ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
第14話 悪魔のお仕事
「うおりゃあああああああああああああああああ!!」
今俺は夜中の住宅街でチャリを漕いでる。理由は悪魔召喚用のチラシを配るため。なんでも最近の悪魔はこのチラシに書かれている魔法陣から呼び出されて契約をするらしい。なんか色々とイメージ壊れるよな。この仕事は本来使い魔の仕事らしいんだけど、仕事を覚えさせるために新人悪魔にもさせるらしい。だから俺以外にも黒歌姉に火織、白音ちゃんも配ってるんだけど……
「あ、お兄ちゃん。私は配り終わりましたのでお先に失礼します」
「ちっくしょ~~~!! なんでみんなそんなに早く終わるんだよ!?」
俺以外の新人3人は屋根の上をヒュンヒュン走りながらさっさと終わらせていた。さっき黒歌姉と火織も終わらせてたし、結局また今日も俺が最後かよ!? まだ3分の1も終わってないってのに! 同じ悪魔なのにこの身体能力の差はなんだ!? 百歩譲って黒歌姉と白音ちゃんは元が妖怪だからとして、火織は俺と同じ元人間だよな!? どうしたらあんなこと出来るようになるんだよ!?
「イッセー、次の角右」
「了解!」
ちなみに俺が乗ってるチャリの後ろには龍巳が乗ってる。いつまた俺が堕天使に襲われても大丈夫なように護衛してくれてるそうだ。本当にありがたい。俺にはもったいないぐらいの幼馴染だ。……でもやっぱり守られてるだけってのも嫌だな。
「なあ、龍巳。俺もいつかあんなふうに強くなれるかな?」
思い浮かべるのは天野さんに襲われた時、投げつけられた7本の光の槍を一瞬で全部砕いた火織の姿。昔剣道大会で優勝した時のあの威風堂々とした背中に俺は惚れたんだけど、今はそれだけじゃない。あの背中を、俺の惚れたあの女を俺は守りたい!
「イッセーの神器、強力。使いこなせば強くなる」
使いこなせば……か。神をも殺せるという規格外の力。そして歴代所有者たちを狂わせてきた力……。俺に使いこなす事なんて出来るのか?
「焦ることない。ゆっくりでいい。火織お姉ちゃんもあそこまで強くなる、時間かかった。全部イッセー、強くなるまで守るため。だから……」
そう言って龍巳は俺の背中に抱きついてきて
「イッセーもゆっくり強くなる。狂っちゃダメ。死んじゃダメ」
「龍巳……」
そうだよな。みんな今まで俺のために頑張ってくれたんだもんな。なら次は俺が頑張る番だ。
「俺、頑張るよ。今度は俺がみんなを守れるように。みんなより強くなるよ」
「ん。待ってる」
そしてあの背中を守れるように。そしたらその時こそ俺の気持ちを……って!?
「イタタタタタタ! 痛い痛い!! なんでつねるの!?」
「イッセー、何考えてた?」
「な、何も!? ただがんばろうって思っただけだよ!?」
「……本当?」
「も、もちろんだ」
「(……どうせまた火織お姉ちゃんのこと)」
な、なんで龍巳いきなり不機嫌になってるんだ? と、とにかく早くチラシ配り終わらせて帰ろう。この空気はちょっと苦しい。
「ただいま戻りました~」
「ただいま」
「おかえりなさいイッセー。今日は昨日より早かったわね? だいぶ慣れてきたのかしら?」
部室に帰ると俺達の主である部長が返事をしてくれた。火織たちはというと……めっちゃくつろいでるな。俺は自転車使って汗だくになって帰ってきたというのに3人は汗1つかかずソファーに座って紅茶を飲んでいた。俺は暑くて紅茶なんて飲めないわ。
「あれ? 龍巳、どうしたの? なんか不機嫌そうだけど何かあった?」
「……何も」
「? そう?」
龍巳はなんかまだ不機嫌だ。お姉ちゃん大好きっ子なのにその姉の火織にもそっけない。俺ほんと何したんだ?
