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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
  第19話 赤龍帝の逆鱗




 イタタタ……死ぬかと思った。

 俺達は床板を斬り裂いた火織と一緒に地下に落ちてきたんだけど、ここってただの地下じゃなくて岩盤を繰り抜いて作られてたから一緒にでっかい岩とかも落ちてきてめっちゃ危なかった。そんな中なんで俺が無事かというと……白音ちゃんにお姫様抱っこされてるからです。

 ごめんなさい、めっちゃ恥ずかしい! 床の崩壊が始まったと同時にいきなり白音ちゃんに抱っこされて、地下に着くまでずっとこのままだった。ちなみに白音ちゃん、岩が降り注ぐ中その岩の上をピョンピョン跳んで落石を避けてた。なんか猫又というより忍者と言ったほうがしっくり来る挙動だったよ。まあそれでも小さい石の破片は全部躱しきれなかったから、俺の頭はたんこぶだらけなんだが……。

 で、床と岩盤を斬り裂いてこんな災害を起こした火織だけど、彼女は一直線に岩を気にせず地下に降りてきていた。彼女に近づく岩は片っ端から粉々に斬り裂かれてたよ。一体どうやってそんなことしたんだ? あいつの抜刀術が眼に見えないくらい速いってのはいい加減理解したけど、今回は明らかに抜刀術じゃなかった気がする。なんたってあいつの手はバランスを取るかのように左右に大きく拡げてたから。なのに彼女の周囲には常に斬撃が飛び回ってたし、あれは明らかに抜刀術じゃないよな? なんというか、まるで彼女の刀から自動で斬撃が周囲に拡がっていたような? となるといつも使ってる不可視の抜刀術、七閃って言ったか? あれもなんだか怪しい気がしてきた。帰ったら問いただしてみよう。なんかズルしてる気がするよ。

 んで、最後に木場だけど、あいつも途中までは自分の魔剣で岩を払ってたんだけど最後は結局飲み込まれて今はどこにいるのか分からない。不憫な……。フリードは……どこ行った? まああいつは普通の人間だし木場同様下敷きかな?

「で、白音ちゃん。そろそろ離してくれないかな?」

「……もう少しこのままで」

 恥ずかしいから流石にそろそろ離して欲しいんだけどな。火織もなんだか優しい目でこっち見てるから、なお辛い。

「白音、イチャイチャするのはそのくらいにしてさっさとアレ、片付けるわよ」

 べ、別にこれはイチャイチャしてるってわけじゃ! ってアレ? アレってなんだ? 俺は火織の指差す方向に目をやるとそこには

「な、な……」

「イッセー……さん……?」

 こちらを見て絶句している堕天使の天野さんと十字架に鎖で貼り付けにされている……

「アーシア!!」

 そう! アーシアがそこにいた! ショッキングな出来事があって忘れてたなんてことはないんだからな!

「くっ! まだ儀式が終わるには時間がかかるというのに!」

「それは残念だったわね。悪いけどその娘は返してもらうわ……っ!」



ギィィィィィィィィィン!!!



 火織の言葉のすぐ後に火織は何かを刀で防いだ。

「あんまりチョーシこいたことしてくれてんじゃねーぞこのクソ悪魔が」

「フリード!?」

 瓦礫の中から銃を構えたフリードが出てきた! あんな崩壊の中生きてたのかよ。

「イッセー、こいつの相手は私がするわ。あなたは白音と一緒にアーシアを」

「ククク、一人でどうにかなるとでも思ってるんですかね~?」

 その言葉とともに瓦礫の中から複数のはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)が出てきやがった。こいつら元から地下にいた連中か?

「……こいつらを潰す意味も兼ねて天井崩したのにすぐに復活してくるなんて予想外ね。儀式場には手練を残していたということかな。これは私のミスね。イッセー、早く行きなさい」

「ま、待てよ火織!? この人数を一人で相手にするつもりかよ!?」

「優先順位を考えなさい。このまま儀式を続けられたらアーシアが手遅れになるわよ。それに……誰が一人なのかしら?」

 ……え?

「ぐぇ!?」

「ぎゃ!!」

 火織の言葉とともに一番後ろのはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)が倒れ、そこには

「正直土埃ひとつ付けずにここまで降りてきた火織さんの剣技には嫉妬を覚えるよ」

 服がところどころ破け、土埃で汚れた木場がいた。……改めて思うけど木場って不運の星の下に生まれたんじゃないだろうか? 俺イケメン嫌いなはずなのにあいつには同情しか感じないよ。

「さて、ここは僕と火織さんが相手をするよ。君は早くアーシアさんを」

「……2人共、無事でいろよ!!」

 俺は一直線に白音ちゃんと一緒にアーシアの捕らえられている祭儀場へと向かった。

「行かせると思ってんのか!?」

「思ってるわよ!!」

 後ろから戦闘の始まる音がするけど今は前のみを見る。信じてるぞ火織!!

