ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
第22話 終幕
何をどうしたらこんな事になるのかしら?
アーシアが悪魔となったことで私の眷属が仮とはいえ揃い、お祝いをしたのが昨日のこと。そして今日はアーシアに色々と教えるため日曜にも関わらず皆に部室に集まってもらった。アーシアはまだ準備が出来ていないので来ていないけれど他の皆は集まっているわね。ここまではいい。ここまでは予定通りなのよ。なのにどう事態が転がったらこのようなことになるのかしら?
私は目下私の悩みの種である目の前のソファーに座る2人に視線を向ける。1人はイッセー。先日新たに私の眷属になった可愛い下僕にして伝説の赤龍帝。先日の堕天使との戦いでは初陣にも関わらず、仲間の手を借り大怪我をしつつも相手の主犯格の堕天使を倒すといった立派な功績を上げてくれた。こちらはいいのよ。問題はその隣。そこには誰あろうイッセーが倒した主犯格の堕天使、名をレイナーレと言ったかしら? 彼女が縮こまりながら座っているわ。ほんとどうしてこんな事になっているのかしら? そもそも先日のアーシア奪還戦から色々とおかしかったのよ。
「まったく、あなた達呆れるほど強いわね」
火織達が結界から脱出したのを確認した後朱乃に更に内側に結界を張ってもらい、さあ今から堕天使とはぐれ悪魔祓い共を倒すわよ、というところで私はもう力が抜けてそんな言葉を吐いてしまった。なぜなら火織たちが脱出した瞬間もう巻き添えを気にしなくていいと言わんばかりに圧倒的な力で黒歌と龍巳がはぐれ悪魔祓いを殲滅してしまったのだから。
と言っても死んでいるわけではない。龍巳は一瞬姿がぶれたと思ったら周りのはぐれ悪魔祓いが昏倒してしまった。おそらく眼に見えないほどの速さで動きまわって気絶させたのでしょうね。そして黒歌はあの毒霧を展開、こちらも一瞬ではぐれ悪魔祓いを制圧してしまった。こちらも誰も死んでいないところを見ると致死性の毒では無さそうね。私達や堕天使に影響がないところを見ると人間のみに効く毒かしら?
「な、な……」
「き、貴様ら、一体何者だ?」
そんなの私が聞きたいわよ。まだ堕天使が残っているから油断してはいけないのだけれど……もう正直やる気が出ないわね。だって
「うるさい。邪魔」
「ぐお!?」 「ぐえ!?」 「ぎゃ!?」
ドゴォォォォォォォォォン!!
龍巳がまた一瞬ぶれたと思ったら堕天使3人は地に叩きつけられた。
「それじゃあお休みにゃん♪」
そして黒歌がまた霧を発生させると堕天使はもがき苦しんだ後気絶した。今度は堕天使のみに効く毒かしら。もがき苦しんでたけれど、はぐれ悪魔祓いは一瞬で昏倒していたし絶対わざと苦しめるような毒を使ったわね。
しかし本当に一瞬で終わったわね。これなら火織たちを先に行かせず全員でここにいる連中を倒した後アーシアを救出に向かっても間に合ったんじゃないかしら?
「よし! ここは片付いたことだし私達もアーシアを助けに「行かないわよ」んにゃ!?」
「部長、見捨てる?」
「そういう訳じゃないわ。私だって早く助けに行きたいわよ。でもこいつらをこのまま放置するわけにもいかないでしょう? 生きている者全員捕縛して冥界に送るわ。全員縄で縛り上げるの。いいわね?」
「「ええ~!?」」
ええ~!? じゃない。そう言いたいのは私よ。私はあなた達の主なのにいい所全く無かったじゃない。
「あらあら、私結界を張った意味あったのでしょうか?」
それは言わないお約束よ朱乃。
そして私たちは倒れている連中を全員冥界に送った後教会にジャンプして聖堂に足を踏み入れたのだけれど……
「な、何、これ?」
聖堂の床には大きな穴が、尋常じゃないほど大きな穴が開いていた。いえ、切り取られていた? これって……
「これ絶対火織の仕業にゃん」
「うん、火織お姉ちゃん、床斬って地下行った。多分近道」
「あらあら、無茶しますわね」
無茶にも程があるでしょう!? 火織やもしかしたら白音も大丈夫かもしれないけれどここには祐斗やイッセー、それに下にはアーシアもいたのでしょう!? 大丈夫なのあの子達!?
