ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
第13話 非日常への入り口
「や、どうも」
放課後、リアス先輩の使いとしてやってきたのは原作通り木場くんだった。しかし木場くんが入ってくると教室の空気も変わるわね。男子は彼に殺気を向けてるし女子は色めき立ってるよ。……私の隣にも約1名彼に殺気を向けてる子がいるよ。あんたもこれからモテ始めるんだから落ち着きなさいイッセー。
「で、私達はどうすればいいのかしら?」
「……僕に付いて来てもらえるかい?」
「ん、了解。行きましょうかみんな?」
私は周りにいるイッセーたちに声をかける。昨日言われた通り、学年の違う黒姉と白音もこの教室で待機していた。
「そ、そんな。木場くんが神裂さんたちと一緒に……」
「やっぱりあの噂って……」
「しかもなんで兵藤まで一緒に歩いてるのよ!」
「ああ! お姉さまが汚れてしまう!」
……うん。なんか昨日イッセーが言ってた噂って本当に流れてるんだね。こんなに広がってるのに私今まで全然気付かなかったよ。
結局校舎を出るまで周りの視線とヒソヒソ声は続いた。結構目立つ集団だからね。学校一のイケメン王子に神裂家の美人四姉妹、それにエロで有名な野獣のイッセー……うん、これ一体周りにはどんな集団に見えてるんだろうか? 明日周りになんて言われるか少し不安になってきた。
「いや~、なんか変に注目集めちゃったね。お互い明日はなんて言われるかな?」
「……そうだね」
「……ねえ?そんなに警戒しなくてもいいんじゃない? 知らない仲でもあるまいし」
「……」
木場くんはチラッと私の後ろを見るとそのまままた前を向いてしまった。うん、今ので分かった。私も後ろを振り返る。黒姉たちがイッセーを三方向から取り囲んで木場くんをめっちゃ警戒していた。こんな警戒されてちゃ木場くんも生きた心地しないよね。殺気すごいし。イッセーも最初は木場くんに殺気向けてたのに今ではオロオロしてる。まあしょうがないかな? 今の黒姉たち私でも怖いし。……これは私がなんとか舵取りしないとグレモリー眷属と即戦争だね。私嫌だよ? ヒロイン同士で殺し合いのあげくその後に怒ったシスコン魔王と戦うのなんて。
そんなこんなで私たちは旧校舎のオカルト研究部の部室の前まで連れてこられた。知ってはいたけど使われていない旧校舎がこんなに綺麗だとやっぱり違和感あるね。
「ここに部長がいるんだよ」
ちょっと木場くん。私は事情を知ってるからいいけど、他のみんなにはその説明じゃわからないよ? 木場くんはそのまま扉をノックした。
「部長、連れてきました」
「ええ、入ってちょうだい」
リアス先輩の声が中から聞こえると同時に木場くんが扉を開けて私達を中に招き入れる。中は……すごいね。あっちこっち魔法陣だらけだよ。女の子がいる部屋としてはどうかと思うんだけど。なんか黒姉たちはこの部屋見てさらに警戒してるし。ああ、刻一刻と状況が悪化していく。そして部屋の奥には厳しい表情でソファーに座っているリアス先輩と朱乃先輩が……ってあれ? なんで? リアス先輩は初顔合わせの日にはシャワー浴びてたんじゃなかったっけ? 私達相当警戒されてる?