「クッ! 邪魔をするな!!」

「させません!」

 天野さんが羽をはばたかせて飛び上がりつつ光の槍を投げつけてくるけど白音ちゃんが横殴りですべての槍を叩き折ってる。光は俺達悪魔にとって猛毒のはずなんだけど白音ちゃんはモノともしていない。これが戦車(ルーク)の防御力なのか?

「お兄ちゃんは早くアーシアさんを開放してください。開放されれば儀式の術式を止められるはずです」

「分かった!」

 急いでアーシアの元まで駆けつける。アーシアは白いワンピースのようなものに着替えさせられた上で鎖で十字架にがんじがらめにされていた。

「イッセーさん」

「もう大丈夫だぞアーシア! 今助けるからな!」

 俺はすぐに鎖の結び目、もしくは固定して繋ぎあわせてる所を探すけど……無い!? この鎖、全部連続した一本だぞ!? もしかして魔法で作られたものか!? 俺じゃあこれを切る手段もないしアーシアを助けられない! クソッ! 戦闘を全部任せて、その上アーシアを助けることも出来ないなんて俺完全に足手まといじゃねーか! こんな事なら部長に言われた通り部室にいるべきだったのか!?

「……いや、まだだ! プロモーション! 戦車(ルーク)!」

 これで俺の力はさっきまでより上がったはず! それに俺にはまだ神器(セイクリッドギア)が、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がある!俺は瞬時に左手に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を呼び出した。でも俺はまだ1回も赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を動かせたことはない。こんな土壇場で動かせるのか? いや、動かすんだ! 部長は言っていた。想いの力が神器(セイクリッドギア)を動かすと! 今がその時なんだ!

「動け! アーシアを助ける力を俺によこせ! 神器(セイクリッドギア)!!」

『Dragon booster!!』

「動いた!」

 確かに動いた! 手の甲の宝玉の部分が光り出したぞ! 確か部長たちの説明では赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は俺の力を10秒毎に2倍にしてくれるはず。

『Boost!!』

 これで4倍! 俺はアーシアを縛ってる鎖を掴み思いっきり鎖を引きちぎろうとする。

「……んぎぎ!!」

 でもビクともしない! クソッ! 4倍でもダメなのか!? 元の俺が弱すぎるからダメだってのか!?

「もっとだ! もっと力をよこせ!!」

『Boost!!』

これで8倍! でも……まだちぎれない!

「イッセーさん……もう……」

「諦めんな! 必ず助ける! だから諦めないでくれ!」



ぴきき……



 その時、本当に小さな音、普段なら聞き逃してしまうような小さな音が鎖からした!

「こっのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! ぶっ壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

『Boost!!』

 そして



バキィィィィィィィィィィィン!!



 鎖がちぎれた! それと同時に足元でかすかに光ってた魔法陣も消えた! 儀式が止まったんだ!

「助かったぞアーシア!もう大丈夫だ!」

「イッセーさん!!」

「おっと」

 アーシアが急に抱きついてきた! うあ、柔らかい物が胸に……

「……楽しそうですね、お兄ちゃん」

「おわぁ!? し、白音ちゃん!? いつからそこに!? っていうか堕天使は!?」

すっ

 白音ちゃんが指差す方向を見てみると……天野さんが口から血を垂らしつつ膝をついていた。目立った外傷は見当たらないけど……確か白音ちゃんが使う仙術って内臓のみを傷つけることも出来るんだっけ?

「よくも、よくも至高の堕天使となるこの私を……! ゲホッ」

 天野さんは血を吐き出しつつも立ち上がった。あの状況でまだ立てるのかよ。彼女はまたしても光の槍を作りこっちを睨みつけてきた。

「許さない、絶対許さないわよ悪魔ども。殺してやる。殺してなんとしてでも聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を手に入れて至高の堕天使になるのよ。そして私は愛を手に入れる。アザゼル様の、シェムハザ様の愛を! そして私を馬鹿にした連中を見返すのよ!!」

 ……今こいつ、なんて言った?

「まだ言いますか。いいかg「待ってくれ、白音ちゃん」お兄ちゃん?」

 白音ちゃんが俺のことを訝しげに見てくるけど、それに対応するほど今の俺には余裕が無い。こんなにムカツいたのは、こんなにキレたのは久しぶりだ。拳は血が出るほど握りしめてるし顔もかなり強張ってるけど頭は妙にクリアに感じる。

「こいつは俺に任せてくれ。一発ぶん殴ってやらねーと気が済まない。白音ちゃんはアーシアを守ってくれ」

「でも「頼む」……危なくなったら間に入りますから」

 ありがとう白音ちゃん。俺はアーシアを白音ちゃんに任せると天野さんの前まで歩いて行く。天野さんは動かない。ダメージが相当大きいか?

