ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
第20話 アーシア・アルジェント
「それではこれより! 『第一回今日はアーシアちゃんの歓迎会! 友達との初めての触れ合い! 遊んで歌って踊って食べて一日エンジョイ! 今夜は寝かさないぞ?』を開催しまーす!!」
「「「「いえーい!!」」」」
「い、いえーい?」
「……いくらなんでもはしゃぎ過ぎではないかしら? 周りの視線が痛いのだけれど」
「あらあら、でも人数的にこっちが少数派ですわよリアス?」
「あはは、みんな元気ですね」
黒姉の開会宣言にみんなでテンションを上げていく。っていうか一部! そこで少し離れてる3人! ノリ悪いわよ! 私だって恥ずかしいんだから!
今日は堕天使とのいざこざの翌日の土曜日、場所は近所にある駒王学園生もよく利用するショッピングモール。そう、原作でシトリー眷属とのレーティングゲームの舞台になったり、オーフィスの初めてのお買い物をしたりしたあのショッピングモールに来ていた。理由はもちろん昨日約束した通りアーシアの初めての友達である私達みんなで遊ぶこと。いやー、今日がたまたま休日でよかったね。学校サボらずに済んだよ。……その分周りの視線が多くて恥ずかしいんだけど。
今私たちはショッピングモールの入り口、みんなで決めていた集合場所に来てる。そこで全員が集まったのを見て黒姉が開会宣言をした。題名が長いとか第二回はあるのかとか寝かさないぞとか言っといてまだ午前中だとか、そもそも主賓のアーシアが既に置いてきぼりになりかけてるとかは突っ込んじゃいけない。このテンションには何を言っても無駄なんだから。ちなみにこんな事してるもんだから周りの視線が痛い痛い。出来れば私もあっちで苦笑いしている3人のところに行きたいよ。
「ではまず最初に学生の遊び場の王道、ゲーセンに行くわよ!」
「「「「お~!!」」」」
「お、お~!」
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!! 秘技、二連続ドリフトォ!!」
「速いです! 速いですイッセーさん!」
今はみんなでレースゲーム中。参加者はイッセー、龍巳、白音、祐斗。他のみんなは後ろで観戦中。
「イッセー、なかなか上手ね。独走じゃない」
「実はレースゲーム得意なんですよ!」
「あらあら、意外な特技ですわ」
「イッセーくんうまいね。全然追いつきそうにないよ」
なんか今日はイッセーが輝いてる! こんなものでしか輝けないのが悲しいけど! でもおかしいわね。こういうのには俄然対抗心を燃やしまくる龍巳と白音が今日はなぜか静かにしてる。走りも速くもなく遅くもない。無難に走ってるって感じ。
「……イッセー、まだまだ甘い」
「え?」
「やりこんだ私達の実力、見せてあげます」
お~っと!? 龍巳と白音、急にコースアウト!? と思ったらショートカットしてイッセーの前に!!
「な、何だと!?」
「ここ、裏道いっぱい」
「お兄ちゃんとは年期が違います。私達に勝つなんて10年早いです」
そして龍巳と白音はイッセーと祐斗を周回遅れにしワンツーフィニッシュ。イッセーと祐斗は随分と遅れてゴールした。
「バ、バカな。この俺が……」
「イッセー、そのセリフ、死亡フラグ」
「私達に勝ちたかったらせめて200時間はプレイして下さい」
「ふ~ん、つまり2人は200時間近くプレイしていると……」
ビビクッ! 2人の肩が跳ね上がった。こっちを振り向いた顔も若干青い。いいなぁ~この顔。そそられる。
「ねえ2人共? 前にお母さん言ってたよね? ゲームセンターであんまり無駄遣いするなって。なのにこのゲームだけで200時間近くプレイしてるってどういうことかな? あれだけこっぴどくお母さんに怒られたのにもう忘れちゃったの?」
二人の顔がますます青くなった。ああ、なんだろうこの気持ち。ゾクゾクする。私今すっごい笑顔だよ。
「ひっ! か、火織お姉ちゃん、こ、このゲームやりこんだの怒られる前、だ、だから、だから……」
「それはおかしいわね? 怒られたのは1年以上前じゃない? 3ヶ月前にみんなで一緒にここに遊びに来たときはこのゲーム無かったはずだけど?……ということはたった3ヶ月で200時間もプレイしたと」
「か、火織姉様! このゲーム、家庭用でも発売したんです!」
白音も必死ね。その必死な、まるで活路を見出そうとしている顔がこれから絶望に染められると思うと……たまらないわね。私はそっとある場所を指さす。その方向をみんなが見てみるとそこには
『大人気レースゲーム! 家庭用ゲーム機に移植決定!』
という煽り文句の看板があった。もちろんこの大人気レースゲームっていうのは今イッセーたちがやってたゲームのことよ?