「(またかにゃん?)」
「(うん、また)」
「(お兄ちゃんも大概ですね)」
と思いきや火織を除いた姉妹たちでヒソヒソ話してる。火織も首捻ってるぞ? 一体何なんだ?
「ふふ、なかなか複雑な関係ね」
「あらあら、そうですわね。見ていてなかなか楽しめそうですわ」
「「??」」
なんか部長と朱乃さんが言ってるけど意味はさっぱり分からないな。そんな俺達を見て黒歌姉たちはため息ついてるし、一体何なんだ?
「さて、話はそれぐらいにして」
パンッと部長は手を叩いて話し始めた。
「みんな一週間よく頑張ったわね。今日でチラシ配りは終了。今日からみんなにも契約を取って来てもらうわ」
お! ついにチラシ配りも終了か。そして契約、上級悪魔になるための第一歩らしいしがんばろう!
「ではまずイッセー。魔法陣の中央に立ちなさい。朱乃、ジャンプの用意をお願いね。イッセー、手のひらをこちらに出してちょうだい」
俺が左手を差し出すと、部長は俺の手に魔法陣を書き込んだ。
「これは転移用の魔法陣を通って依頼者の元へ転移するためのものよ。契約が終わればここに帰してくれるわ」
へ~。転移もそうだけど魔法ってホント便利だな。俺もいろいろ自分で使えるようになりたいな。服が透けて見える魔法とか。
「朱乃、準備はいい?」
「はい、部長」
「イッセー、到着後のマニュアルも大丈夫よね?」
「はい!」
「いい返事ね。じゃあ、行って来なさい!」
そして俺は光に包まれ、光が止むとそこには目を丸くしている部長たちがいた……ってええええええええええええええええええええええええ!? なにこれ!? どういうこと!? 俺依頼者のもとに転移したんじゃないの!?
「イッセー」
「はい」
部長が困り顔で話しかけてくる。
「残念だけどジャンプできないみたい。子供の魔力でも魔法陣ジャンプは出来るんだけど……」
え!? それってもしかして……
「ぷっ! にゃはははは! こ、子供以下の魔力って! イッセーひどすぎにゃ!」
「……無様」
「……」
「(原作と違って剣道やって体力もあるからジャンプぐらいは出来ると思ったんだけどな……)」
黒歌姉そんなに笑うなよ! そして白音ちゃん! ボソッといってもしっかり聞こえてるからね!? 龍巳も顔真っ赤にして笑うの耐えるなよ! 肩震えてるし笑われるより地味にくるよ! そして火織! そんな可哀想なものを見るような目で見ないでくれ! 地味に一番つらい!
「あらあら部長、どうしましょう?」
「……依頼者を待たせる訳にもいかないわ。イッセー」
「はい!」
「前代未聞だけれど、現地へは足で行ってちょうだい」
「足!?」
「ええ、魔力がないならしょうがないわ。チラシ配りと同様に行って来なさい」
「チャリで行けってことですか!? そんな悪魔が存在しちゃっていいんですか!?」
ズビシッ!!!!
って無言で指差すなよ神裂シスターズ! そんなに俺をいじめて楽しいか!?
「ええ、楽しいにゃん」
「勝手に俺の心を読むな~~~!!!」
「ほら行ってきなさい! 悪魔の仕事は契約を取ってくることよ! 人間をまたせてはダメ!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! いってきますぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「龍巳、またお願いしていい?」
「ん、我も行ってくる」
「何かあったらすぐ知らせるにゃん」
「ん」
ちくしょう! また龍巳を後ろ乗っけてチャリ漕ぎかよ!? こんなんでほんとに上級悪魔になれるのか!?
30分ほどチャリを漕いでようやく依頼者のいるマンションに着いた。
ピンポ~~~~~~~~ン
『開いてますにょ。どうぞにょ』
……にょ? 何だにょって? しかも今の声めっちゃ野太い男の声だったぞ?