「貴様のような下級悪魔ごときに何が出来るっていうのよ。おまけに神器(セイクリッドギア)は力を倍にするだけの龍の手(トゥワイス・クリティカル)。いくらこっちは手負いでも、あんたごときに遅れは取らないわ」

「言ってろよ。俺はお前をぶん殴らなきゃ気がすまない。お前は俺を怒らせた!」

『Boost!!』

 俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)をつけた腕で天野さんに殴りかかる! けどそれは上空に逃げられてあっさり避けられた。

「ハッ! その程度の動きで私を捉えられるわけ無いでしょ!?」

 そして天野さんが槍を投げ、俺に迫る。身体を捻って躱すけど

「ぐあっ!!」

 クソッ! 躱しきれなくて槍が足に! めちゃくちゃ痛ぇ! 光の毒ってこんなに痛いのかよ! 痛みが体中に広がって意識が飛びそうだ!

「ほら! もう1本!」

 天野さんが投げたもう1本の槍が反対の足に突き刺さった。意識も朦朧としてきた。たまらず床に倒れる。へへ、こりゃまじでやべーかも。

「ハッ! その程度で私の愛の邪魔をしようなんて笑わせるわ!」

「何が……愛だ」

「……何ですって?」

「何が……愛だって……言ってんだよ!」

『Boost!!』

 俺は足に突き刺さった槍を抜くと同時に立ち上がった。力が沸き上がってくる。今ので何回目の倍加だっけか?

「何よ、何なのよあんた。下級悪魔ごときが私の槍に貫かれてなんで立てるのよ? そ、それに、何よその魔力!? これは上級悪魔のそれじゃない!? なんで龍の手(トゥワイス・クリティカル)ごときしか持ってないあんたがそんな大きな魔力を持ってるってのよ!?」

 へへ、やっと気づきやがったか。

「一つ教えてやるよ。俺の神器(セイクリッドギア)龍の手(トゥワイス・クリティカル)じゃない。なんでも赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)なんていうシロモノらしいぜ?」

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!? 神滅具(ロンギヌス)が貴様のようなガキに!?」

 おうおう、目に見えて震え始めやがって。一歩踏み出す毎に一歩後退してんじゃねーか。こちとらいつ倒れるか分からねーくらい死に体だってのによ。まあぶん殴るまで倒れる気はねえけどな!

「天野さん。最後になんで俺が怒ってるか教えてやるよ。それは俺の前で愛を侮辱したからだ」

「な、何?」

「お前の愛は薄汚れてる。俺だって愛が何なのかはっきりと分かってる訳じゃねえ。でもてめえの愛が薄汚れてるってことくらいは分かる。人から奪って、蹴落としてまで手に入れるもんが愛であるわけがねえ!! そんな薄汚れちまったら愛なんて手に入るわけねーだろうが!!」

『Explosion!!』

 その音声とともに俺の身体から龍巳が手に纏っていたようなオーラが吹き出した! いける! 俺は一気にかけ出した。ただ一発彼女の顔面に入れるために。

「それでもまだてめえが愛を得られるなんて思ってんならもう一回愛がなんなのか……!」

「ひっ! く、来るなぁ!!」

 な!? まだ槍を作って投げるだけの余力が!? やばい! この距離じゃ避けられ……














「七閃!」

パキィィィィィィィィィィィィン!

 俺の目の前で光の槍が砕け散った。今の掛け声と斬撃、火織か? ヘヘっ! さすが俺の幼馴染! ますます惚れちまうだろーが!!

そして俺の手が逃げる彼女の手を……捕まえた!

「ひっ!」

「考え直しやがれ!!!」

 俺の何回も倍加させた拳が天野さんの顔面に突き刺さり

「ギャァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!!」

 天野さんは派手にぶっ飛んで壁に激突して動かなくなった。はは、ざまーみろ。

「あ」

 ヤベ、身体が支えらんねー。もう、限界……



ぽすっ



「ありがとうございます。イッセーさん」

 あ、この声、アーシア? 体が暖かい。痛みも引いていく。神器(セイクリッドギア)で治療されてんのか俺。って俺、アーシアの胸にダイブしてんのか!? 身体動かねえけど何とかしてどかなきゃ火織に誤解され

「よく頑張ったわねイッセー。カッコ良かったわよ」

 あ、火織。頭撫でてくれてる。

 火織、俺さ、少しはお前に近づけたかな?

 いつか絶対追いついてみせるからさ……その時は……







 俺は暫くの間アーシアの胸に支えられながら火織に撫でられ続けた。


 
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