「まだ発売してないみたいね?」
「あ、あうあ、あ」
白音、もう言葉も喋れないみたいね。顔面も青を通り越して蒼白になってるし。
「さて、弁明は?」
「……」
白音、もう若干泣き始めてる……けどあれ? 龍巳が復活した?
「200時間、物の例え! 我ら、やったわけじゃない!」
……ふ~ん、そう来たか。確かにそうね。証拠があるわけじゃない。でもさっきまでの慌て様だと長時間プレイしてたのは明らかだし……
「イッセー、ちょっとお願いがあるんだけど」
「な、なんだ?」
「そのゲームのランキングを表示させて欲しいんだけど」
私は見逃さなかった。このとき龍巳の自信ありげな顔がさっと絶望色に染まるのを。そしてイッセーが画面を操作し表示されたのは
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
ランキングの上位が『TATU』と『SIRO』でほぼ埋め尽くされた画面だった。その画面に龍巳と白音はおろか、他のみんなも押し黙る。しかも2人にとっては運の悪いことに……ランキングの横には総プレイ時間が刻まれていた。どうやら一回一回プレイしてたんじゃなくて、メンバーカードを買って続きからプレイしてたみたいね。しかもそこに刻まれた時間数は
「316時間……ねえ?」
「「ひっ!」」
さて……
ガシッ!
私は2人の襟首を掴んで引きずる。とりあえずひと気のない所まで移動しよう。
「あ、あぁ、あ」
「た、助け」
2人がみんなに向けて助けを求めたみたいだけど私を止めようとする人は誰も「火織!」……いたよ1人。
「あ、あのね火織。今日はこういう席だしね? だからそういうのはまたこn「だから?」……なんでもありません」
黒姉、あっさり撃沈。
「というわけで私たちはちょっとだけ席を外すけどみんなは気にせず楽しんでくださいね?」
さてさて、人目につかない場所はあるかな~?
ちなみに『TATU』と『SIRO』でほぼ埋め尽くされたランキングの画面だけど、あと1人だけ2人に対抗してランキング上位に食い込んでる人がいた。っていうかランキングはその3人で埋め尽くされてたんだけどね? で、その人の名前は『AZA_』ってなってたんだけど、まさか……ね?
「ひぐっ、ひっぐ、う゛ぇ」
「えうっ、うっぐ、ひっぐ」
……う~ん、ちょっと怒りすぎちゃったかな? 今私たちはみんなと合流するためにフードコートに向かってる。いつの間にかもうお昼だからね。さっき連絡してそこで落ち合うことになった。
今私の右手は龍巳と、左手は白音と繋いでいて2人は繋いでない方の手を目元に持っていって泣きながら歩いてる。本当はお父さんたちが出張から帰ってきたらお母さんに報告してお母さんにも怒ってもらうつもりだったんだけど……それはやめとこうかな?充分反省しただろうし。
ちなみにこの2人、あのゲーム以外にもたくさんのゲームのメンバーカードを持っててそれぞれのカードに記載されているプレイ時間見てみたらぶったまげた。一体いくらつぎ込んだのやら。そんなこともあり当初より説教が長引いちゃった。決して楽しかったからじゃないんだからね?
……しかしこうなってくるとこの娘達の小遣い稼ぎも考えものね。禁止にしようかしら?