「ようこそ、兵藤一誠くんに神裂さんたち。歓迎するわ。」
「あの、そんな警戒心丸出しな表情で歓迎するなんて言われても……」
「とりあえずそこのソファーに座ってもらえるかしら?」
スルー!? 私の今の発言ガン無視ですか!? この状況、一歩間違うと相当やばいかも……。私達がソファーに座ると朱乃先輩がお茶を出してくれ、ついに話が始めった。
「それでまずは兵藤一誠くん、昨日神裂さん達からはどこまで聞いたのかしら?」
「は、はい! 先輩たちが悪魔だということ、他に天使や堕天使がいること、それから戦争などの歴史なんかを軽く聞きました! 後、先輩が貴族の家の次期当主でもう2人が悪魔の駒で転生した先輩の下僕悪魔であることなんかも聞きました! それから神器関連のこと、俺も持っていることも聞きました! まだ少し半信半疑ですけど……」
「そう、つまり私達や私達に関わることはあらかた彼に説明したということでいいのかしら?」
「ええ、まあ大体は説明したかと。まあイッセーの頭じゃどこまで覚えてるか疑問ではありますけどね」
「そう、じゃあお話の前に自己紹介をしましょうか」
そう言うと先輩たちは背中から悪魔の翼を生やした! おお! なんだかんだで初めて見るよ。
「僕は木場祐斗。兵藤くんとは去年剣道の試合で会ったよね? よろしく」
「三年生、姫島朱乃ですわ。一応オカルト研究部の副部長も兼任しています。よろしくおねがいしますわ」
「そして私が彼らの主、グレモリー家次期当主のリアス・グレモリーよ。よろしくね」
「「よろしくお願いします」」 「「「……」」」
私とイッセーは彼らの挨拶に応えるけど……うちの姉妹はまだ警戒してるよ。そのせいで向こうもまだ警戒を解いてくれないし、このままじゃ良くないよね。この際仕方ないか。
「あの、グレモリー先輩。少しいいですかね?」
「? ええ、どうぞ」
「では」
私はそっと立ち上がりちょっと殺気を開放すると
ゴゴゴン!!!
瞬時に取り出した七天七刀の鞘で黒姉、龍巳、白音の頭を思いっきりぶっ叩いた。ええ、ぶっ叩いてやりましたとも! 殺気に反応した先輩たちもその後の私の行動に呆気にとられてる。イッセーも目を見開いてるね。目はどちらかと言うと私の刀の方に行ってるような気がするけど。まあ今はそんなことは脇に置いておいて……
「相手が挨拶してるのに返事をしないってどういうことかな?」
私はにこやかな笑顔で頭を抑えてうずくまる家の阿呆どもの前で仁王立ちになった。
「先輩たちは礼儀正しく挨拶してくれたんだよ? それなのにいつまでも殺気丸出しで反応しないってどういうことかな? お姉ちゃんそんな娘に育てた覚え無いんだけど?」
「わ、私のほうがお姉t「何かな? 黒歌」ごめんなさい」
黒姉、床に土下座である。それはもう見事な土下座である。その隣では龍巳と白音が抱き合って怯えていた。2人がこんなに怯えるなんて趣味にお金つぎ込みすぎてお母さんに怒られた時以来かな? とにかくいい機会だし今後もこのようなことがないようにしっかり言っておこうかしら。
「いい? 黒姉。長女の黒姉がそんなだと妹の私達までそんな目で見られるのよ? そこのところ分かってる?」
「は、はい! 分かってます!」
「じゃあ分かっててどうしてあんな態度とったのかな?」
「そ、それは……」
「それは?」
「う゛ぅ……」
黒姉泣きそうね。でもちゃんと言い聞かせないとだし……不謹慎だけどちょっと楽しくなってきた。泣きそうな黒姉可愛いし。今なら怒るとき執拗に相手を追い詰めるお母さんの気持ちが分かる気がする。
「龍巳に白音も」
「「は、はい!」」
「あなた達がそんな態度取るようだと一体どんな教育したんだとお母さんやお姉ちゃんである私が言われるんだけどそこのところどう思ってるのかな?」
「「ご、ごめんなさい!」」
「ん? お姉ちゃんは謝ってほしいんじゃなくてどう思ってるか聞きたいんだけど? ねえ、ちゃんと質問に答えてくれるかな?」
「「う゛ぅ……」」
「(……ね、ねえ、彼女って怒るといつもあんなに怖いの? なんか背後に般若が見えるのだけれど)」
「(いえ、火織って普段そんなに怒らないんですよ。っていうかあんなに怒ってるの初めて見ました。普段怒るのは彼女たちのお母さんですから。ちなみに彼女たちのお母さん、普段はすごい優しいんですけど怒ると今の火織より怖いです)」
「(……それはすごいわね)」
