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久遠の神話

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第百九話 戦いが終わりその七

「駄目だぞ」
「そんなことしないわよ、私」
 樹里は父の今の言葉には上城を見てから口を尖らせて答えた。
「絶対に」
「まあ御前は大丈夫だがな」
「当たり前よ、何処かの元アイドルじゃないんだから」
「可愛かったんだがな、昔は」
 娘の元アイドルの例えにはだ、父は残念そうに述べた。
「あの娘もあの人もな」
「離婚したりしてるわね」
「離婚も当然だ、離婚しなくともな」
「後で、よね」
「泣きを見る」
 不倫は、というのだ。
「火宅で幸せになる人間なぞ一人もいない」
「火宅って?」
「ごたごたしてばかりの家のことだ」
 父は娘だけでなく上城にも向けて説明した。かなり砕けた説明ではあるが。
「揉めごとばかりの家だ」
「そうしたお家本当にありますよね」
 上城は樹里の父の言葉に応えてこう述べた、ハンバーグの仕込みをしながら。
「揉めごとが絶えない家って」
「そんな家に誰もいたくないだろう?」
「はい、傍から見てもそう思います」
「なら上城君も樹里もな」
 ここでも二人だった。
「浮気とか借金とか暴力とかギャンブルは禁物だぞ」
「またそこで私達一緒にするのね」
「当たり前だ、将来ある二人だぞ」
 それだからこそとだ、父は娘に確かな声で告げた。
「そうしなくてどうする」
「全く、そんなことばかり言うんだから最近」
「そろそろ言っておかないと、と思ってな」
「私だけでなく上城君にも?」
「そうだ、仲良くやれよ」
 今度は優しい口調で言った父だった。
「二人で末永くな」
「本当に最近どうしたのよ」
「どうしたもない、お父さんは普通だぞ」
「あまり普通に見えないわよ」
 こうしたやり取りをしながらだった、二人は料理の用意をしていた。そして丁渡スパゲティが茹で終わったところでだった。
 家のチャイムが鳴った、すると。
 弟がだ、驚いた顔でキッチンに来て言って来た。
「お姉ちゃん、お客さんだけれど」
「あっ、来られたのね」
「うん、三人の女の人だけれど」
「銀月さん達ね」
「三人共凄い綺麗なんだけれど」
 こう姉に言うのだった。
「あの人達誰?モデルさん達?それとも女優さんとか?」
「違うわよ、お姉ちゃんのお友達よ」
 樹里は笑顔で弟に答えた。
「学校で知り合ったね」
「そうなんだ」
「先生の人もいるけれど」
 智子についてはこう言った、彼女のこの世界での人間としての顔で話したのである。
「それでも三人共ね」
「あんな綺麗な人達とお友達だなんて」
「それで来られたのね」
「うん、そうだよ」
「丁渡スパゲティ出来たし」
「ハンバーグ後は焼くだけだよ」
 こちらの仕込みも終わった。
「ポテトサラダにオードブルも出来てるし」
「丁渡いいタイミングね」
「うん、スパゲティにソースをかけてハンバーグを焼いてね」
 そして、というのだ。
「食べるだけだったから」
「本当に丁渡よかったわ、じゃあね」
 樹里は上城と話しながらだ、弟に言った。
「その人達案内して」
「うん、それじゃあね」
 弟は姉の言葉に応えてだ、そしてだった。
 聡美達が来た、すると今度は父が驚いて言った。
「おい、また凄い美人さん達だな」
「お父さんもそう思うよね」
「ああ、予想外だよ」
 こう息子に答えるのだった。
「ここまで凄い美人さん達とはな」
「ちょっとお父さんまで」
 樹里は驚く父に目を顰めさせて言った。 
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