I want BRAVERY
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12話 A summons
12話 A summons
「外から上ってきたの!?」
(来た来た!!)
外の壁から這い上がってきた物は、人間の腕が何本か生えている黒いものだった。
そのうち何本かの手は剣らしきものを持ち、中央の一本は仮面のようなものを持っている。
それの額には『Ⅰ』と書かれていた。
(これが最初の大型シャドウ!)
原作ではここで、ビッチがペルソナ召還をすることにビビっている間にここのシャドウに攻撃を食らう。
そして、その衝撃で召還器だけが主人公の足元へと滑ってき、主人公はそれを使ってペルソナを召還する。
(生オルフェウス!生オルフェウス!)
ペルソナを生で見たいという想いに駆られ、私は早くビッチが召還器を手放さないかと思い、そちらを見る。
すると、そこには私の予想だにしない光景があった。
「くそっ!・・・私じゃ・・・」
そう呟いて悔しそうに下唇を噛むビッチは震えることなく、召還器に手を置いている。
「稲城さん!逃げて!」
「え?」
「私じゃ、こいつを倒せないの!」
「え?え?」
(ど、どういうこと?原作と違う?)
「私が足止めするから!あなたは逃げて!!!」
「ちょ、ちょっと!」
(おかしい。どうなっているの!?)
私はパニくりながら、ビッチとシャドウを交互に見やる。
「いくよ・・・イオ!!」
———ダァァン!
発砲音に伴って、ビッチの後ろからペルソナが現われる。
(生イオ!生イオ!)
その光景があまりにも綺麗で、一瞬変な思考へ行ってしまった自分の頭を振って、私はもう一度前を見る。
(そ、そんなことより!なんで召還できてるの!?これじゃ私の出番ないかもしれないじゃない!)
「イオ!ガルよ!」
風が起こる。
しかし、相手の大型シャドウにはほとんど効いていないように見える。
「くっ!・・・あなたは逃げて!早く!」
(逃げるのはあなたの方じゃないの!?)
———ボォォン!
炎がはじける。
「きゃぁ!!」
その衝撃で2メートルほど岳羽は吹っ飛び、召還器がこちらに滑ってくる。
「ゆかり!?」
私の目は、望んでいた召還器ではなく、飛ばされた岳羽を追った。
———グチョリ、グチョリ
大型シャドウは、岳羽の方へと近づく。
(た、助けなきゃ!)
「く・・・うぅ・・・にげ、てっ!」
立ち上がろうとする岳羽。
しかし、明らかに負っているダメージは大きそうで、立ち上がれそうにない。
「・・・ぁ」
私は無意識のうちに召還器を拾う。
(何してるんだろ・・・今、なら彼女を殺せるじゃない・・・)
「ふぅ・・・ふぅ・・・・」
私は息を吐く。
思っていることと反して、体は銃を頭に向ける。
恐怖。
これで自分を撃っても、自分は死なないはずなのに、何故か湧き上がる恐怖。
死への恐怖。
「逃げてっ!!」
もうシャドウは岳羽の目の前に迫っている。
止めは剣で刺すつもりなのか、それとも食べるためなのか。
(どうして、私の心配なんてしてるの?自分が死にそうなのに)
カタカタと震える指。
(助けなきゃ・・・助けなきゃ!!)
「ペ・・・ル・・・ソ・・・ナァァァァ!!!」
死の恐怖への反抗。
それは私の中の何かを目覚めさせた。
———ダァァン!!
発砲音。
引かれた引き金。
自分の中から這出る何か。
『汝は我。我は・・・』
「うっ!・・・あ、ああああ!!!あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
(く、苦しい!!!)
恐らく、オルフェウスの中からタナトスが現われたのだろう。
(行け!倒して!)
私の意図に応じたわけではないだろうが、タナトスは大型シャドウへと向かう。
———グチ!ブチ!
気持ち悪い音と共に、飛び散る影。
タナトスがシャドウを千切っている。
「ぐうぅ!!」
痛い。
頭が痛い。
痛い。
胸が痛い。
何か自分が自分でなくなりそうで怖い。
痛み、恐怖。
「どう・・・して・・・」
痛みに呻く私の耳に、ゆかりの声が聞こえる。
「うっ・・・助けなきゃ」
ズルズルと、体を引きずる音が聞こえる。
(痛い!痛い!痛い!)
私は頭を抱え込む。
「イオ・・・ディア」
———パァァ
痛みが和らぐことはなかったが、私は確かにその時、癒されたと感じた。
そして、スッと痛みが引く。
(・・・ぁ・・・だめ・・・)
それと同時に私の意識もなくなった。
「ここは・・・?」
「再びお目に掛かりましたな」
(ベルベット、ルーム?)
イゴールという、やけに鼻の長い老人がうんぬんかんぬんしゃべっている。
「ペルソナとは、貴方が貴方の外側の物事と向き合った時、表に出てくる『人格』・・・」
ペルソナの説明をしている。
ゲームででてくるペルソナは、ポケモンのようなものに近い。
そのため、存在意味自体を気に掛けたことはなかった。
「あなたは・・・ワイルドというとても珍しい力をお持ちで」
さまざまなペルソナを付け替える能力のことだ。
「しかし、それは借り物の力」
「!?」
「あなたはこの世界に自ら望んできた」
「な、なんで!?」
「この世界にあなたが来た理由。それは『世界を救う』ため」
「!?」
「それは、この世界に来たあなたの義務なのです」
「・・・どういうこと?」
「私はあなたの知っている通り、ペルソナの合体や、ペルソナ全書を扱い、あなたの今後の手助けをしていきます。そのことには変わりありません」
「・・・」
私はその話を黙って聞く。
「あなたの役目は、『この世界を救う』こと。それを果たしていただけるのでしたら、何をしてもらってもかまいません」
「一つ聞いても?」
「なんなりと」
「暗超楓は転生者?」
「いいえ。違います」
「琉峰彩は転生者?」
「それに近い存在です」
(!?彼が・・・)
「そろそろお目覚めの時間のようです。くれぐれも力の使い方を間違えないように・・・」
私の意識はそこで消えるように、目覚めた。
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