なんかオカ研のみんなとイッセーが部屋の隅まで移動してヒソヒソ話してる。イッセーも早速先輩たちと仲良くなったみたいね。お姉さん安心だわ。これなら少しの間こっちにかかりっきりになっても大丈夫そうね。
私が今までよりさらに笑顔になると黒姉たちは絶望したような表情を浮かべた。
時間にして約30分、適度なところで説教を切り上げるとそこには真っ白になった黒姉たちがいた。……ちょっとやりすぎたかしら? 途中からちょっと楽しくなっちゃったんだけど私ってもしかしてSなのかな? それだとちょっと悪いことをしたような……でもここでちゃんと言い聞かせておかないと将来困るのはこの娘たちなんだしここはちょっとキツくってもちゃんと分からせるべきだったのよ。だから私は悪くない。
「(彼女って朱乃並のドSなのではないかしら?)」
「(え!? 朱乃さんもあんなふうにSなんですか!?)」
「(私もあそこまではちょっと……)」
「(あそこまですごいのはそうめったにいないと思うよ)」
なんか先輩たちまだヒソヒソやってるんだけど。でもそろそろ戻ってきて欲しいんだけどな。
「あの……」
「「「「は、はい!」」」」
「お見苦しいところを見せてしまってすみません。そろそろ話に戻ってもいいでしょうか?」
「え、ええそうね。こっちもイッセーが聞いた話を詳しく聞いて間違いがないかどうか確認できたし、そろそろあなた達の話を聞かせてもらえるかしら?」
「はい。あ、でもその前に……あなた達、先輩たちに言うことがあるでしょう?」
「「「態度悪くしてすみませんでした!!!」」」
三人とも並んで綺麗な土下座だね。私もそこまでしろって言ってないんだけど。先輩たちもちょっと引いてるじゃない。
「え、ええ。その件に関してはもういいから座ってお茶でも飲みながら話しましょう? あなた達が悪い子じゃないってことも分かったし」
うん、なんか雰囲気もさっきのような殺伐としたものじゃなくなったし、結果オーライかな? それにイッセーたちもお互い名前で呼び合うようになってるようだしこれならもう波風立たずに話せそうね。
「分かりました。じゃあまずは私から。私はまあ神器を持った普通の人間です」
「「「「普通の人間?」」」」
「え!? なんでそこで疑問形!? っていうかイッセーまで!? あんたは子供の頃からずっと一緒にいるんだから分かるでしょ!? なんでみんな目を逸らすのよ!?」
「いやだって、なあ?」
「うん。だって、ね?」
「あらあら」
「普通の人間はあんなに怖くないわ」
「……あれはしょうがなかったんです。この娘たちを真っ当な道に導くのがお姉ちゃんの勤めなんです。その為なら心を鬼にして怒る必要があるんです」
「途中から楽しそうだったけど」
「……」
「目を逸らすってことは自覚はあったようね」
くっ! 反論できない! 確かに途中から少し楽しかったけど! でも怒らなきゃいけなかったってのもちゃんと本心なんだから!
「と、とにかく話を続けましょう! 私が神器を持ってるってのはそちらも分かってたんですよね? 木場くんを通して何度も部活に誘われましたし、私を下僕に狙ってました?」
「……まあ気付いてるようだし隠しても仕方ないわね。ええ、良ければ私の下僕になって欲しいと思ってたわ。剣道大会連続覇者で悪魔の祐斗以上の剣技を持っていて、しかも神器持ち。知っていれば悪魔なら誰でも下僕にしたいと思うはずよ。私はしないけど、悪魔によっては無理矢理にでも下僕にしようとする輩もいるかもね」
「そういう意味では最初に接触したのがグレモリー先輩のような優しい方でよかったです。……会長とかも狙ってたりしたんですかね?」
「あら、ソーナのことも知ってたのね。彼女も密かに狙ってたと思うわ。心当たりない?」
「……そういえば部長でもないのにエースだからって部活連合会議に呼ばれたり、会議後もお茶しないかって何度か誘われましたね。都合悪くて毎回断っちゃいましたけど。」
「おそらくその場で下僕になってくれないか聞こうとしていたんでしょうね。それだけあなたは優秀に見えていたってことよ。まあ実際はそれよりはるかに優秀だったみたいだけど。私達の世界のことを知ってるだけじゃなくて、神器ももう既に扱えてるようだし。その刀があなたの神器でいいのかしら?」
リアス先輩が私の横に立てかけてある七天七刀を指さしながら聞いてくる。
「正確にはこれも私の神器です。私の神器は」
そう言って私は床に手をかざす。すると
ザンッッ!!
