ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第0章 平穏な日常と新たな家族
第4話 入学
「今日は桜が満開でよかったわね~」
「うむ。これこそ入学日和というものだな」
はい、というわけで今日は小学校の入学式です。
周りを見渡せば今日入学するであろうピカピカのランドセルを背負った子供と、その親御さんたちがさながら大名行列のように通学路を歩いてるわ。そんな中私も買ったばかりのランドセルを背負って今日から通う学校に向けて歩いている。左を見れば私と同じくランドセルを背負ったイッセーが、それはもう楽しみで仕方がないと言わんばかりの笑顔で私の隣を歩いているわね。後ろを見ればお父さんとお母さん、そしてイッセーのご両親がニコニコ談笑しながら付いて来ている。
……ところでお父さん、そしておじさん。その首から下げたバズーカみたいなカメラは何かな? ちょっとありえなくない? そんなすごいカメラ、アニメの中だけだと思ってたよ。お願いだから不審者と間違われないでね? 恥ずかしいから。……まあ間違われたら見捨てよう。関わりたくない。
さて、最後に私は右隣に目を向ける。そこには不安そうに辺りを見渡しながら歩く黒髪黒目のこれまた新しいランドセルを背負った少女がいた。そう、先日神裂家の一員になったオーフィス改め神裂龍巳です。私の妹としてこの度一緒に入学することとなりました。
……え? 妹なのに同学年はおかしくないかって? 実はそうでもないのよ。私の誕生日は4月、つまり学年の中で一番早いグループなの。一方龍巳は誕生日など知るわけもないので、私達が出会った3月末ということになった。実際、養子にする手続きが終わったあと、戸籍にはそう書いてあったし。
身元不明の少女を養子にできるのかって? ……うん、普通はできないと思う、普通は。お父さんに聞いてみたところ
「権力とはこういう時に使うためにあるのだよ」
と言われた。
あんたサラリーマンじゃなかったの!? 一体どういう権力持ってんのよ!? と激しく問い詰めたかったけど、この歳でそんな質問ができるわけもなく、将来大きくなったら一体どんな仕事をしているのかちゃんと問いただそうと誓った。聞くのがちょっと怖いけど。
さて、話を戻すとそんなわけで私と龍巳はほぼ1歳違いの姉妹ということになっている。一体どこのスペース兄弟よ。宇宙飛行士のではないわよ? 碧陽学園の方だからね?
いじめとかあるかもしれないので養子ということは隠すつもり。いじめられる龍巳がかわいそうということ以上にもし龍巳がやり返したりしたらどんな事態が発生するか分からないからね。……まあ隣の龍巳を見るにそんな心配はいらないと思うけど。
今龍巳は私の右手を掴んで歩いている。おそらく自分が皆に受け入れられるか不安なんだと思う。龍巳はなにか不安に思ったり寂しくなったりすると家族かイッセーに擦り寄るようになった。簡単に言えばすっかり甘えん坊になってしまった。その顕著な例が夜必ず誰かのベッドの中に忍び込んでくることね。寝るときはちゃんと自分のベッドで寝ているんだけど、朝になると必ず誰かのベッドで寝ている。
ちなみに忍び込むのは私、お母さん、イッセーのベッドね。お父さんのベッドには忍び込んだことがない。以前お父さんがそのことについて聞いてみると
「……足……臭い」
だそうです。その時のお父さんの顔はさながら医者に余命を宣告された時のようだった。……哀れな。
まあなんだかんだでうちと兵藤家の中では仲良く楽しくやってるよ。多分学校でも大丈夫だと思う。
さて、今は入学式、そのまっ最中。校長先生が壇上でありがたくも長~いお話をしている。私と龍巳はおとなしくしているけれど、幼稚園を出たばかりの子供が耐えられるわけもなく、イッセーも含めて皆ぺちゃくちゃ話し始めてる。
……あれ? 私達出遅れた? なんかもう友達グループ的なものが出来つつあるんだけど。私はあとから挽回できるだろうけど……龍巳は大丈夫かな~?
