I want BRAVERY
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
1話 Her's desire
この人の転生後の名前未定なので、希望があれば感想でお願いします。
********************************************
1話 Her's desire
———カチャカチャ
室内に響き渡る音は、その一室にいる女性のもつPSPのボタンを押す音のみ。
20代前半程度に見える女性は、部屋で唯一人イヤホンをつけながらPSPの画面を必死に見ている。
そのイヤホンの先はPSPだ。
「次こそは!次こそは逆ハーを作るぅ!」
この女性、大島由利子は、『ペルソナ』シリーズの大ファンである。
「あ・・・あぁぁぁ!ちょっとぉ!嘘、えー折角放課後に選択したのになんもなし?」
一人PSPをやりながら、あーだこーだと騒いでいる。
部屋を見渡して見ると、そこには女性とは思えないような光景が広がっていた。
部屋にあるポスターには『ペルソナ3』『ペルソナ4』の主人公が写っている。
そして、部屋にある2つの本棚には、片方にはゲームカセットがぎっしりと、もう片方には攻略本とファンブックがきっじりとつまっている。
この女、正真正銘のゲームオタクである。
そして最近ハマっているのは、もうおわかりの通り『ペルソナ3ポータブル』。
大島は『ペルソナ3ポータブル』を予約し、販売日はソレを買うためにわざわざ大学の授業をすっぽかした。
「ぐっは、今ので死ぬかゆかりっち・・・使えない女」
大島は何度かクリアし、気が済むまでプレイしてから攻略本や、WIKIを見るタイプの人間だ。
ちなみに今は2週目である。
「伊織・・・そっか疾風が弱点だったね・・・でもそこがイイ!」
1週目ではなしえなかった完全逆ハーを今度こそはしようと意気込んでいるのだ。
さっきのセリフでわかると思うが、彼女、大島は女キャラにはとことん冷たい。
1週目のクリア時では、女キャラは全てコミュ1以下。
そのため、コミュが出ないキャラがいて1週目では逆ハーが達成できなかった模様。
「あーもぅ、男で回復キャラ出しなさいよね〜」
ひたすらに逆ハーを求めている。
彼女のお気に入りは荒垣というキャラのようだ。
何故なら彼女の机、もはや机と呼んでいいのかわからない物の上には、荒垣というキャラのポスターが綺麗に置いてあり、フィギュアまである。
これは余談だが、彼女のパソコンのデスクトップ画も荒垣である。
「しゃあ!ランクアップ!」
タルタロウスの探索は余裕なため、学校の方へすぐにいくようだ。
それからしばらく、しばらくと言ってもたっぷり4時間ほどした時。
「ん?・・・あぁ!!電池!電池!充電器は何処!?」
PSPの電池が切れたようだ。
大島は机の引き出しの上から二段目の、充電器系の定位置のひきだしからPSP用のを取り出し、コンセントにさしてあわててPSPにもさす。
「・・・セーフ」
なんとか間に合ったようだ。
そして、それからまた2時間ほど経った。
「ふぅ・・・今日はこんなとこかな、お腹も減ったし」
大島は一人暮らしだ。
そして、今日は大学の授業がない日曜日。
思う存分にPSPをしていた。
「あーなんもないやぁ」
冷蔵庫を開けるとそこにはビールしか入っていない。
「コンビニにでも行っこかなぁ」
部屋着のジャージから、外行きの服へ着替えようとクローゼットを開ける。
そのクローゼットの中身は8割がアニメのコスプレ。
ちなみにそれらの中の9割が男性用だ。
「んーと、これでいっか」
彼女、大島は見た目にまったく気をつけない人物である。
化粧をすれば、まぁ悪くはないのだが、大学に行くときも大抵すっぴんである。
そのせいか、モテた試しが全くない。
最も彼女自身そういったことに興味がないようだ。
ついでに言っておくと、彼女が化粧をするのはコスプレする時のみ。
一度それを見た男友達から交際を頼まれたが、
「毎日、この服(『ペルソナ3』の男子用制服)着てくれるならいいよ」
と言って、一瞬で終わったことがある。
「はぁ・・・転生したぃ・・・ペルソナの世界行きたいなぁ」
大島は立ち止まってポーズを決める。
「ペ・ル・ソ・ナァ!!!」
そう叫んで銃の形にした指を頭に向け、銃を撃つ仕草をする。
「・・・」
場を沈黙だけが占める。
「アホかってんだ・・・」
そんな時、
<クスクス>
「え?・・・何!?」
<クスクス>
何処からともなく笑い声が聞こえる。
「だ、誰!何処にいるの!?」
<ワタシ?ココダヨ>
大島は声のした方へと顔を向ける。
<コッチコッチ>
そこにはオルフェウス(女性型)のフィギュアがある。
大島が持っている中で唯一の女性のものだ。
「ま、まさかオルフェウスなの!?」
(※本当は違います)
<クスクス、ぺるそなノセカイニイク?>
「え?・・・行けるの!?」
長時間のゲームのせいで頭がおかしくなったとは、何故か全く思わない大島。
<ツレテイッテアゲヨウカ?>
再びオルフェウス(の後ろの鏡)から声が聞こえる。
「行けるなら行きたい!連れて行って!」
常人なら信じない、それ以前にこんな声が聞こえても幻聴とするだろう。
しかし、大島は違う。
このオルフェウスから声が聞こえたため、彼女にはもう現実が見えていない。
<イイヨ。ドノジカンタイニイキタイ?>
聞き取りにくい言葉にも関わらず、彼女はそれを一瞬で正確に聞き取る。
「えっと、えっと!『ペルソナ3ポータブル』の!女主人公に転生したい!」
<イツゴロ?>
「えっと・・・12歳程度から!」
一瞬最初からと考えたが、幼児の羞恥プレイなど受けたくないと考え、12歳を選ぶ。
それに、例の昔の事故の場に居合わせたくない、という思いもあった。
<ワカッタ。ソノノゾミカナエヨウ>
「本当!?ありがとう!」
疑問より先に感謝の言葉が出るあたり大島である。
そして、その途端光が彼女を包み込み、その光に包まれた彼女は鏡の中(大島からすればオルフェウス)へと入っていった。
こうして大島は念願の転生を果たした。
************************************************
誤字、脱字、矛盾点がありましたら報告お願いします。
ページ上へ戻る