答無用で一瞬にして凍りつかせてしまう能ry『バキンッ!』……部長、早く試してみたいのは分かりますけど人の説明は最後まで聞きましょう?」
「ご、ごめんなさい」
部長は私の説明の途中で私と同じように紅茶に氷輪丸の切っ先を漬けたんだけど私と違いどっぷり漬けて引き上げなかったもんだから紅茶どころかそれの乗るテーブルごと氷漬けにしちゃった。
「……まあこのように対象に接触する面積と時間が長ければ長いほど凍りつかせる範囲が拡大します。と言ってもご覧の通りかなり短い時間で広範囲を凍りつかせられるので注意して下さい。あ、でも自分自身を凍りつかせることはないので安心して下さいね」
「……なあ火織」
「なにイッセー?」
「問答無用で凍らせちゃうんならさ、こんな密集状態で皆解放するのってまずくないか? 隣の人の刀にちょっとでも触れちゃったら凍っちまうんだよな?」
「……そうね」
それを言うと皆ピシッと固まり、ソロリソロリと距離を開けた。うん、これは私が悪かった。
「……えぇと、じゃあ次に『氷龍召喚』について説明します。先に言っておきますけど私がいいと言うまで使っちゃダメですよ? 特に部長」
「わ、分かってるわよ」
「じゃあ説明します。この氷輪丸ですが能力が開放されているときに魔力を込めますと、その魔力に応じた大きさの氷の龍を召喚することができます。このように……」
そう言って私は腕くらいの長さの氷の龍を出す。
「で、この氷の龍ですが召喚するとその鼻先を常に刀の切先の方向に向けてその切先を追うようになります。この状態で……ごめん白音、そこの窓開けてくれる?」
「はい、火織姉様」
窓に一番近い白音に頼んで窓を開けてもらった。
「あの窓の外にある木を敵だとします。この状態で敵に向けて刀を振り下ろしますと……」
そう言って私は窓の外に見える木に向かって氷輪丸を振り下ろす。すると氷の龍は切先から離れ木に向かって突っ込み、その木を凍りつかせた。
「と、このように対象をロック、ロックした相手に向かって突っ込んで行って凍りつかせます。この時の威力は召喚した氷の龍の大きさに比例します。注意点としましては一度龍を召喚するとその龍が消滅しない限り次の龍が呼び出せないくらいですかね? じゃあみなさんにも実際にやってもらいましょうか。あ、魔力の込め方の分からないイッセーとアーシアは黒姉の魔力運用の授業を受けたらまた教えるから今日はここまでで我慢してね」
「分かった」
「はい」
「じゃあ残りの4人は魔力を込めてみましょう。今は室内なので……そうですね、魔法陣ジャンプで2人飛ぶくらいの魔力量を込めてみて下さい」
「火織、それだとかなり少ないのではないのかしら?」
「まあそうですけどものは試しで」
「……分かったわ」
そう言うと、部長と朱乃さん、祐斗にレイナーレは氷輪丸に魔力を込める。すると…………それぞれ身長ほどの大きさの龍が召喚された。
「え!?」
「こんなに大きいんですの?」
「大した量の魔力を込めたわけじゃないんだけど……」
「これ、普通に攻撃に使うくらいの魔力を込めたらどんだけ大きい龍が召喚されるのよ」
ふふ、皆驚いてるわね。
「まあこれで分かって頂けたと思いますけど、この氷輪丸は魔力効率がすごくいいんです。模擬戦の前に朱乃さんにこれを使った方がいいと言った理由も分かってもらえたと思います」
「確かにこれだけの大きさの氷を作ろうとすれば魔力消費はこの程度ではすみませんでしたわね。よく分かりましたわ」
「ふふ、それは良かったです。あとさっきのレイナーレの疑問ですけど、実は欠点がありまして召喚する龍の大きさが大きくなれば大きくなるほど消費魔力は加速度的に大きくなるんですよ。10の大きさの龍を召喚するのに10の魔力を消費したとして、次に20の大きさの龍を召喚しようとした時は50の魔力を消費するといった感じです。ですから全魔力を使って特大の龍を召喚するよりはある程度の大きさの龍を連発するほうがいいと思います」
「へぇ、そうなんだ」
「なるほどね。ではその消費魔力を掴んで効率的に相手を攻撃するために練習が必要というわけね」
「はい、まあその辺は組手の時にでも使って把握して下さい。……あ、あとアーシア」
「はい!」
「あとでもう一度説明するけど、皆の前でも一応説明しておくわ。アーシアに渡した氷輪丸だけど、皆のとちょっとだけ仕様が異なる特別製なのよ」
「特別製……ですか?」
「ええ、一応聞くんだけどアーシアはこれを使って相手を傷つけることってできる?」
「それは……難しいかもしれません」
そう言うとアーシアは目に見えて落ち込んじゃった。
「いいのよ。決して戦わないというのも1つの強さだから。それにアーシアの役割は皆の回復だしね。だから無理して戦うことなんて無いわ。で、氷輪丸なんだけどそんなアーシアに合わせてちょっといじってあるのよ。皆の氷輪丸はロックした相手を追い続ける龍を召喚するけどアーシアのは使用者の周囲に展開して使用者を守るように創ったから」
「え、じゃあそれって……」