部屋中に始解前の様々な拵の斬魄刀が咲き乱れた。
「!? これは……全部魔剣? それにこの数……そう、あなたの神器は祐斗と同じ魔剣創造なのね。全国大会を優勝するほどの剣技に魔剣創造。相性は抜群ね。それにこの魔剣から伝わるオーラの質、祐斗以上に使いこなせているということかしら」
ちなみに私は何も言ってない。先輩が勝手に魔獣創造を魔剣創造と勘違いしただけよ。だから私は嘘なんかついていない!
「私に関して言えるのはこのくらいですかね? じゃあ次に龍巳、あなたのことについて教えてあげて」
「ん。分かった」
そう言って今まで黙っていた龍巳は先輩たちに向き直って説明を始めた。
「我、龍」
……え? それで終わり? いやもっと言うことあるでしょ!? イッセーも先輩たちも完全に固まってるじゃない! そして黒姉! 笑ってないでフォロー入れなさいよ! 長女でしょ!? そして龍巳! なんであんたはそんなにやりきったような顔してるのよ!?
「……な、なあ火織。どういうこと?」
「え!? なんでここで私に振るのイッセー!?」
「いやだって……」
いやだってじゃない! そしてなんで先輩たちも私の方に注目するんですか!? 代わりに私に説明しろってことですか!? ああもう分かりましたよすればいいんでしょすれば!!
「はぁ……、まずイッセー。龍巳と初めて会った日のこと覚えてる?」
「ええと、確か小学校に上る前に公園で会ったんだよな? それで一緒に遊んで……」
「ちょっと待ちなさい。公園で会ったって、それじゃああなた達は実の姉妹じゃないの?」
お? 先輩たちが驚いてる。そっから説明しないとダメか。
「ええ、そうなんです。もともと神裂家の娘は私だけで他の三人は養子です。あえて言うことでもないんで知り合いではうちとイッセーの家の人しか知りませんけど。学校に提出した書類にも養子の事は書いてありますよ。それで龍巳は子供のころイッセーと遊んでたらたまたま会ってそのまま一緒に遊んだのが出会いです。で、帰るときになって龍巳が帰る場所がないって話になって、それで話を聞いたお母さんが自分の娘にするって言い出したんです」
「そうなの。それでその……さっき龍って言っていたけれど、ご両親もそのことを?」
「ん。知ってる」
うえ!? 今までドヤ顔で黙ってたのに急に喋り出した!?
「我、生まれ故郷、他の龍に取られた。その後ずっと一人だった。我強い。だから誰も寄って来なかった。我寂しかった。だから我、帰る場所欲した。帰って静寂を得たかった。我、帰るために力集めてた。そんな時、火織お姉ちゃんとイッセーに会った。初めて遊んだ。楽しかった。でも帰る時間になった。我、お母さんに帰る場所ない言ったら、話聞いてくれる言った。我、龍だってこと、故郷追い出されたこと言った。そしたら娘にしてくれる言った。ここが帰る場所言ってくれた。お父さんも喜んでくれた。だから我、ここにいる」
「そうなの。立派な、優しいご両親なのね」
「ん。我の自慢」
龍巳が自慢げに胸を張ってる。龍巳はお父さんとお母さん大好きだもんね。先輩たちにもそれが伝わったのか微笑ましげに龍巳を見ている。……これで龍巳が無限の龍神だって知ったらどんな反応するかしら? 話がややこしくなりそうだからまだ言わないけれど。それにしても龍巳、説明する気あるなら最初から自分でして欲しかったわよ。
「さて、神裂さんが……ってこれでは誰のことか分からないわね。みんなのこと名前で呼んでもいいかしら?」
リアス先輩が私たちのことを名前で呼んでいいか聞いてきたので許可を出すと再度話し始めた。
「龍巳の正体と家族になった経緯は分かったとして、次はあなたのことを教えてもらえるかしら?」
そう言ってリアス先輩は黒姉の方に向き直る。
「分かったにゃ。と言っても私の説明は白音といっしょにするにゃ」
そう言うと黒姉と白音から猫耳と尻尾が生えた。昨日もみんな見てたはずなんだけど改めて見るとやっぱり驚くようね。
「私たちは実の姉妹で、妖怪の猫又にゃ」
「……悪魔や天使だけじゃなくて龍や妖怪なんてのもいるんだな……」
イッセーがなんか悟ったような表情をしだしてる。まあこんなにいっぺんにいろんな事知ればそうもなるのかな? って黒姉? なんでイッセーの方向に擦り寄って行ってるの?