龍巳はこのこと気付いて……るみたいね。私の右手を握ってこっちを見てる。どうしていいか分からないって顔ね。まあもうすぐ式も終わるし、クラス分けの後でもまだまだ挽回できるでしょう。私は龍巳を安心させるためにそっと頭を撫でてあげた。
余談だけど式の途中に教員に引きづられていくバズーカみたいなカメラを持った男性が2人ほどいたんだけど……うん、私は何も見なかった。
今私は放課後の廊下を歩いている。案の定私とイッセー、龍巳は別クラスになった。まあ姉妹で同じクラスになるなんて滅多にないよね。私は一組、イッセーと龍巳は二組よ。まあ私と龍巳が逆になって龍巳が完全に一人になるよりは良かったかな?
さて、私はクラスに馴染めたけどあの娘は大丈夫かしら? そっと二組を覗いてみる。すると……
「あちゃ~~~」
龍巳は一人で席に座って周りを羨ましそうに眺めていた。っていうか羨ましいなら話しかけようよ! ……って初めてでそれは無理か。他人と仲良くしようとするのなんて初めてだもんね。
イッセーは……普通に新しいクラスメイトと話してるわね。っていうか、いつもはあんなに仲良くしてるんだから龍巳も話の輪の中に入れてあげなさいよ! まさか一緒のクラスに居ること忘れてるんじゃないでしょうね?
はぁ~もうしょうがない。助け舟を出してあげましょうか。
「たつみ」
「あ……」
あ、じゃないわよ全くもう。
「みんなとはなかよくしたくない?」
「我、仲良くしたい。おしゃべりしたい。でも……」
あ~もうじれったい! こうなったら
「じゃあこんなところにいないで、みんなのとこいくわよ!」
「あ!」
私は龍巳の腕を掴んで強引に立たせ、イッセーの元へ強引に連れて行った。
「イッセー! なんのはなししてるの~!?」
「あ、かおりちゃん、たつみちゃん!」
ようやくこっちに気付いたか。まったく、将来ヒロインたちから鈍感と言われるだけのことはあるわね。まあそんなわけで私と龍巳はちょっと強引に話に割って入っていった。最初こそ龍巳はまごついていたけれど、帰る頃にはなんとか普通に喋れるようになってきたわ。どうやら仲の良い女の子もできたようね。これなら明日からも大丈夫かな?
その後、親に対しての説明会を終えた両親たちと合流し、家路についた。
「今日はどうだった? 楽しくやっていけそう?」
お母さんが私達の顔を覗きこんで聞いてくる。
「たのしかったよ」
「友達できた。火織のおかげ」
私達の返事に満足したようにお母さんは微笑んだ。
「あらそう。それは良かったわ。じゃあ今晩は豪華にいきましょうか。2人の入学祝いと龍巳ちゃんの初友達祝いよ」
「? 我、友達いた。火織とイッセー」
「ふふ。火織ちゃんは龍巳ちゃんのお姉ちゃん、一誠くんは幼馴染っていうのよ」
幼馴染かどうか決めるのはまだ早くないかなお母さん? しかし龍巳は納得したのか、「ん」と頷くと嬉しそうに微笑んでいた。龍巳も少しづつ感情が表に出てくるようになってきたね。
あ、そうだ。忘れないうちに……
「たつみ、きょうもゆうはんのあとにまたおねがいね」
そっと龍巳に耳打ちした。
☆
父と母、既に寝た。我、起きないように力使った。今、次元に穴を開け、火織と次元の狭間来ている。
「はぁあ~~~~~~~!」
火織、作った刀で我に斬りかかる。人間の、この歳としては火織、強い。でも、まだこれでは我に当てられない。まだ人間の大人のほうが強い。
「せやっ!」
切り払い、全て避けたら次、突いてきた。我、素早く後ろ下がる。この距離、火織の刀、届かない。そろそろ時間、こちらも攻める。と思ったら
「咆えろ!蛇尾丸!」
刀が刃をいくつもつなげた鞭状に変形、我まで伸びてくる。我、刃を手刀にして弾き飛ばす。でも壊れなかった。我驚き。さすが神滅具。手加減はした。でも壊すつもりだった。先日まではこれで壊れた。成長が早い。でも……
「やっぱり人間」
これではまだ下級堕天使にも届かない。我、魔力弾を無数に放つ。火織、必死に防ぐけどすぐ限界来る。魔力弾あたって吹き飛んだ。
今日の訓練は終わり。成長はしている……でもまだまだ戦えない。やはり人間、成長に限界がある。今の戦い方で身を守る、やはり難しい。
とりあえず火織起こそう。魔力弾あたって、火織動かない。……大丈夫だよね?
