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I want BRAVERY

作者:清海深々
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1話 Her's desire


この人の転生後の名前未定なので、希望があれば感想でお願いします。
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1話 Her's desire

———カチャカチャ

 室内に響き渡る音は、その一室にいる女性のもつPSPのボタンを押す音のみ。

 20代前半程度に見える女性は、部屋で唯一人イヤホンをつけながらPSPの画面を必死に見ている。

 そのイヤホンの先はPSPだ。

「次こそは!次こそは逆ハーを作るぅ!」

 この女性、大島由利子は、『ペルソナ』シリーズの大ファンである。

「あ・・・あぁぁぁ!ちょっとぉ!嘘、えー折角放課後に選択したのになんもなし?」

 一人PSPをやりながら、あーだこーだと騒いでいる。

 部屋を見渡して見ると、そこには女性とは思えないような光景が広がっていた。

 部屋にあるポスターには『ペルソナ3』『ペルソナ4』の主人公が写っている。
 そして、部屋にある2つの本棚には、片方にはゲームカセットがぎっしりと、もう片方には攻略本とファンブックがきっじりとつまっている。

 この女、正真正銘のゲームオタクである。

 そして最近ハマっているのは、もうおわかりの通り『ペルソナ3ポータブル』。

 大島は『ペルソナ3ポータブル』を予約し、販売日はソレを買うためにわざわざ大学の授業をすっぽかした。

「ぐっは、今ので死ぬかゆかりっち・・・使えない女」

 大島は何度かクリアし、気が済むまでプレイしてから攻略本や、WIKIを見るタイプの人間だ。

 ちなみに今は2週目である。

「伊織・・・そっか疾風が弱点だったね・・・でもそこがイイ!」

 1週目ではなしえなかった完全逆ハーを今度こそはしようと意気込んでいるのだ。

 さっきのセリフでわかると思うが、彼女、大島は女キャラにはとことん冷たい。

 1週目のクリア時では、女キャラは全てコミュ1以下。

 そのため、コミュが出ないキャラがいて1週目では逆ハーが達成できなかった模様。

「あーもぅ、男で回復キャラ出しなさいよね〜」

 ひたすらに逆ハーを求めている。

 彼女のお気に入りは荒垣というキャラのようだ。

 何故なら彼女の机、もはや机と呼んでいいのかわからない物の上には、荒垣というキャラのポスターが綺麗に置いてあり、フィギュアまである。

 これは余談だが、彼女のパソコンのデスクトップ画も荒垣である。

「しゃあ!ランクアップ!」

 タルタロウスの探索は余裕なため、学校の方へすぐにいくようだ。

 それからしばらく、しばらくと言ってもたっぷり4時間ほどした時。

「ん?・・・あぁ!!電池!電池!充電器は何処!?」

 PSPの電池が切れたようだ。

 大島は机の引き出しの上から二段目の、充電器系の定位置のひきだしからPSP用のを取り出し、コンセントにさしてあわててPSPにもさす。

「・・・セーフ」

 なんとか間に合ったようだ。

 そして、それからまた2時間ほど経った。

「ふぅ・・・今日はこんなとこかな、お腹も減ったし」

 大島は一人暮らしだ。
 そして、今日は大学の授業がない日曜日。

 思う存分にPSPをしていた。

「あーなんもないやぁ」

 冷蔵庫を開けるとそこにはビールしか入っていない。

「コンビニにでも行っこかなぁ」

 部屋着のジャージから、外行きの服へ着替えようとクローゼットを開ける。

 そのクローゼットの中身は8割がアニメのコスプレ。

 ちなみにそれらの中の9割が男性用だ。

「んーと、これでいっか」

 彼女、大島は見た目にまったく気をつけない人物である。

 化粧をすれば、まぁ悪くはないのだが、大学に行くときも大抵すっぴんである。

 そのせいか、モテた試しが全くない。
 最も彼女自身そういったことに興味がないようだ。

 ついでに言っておくと、彼女が化粧をするのはコスプレする時のみ。
 一度それを見た男友達から交際を頼まれたが、

「毎日、この服(『ペルソナ3』の男子用制服)着てくれるならいいよ」

 と言って、一瞬で終わったことがある。

「はぁ・・・転生したぃ・・・ペルソナの世界行きたいなぁ」

 大島は立ち止まってポーズを決める。

「ペ・ル・ソ・ナァ!!!」

 そう叫んで銃の形にした指を頭に向け、銃を撃つ仕草をする。

「・・・」

 場を沈黙だけが占める。

「アホかってんだ・・・」

 そんな時、

<クスクス>

「え?・・・何!?」

<クスクス>

 何処からともなく笑い声が聞こえる。

「だ、誰!何処にいるの!?」

<ワタシ?ココダヨ>

 大島は声のした方へと顔を向ける。

<コッチコッチ>

 そこにはオルフェウス(女性型)のフィギュアがある。
 大島が持っている中で唯一の女性のものだ。

「ま、まさかオルフェウスなの!?」

(※本当は違います)

<クスクス、ぺるそなノセカイニイク?>

「え?・・・行けるの!?」

 長時間のゲームのせいで頭がおかしくなったとは、何故か全く思わない大島。

<ツレテイッテアゲヨウカ?>

 再びオルフェウス(の後ろの鏡)から声が聞こえる。

「行けるなら行きたい!連れて行って!」

 常人なら信じない、それ以前にこんな声が聞こえても幻聴とするだろう。
 しかし、大島は違う。

 このオルフェウスから声が聞こえたため、彼女にはもう現実が見えていない。

<イイヨ。ドノジカンタイニイキタイ?>

 聞き取りにくい言葉にも関わらず、彼女はそれを一瞬で正確に聞き取る。

「えっと、えっと!『ペルソナ3ポータブル』の!女主人公に転生したい!」

<イツゴロ?>

「えっと・・・12歳程度から!」

 一瞬最初からと考えたが、幼児の羞恥プレイなど受けたくないと考え、12歳を選ぶ。
 それに、例の昔の事故の場に居合わせたくない、という思いもあった。

<ワカッタ。ソノノゾミカナエヨウ>

「本当!?ありがとう!」

 疑問より先に感謝の言葉が出るあたり大島である。

 そして、その途端光が彼女を包み込み、その光に包まれた彼女は鏡の中(大島からすればオルフェウス)へと入っていった。


 こうして大島は念願の転生を果たした。
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