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美しき異形達

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第十六話 黒蘭の力その三

 今度は両手を拳にして組んで重ね合わせて黒蘭の方に突き出してだ、その両手から電流を放った。それで黒蘭を撃とうとする。
 だが黒蘭は今度は跳ばなかった、屈みその動きで。
 電流、電磁砲の様なそれをかわした、そしてだった。
 リボンを前に出してだ、そのリボンで怪人を絡め取った。怪人は腹部を絡み取られそれで動きを制限された。
 黒蘭はその怪人に対して屈んだままで前に出た、そうして幾度もボールの様に凄まじい速さで前転しつつ。
 左の肘に魔、己の力を宿らせたうえで怪人のその腹部を打った、そこからだった。
 一気に立ち上がりその要領でだ、今度は怪人の顎に右手から魔をまとった掌での一撃浴びせる。衝撃が顎から脳天まで達した。
 それで怪人の動きを完全に止めると共にダメージを与えてだった。
 黒蘭は跳んだ、そして前転してから怪人に足から急降下を仕掛け。
 怪人の頭に両足での蹴り、菖蒲のそれを思わせる蹴りを放った。無論その両足には黒い魔の力が宿っている。
 しかもだ、その蹴りは一撃だけではなかった。
 蹴ったその反動でだ、一旦後ろに跳び。
 両手を広げそれを翼の様にして身体のバランスを取り。
 身体を伸ばし足を少し曲げてだった、空中でバク転して。
 再び急降下を仕掛け怪人に蹴りを放った、今度は怪人の身体を突き抜けそうしてその後ろに着地したのだった。
 怪人の背に符号が出た、黒いアーコルの符号だ。北斗七星の双子星である。
 その符号を背中越しに見てだ、黒蘭は言った。
「勝ったわね」
「見事だな」
「自信はあったわ」
 勝つそれが、というのだ。
「確実にね」
「そうか、それだけの実力はあったな」
「ええ、ただ言っておくわ」
「ただ。何だ」
「姉さんは私よりも強いわよ」
 黒蘭は死に近付いている怪人に対してこうも言ったのだった。
「そのことも言っておくわ」
「では他の怪人もか」
「伝えられないわね」
「俺にはそうした能力はない」
「なら貴方に告げておくわ」
「死にゆく俺にか」
「ええ、花向けにはならないと思うけれど」
 それでもだというのだ。
「言っておくわ」
「聞きはした、ではな」
「死ぬのね」
「うむ、もうもたぬ」
 見れば怪人の身体の端、髭や指の先が灰になり散ろうとしている。それを見れば死が近いのは明らかである。
 それでだ、怪人は言うのだった。
「さらばだ」
「ええ、見送らせてもらうわ」
 黒蘭は身体を怪人の背の方に向けて告げた。
「最後にね」
「ではな」
 怪人はその身体が全て灰になってだった。風と共に消えた。そしてその時薊もだった。
 ピラニアとの怪人との闘いが佳境に向かっていた、確かに怪人は強い。
 しかしだ、薊はその七節棍を七つに分けてだった。
 棒というよりは鞭の様に使って闘っていた、その全体に炎を宿らせて。
 そしてだ、怪人にこう言うのだった。
「よく防ぐね」
「強いね」
「そう言ってくれるかい」
「うん、ただの棒じゃないけれど」
「七節棍っていうんだよ」
 それが薊の武器の名前だとだ、自分で名乗った。
「これはさ」
「それがその棒の名前だね」
「三節棍じゃないぜ」 
 中国拳法のそれではないというのだ。
「そこから出来たものだけれどな」
「また違うんだね」
「ああ、そうさ」
 その通りだというのだ。
「あたしも最初は三節棍を使ってたんだよ」
「それを変えたんだね」
「こっちの方が面白いからね」
 使ってみて、というのだ。
「だからこっちにしたんだよ」
「成程ね」
 怪人はその炎をまとった棒の攻撃を防ぎながら応える、今は彼の方が劣勢だった。 
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