「今まで隠しててごめんにゃ? でもこれが私の本当の姿にゃ。可愛いにゃ?」
なんか黒姉、イッセーに胸を擦りつけつつ耳をピコピコさせながら甘えてる! あれか!? イッセーを猫耳萌えに目覚めさせる気か!? たしかに今の黒姉可愛いけど!
「く、黒歌姉! そ、そんなに近寄られると! ってイテテテ!? 白音ちゃん痛い!」
「お兄ちゃんのスケベ」
「なんで!?」
おおう。白音ヤキモチ焼いてるよ。イッセーのお腹おもいっきりつねってる。こんな場所でいきなり修羅場に入らないでよ。ってあれ? いつもはここに龍巳も入っていくのにどうしたんだろう? そう思って龍巳の方を見てみると……
「火織お姉ちゃん。我も猫耳生やした方がいいかな?」
なんて言いながら自分の頭をぺたぺた触っていた。なんかこの仕草可愛いな。じゃなくて! 無限の龍神にさらに猫耳猫尻尾なんて要素詰め込みでしょ!
「龍巳、あなたはあなたの魅力で攻めるべきだとお姉ちゃんは思うわよ?」
「ん、分かった」
分かってくれてよかったわ。危うく無限の龍神に猫耳猫尻尾を標準装備させるところだった。……あれ? それはそれで可愛いからありかしら?
「ん、んん! そろそろ話を戻していいかしら?」
あ、素で先輩たちのこと忘れてた。
「にゃはは。と言ってもそんなに話すことないのよね。小さい時に両親が死んじゃって、そのあと白音と2人で頑張ってたんだけど結局行き倒れちゃって、そんな時拾われたにゃ。後は龍巳と同じ感じにゃ」
「そうだったの。あなた達も大変だったのね……。でもこれで昨日会ったときは3人とも異様な気配を放っていた理由が分かったわ。3人とも人間ではなかったのね。こうして向かい合った今でも人間の気配しか感じられないのに」
「それは私と白音は仙術が使えるからにゃん。気配をごまかすなんてお手の物にゃん」
「そう。仙術まで使えるなんてますます凄いわね。神裂姉妹は皆ポテンシャルが計り知れないわ。龍巳も龍の気配が全くしないけどやっぱり隠しているのかしら?」
こくっと龍巳は頷いた。ホントは私の封印具のおかげなんだけど……言えないよねやっぱ。
「そう、じゃああなた達のことが分かったところでそろそろ本題に入りましょうか。と言っても大体のところはもう想像がついているのだけれど」
そう言うとリアス先輩はイッセーの方を向きながら言った。
「昨日あの場にいた彼の神器を狙って堕天使が現れ、あなた達がそれを撃退した。そういうことでいいのかしら?」
「はい、そうです。排除しようとしたその時に先輩たちの魔法陣が展開されてそっちに気を取られている隙に逃げられました」
先輩たちは得心のいった顔をしていた。
「で、イッセー。神器はもう出せるようになったのかしら?」
「いえ、昨日は話だけで終わってしまったので……」
「そう、ではいい機会だわ。ここで出してみましょう。イッセー、手を上にかざしてちょうだい」
ああ、これからイッセーもあの恥ずかしい儀式をするのね。私は1人で山の中でしたから良かったけど、こんな衆人環視の中ではさすがに無理かな? そして話は進んでいき……
「そして、その人物が一番強く見えるような姿を真似るの。軽くではなく強くよ?」
笑っちゃダメだ笑っちゃダメだ笑っちゃダメだ。イッセーも顔を真っ赤にしてる。そりゃ恥ずかしいよね~。
「ほら、早くなさい」
ここでまさかの追い打ち。もう覚悟決めるしかないわよイッセー。
「ドラゴン波!」
「なってない」
「はい、全然なっていませんね」
「え!? なんで!?」
ついにやった! と思ったら龍巳に白音、まさかのダメ出し!?
カッ!