その後、フードコートでみんなと合流し思い思いのものを注文してお昼を食べた。合流したときは2人の惨状にみんなドン引きしてたけど他にもゲームをやりこんでたことをみんなに話すと少しは納得してくれた。さすがに今回は黒姉も擁護は出来なかったわね。慰めてはいたけど。まあそんなこともあり2人はなんとか持ち直しまたみんなの輪の中に入っていった。
ちなみにこの時アーシアが注文方法から料理の食べ方まで何一つ分からなくってヘコんだあげくみんなに慰められる羽目になったのはまた別の話ね。
お昼を食べた後は食休みを兼ねて今話題の3D映画を見た。アーシアは今まで3D映画を見たことがなかったばかりか、映画館で見たことも無かったらしく大画面で見る3Dの迫力に終始キャーキャー言っていた。私達の中で一番堪能してたわね。
映画を見終わった後には今度は洋服を見ようとみんなで洋服屋さんに突撃、その店が見える位置で部長と朱乃さん、そして私はちょっと休憩にお茶を飲むことになった。
「みんな元気ね。流石に私は疲れて来たわ」
「あらあらリアスったら、歳かしら?」
「張っ倒すわよ朱乃」
「私もちょっと疲れました」
「あなたは午前中説教してたからでしょう?」
「火織ちゃん、今回もお楽しみでしたの?」
「……少しだけ」
そんな取り留めのない話をしてたんだけど……ちょうど3人だけだし気になってたことを聞くことにしよう。
「あの部長、ちょっと真面目な話をしてもいいですか?」
「あら、何かしら」
「アーシアの今後のことです」
その私の言葉に2人共真面目な顔になる。
「実際の所どうするつもりですか? 友だちになったのはいいとして、彼女には本気で行く場所がありませんよ? 眷属にするならまた話は別でしょうけど」
その言葉に部長は持っていたカップを置くとハッキリと言った。
「私からアーシアに眷属の話を持ちかける気は無いわ」
正直に言ってその言葉はちょっとばかり意外だった。
「あの、なんでですか?」
「確かに彼女の持つ神器、聖母の微笑は悪魔でも癒すことの出来る強力なもの。加えて私の持つ最後の駒、僧侶とも相性は抜群。できることなら私の眷属になってほしいわ。それに彼女自身のことも私は気に入ってるしね。出来る事ならこれからも一緒にいたいと思うわ」
「あらあら、ではどうしてですの?」
「……問題は彼女の性格よ。もし私から眷属になるよう持ちかけたら彼女は心の内でどう思っていようと了承するでしょうね。助けてもらったお礼として。でもそれでは将来絶対に後悔するわ。悪魔となれば今まで信仰していた神に背くことになるし、お祈りもすることも出来なくなるもの。彼女がそれに耐えられるかどうか……私には自信がないわ」
……確かにアーシアなら部長に頼まれれば自分のことは二の次にして悪魔に転生しそうね。何かしら助けてもらった恩返しをしたいと思ってるでしょうし、ヘタすれば友達になってくれたお礼なんていうとんでもない理由で部長のお願いを聞き入れるなんていう間違った展開にもなりそうね。
「じゃあ、どうするつもりですか?」
「私が今考えているのは2つ。1つはこのまま普通の人間として学校に通ってもらうこと。お金のことで遠慮はされそうだけどその時は奨学金という形にして将来返してもらうということにすれば受け取ってもらえるでしょう。2つ目は私の領内に建てた小さな教会を与えてそこでシスターとして暮らしてもらうこと。裏の事情とは関係ない、本当の一般的なシスターとしてね」
「え!? ちょ、ちょっと待って下さい! 悪魔が教会を建てちゃっていいんですか!?」
「普通ならダメよ。そんなことをすれば天界側から抗議が来るでしょうね。アーシアの立場も危うくなるわ。でも、どんなことにでも抜け道はあるものよ?」
そう言うと部長は人差し指をピッと立てて得意げな顔で言った。
「私がアーシアに与えるのはあくまで教会そっくりな建物よ。十字架などといった聖具は一切付属しないね。で、その建物を与えられた後アーシアが十字架などを立ててその建物を教会に改造したとしても、それはもう私の知ったことではないわ。何と言ってもそこはもう私のものではなくアーシアのものなんですもの」
「な、なるほど。そんな手が……」
確かにそれならアーシアもまたシスターとしての生活を取り戻せるわね。悪魔の領内でのことだからまた聖女として祭り上げられることもないでしょうし。でも……
「でも出来れば私は学校に通ってほしいな」
「……そうね。シスターになるのは卒業してからでも出来るものね。今は学校でいっぱい友達を作って欲しいわ」
「そうですわね」
「部長~!!」
そんな時イッセーの声が。そちらを向くとシスター服から清楚な私服に着替えたアーシアが。似合ってるわね、誰のチョイスかしら? 若干顔を赤らめて、それでも嬉しそうな笑顔でこっちを見てる。幸せそうねアーシア。
「部長、朱乃さん、私達もそろそろ行きましょうか?」
「そうね、せっかく来たんですものね。もっと楽しみましょうか」
「あらあら、さっきまで疲れたと言っていたのが嘘のようですわね」
そんなことを言いながら私たちはアーシアのもとに向かった。
「つ、疲れました~」
今はもう夕方、さすがにみんな疲れたということで屋上のベンチでくつろぎつつ自販機で買ったジュースを飲んだりしている。で、龍巳と白音なんだけど、龍巳は私の膝の上、白音は黒姉の膝の上にいたりする。この2人、こっぴどく怒られるとその後必ず誰かに甘えるのよね。……怒られたことで拒絶されるんじゃないかとでも思ってるのかな? まるで甘えることで拒絶されないということを再確認するかのようだ。この2人はその傾向が強い気がする。なんせ白音も最初は私の膝に乗ろうとしてたし。血が繋がってないこと、気にしてたりするのかな……
「アーシア、今日はどうだったかしら?」
「はい、楽しかったです。すごく、とっても……」
あ、あれ?なんか楽しかったという割にうつむいちゃってるんだけど……
「? なにか気になることでもあんのかアーシア?」
「……イッセーさん、私、これからもこうしてみなさんと一緒にいられますか?」
!?
