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I want BRAVERY

作者:清海深々
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外伝 母親



Side:母親


 私の名前は流峰千佳。
 元々は普通のOLをしていて、その会社の上司だった夫にプロポーズされてそのまま結婚した。

 当時、私は22歳だった。
 あまり高学歴とはいえないが、たまたま面接で受かりその会社に入社した私は、会社に居心地の悪さを感じていた。
 その会社は、皆かなりの学歴を持った人達ばかりだった。
 
 私は、美人だからという理由で気入った社長が、将来性がある、なんて下心丸見えの意見えお言って通したらしい。
 そのせいか、女の同僚からは、いつも見下され、嫉まれた。

 そんな私に、いつも声を掛けてくれたのが夫だった。
 上司である立場から、いつもは無理だったがそれでもよく世話を焼いてくれた。

 だから、夫にプロポーズされた時は思わず涙が出るほど嬉しかった。
 好きな人と結婚し、会社を辞め専業主婦になった。

 しかし、最初は良かった夫婦仲も時が経つにつれて、その熱を失っていった。
 居心地が良かった家も、少しづつ悪くなっていった時だった。

 息子の彩が生まれた。
 読み方はさい。断じてあやなんではない。
 彩りのある人生を、という思いをこめて名づけた。

 女の子みたいな名前だったので、男の子にはどうかと思ったのだが、あまりそこは気にしないことにした。
 何故なら、夫がその名前を聞いて、『良い名前だね』と言ってくれたから。

 彩はよく泣く子だった。
 時折、何処か大人びた、とまでは言わないがそのような雰囲気を感じたが、やはりいつも泣いていたという印象が強い。

 すぐになんでも覚え、そのうち学んでもない言葉を話始めた時は驚いた。
 しかし、幼稚園に入ると、今までの涙が嘘のようになくなり、いろんな子と遊んでいた。

 そんな様子を見るとやっぱり子供だな、と思った。
 だからこそ、その頭の良さが目立ったが夫の子なのだからそれくらいは当たり前だと思った。

 小学校へと上がり、より明るく笑うようになった。
 時折、こちらを気遣ったり、大人のような行動を取り驚かされたが、たまにベットで泣いているのを慰めたり、学校の宿題と解くのにうんうん唸っているのを見ると、まだまだ子供だなと思う。

 しかし、7,8歳の頃だろうか、何か吹っ切れたような顔するようになり、行動が目に見えて大人びるようになった。
 なのに学校ではイタズラをよくして、よく私が呼び出されていた。
 学校での彩と家での彩で、あまりにも違うので戸惑うことが多かった。

 そして、その頃からあの子には一切手がかからなくなり、子供を得たことで一時的に戻った熱が再び冷めていくのを感じていた私は、夫と二人で出かけることの望むようになった。
 夫も彩に手がかからないのを知っていたからだろう。
 彩を一人留守番させ、出かけた。

 特にそのことについて罪悪感を感じたことはない。
 私達の仲が良いと、なにより彩が喜んでいたからだった。

 そして彩は、学年でほぼトップの成績でクラスでもムードメーカーになり、よく担任に褒められ、まるで我がことのように誇らしかった。
 あまり何かを与えたりすることはできなかったが、それでもあそこまで真っ直ぐに育ってくれて本当に嬉しい。

 大人びた彩。泣き虫な彩。
 どちらも本当の彩。私達のかけがいのない宝物。

 だから、だから・・・どうかこれからも健やかに過ごしてほしい。
 怪我もなく、なによりも泣かないで生きていて欲しい。
 そう、思った。

「彩・・・」

 あなたの顔をもう一度見たかった。

 そして、そこで私は体にすごい衝撃を受け、意識を失った。
 
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