とにかくこうしてても仕方ないので覚悟を決めて扉を開けるとそこには……猫耳にゴスロリを着た筋骨隆々の漢がいた。いや何を言ってるか分からないと思うけど俺も何言ってるのか分からない! 何このありえない変態!?
「いらっしゃいにょ。ミルたんだに゛ょ~~~~!?」
っていきなり変態が吹っ飛んだ~~~~!? 後ろを見ると龍巳が俺の背後に隠れながら手を変態に向けて突き出していた! 何!? 出会い頭に攻撃したの!? そんなに怖かったのか!? よく見ると若干震えてるし目を見ると完全に涙目だ。龍巳って話ではかなり強いドラゴンじゃなかったけ? そのドラゴンをも怖がらせる変態って一体……。
「いきなり何をするにょ。痛かったにょ」
ってうおい!? ドラゴンの一撃受けて痛かっただけかよ!? このおっさん何者だ!?
「あ、え、え~と。すみません。グレモリー眷属を召喚しましたか?」
と、取り敢えず仕事の話に持って行こう。そんでさっさと帰ろう。龍巳のためにも、俺の精神衛生上のためにも。
「そうだにょ。お願いがあって悪魔さんを呼んだにょ。ミルたんを魔法少女にして欲しいにょ」
「異世界にでも転移してろこの変態」
もう即答だよ。俺に何かできるわけ無いじゃん。
「変態はひどいにょ!? それにそれはもう試してだめだったにょ」
「って試したんかい! いやその前に異世界になんてどうやって行ったんだよ!?」
「でも異世界に行っても魔法の力をくれるようなモノはなかったにょ。こうなったらもう宿敵の悪魔さんに頼むしかないにょ」
そう言ってミルたんは俺の手をガシッと掴むと
「悪魔さん!! ミルたんにファンタジーな力をちょうだいにょぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「いやもう十分あんたの存在自体がファンタジーだよ!!」
ああもうどうして仕事一発目からこんな訳の分からん依頼者を引き当てちゃったんだよ俺!? 一体どうしたら「……これ」って龍巳?
「これ、飲む」
と言って龍巳は手のひらから一匹の黒い蛇を出した。でもミルたんのことが怖いのかまだ俺の後ろに隠れて手だけを突き出してる。
「蛇? これを飲めばいいにょ?」
「ん」
なんか知らんけど話は勝手に進みミルたんは蛇を受け取るとなんの迷いもなく蛇を飲み込んだ。よくあれを疑いもせず飲めるな、などと思っていると……
ズンッ……
おわぁ!? なんかミルたんの周りにオーラが見えるぞ!? つーかさっきより筋肉も膨張してるような!?
「す、すごいにょ! 力が沸き上がってくるみたいにょ! 今なら魔法が使えるような気がするにょ!!」
そう言ってミルたんは拳を腰だめに構えて
「ぶぅぅぅぅぅるあああああああああああああああああああああああ!!!!」
思いっきり突き出した!? それ魔法じゃなくて拳法だよね!? そんな俺の思いとは裏腹に……
ズズゥゥゥゥゥゥゥン
マンション全体が大きく揺れ部屋の壁一面が綺麗に吹き飛んでいた。な、なんてこった。とんでもない変態にとんでもない力を授けちまった。
その後俺と龍巳は代価を貰うといち早く部室に戻った。っていうか逃げ出した。もう一秒でも早くあの摩訶不思議な漢の娘から遠ざかりたかった。
後日アンケートが送られてきており、中身を読んでみるとそこには最大の讃辞と毎日異世界に行っては貰ったファンタジーの力で悪を根絶やしにしていることが書いてあった。
俺と龍巳はこれを読んだ後当分の間とんでもない存在にとんでもないものを与えてしまったと後悔しつつ震えていた。
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