「そう、その氷輪丸はあなたの護衛よ。敵と相対したら龍を召喚して身を守りつつ仲間に連絡して助けを待ちなさい。魔力を供給し続ける限り龍はあなたを守り続けてくれるわ」
「はい!」
「よし! 説明はこんなところですかね! じゃあ早速修行を始めましょうか! まずイッセーとアーシアは黒姉に魔力運用を習いなさい。で、残りの皆は白音と共に基礎体力トレーニングをしましょう!」
「ってことで今日一日みんなに頑張ってもらったけど……」
「皆完全に死んでるにゃん」
今日一日の修業を終え、今は私と黒姉で夕飯の準備中。隣の部屋のリビングではまさに死屍累々といった感じで朱乃さんに祐斗、イッセーにレイナーレがぶっ倒れてるわ。体中傷だらけになって。そんな中アーシアは皆の傷を直しながら介抱してるわ。ちなみに部長は皆より先に修行を切り上げた後自室にこもって過去のレーティングゲームを見てるわ。王は戦闘能力よりも指揮力のほうが大事だしね。
氷輪丸のレクチャーをした後私達は早速修行を開始した。イッセーとアーシアは室内で黒姉に魔力制御を、他の皆は白音の基礎体力トレーニングをね。で、やることがない私と龍巳は白音の手伝いをすることにした。
白音の修行は至って簡単、とにかく山道を走って体力をつけること。獣道もないような山の中を白音の後についてとにかく走る。そこまでは良かったんだろうけど私と龍巳が悪乗りしちゃった。ちゃんと一定以上のスピードで走らないと意味ないと思って後ろから2人で刀抜いて追いかけちゃったのよね。白音から遅れだした人には容赦なく斬りかかりながら。あの時は皆必死だったわね。いつも優雅にお姉さましてる部長と朱乃さんもなりふり構わず走ってた。多分皆目に涙を貯めてたと思う。
で、走り終わって皆ぶっ倒れちゃったのでちょっと休憩、その後ある程度魔力制御を習ったイッセーと合流したら今度は二手に別れて私は祐斗とイッセーに剣の稽古、部長と朱乃、レイナーレは龍巳と組手をした。まず最初は連携よりも個々人の底上げだから一人ずつ相手をした。
私の稽古は毎朝イッセーとしてるのと同じように向こうに切り込ませて私はそれを受け止めつつアドバイスをするって感じ。で、ある程度経ったら私からも切り込み始める。最初はゆっくり、で、少しずつスピードを上げて相手の力量を引っ張りあげるようにした。
で、龍巳の方なんだけどこっちは酷かった。まず最初に力量差をはっきり分からせるためかいきなり近付いてぶん殴って地に埋めてた。あれ修行になるのかな? 見てて大自然の災害に巻き込まれる人を思い出す光景だったよ。その後も圧倒的な力でこてんぱんにノシテた。交代中に白音が回復させてなかったら絶対死んでたと思う。
とまあ一日目の修行はそんな感じで終了。部長はまだノルマが残ってるけど。で、誰も動けないから今は私と黒姉が晩ご飯の準備してるのよ。これはこの10日間は私達がご飯の準備係で決定になりそうね。というか皆ご飯食べる元気あるのかな? ってそういえば
「ねえ黒姉、龍巳と白音はどこ行ったか知ってる?」
「ああ、あの2人なら一度帰ったにゃん」
「……は? 帰った?」
え!? どういうこと!? 帰ったってあの娘たち合宿の意味分かってる!? っていうか何しに帰ったの!?
「なんかここテレビが入らにゃいんにゃって。で、見たいアニメがあるからって帰ったにゃん」
「……まさかあの娘たち毎日アニメ見るために家に帰るつもり?」
「あ~、こっち戻ってくるときにハイビジョンテレビ持ってくるって言ってたにゃん。だから明日からはこっちにいるんにゃない?」
「ここテレビ入らないんじゃテレビ持ってきても意味ないじゃない」
「次元をつなげて家からアンテナのケーブル引っ張ってくるって言ってたにゃん」
「……はぁ、これこそまさに力の無駄遣いね」
なんかもう言葉も無いわ。
で、2人が帰って来ると同時にお夕飯になった。メニューはボタン肉に兎肉に各種山菜を使ったフルコースだったんだけど……私達とアーシアを除いた皆は何というかのっそりという感じで食べてたわね。一言も喋らずに食べてたし、なんというか目が死んでた。1人部長だけは目が真っ赤に血走ってたけど。で、夕食が終わった後はお風呂に入る予定だったんだけど部長たちはフラフラと部屋に戻ってそのまま寝ちゃった。こんな調子で明日以降大丈夫かな?
今は私と黒姉、それに魔力制御しかやっていないので比較的体力がまだ残ってるアーシアで洗い物、龍巳と白音は家から持ってきたテレビのセッティングをしていた。……うん、もう何も言うまい。
で、その後生き残ってる私達でお風呂を堪能し表向き今日はお開きとなってアーシアはレイナーレとの相部屋に帰っていった。そして今私達が何をしているかというと
「どう? うまくいきそう?」
「任せるにゃん」
「龍巳姉様、少し材料足りないかもしれません」
「ん、分かった。もうちょっと入れてみる」
「火織の方ももうちょっと入れたほうがいいかもにゃん」
「分かったわ」
私たちは皆にバレないようこっそりと例のアレを用意していた。私達姉妹全員による合作、完成が楽しみね。
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