戦姫絶唱シンフォギア/K
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EPISODE14 二人
~PM 16:00 特異災害対策機動部二課 特殊訓練室~
叫びや雄叫びは人間と動物にみられる特殊な行動であり、何かしらの脅威または自らのポテンシャルを疑似的にあげる際に用いられるものである。それは男にしろ女にしろ言えることではあるがこと女ともなるとそれはわずかに限られてくる。
例えばスポーツ。柔道や剣道といった一対一で勝負するものなどではそういった光景は目にしやすいかもしれない。こと“戦闘”という言葉が合うようなものにしてみればなおさらその機会はおおいだろう。
では、アイドルはどうか。普通はそんなことはしない。その人物の売り出しイメージにもよるかもしれないが多くの人間んはそんなアイドルはまず見たことがないだろう。歌って、踊って、キラキラ輝いていて。そういった印象のあるのが女性アイドルというものだ。
だが、風鳴 翼はどうだろうか。彼女は普通のアイドルではない。シンフォギアという異端技術の結晶を身に纏い日夜ノイズと命がけの戦闘を繰り広げている彼女は雄叫びや叫びと言った行為をすることが頻繁にある。そしてそれはここ、特異災害対策機動部二課の特殊訓練室でも見られている。
「ハァァァァァァァァァァァァァ!!」
力の限り大剣を振るう。斬撃が宙で滞空しているノイズ向けて放たれ、直撃して消滅させる。その間、わずか10秒。しかしこれでも納得がいかないのか翼は舌打ちして着地する。
なぜ翼がこうも訓練にいそしんでいるのか。それは彼女が持ち出した作戦にある。
現在、杖より放たれた合成ノイズは昼間戦闘のあった場所にずっと滞空したまま動かないでいる。姿は依然として肉眼でとらえることはできないが反応はしっかりと出ている。偵察の為小型のカメラを飛行させたがキッチリとその領域で撃ち落とされている。よってその場にいると断定しているのだが、これに対抗できる手段は・・・・・ない。あるとすれば、雄樹の、クウガの力のみ。5つあるうちの一つである緑ならば敵の射程ギリギリにまで近づき撃ち落とすことが可能だ。だがその頼みの綱の雄樹は現在意識不明の状態。もっとも確率の高い選択しがついえた今、現戦力で迎え撃てるのは射程の広さと手数の多さから翼ただ独り。今回響はバックアップにまわり翼のサポートだ。彼女の直感の良さは雄樹に匹敵することと、現れるかもしれないネフシュタンに対抗する為この人選と、翼の推薦によりこうなった。
しかしそれだけに熱がはいる。既に訓練開始から数時間が経過していた。
《・・・・翼、すこし休憩しよう。焦る気持ちもわかるが、そんな状態ではとても実戦にはだせん》
弦十郎からの命令近い一言で翼は絶え絶えな息を少し整えて「わかりました」とつぶやくように返して訓練をひとまず終了させる。ギアを解除したあとに自分が着ていたジャージを見てどれだけ身体かだ水分がでているのかを知る。どうりで少しめまいがするわけだ。
「翼さん、これ・・・・」
気がつくと響が立っていた。差し出されたドリンクとタオルを受け取りストローをくわえて中身の液体を身体に送り込む。口から喉を伝いほどよい温度の水分が火照った身体を冷やし、クールダウンさせる。一言ありがとうと礼を述べると響はいいえ、と答え、隣に座る。
「・・・・雄樹さんは、大丈夫なのか?」
「はい。ユウ兄は心配ないですよ」
「随分とハッキリ言うのだな・・・・」
「はい。・・・・だってユウ兄クウガですから」
笑顔でいう響に「なんだその理屈は」と返す。
「ユウ兄が言ってたんです。大丈夫、だって俺クウガだからって。最初は私もそう思ったんですよ?何考えてるんだろって。でもなんだかホントに大丈夫な気がして・・・・そう思ったら、なんだかなんとかなるような気がしたんです」
困ったものですよね、と苦笑いする響。「それに、」と付け加え、
「未来が言ってたんですけど、ユウ兄の事信じて裏切られたこと、ないんです。だからきっとユウ兄が大丈夫なんです!コレで言ったならなおさら」
サムズアップを見せて言う響。たしかに言いそうだとその姿を浮かべて少し笑いがでたことに内心驚く。こんな状況でも笑えるほどの余裕がまだ心にあるとは・・・・。
「・・・・そうか。なら大丈夫なんだろうな」
「はい!だから翼さんもやってください。あの時みたいに、笑顔で!」
戸惑いながら、恥ずかしながらサムズアップする翼。それにさらにハニカム響。彼女の笑顔にもう一度瞳にやる気の炎が燃える。
「…この作戦、絶対成功させるぞ、立花」
「はい。絶対に・・・・!」
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