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I want BRAVERY

作者:清海深々
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2話 Main Culprit


2話 Main Culprit

イゴールSide

「ふむ、どうやら新しい客人たるべき人がこの世界を訪れたようです」

 青い部屋のソファーに腰掛ける、異様に鼻の長い老人から言葉が漏れる。

「そのようです」

 その傍に立つ、前髪が切り揃えられた、金髪の青い服を着た女性が答える。

「しかし、これはまた・・・」

 老人はどこか困ったような声を上げる。

「いかがいたしますか?」

 会話のメインたる部分が抜けているにも関わらず、二人の間では通じているようだ。

「この世界に着たからには、いや、あの人に“なった”のなら、必ず『命の答え』に辿り着いてもらわなければなりませんな」

 老人はそう言うと、ふぅとため息をついた。

「予定より早く接触しますか?」

 女性は淡々と老人に問いかける。
 その声にはあまり感情が篭っていない。

「・・・それでは意味がありませんな」

 老人は困ったように答える。

「接触の回数を増やしますか?」

 女性は、この件の解決策たりうる策を全て挙げようとしているようだ。

「そうですね・・・しかし、“あの人”がそれに応じるとは限らない、というのはいささか不安ですな」

 老人はこの策では不満なようだ。

「では、誰か他の人間により身近な位置から支えさせますか?」

 女性のその問いに老人はしばし黙る。

「エリザベス」

 何分か経っただろうか、いや何分も経っていないかもしれない。
 この空間ではイマイチ時間の感覚がわからなくなってしまいそうだ。

 仮に数分としておこう。

 数分経った後に、老人が女性を呼んだ。
 どうやら女性の名前はエリザベスというらしい。

「なんでしょう」

「その人間とは?」

 老人はエリザベスに尋ねる。

「誰でもいいのではありませんか?」

「・・・誰でも、その『誰でも』とは一体どの『世界』の誰でもなのか・・・」

 老人は独り言を呟くように言う。

「この『世界』以外のどこかの『誰でも』でございます」

「やはり、それしかありませんか」

 老人はもう一度ため息を付く。

「はい。これが最善だと思われます」

 エリザベスは老人の言葉を肯定する。

「その方にはずいぶん悪いことをすることになりますな」

「仕方ありません。『世界』のためです」

 先ほどとは、受け答えが逆になりながら二人は会話を続ける。

「その『世界』は、その方にとっては違う『世界』であるのですがね」

 老人はどうやらこの案に乗り気ではないようだ。

「仕方のないことです」

 エリザベスは感情の篭ってない声で答える。

「それにしても『あの方』にも困りましたね・・・」

 ふぅ、と本日3度目になるため息を老人は吐く。

「まさか『ご自由になさってください』と言ったら、本当に適当に選ばれてしまうとは・・・」

「それもまた、『あの方』の魅力なのでしょう」

「そうですな・・・」

 老人はエリザベスの言葉を肯定する。

「しかし、ただでこちらに呼ぶというのはあまりに理不尽すぎますね」

 老人は目の前のテーブルを見つめながら言う。

「一つや二つ程度の特典をつければよろしいのでは?」

「いくらそれを貰おうと、あくまでそれはこちらの『世界』での話し、その方にとっては違う『世界』・・・難儀なことですな」

 老人はまたため息をつく。

「エリザベス。その件は任せますよ」

「はい。わかりました」

 エリザベスは老人に頭を下げる。

 すると、老人はすっと溶けるようにして消えた。

「ふむ。いかがいたしましょうか」

 エリザベスは一人呟く。

「!!・・・そうですわ」

 エリザベスはポンと手のひらを叩くと、ポケットから何かを取り出した。

「これを使って直接聞けばいいのです!」

 エリザベスは誰もいない空間で一人、取り出したものを掲げ叫ぶ。

「つい最近使い方を覚えました、文明の利器。その名も・・・」

 エリザベスは一人盛り上がっている。

「携帯電話!」

 そして、一人叫ぶ。

「これで・・・適当な、アドレスを入れて・・・異世界に送ると・・・」

 エリザベスはアドレスを入力したところで一旦止まる。

「内容はなんて送れば?・・・あ・な・た・わ・な・に・お・の・ぞ・む・?」

 慣れない手つきでエリザベスは携帯に文字を打ち込んでいく。

「ふむ。これではイマイチ文章がわかりませんね」

 エリザベスはさらに打ち込む。

「やはり、能力は一つまでですね。それ以上つけるわけにはいきませんし」

 彼女は変換ボタンの使い方がいまだにわかっていないようだ。

「ステータスもサービスしましょう。合計は・・・10くらいでいいでしょう」

 一人納得しながら文字を入力していく。

「これは必須ですね。拒否権はない・・・いい響きです」


「あまり長時間かけられると、時間がどう飛ぶかわかりませんから、5分以内にしてもらいましょう」

「ふむふむ。これでよし」

 もう一度自分のメールを見直し彼女はうなずく。

「あ、そうだ忘れるところでした」

 彼女は最後にそう呟くと、携帯に文字を打ち込む。
 その時に勝手にカタカナ変換になったのは偶然か、それとも必然なのか。

「ぺ・る・そ・な」
 

 
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