「ま、ここにいても仕方ないし下に行ってみるにゃん」
「ん」
そして二人はピョンと飛び降りて行ってしまった。下はどうなってるのか分からないのに警戒心無さ過ぎじゃないかしら? しかも2人共翼も拡げすにそのまま普通に飛び降りたわよね?
「私達はどうします、部長?」
「ハァ……私達も行くわよ。下僕が普通に行って主が行かない訳にはいかないわ」
「はい部長。……これから苦労しそうですわね」
「まったくよ」
そして私たちは黒歌と龍巳を追って降りていった。落ちていったのではなくてよ? ちゃんと翼を拡げて降りましたからね?
そして地下まで降り立った私達が見たものは
「七閃!」
パキィィィィィィィィィィィィン!
堕天使の放った光の槍を砕いた火織と
「考え直しやがれ!!!」
アーシアを攫った堕天使を殴り飛ばすイッセーだったわ。
「ギャァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!!」
そして堕天使は派手に吹き飛んで壁に激突、動かなくなったわね。
「ありがとうございます。イッセーさん」
「よく頑張ったわねイッセー。カッコ良かったわよ」
そしてイッセーは力を使い果たしたようね。アーシアに抱きとめられて火織に頭をなでられているわ。ケガをしたようだけどアーシアが治療しているし大丈夫そうね。
「お疲れ様みんな。どうやら無事アーシアを助けられたようね」
「あ、部長。そちらも無事だったんですね」
「無事も何も黒歌と龍巳が一瞬で終わらせてしまったわよ。おかげで私と朱乃には出番が無かったわ」
「あはは、なんかすみません」
「あなたが謝る必要ないわ。それでこちらはどうだったの?」
「あ~、それなんですが部長、すみません。はぐれ悪魔祓いに1人逃げられました。一瞬の隙をつかれちゃいまして。祐斗が追ったんですけど」
「すみません部長、見失ってしまいました。火織さんが相当痛めつけましたんですぐまた襲ってくることはないと思いますが」
「そう、まあ1人くらいはしょうがないわね。……ところで祐斗、随分とボロボロね。こちらに残っていたはぐれ悪魔祓いはそんなに手練だったの?」
「いえ、手練ではあったんですが……この汚れと傷は火織さんのせいで床が崩落した時のものです」
「……火織」
「あ、あはははは」
「少しは自重しなさいよ?」
「はい、すみません。祐斗もごめんね?」
「いいよ、実際あそこでああしてなかったらアーシアさんが間に合わなかったかもしれないし、有効な一手だったことには変わりないからね。でも今度からは予め知らせて欲しいかな?」
「う、努力します」
この娘本当に分かっているのかしらね? なんというか神裂家の娘達には今後も苦労させられそうだわ。
「で、こいつはどうするにゃん?」
「我、こいつだけは消し飛ばす、いいと思う」
そうこうしているうちに龍巳が堕天使の足を持って引きずってきたわ。2人共この堕天使だけは殺す気まんまんね。大事なイッセーを何度も殺されかけたことを怒っているのかしら。まあでもそれは私も同じだけれども。
「そうね、主犯格のこの堕天使だけは生かしておけないわ。何より私の大切な下僕に手を出したこと、万死に値する」
そう言って私は手に消滅の魔力を纏わせる。一片の欠片も残さず消し飛ばしてあげる。
「待って、下さい」
「イッセー?」
イッセーがまだケガが完全に治っていないのかフラフラとしながらこちらに歩み寄ってきた。
「そいつ、俺に預からせてもらえませんか?」
その後皆の反対する中結局最後は私達が折れて堕天使はイッセーが引き取った。そしてどうするつもりかと思いつつ2晩ほど空けてみると
「で、その堕天使をここに置いて欲しいと」
「はい」
ハァ……一体この2日で何があったらそうなるのよ。この堕天使はあなた、そしてアーシアを殺そうとしていたことをちゃんと理解しているのかしら?
