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I want BRAVERY

作者:清海深々
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14話 青色空間


なんだかサブタイトルの雰囲気と、実際に言い表している空間の雰囲気に差がありすぎる気がする。
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14話 青色空間

 俺は何のためにこの『世界』に来たんだ。

「あなたは何がしたいの?」

 あの質問を受けたとき、動揺した。

 自分でもありえないくらい動揺した。

 俺は別に目的があってこの『世界』に来たわけじゃない。

 そもそも勝手に連れて来られただけ。
 理由もわからず。

 こちらの世界にきて、能力を貰って、その後で考え付いた。

 勇気が欲しい。

 女の子にモテたい。

 楽しい高校生活を送りたい。

 どれも与えられた能力なくしてはできない。

 与えられた戦闘能力。

 与えられた人間的魅力。

 与えられた勇気。

 与えられた原作知識。

 『琉峰彩』が生まれながらにしても持っていたものはなんなんだろうか。

 俺は一体何なんだ。

 原作にはいないキャラ。

 この『世界』に本来必要のないキャラクター。

 いてもいなくてもかわらない、もしかするといない方がいいかもしれない。

 なら、何故俺はここにいるんだ。

 何故?何故?

 生きている価値が俺にあるのか。

「駄目だ・・・寝よう」

 段々思考がネガティブになってきたことに気づき、切り替えるために就寝を選ぶ。

 この泥沼から抜け出さなければならない。

 自分が一体なんなのか。

 この世界に生まれた時から、思っていたこと。
 でも、考えないようにしてきた。

 どうやったって俺には答えが出せないのだから。

 段々と俺の意識は薄れていく。







「・・・あれ?」

 目が覚めたのだろうか。

 俺の耳にはあるBGMが流れている。

「ここは?」

 聞いたことのある音楽。

 遠い、遠い昔。

 前世の時に聞いたことがある。

「・・・青い・・・世界」

 ここは、もしかすると、

「ベルベットルームへようこそ」

 その声にハッとして声の発生源を見る。

「・・・な、なんで?」

「お初にお目にかかります。私は、イゴールと申します」

 知っている。

 ベルベットルームの主だ。

 このやけに長い鼻に、飛び出した目に、血走ったような眼球。

「俺は・・・なんでここに?」

「ここは、『自分を知ろうとする』者のための部屋でございます」

 自分が寝る前に考えていたことを思い出す。

「あなた様は、もっと速くここに来られると思っていたのですが・・・」

「どういうことだ」

 俺を知っていたのだろうか。

「ここで一つの『答え』を差し上げましょう」

 『答え』。

 何に対する『答え』なのだろうか。

 いや、考えるまでもなく、俺が何者なのかということだろう。

「あなた様をこちらへお呼びしたのは、私達でございます」

「なっ!?・・・嘘・・・だろ」

 俺は、イゴールに呼ばれたのか。
 何のために。
 それよりも何故俺だったのか。

「真にございます・・・そのことについても謝罪をしようと思っていましたが、あなた様がなかなかこちらへ御出でにならなかったため、今の今まで会うことが叶いませんでした」

「・・・もっと早く来れた、と?」

「はい。もちろんにございます。貴方様が思った以上に自分が呼ばれた理由に早く区切りをつけなさったために、これほど遅くになったのです」

「・・・」

「まずは謝罪をさせていただきましょう」

 スッとイゴールの後ろから青い服を着た女性が現われる。

「勝手にこちらへお呼びしたことに対して・・・真に申し訳ありません」

 座ったまま、イゴールが頭をさげる。

「申し訳ありませんでした」

 横に立っている女性も頭を下げる。

「・・・」

 ゲームで見たことのない展開に頭がついていかない。

「頭を・・・上げてください」

 なんて言えばいいのだろうか。

 何してくれだんだ、なんて怒鳴ればいいのだろうか。
 それとも、元のところへ帰してくれと言うべきなのだろうか。

「それと、紹介が遅れました。私、エリザベスと申します」

 エリザベス。

「君が・・・エリザベス」

 思った以上に綺麗な女性だった。

「はい。琉峰様」

「彩、と呼んでくれ」

 俺はどうやらテンパると、変なキャラになってしまうようだ。

「では、彩様と」

「いや、彩だけで」

「・・・彩」

「あぁ。俺も君をエリザベスと呼ぶよ」

「畏まりました」

「話を戻してもかまいませんか?」

 遠慮がちにイゴールが話しに割り込んでくる。

「あ、あぁ・・・」

 その言葉で落ち着きを取り戻してきた。

「まず、あなた様が選ばれた理由は・・・」

「俺だった理由・・・」

 気になる。
 あの時の俺が選ばれた理由。

 なんの取り柄もない、とまではいかないはずだが、それほど飛びぬけてできることもなかったはず。

 どうしてそんな俺がここによ

「特にありません」

「・・・マジか」

「マジでございます」

 横からエリザベスが話しに入ってくる。

「私が、勝手にメールを送らせていただいたところ、彩のところへ届いたようです」

「・・・そ、そうか・・・」

 特に理由はないのか。

「・・・」

 思わずショボーンとなってしまった。

「そして、ここからが重要なのです」

 イゴールのその真剣みを帯びた声に俺はそちらに意識を向ける。

「あなた様のこの『世界』での役目でございまず」

「俺の・・・役目?」

「はい。あなた様はこの世界である方に協力していただきたいのです」

「・・・それは?」

 誰だろう。

 俺というイレギュラーの協力を得なければならない人。

 いや、人でない可能性もある。

 もしかしたらシャドウだったりするかもしれない。

「稲城遥様です」

「あいつに?」

 何を助けるというのだろうか。

 もしかして、こいつまでも、逆ハーを作るのを手伝えなんて言うのではないだろうな。

「彼女では『答え』に辿り着けないのです」

「『答え』?」

「そうです・・・命の『答え』に」

 ゲームでいうエンディングにたどり着けないということだろうか。

「それは・・・辿り着かなきゃならないものなのか?」

「えぇ、『命の答え』に辿り着かなければ、『死』を退けることはできません」

 それはつまり、

「世界滅びるってこと?」

「その通りでございます」

(おぉぉぅぃ!!!なんでそんな重要な役目を逆ハーしたいなんて言ってる女が背負ってるんだぁっぁあ!!)

「・・・オワタ」

「いえ、諦めるのはまだ早いです」

「エリザベス・・・」

 椅子から落ち、地面でorzのポーズをとる俺に差し伸べられる手。

(女神よ・・・)

「そのための彩なのです」

「俺?」

「やり方はお任せします。彼女をどうか『答え』に導いていだだきたい」

「ぇ・・・いや、無理じゃね?」

「彩にならきっとできます」

「そ、そうかな?」

「もちろんでございます。私もお手伝いいたしますし」

 エリザベスが手伝ってくれるならなんとかなる、なんだかそんな気がする。

「外ではいくばくかの時が流れたようです。これ以上お引止めすることはできますまい」

「これを」

 エリザベスから手渡される鍵。

「これは・・・契約者の鍵・・・」

「はい・・・それでは、またの会えることを楽しみにしております」

 そこで俺の意識は消えるように浮上した。



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