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I want BRAVERY

作者:清海深々
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13話 Cooperation


13話 Cooperation

 私が目を覚ましたのは4月の19日。

 原作と同じ日付だった。

 原作と違う点は、目覚めた時のゆかりの対応だろう。

 あの時、

「目、覚めたんだね・・・よかったぁ〜」

「・・・ぁ」

「どこか苦しいとことかない?喉とか渇いてない?」

「・・・」

 なんだか恥ずかしい。

 勝手に邪魔者扱いしてたのに、ゆかりは私をこんなに心配してくれている。

「ごめん・・・ね。私・・・」

 勝手に口から出る謝罪。

「どうして謝るの?謝るのは私の方だよ・・・ゴメンね、助けてあげられなくて」

「そんなことない!」

「い、稲城さん?」

「私は・・・助けてもらったよ・・・」

「助けてもらったのは私の方だよ・・・稲城さんがいなかったら、今頃死んでたよ」

「・・・違う」

「え?」

「稲城さんじゃない」

「?」

「遥、遥って呼んで」

「・・・うん、わかった。遥」

「うん」

「私のこともゆかりって呼んで」

「・・・ゆ、ゆか・・・」

「もぅ、あの時は『ゆかり!』って叫んでたくせにぃ〜」

「な!?覚えて!?」

「当たり前じゃない」

 ふふふ、と笑うゆかり。

 その笑顔にはなんの裏もない。

「・・・ゆかり」

「うん」

 なんかゆかりの頭の上に♪×3くらいが出た気がする。

「ありがとう」

 口から零れるようにでた言葉。

「うん。わたしも、ありがとうね、遥」

「・・・うん」

 らしくない。

 全然私らしくない。

 でも、

(今だけ・・・今だけ・・・)

「じゃ、私、遥が起きたって報告してくるからね」

「うん。またね、ゆかり」

 そういうと、ゆかりは少し微笑んで、病室を出て行く。

(それにしても・・・個室か・・・これは桐条グループの力、なのかな?)

———ガラッ

「よっ」

「彩、君?」

 女の子の病室、というより、寝起きの私のところに来るというのは男子としてどうなのだろうか

「元気・・・かな?」

「あのさ」

「うん?」

 聞かなければいけない。

「彩君って・・・」

「何?」

「転生者・・・なの?」

 ピクリと彩君が反応する。

(やっぱり・・・イゴールの言ってた通りなんだ)

「まぁ・・・そういう感じかな?」

「そっか・・・」

「どこで気づいたの?」

「ベルベットルームでイゴールに言われたんだ」

「へぇ・・・それはまた、なんとも言えないネタバレじゃないか」

「どうやって『こっち』に来たの?」

 まず浮かんだのは、この疑問。

 彼は一体どうやってこちらの世界に来たのだろうか。

 考えられる方法は3つ。

 神のミスによるテンプレ的な転生、憑依。
 普通に死んだ後、転生、ないしは憑依した場合。
 私のようになんならの特殊な形での転生、憑依。

 私が最もあり得ると思っているのは一番目の方法。

 神のミスによる転生。

 彼の持つ魅力や知識、そしてペルソナ召喚を行えるであろうという状況は、いささか恵まれすぎている気がする。

 それから考えうる最も確立の高いものは、神のミスによってなんらかの能力を得た転生者。

 私がこの世界に来た方法を考えると、3つ目の特殊な形による方がありえるかもしれないが、私が主人公に憑依、転生していることから、私だけが特殊という可能性の方が高い。

「拉致られた」

 予想の斜め上を行く回答だった。

 『拉致られた』?

 一体それはどういうことだろうか。

「え?」

「授業中にメール着てさ、それに返信したら、赤ちゃんになってた」

「そ、そうなんだ・・・」

(え?どういうこと?テンプレじゃない?・・・いや、テンプレ・・・なのかな?)

「遥はどうやって、こっちに?」

 聞かれると思っていた。

 ここは素直に言う。
 それを信じてもらえるかどうかはわからないが。

「私は、オルフェウスに呼ばれて」

「へぇ・・・遥も転生者なのか」

(カマ掛けられたの!?)

「それにしてもオルフェウスに・・・か。なんだか現実味のない話だけど」

「私もその時はビックリしたよ」

 あの時のことは今だにちゃんと覚えている。

「だろうね」

 私が驚いている姿でも想像したのか、彼はフフッと笑う。

「彩君って・・・何がしたいの?」

 問題はこれ。

 彼がここにいる目的がある。
 彼の意思でここに来たわけではないとわかったが、ここに来た以上きっと何かしらの欲が出るはず。

 原作の知識を知る者、つまりは未来を知る人間として、何もせずにはいられないだろう。

「?どういうこと?」

「ほら、あれじゃん?よくある、ハーレム、とか作りたいのかなぁ、なんて思ったり・・・」

(直球すぎたかな・・・?)

 内心で焦りながらも、覚悟を決めて彼の言葉を待つ。

 私の目的と彼の目的が協力し合えるものであることを祈る。

 大抵こういう場合はハーレムを作りたがると私は勝手にだが、決めつけている。

 もし彼がハーレムを作ろうとしているのならば協力可能だが、それ以外の目的で私の障害となるのであれば、かなりマズいことになると思われる。

「そうだなぁ・・・まぁ、一応目指してるよ」

(あっさり!?)

「達成できそうな気はしないけどね・・・」

 彩君が肩を落とす。

 達成できそうな気がしないとは、どういう意味なのだろうか。
 まだ会って一週間と共に時を過ごしたことがない私でも、彼はかなり魅力的な男性だと思う。

 それこそ、私の逆ハーの一員にしたいと思ってしまうほどに。

「そ、そうなの?」

「なんか友達止まりっていうか、なんなんだろ」

 これは好都合だ。

「きょ、協力しようか?」

 彼の眉がピクリと動く。

 私の好意に裏を感じ取ったのだろうか。

「え?」

「その代わり私にも協力して欲しいの」

 彼は一瞬何かを考えるそぶりをしたが、すぐに口を開く。

「逆ハー?」

 ピンポイントで私の目的を当てに来た。

「そう」

 なんだか驚いたような顔をする彩君。

「まぁ、それはこっちとしてもありがたい申し出ではあるね」

「じゃ、これからヨロシク」

 私は彼が私の案を受けれてくれたことに安心し、手を差し出す。

 これほど簡単にことが進んだことに安心を隠せない私。

「これからは運命共同体だね。ヨロシク」

 なんだか赤面しそうな笑顔とセリフだ。

 私は彼の手をギュッと握りながら思う。

(真田先輩・・・いつ会えるの?)

 既に私の頭の中は逆ハー計画を練り始めていた。

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