と、そんなことをしていたらイッセーの左手が光り始め、左腕に赤い籠手が装着された。これがあの……
「こ、これが俺の神器……」
「そう、それがあなたの神器よ。一度出せるようになればいつでも出せるようになるわ。ちなみにそれは龍の手。一定時間力を倍にすることのできる神器。残念だけどごくありふれたものよ。これを持っていた所為で堕天使に狙われるなんて、少々ツイてなかったわね」
「そ、そうですか。力を倍って、かなりショボ「違う」……龍巳?」
「違うってどういうことかしら? 龍巳」
「これ、まだ目覚めていないだけ。これ、ドライグ宿ってる」
「ドライグ? なあ龍巳、ドライグってなんだ? 先輩は知ってます?」
「い、いいえ。私も知らないわ。龍巳、ドライグっていうのは?」
赤龍帝は知っててもその名前まではあまり知られてないんだね。
「先輩、ドライグっていうのは二天龍と呼ばれたドラゴンの片割れ、赤龍帝ドライグのことです」
「赤龍帝!? じゃあその神器は龍の手などではなく」
「はい。13種の神滅具の1つ、赤龍帝の籠手です」
それからは大変だった。先輩たちは驚愕して固まるわ、それにイッセーは混乱するわ、神滅具と赤龍帝の籠手の能力について説明するとイッセーまで固まるわ、再起動した先輩たちにこのことを知っていたのかと聞かれるわ、過去の赤龍帝たちの末路を説明するやイッセーが怖がり出すわ、イッセーを守ると黒姉たちが言い出してまたまた修羅場に発展するわで、ようやく落ち着いて一服できたときはもう日もかなり傾いてきていた。
「なんだか今日は驚きの連続ね。こんなに驚いて疲れたのはいつ以来かしら?」
と、リアス先輩はお疲れのご様子。心なしかお姉さまの仮面も剥げかけてる気がする。さて、じゃあそろそろ私にとっての本題に入ろうかしら。
「グレモリー先輩、一通り話が終わったところでご相談……というかお願いがあるのですけど」
私の真剣な雰囲気にリアス先輩も佇まいを直す。
「何かしら? おそらくこれからのあなた達との付き合いに関することよね? あなた達が望むのなら私達悪魔と不干渉ということでもいいわ。理由もわかるつもりだし」
そう言って先輩はイッセーの方を見る。まあ普通なら赤龍帝であるイッセーを悪魔などの事柄から遠ざけたいと思っていると思われるわよね。
「まあこちらとしてはせっかくこうして仲良くなったのだし、悪魔云々は抜きにしてお友達としても付き合って行きたいとは思うけど……無理にとは言わないわ」
やっぱり先輩はやさしいな。だからこそこの人になら託せると思う。
「いえ、それとは逆です。イッセーをグレモリー先輩の眷属にして欲しいんです」
「「「「「「「!?」」」」」」」
うわお。私以外絶句してる。まあ気持ちは分からなくもないけど。そんななか最初に再起動したリアス先輩が
「それは、赤龍帝が下僕になってくれたらこちらとしては嬉しいけど、あなたたちはそr「火織! 一体どういうつもりにゃ!?」……」
黒姉、人が喋ってる時に大声で割り込むのはどうかと。それにそんな睨まないでよ。黒姉の声に再起動した龍巳と白音までこっちを睨んできてるじゃない。イッセーはまたしても混乱中ね。
「ちゃんと説明するからそんなに睨まないでよ。まずイッセー。あなたの力が危険で各勢力から狙われる可能性がある、っていうことは分かるわね?」
「あ、ああ」
「まずあなた自身を守るためには護衛、もしくはあなた自身が力をつける必要がある。護衛は私達が今までずっとしてきたし、守り切る自信と力もある。でもね、昨日みたいなことがあるとやっぱりイッセー自身にも強くなってほしいのよ。せめて、私達が駆けつけるまで自分を守るくらいの力はね。その点悪魔になればそれだけである程度の身体能力の底上げが可能だし、短時間で強くなれるわ。でもね、それだけじゃやっぱり不十分なの。あなたのことを守り通せても私達の家族、そしてイッセーの家族をどこまで守れるかわからない。だからね、私達に必要なのは強力な後楯なのよ。その点、今日グレモリー先輩たちと話してどうだった? 無理に自分の眷属に引き入れようともしなかったし、悪い人たちじゃなかったでしょう? だから保護してもらうには最適だと思うのよ。それに昨日逃した堕天使がイッセーに宿っているのが赤龍帝の籠手だと気付いていたら、今度は大軍勢を率いてくるかもしれない。その時にイッセーがグレモリー眷属に入っていればおそらくあちらも手出しできなくなるわ。」
そこまで一気に言って私は一息つきつつ周りの反応を伺った。リアス先輩は納得しているようね。リアス先輩からすれば利用される形だけどあちらにも赤龍帝を眷属にできるという利があるから差し引きゼロ。むしろあっちのほうが得をしているようなものだしね。それにイッセーも納得はしてくれたみたい。自分がいかに大きな爆弾を抱えているか予め理解させた甲斐があったわね。残る問題は……
「「「……」」」
理解はできるけど納得はしたくないといった顔ねこの3人。大方イッセーが他の女のものになるのが嫌だ、なんて思ってるんだろうけど、ちゃんとあなた達にも利があるのよ?
