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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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9話 『優先すべきは』

「 ────ん、あれ……もう朝? わたし、いつの間にか寝ちゃってたんだ………あっ」


 シファが目覚めた早朝、ふと目を向けた朝日差し込む窓辺に、白銀の長髪流れる赤マントの背を向けて佇む姿があり、思わず声を上げてしまう。

「マゥスン……!? 意識が戻ったの?!」

「あ? ダレがどうしたって────なッ、いつの間に起きてやがった、赤魔!?」

「どうしたんでスかぁ……? ふあっ、マゥスンさんがお目覚めになってまス?!」


「 …………… 」


 普段と変わらず黙っているが、窓辺からの朝日を背にしておもむろにシファ、ランク、ビルに振り向くマゥスン。

「熱は? 体の痛みはどう? もう起き上がって大丈夫なの?」


「 ………問題ない 」


 一方的に心配してくるシファに、マゥスンはあくまで無感情に答えた。


「ホントかよ……あンだけヤバそーだったクセに、もーちょい休んでりゃいいンじゃねェか?」

 話掛けづらそうなランクに次いで、ビルも気遣う。

「そ、そうでスよ、ここのお屋敷のメイドさんはいい人でスし……」


「 ────そうもいかない 」


「でもマゥスン………そんな体で、これからの旅………続けられるの?」

 シファは、核心に迫って話す。


「意識がなかったあなたを除いて、わたし達……この町の東にある広場で、予言者ルカーンと賢者の人達に会って話を聞いてきたの。
ほとんど、何でも知ってそうな感じで ────4つの源のクリスタルについて一通り教えてもらって、クレセントレイクに来て急に倒れたマゥスンの症状の事まで、知ってたみたいなの。………あの人から、[呪い]を受けてたんだってね。カオス神殿での、戦いで」


「 …………… 」


 表情を変えず、答えないマゥスンにいつもなら口を挟むランクだが、どこか後ろめたい。

「ねぇ……、黙ってちゃ分からないよ。あなたの口から、直接聞きたい事だってあるんだから……!」


「 ────余計な心配を掛けてしまい、すまなかった」

 瞳を閉ざして謝るように云うマゥスンに、少し驚く3人。

「オマエが、謝るこたねェだろ。オレの……せいでもあるンだしな」

「 私自らの不始末による問題。……貴様は関係ない」

「関係なくねェだろッ、ガーランドの野郎倒さねーと、[呪い]の症状ってのは続くンだぜ。奴はあの時、ホントは倒されちゃいなかったンだ。"異空間"ってのに姿消しやがっただけで……! オレは、クリスタルの事より先に野郎を引きずり出して倒すからな。オマエに借り作ったまンまにゃさせねェぜ」

 そう云い切るシーフのランクを、黒曜石のような艶のある瞳で見据えるマゥスン。


「 ────捜し出す手立てのない今、果たすべき役目を優先すべきだ」


「また、あぁなるかもしれねェってのにオマエ………そンな体でやってくつもりかッ?」

「 迷惑を掛けるのは承知の上、私はそうする」

「なンで、役目ってのにそこまでこだわるンだよ……ッ」

 毅然としたマゥスンにランクは、それ以上云えなくなる。


「でもマゥスンさん……、ボク達に心配掛けないように今まで黙ってたのは分かりまスけど────つらい時は、つらいって云って下さい。
ボクらの知らない所で苦しい思いしてたなんて、駄目でスよ……っ。光の戦士の役目とか以前にボク達は、仲間なんでスから」


「ビルの云う通りだよ、無理にとは云わないけど……、マゥスンからもなるべく話してほしいから。約束してくれないと、わたし達があの人見つけ出して倒すまで、ここに留まってもらうからね!」


「 ………判った 」


 ビルとシファの言葉に何を思ってか、たったひと言だけ返す。

「ぜってェ分かっちゃいねーだろ。オマエ必要以上に喋ろうとしねェからな……」

「じゃあランク、まずはあなたがマゥスンをちゃんと名前で呼んであげる事から始めたら?」

「な゙ッ、何でそーなるンだよ!」

「でスよねぇ、まともに呼んだ事ほとんどないでスもんねっ」

「ほら、ちゃんと呼んであげて? せ~の…!」

「うっせェ! ンなコトよりここにゃもう用はねーだろ、さっさと『土のクリスタル』見っけ出すぜッ」

「ちょっと待ってランクったら! テューテさんにお礼云わなきゃダメでしょ……!?」

「ランクさん、照れ屋さんでスねぇ」

「 …………… 」


────────────


 クレセントレイクから新たに旅立った4人は、メルモンドという町を目指して針路をとり、そこに着くまで舵を取るランク以外は船内に居て、シファはふと思い立って赤魔道士マゥスンの居るの船室前まで来る。


「マゥスン? わたし、だけど………入ってもいい?」

 ────声を掛けるが、返事はない。

(まさか、発作起こしてるんじゃ……っ)


「 開いている、……入って構わない」

 早まってしまったか、少しして中から落ち着いた声が返ってきたため思わずほっとするシファ。

ドアを開けると、羽付き帽子はしていない赤マント姿のマゥスンはベッドの隅に腰掛けており、遠慮がちに入って来た白魔道士のシファを無表情に見据える。


「ちょっと、二人きりでお話したいなぁと思って来たんだけど……隣、座ってもいい?」

「 あぁ 」


「あれから……、大丈夫?」

「 ……問題無い 」

 まるで、何事も無かったように素っ気ないマゥスン。

「えっと……白魔法じゃ痛みの症状、少しでも抑えられないのかな」


「 効き目は無い 」

「そう、なんだ……。だからあの時、"必要無い"って云ったんだね。ごめん────何もしてあげられなくて」

「 ………謝る必要は無い 」


「でも、悔しいの。一緒に旅をしてる仲間なのに、結局何も分かってなかったんだって」

「 …………… 」


「こんな事聞くのも何だけど……モンスターとかとの戦いで痛みに襲われたら、どうするの?」

「 堪える他ない 」

「あれから今まで、そうして来たって事……? それでも、今回みたいに倒れちゃうくらいの発作の時は──── 」


「 迷惑を掛ける事になる。………すまない」

「あ、あなたの方こそ、謝る事ないんだから……! 正直、そんな体でも旅を続けるって聞いた時、ほっとしたの。マゥスンは剣も白黒魔法も扱えて、話とかあんまりしてくれなくても、居てくれるだけで何だか心強いから──── 」

「 …………… 」


「ごめん、わたし、変な事云ったかな?」

「 いや 」

 若干下向いたようなマゥスンを気にするシファ。

「そういえば……、あの人って何だったのかな。ガーランドっていう、ナイトの事だけど……。コーネリアの王女を連れ去って、わたし達と戦って────異空間に追いやられたって云われても、そんな所でどうしてるかなんて分からないし………。"時が来れば分かる"みたいな事を予言者ルカーンは云ってたけど、早い内に見つけ出せればいいのに」

「 ………… 」

「今はとにかく、4つの源のクリスタルの方を優先するんだよね。……ビルは"土の欠片"を持ってるからか、大地が腐って来てる事に敏感になってるみたい。四方の大陸に存在する源のクリスタルの祭壇────わたし達の持つ欠片よりきっと大きいだろうけど、そこに辿り着ければ"元の輝き"を取り戻せて、世界をカオスから守れるんだよね。がんばろ? 役目を果たすために!」

「 ………あぁ 」 
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