「……誘惑でもされた?」
そう言った瞬間、黒歌、龍巳、白音からとんでもない量の殺気が放たれた。でも
「いいえ、これは俺の意思です。彼女には生きてやり直して欲しいと思ってます」
「理由は?」
「……すみません、言えません。いつか話せる時が来たら話すつもりです」
……これは何を言っても無駄そうね。でもそう簡単に了承する訳にはいかないわ。私達悪魔と堕天使は敵同士、そんなに簡単に一緒にいる訳にはいかない。一緒にいるためには……
「レイナーレ、あなたはどうなの?」
「ここに置いて頂けるのであればなんとでも……」
「知っての通り私達悪魔とあなた達堕天使は敵同士。公に、それもただ一緒にいるというわけにはいかないわ。一緒にいるには確かなつながりが必要よ」
「つながり……」
「普通なら下僕として悪魔に転生させるわ」
朱乃のようにね。
「でも残念ながら私はもうすべての駒を使用してしまっている。あなたを悪魔に転生させるのは現状不可能よ。となれば方法はひとつ。前代未聞だけれど私達悪魔と使い魔契約を行なって使い魔になるしかないわ」
正直この申し出をこの堕天使は断ると思っていた。これは私達悪魔に下り、隷属するということ。プライドの高い堕天使が容認するとは思えなかった。そしてこれを断ればこの堕天使をここに置く方法もなくなり、イッセーも諦めて消し飛ばすか、冥界送りに了承してくれると思ってた。だけど
「分かったわ。イッセーの使い魔になります」
「え!?」
ウソ……、この娘何を言っているのか分かっているの!?
「……どうしてそこまで」
「チャンスをくれたイッセーのためにも、私の思いを遂げるためにもここで諦める訳にはいかないの。その為ならどんな仕打ちでも耐える覚悟よ」
「それが理由?」
「ええ」
ハァ……、私の負けね。
「堕天使レイナーレ、不審な行動を取れば容赦無く消し飛ばすわ。いいわね?」
「望むところよ」
上への報告と説得が大変そうね。結局神裂家姉妹だけでなく一緒に育ったイッセーにも苦労させられるということかしら?
「朱乃、後でイッセーに使い魔との契約の方法を教えてあげて。イッセー、あなたが言い出したことなのだからあなたが責任を持つのよ?」
「……分かりましたわ部長」
「はい部長」
朱乃、複雑そうね。朱乃の出生のことを考えるとここに堕天使を置くなんてことはあまりしたくはなかったのだけれど……もうどうしようもないわね。イッセーは頑として譲らないし。ここは先輩として朱乃に我慢してもらうしかなさそうね。
「さて、イッセーの要件も済んだことだし、そろそろ入ってらっしゃい」
そう扉に声をかけると扉が開かれそこには
「アーシア!? その制服……」
「はい、似合ってますか?」
「あ、ああ。部長、これって」
「アーシアには明日から留学生としてイッセー達のクラスに通ってもらうわ。イッセー、あなたが面倒を、ってレイナーレ!?」
レイナーレがアーシアの方に!? 一体何を「ごめんなさい」……え?アーシアに……頭を下げた?
「レイナーレ……さま?」
「謝っても許されないことは分かってる。気が済むなら殴ってくれたって構わないわ」
そう言ってレイナーレは頭を下げ続けている。あなた……そこまで……
「……」
アーシアも困惑しているわね。ここは助け舟を「あの」……アーシア?
「でしたら1つ、お願いを聞いてもらえますか?」
「ええ、何かしら?」
「私と、お友達になって下さい」
「!!」
アーシア、あなたって本当に……
「……いいの? 私なんかで」
「はい、私お友達が少ないんです。ですからお友達になってくれるとすごく嬉しいです」
「私、友達なんて今まで1人もいなかったわ」
「では私がレイナーレ様の初めてのお友達ですね!」
「ええ、そうね……よろしくね……ありがとう……ごめんね」
そう言ってレイナーレはアーシアの手を取り泣き始めた。……この様子なら心配はいらないかしら、ね? 何が彼女を変えてしまったのか、イッセーとレイナーレが話さない限り分からないけれど、少なくとももう彼女は道を誤らないでしょうね。
さて、じゃあ当初の予定通りアーシアにいろいろ教えた後、彼女の転入準備をしましょうかしらね。……それから彼女、レイナーレの分も、ね。
「なんか今回私完全に蚊帳の外だった気がするわ」
「それを言うなら僕もだよ、火織さん」
「それから、ねえアーシア」
「はい、何ですか?」
「私も1つアーシアにお願い……というか確認……みたいなものがあるんだけど」
「はい? 何でしょう?」
「私って友達? 出来れば友達がいいんだけど」
「……え?」
「いやほら、私だけ間が悪くって友達になろうって言ってないじゃない?」
「あ」
もしかして火織、ずっと気にしてたのかしら?
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