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美しき異形達

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第十六話 黒蘭の力その四

「そのことがわかったよ」
「それは何よりだね」
「うん、けれどね」
 それでもとだ、ここで怪人の口調が変わった。
「だからといってね」
「あんたも負けるつもりはないんだね」
「うん、そうだよ」
 こう薊に言うのだった。
「僕も君達を倒さないといけないからね」
「じゃああたしをどうして倒すんだい?」
「このままじゃ負けるから」
 だからだというのだ。
「切り札を出すよ」
「切り札、だね」
「そう、見せてあげるよ」
 言いながらだ、怪人は次第に己の身体に力を含ませていた。
 そしてだ、その胸にある鱗を。
 一斉に立たせた、そしてだった。
 鱗を一斉にだ、薊に至近で放った。それでだった。
 薊を撃つ、至近故にかわすことは不可能だった。薊も思わず叫んだ。
「ちっ!」
「薊ちゃん!」
 裕香もその薊に叫んだ。
「かわして、いえ」
「くっ、これは!」
 至近距離だ、薊といえどもかわすことは不可能だった。それで。
 胸にその鱗を無数に受けた、制服が切り裂かれ胸から血が出る。かなりのダメージなのは明らかだった。
 だが薊は何とかだ、踏み止まった。制服が血に滲んでも。
 それでだ、右手で胸を抑えつつ左手で棒を持って言った。
「まさかね」
「驚いたね」
「ああ、そう来るなんてね」
 こう怪人に言うのだった。
「思わなかったよ」
「結構なダメージだね」
「ちょっとね、けれどね」
「まだ闘うのかな」
「あたしは普段は諦めがいいけれどさ」
 それでも、というのだ。
「勝負ごとは違うんだよ」
「最後の最後までかな」
「ああ、そうだよ」
 まさに、というのだ。
「死ぬまでやるんだよ」
「そうなんだね、じゃあね」
「やるさ、まだね」
「わかったよ、じゃあ来るんだね」
 怪人は薊の言葉を受けて言った、そしてだった。
 闘いが続けられることになった、もっとも怪人は最初から薊を倒すつもりだが。
 薊は胸の傷をよそに闘いを続けようとする、だが。
 その胸のダメージはかなりのものであることは明らかだ、それは動きにも出ていた。
 鈍くなっている、裕香はそれを見て薊に心配している顔で言った。
「薊ちゃん」
「ああ、わかってるよ」
 怪人に目を向けつつだ、薊はその裕香に応えた。
「ちょっとだけ痛いよ」
「大丈夫よね」
「これ位の怪我何ともないさ」
 全く、というのだ。
「だから気にしないでくれよ」
「じゃあ勝つのね」
「ああ、今回もな」
 不敵な笑みさえ浮かべてだ、薊は裕香に言葉を返した。
「安心してくれよ」
「じゃあ今も」
「見せてあげるわ」
 こう話してだ、そしてだった。
 薊は再び棒を振るわんとする、しかしその薊に。
 怪人は目を赤く光らせてだ、こう言った。 
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