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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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8話 『予言者と賢者達』

「 ────来たか、クリスタルの欠片を司る者達よ」


「アンタだけじゃなく、他に11人いやがるとはな。大層なこったぜ……」


 林に囲まれた広場にて3人の訪れを待っていた予言者ルカーンを始め、その後方に控えるように他11人いる賢者達は皆、葡萄色のローブに身を包み、若い者から老年に至るまで男性ばかりだが、中には女性も混じっているらしい。

「1人の、仲間を除いて……わたし達は4つの源のクリスタルについて、あなたにお話を伺いに来ました……」

「 ────貴方達、本当に何も知らないのね。それとも、憶えていないだけかしら」

 ローブの襟に口元まで隠れている、黒髪の長い女賢者が口を挟んだ。


「エネラよ、お前は黙っていろ」

「ごめんなさい……? 余りに無知な子達なので、つい」

(いきなし何だ、あの陰険女ッ)

(ふえぇ、何だか怖いでス……っ)

 癇に障るランクと、12賢者を前に恐れをなすビル。


「……この世界を形造る源の4つのクリスタル、その輝きをカオスが遮り、強大な力を手にしようとしている」

「カオス……? そりゃ何だ」

「それぞれ源の力を司っていながら、相反する邪悪な意思を持つ混沌の存在─────
400年前に風のカオス、200年前に水のカオスが現れ北の文明を破壊し、近年は土のカオスが目醒め、全ての時代を支配しつつある」

「しかし、欠片の存在によって完全な復活は妨げられているのも事実。……火のカオスは、まだ目醒めてはいない」


(欠片の存在って、わたし達の持ってるクリスタルの事……?)

 自分達の中に宿っている欠片に思いを巡らせシファ。

「土、火、水、風────4つの源の力は四方の大陸に存在するクリスタルの祭壇にて、そこに巣食うカオスを倒しその場に見合った欠片を示せば、源の輝きは取り戻される」

「 ────土のカオスは大地を腐らせ、火のカオスが現れし時、全ては焼き尽くされる」

「 ────水のカオスは汚水を撒き散らし、風のカオスは生命の息吹きたる風を断つ」

 12賢者達は、謳いながら語り次いでいく。

「それら4匹のカオスを倒し、暗黒の世を阻止出来るのは光の戦士のみ。……優先すべきは、土の源のクリスタル。その所在に関しては、西方の地メルモンドの町にて自ずと知れる」


「ハッ、アンタらにとっちゃ何でもお見通しってか。都合良すぎるぜ」

 疑念を募らせるシーフのランクに、比較的若く笑顔の絶えない男の賢者が、思い出したように口を開いた。

「あぁ……そういえばここへ来て急に倒れられた赤魔道士の方について、ですが────
ある種の、[呪い]を受けておられるようですよ」

「ふえっ? それってどういう事、でスか……!?」

 ビルを始め、耳を疑うランク、シファ。

「"もたらす者"によって症状は様々ですが………あの方の場合、左肩から背にかけて受けた傷が元で、人知れず時折訪れる激しい痛みに耐えてきたようで、今回に至っては高熱を出されるほど程度が甚だしかったみたいですね」


「まさか、その傷って……!」

 シファは、あの赤マントの裂けた後ろ姿を思い出す。


「えぇそうよ。ナイト・ガーランドとの戦いで、シーフの"貴方"を庇った際に受けていた深手──── 」

「!? 何で、ンな事知って……ッ」

「アラ……、貴方さっき云ったわね。ワタシ達は何でもお見通しって」

 ランクを冷笑するかのように云う、エネラという女賢者。

「ちょっと、待てッ。アイツ……自分で白魔法で傷、治したンじゃ──── 」


「ナイト・ガーランドは、[カオスの力]に魅入られた1人。その者の繰り出す力は禍々しき"呪い"となって標的者を蝕む。
……つまり、彼の受けた傷は癒える事がないの。[カオスの呪い]をもたらした張本人────ガーランドを倒さない限り」

「あ、あの黒いナイトの人は、ボク達が倒せたんじゃないんでスか……?!」

(思わず聞き返したビルに、黒髪の女賢者が続ける。

「憶えてないのかしら、ワタシ達には"視えていた"のだけど………。あの時、追い詰められた貴方達は、無意識の内にその身に宿すクリスタルの欠片の"半端な力"で、ガーランドを[異空間]へ追いやったのよ。いいえ、そうね────彼が"その力"を利用して逃げた、とも云えるわね」

 そう云われても、3人は何故か記憶に靄が掛かったようにうまくその時の事を思い出せない。

「異空間つったって……、どーすりゃ見つけ出せンだッ?」

 ランクは躍起になって予言者ルカーンに問い質す。


「時が来るば、自ずと解る」


「な゙、ふざけやがって……! 時が来ても来なくても、ガーランドの野郎を引きずり出して赤魔の受けた[呪い]ってのはオレが解く! オレは……オレのやり方でやるからなッ!」

 1人踵を返してその場から立ち去るランクに、シファとビルは戸惑いながらも後を追う。

「あ、あの、失礼します……!」


 3人が立ち去るのを、黄昏の中黙って見送る12賢者達。


────────────


 3人は屋敷の宛がわれた部屋に戻り、メイドのテューテが出迎えた。

「お帰りなさいませ、皆さん。……赤魔道士の方は呼吸が安定し、熱も下がられてきたようですから、明日にはお目覚めになると思われますよ。────では、お夕食の準備がありますので私は一旦失礼至します。何かありましたら、お尋ね下さい」


 倒れた直後と違い、顔色も落ち着いた様子のマゥスンは、白銀の長髪とその端正な顔立ちから、眠り姫のような王子にも見受けてしまう。

「良かった……、とりあえず大丈夫みたいだね」

「そ、そうでスねっ……」

 ひとまず安堵するシファとビル。


「 ────良くなったっつっても、またこうなるかもしれねェんだ。コイツが受けた[呪い]ってのを解かねー限りな」

「でもランク、あの人は[異空間]に追いやられたっていうし、捜し出す手立てもないんだよ?」

「そ、それに、源のクリスタルの事もありまスし、まずは大地が腐っていくのを止めないと……っ」

 二人の意見に、ランクは反発する。

「オマエら、コイツがこんな状態で旅続けられっと思ってンのか? オレを庇いやがったから、コイツは………。借り作ったままじゃ、シャクなンだよッ。────オマエらがクリスタルの輝きっての優先しようと、別行動してでもオレはガーランドの野郎見つけ出すからな」 
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