「も、もちろんじゃないか! だって俺達は友達なんだから! だよなみんな!?」
イッセーは私達に同意を求めるんだけど……
「……」
誰も、何も言えない。最初に動いたのは部長だった。彼女は座っているアーシアの前に行き、目線を合わせるようにその場で跪くとアーシアの手を取りゆっくりと話し始めた。
「アーシア、あなたと私たちは友達よ。それは変わりないわ。でもね、あなたは人間で私たちは悪魔。残念だけれど生きている時間が違うわ。私達が学園に通っている間、人間界にいる間は今日のように共に過ごす時間もたくさん取れるでしょうね。でもいつかは私は家を継ぐために冥界に帰らなければならない。そして私の眷属である彼女たちも共に冥界に行く事になるわ。二度と会えないというわけではないけれど……会うのは難しくなるでしょうね」
「そう、ですか……。そう、ですよね。なんとなくそうなんじゃないかって、思って、……うっ、く」
その言葉を最後に彼女は涙を流し始めた。それでも泣き声だけは上げなかった。そんな彼女を部長は優しく抱きしめてあげていた。
そしてどれだけ経ったか、日もすっかり沈んだ頃アーシアは部長の胸から顔を上げ言った。
「リアスさん、私をあなたの眷属にして下さい」
「え!?」
アーシアの言葉に部長は思わず驚きの声を上げる。っていうかここにいるみんな驚いて反応できないよ!
「ア、アーシア? あなた何を言っているのか分かってる? 悪魔になるということは」
「はい、主に背くということです。もうお祈りもすることが許されなくなるということです」
「ならどうして」
「今でも主に対する気持ちは変わりません。だけど……今までの私は主に依存していました。友達が欲しかった時でも私は祈るばかりで自分では何もしなかった。勇気がなかったんです。だから私が今までずっと一人ぼっちだったのはやっぱり全部自分のせいなんです。これからは私も自分の意志で、自分で決めていこうと思うんです。私はみなさんとずっと一緒にいたい。これは私の嘘偽りない気持ちです。それに……」
そう言って若干顔を赤くしつつイッセーの方をチラッと見た。
「「「!」」」
そしてそれにしっかり反応するうちの姉妹たち。
「だから、だから私……!」
「あなたの気持ち、よく分かったわ。だから落ち着きなさい。ね?」
「あ」
そう言って部長は再びアーシアを抱きしめ、頭を撫でてあげていた。
「もう一度聞くわよアーシア。悪魔になればもう二度と人間には戻れないし神に祈ることもできないわ。それでも悪魔になる?」
「はい」
アーシアはその問いにハッキリと答えた。
そうしてその日、アーシアは部長から僧侶の駒を貰い、悪魔へと転生した。
☆
今俺は幼なじみたちと一緒に家路についてる。アーシアが悪魔になると宣言した後、転生の儀式はその場ですぐ行われアーシアは悪魔に転生した。その後は改めてアーシアの歓迎会、そして部長の眷属が仮にではあるけれど揃ったことのお祝いにカラオケでどんちゃん騒ぎをした。なんで仮かって言うと黒歌姉と白音ちゃんは将来俺の眷属になるためだ。嬉しいやら恥ずかしいやら。
んで、そのどんちゃん騒ぎの結果何もかも初めてづくしだったアーシアは途中でダウンしちゃってたよ。今日は部長の住んでいる所に泊めて貰うということで部長がおんぶして帰っていった。ああして見ると全然似てないのに姉妹みたいだったな。
そして俺達も自分の家の前に着いた。普段ならここでお休みとかまた明日とか言ってすぐに別れるんだけど
「イッセー……」
「やっぱり我らも」
「いや、大丈夫だよ、多分」
「イッセー、何かあればすぐ呼びなさい」
「おう、その時は頼む」
そう言ってみんなようやく自分の家に帰っていった。さて、じゃあ俺も
「ただいま~」
両親はおそらくもう寝てるから小声で挨拶すると階段を静かに上がり部屋を目指す。そして俺の部屋のドアを開けるとそこには
「……」
「よお、起きたんだな」
そこには俺のベッドの上でこちらを睨みつつ体を起こしている天野さんがいた。
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