我今火織を膝枕中。火織、苦笑いしながらこっち見てる。
「剣道場では同年代相手には敵なしなくらい強くなったのに、やっぱり龍巳には全然届かないや」
火織、我と二人の時、喋り方少し変わる。大人っぽい?
「火織、その戦い方限界ある。本来の使い方で戦う。そのほうが強い」
我、忠告。火織の刀、強い。でも刀振る火織、弱い。刀、強い。なら、本来の使い方、魔獣創ればかなり強い……はず。
「う~ん。それは分かってるんだけど、魔獣創造持ってることはなるべく隠したいんだよね~。神滅具は他の神器より狙われやすいでしょ?」
それ分かる。でも……
「でも、この戦い方、限界ある」
「うん、分かってる。でも本来の使い方で魔獣を創っても、私が完全に無防備になるじゃない? やっぱり同じよ」
それも正しい。我、反論できない。
「やっぱり問題はこの体よね~。英雄の子孫ならいざしらず、平凡な生まれの私じゃどんなに頑張っても堕天使や悪魔には敵わないのよね~。やっぱり根本的なこの身体スペックを埋めるところから解決しないと無理かな?」
……でもそんな方法
「いや、あるにはあるんだよね~。できるかどうかは別にして」
その言葉に我驚く。
「でもちょっと危険かな? 時間もかかるだろうし」
その言葉に我、不安になる。我、火織に死んでほしくない。我、膝の上にある火織の顔に抱きつく。
「龍巳?」
「我、火織守る。イッセーも守る。絶対守る。だから、無理しない」
我、喋るの苦手。うまく言葉使えない。だから伝えたいこと全部伝わるかわからない。だけど……
「うん、ありがとう龍巳。そうだよね。私一人で無理して龍巳を悲しませるのは違うよね」
そう言って火織、我の頭撫でてくれる。火織の手、優しくて好き。
「無理しない程度に頑張るよ。龍巳に心配かけないように」
「ん」
我、その言葉に安心。
「火織、約束」
「うん、約束だよ」
そう言って、火織は我を撫で続けてくれた。
今日の訓練終了。部屋に戻って寝る準備。今は火織の部屋。次元に穴、火織の部屋に開けていたから。我、自分の部屋に戻る。
「ねえ龍巳」
火織の部屋のドアに手をかけた我に火織、声かける。
「忍び込まなくても最初っから一緒に寝てもいいんだからね? もちろんお母さんとも。私達は家族なんだから」
我、寝るときはいつも忍び込んでた。拒否されるの怖かった。手に入れたもの、失いそうで。ようやく手に入れたもの、ようやく手に入れた居場所、我失いたくない。そう思ったから。だけど火織言ってくれた。我ら、家族と。だから我も勇気出す。
「今日、一緒に寝ていい?」
「もちろん。着替えておいで、待ってるから」
我、急いで部屋に戻って着替える。楽しみすぎて、嬉しすぎて音速超えたかも。戻ったら驚かれたあと笑われた。我ちょっと恥ずかしい。
今は火織にベッドの中で抱きついてる。初めてこの家来た時と同じ。あれからのこと、全部覚えてる。それまでのこと、殆ど覚えてないのに。
「おやすみ、龍巳」
「おやすみ、火織」
「私としては、そろそろお姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいな~。前は何度か呼んでくれようとしてたよね?」
う、バレてた。まだちょっと恥ずかしい。お父さん、お母さんともまだ呼べてない。
「龍巳~~~」
「う゛ぅ……」
呼ぶまで寝かせてくれそうにない。
「おやすみ、お、おねえ、ちゃん」
「うん! おやすみ、龍巳」
我、恥ずかしくて火お……お姉ちゃんの顔見れない。でもお姉ちゃんがうれしそうな顔、浮かべてるのは分かる。
お姉ちゃんがぎゅっと抱きしめてくれる。我、温かい。手に入れたこのぬくもり、もう失いたくない。我、お姉ちゃんを絶対守る。
今日はいい夢見られそう。
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