「ねえ、黒姉、龍巳、白音。あなた達は人間じゃないから、これから先も何万年も寿命があるわよね?」
「にゃ? それはそうだけどそれが今関係あるのかにゃ?」
「あるわ。イッセーは人間だから長くても後80年ぐらいでお別れ、でも同じく何万年も生きる悪魔に転生すれば……」
あとは言わなくても分かるわよね?
ドッシャーーーーーーーーン!
3人の背後で稲妻が走るのが確かに見えた。こんな大事な席でこんな演出するなんて龍巳しかいない。稲妻も黒かったし。そんな3人はすぐさまイッセーの手を両手で掴むと
「「イッセー!」」「お兄ちゃん!」
「お、おう?」
「悪魔になるにゃ!」「悪魔なる!」「悪魔になってください!」
「変わり身速いなおい!」
フッ、ミッションコンプリート。これでイッセーの悪魔化フラグが立ったわね。さすがに人間のままじゃこの後生き残れないだろうしね~。
「なあ、火織はどうするんだ?」
「へ? 私?」
「そうにゃ。寿命のことなら火織も一緒にゃ」
「火織お姉ちゃんこのまま、すぐお別れ」
「そんなのいやです」
あ~。完全に失念してた。考えてみれば私も人間だったっけ。このままじゃ私だけ先に死んじゃうのか。でも、イッセー眷属にしたら多分駒足りないのよね。それにもう駒はそれぞれ誰になるか決まってるんだし。でも……
「じゃあ、出来たらでいいんでお願いしてもいいですかね?」
「ええ、もちろん。イッセーも火織も大歓迎よ。それに、この際そっちの3人もどう?」
ちゃっかり黒姉たちも勧誘してるよ。残りの駒から考えて白音はともかく黒姉と龍巳は無理だと思うけどね。そんな黒姉はちょっと考えてるようだけど、眷属になりたいのかな?
「いいわ。同じ悪魔になった方がイッセーを守りやすいと思うし。ただし条件があるにゃ。イッセーが上級悪魔になったらトレードでイッセーの眷属になるにゃ」
「私もその条件でお願いします」
「我も」
「なるほどね。それでも構わないわ。愛されてるわねイッセー」
上級悪魔やトレード云々に関して意味がわからなそうだったイッセーも、木場くんに説明されて3人に感謝の視線を向けてる。ここは照れるところだと思うよ? 大方自分を守るためにそこまでしてくれるなんて、とでも思ってるんでしょうね。相変わらず鈍いんだから。
「じゃあまずイッセーかしら。駒は……戦況に応じて戦い方を変えられるよう、兵士がいいかしらね?」
そう言うと、リアス先輩はイッセーの手のひらに一個ずつ兵士の駒を置いていく。そして8つ全て置いた時、兵士がイッセーの手の中に吸い込まれ背中から悪魔の翼が生えた。
「無事に転生できたようね。兵士を8つも使ったのは驚いたけれど、やっぱり赤龍帝の籠手を宿していたからかしら?」
「なんかすみません」
「いいのよ。それだけあなたに価値があるということなのだから。期待してるわよ?」
「はい!」
「さて、じゃあ次は火織ね。手を出して」
そう言って先輩が取り出したのは……戦車? 騎士じゃなくて? どっちにしろ転生はできないだろうけど、てっきり神器から判断して騎士を使うと思ってた。
「あら? 戦車1つでは無理みたいね」
そう言ってもう1つの戦車も手に載せるけど、やっぱり転生できなかった。
「戦車2つでも転生できない。あなた相当潜在能力が高いのかしら。こんな事めったに無いのよ?」
「あはは、参りましたね」
もう笑ってごまかすしかない。だって黒姉たちが泣きそうな目でこっちを見てるんだもん。イッセーはどうなんだって? イッセーは泣いてるわよ。まあ私だけ先に死ぬことになっちゃったけど、しょうがないよね。
「しょうがないわね」
うん、しょうがないしょうがない。
「この駒を使ってみましょう」
……へ?
先輩が取り出したのは騎士の駒だった。え? どういうこと? 戦車2つで転生できなかったのに騎士1つで転生できるわけないじゃない。
そんな思いとは裏腹に
「あ、あれ?」
騎士の駒は私の体内に入って行き、私にも悪魔の翼が生えた、ってエエエ~~~~~~!?
「え!? なんで!? どういうこと!?」
「ふふ、混乱しているようね」
「そりゃそうですよ! なんで駒価値の低い騎士で転生できたんですか?」
「それは部長が変異の駒を使用したからですわ。変異の駒というのは本来複数の駒を必要とするところを1つの駒で可能にしてしまう特殊な駒で、上級悪魔の10人のうち1人は持っているのですわ」
「そして部長は運のいいことにその変異の駒を2つも持っていたんだよ。もう1つの変異の駒である僧侶はここにはいないもう1人に使っちゃったんだけどね」
な、何それ? 原作にはそんなことなかったわよ? っていうかこれじゃあこの駒をもらうはずの……
「じゃあ次は黒歌と白音ね。これで転生できればいいのだけれど」
そう言うと先輩はそれぞれに戦車の駒を1つずつ渡した。白音はいいとして黒姉はそれじゃあ
「転生できたにゃ」
「はい。翼も生えました」
ってエエエ~~~~~~!? 黒姉まで転生できたの!? そりゃまあ原作は僧侶2つで転生してたから駒価値の差は1つしかないけれど!
「さて、最後は龍巳だけれど……」
あれ? さっきまで隣にいたのにどこ行ったのかしら? ……ってなんか部屋の隅で落ち込んでる!? どうしたの一体!?
「私の残りの駒は僧侶が1つ。龍巳がドラゴンだとするとさすがに駒1つじゃ……」
あ、そうか。龍巳だけ転生できないのか。
「う゛ぅ、我だけ仲間はずれ」
なんだこの空気!? めちゃくちゃいたたまれない! 転生できないだろうとは思ってたけどまさか1人だけ転生できないことになるとは思ってなかったからフォローも考えてなかった!
「た、龍巳! イッセーが上級悪魔になったら女王の駒貰うってことでいいじゃない! それまでは……そう! 私の使い魔ってことにしましょう? 使い魔ならレーティングゲームにも参加できますよね!?」
「え、ええ。使い魔なら参加できるわ」
「ほ、ほら! これで仲間はずれじゃなくなるから! だから今はこれで我慢しましょう!? ね!?」
「う゛ぅ……」
いかん。傷は相当深い。
「……イッセー」
「お、おう。何だ? 龍巳」
「我、イッセーの女王、してくれる?」
「おう! もちろんだ! なるべく早く上級悪魔になるからそれまで待ってくれ! な?」
「……ん、分かった。我、使い魔で我慢する」
と言って龍巳は私の隣まで戻ってきた。でも目はまだ潤んでるし未練タラタラだね。かわいそうだから帰ったらいつも以上に甘えさせてあげよう。
「さて、これで転生も終わりね! じゃあ新しく仲間も増えたことだしお祝いしましょうか! 今日の悪魔稼業は休み!みんなでカラオケにでも行ってお祝いしましょう!」
そう言ってみんなで部室から移動をはじめる。絶対龍巳のことで気を使わせちゃったよねこれ。なんか悪い事したな。でも黒姉も白音も早速みんなに打ち解けてるようだし、その点は良かったかな? 昨日なんかどうなることかと思ったし。龍巳だけ眷属になれないなんて事態は想定してなかったけど将来イッセーに転生させてもらうって約束したし……ってあれ? 確か神格の存在は悪魔の駒じゃ転生できないんだっけ? じゃあ龍巳は転生できないじゃん! ……い、言えない。言ったら修復不可能なほど龍巳はいじけそうだよ。これは龍巳に真相がバレる前に魔王様方に相談する必要があるわね。まあでもそれはまだかなり先の問題ね。目下の問題は……
ゼノヴィアとロスヴァイセ、どうしよう?
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