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無様な最期

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第四章


第四章

「それです。軍が関与して強制したとありますよね」
「そうですか?これを見ると悪質な業者がいるから取り締まれって書いてますよね」
 櫻井はその記事を指し示しながら田中に述べた。
「ちゃんと。つまり軍が強制的に慰安婦を徴用したのではなく悪質な業者を取り締まらせたのですよ」
「うっ・・・・・・」
「それに慰安婦狩りが行われたという地域ですが」
 そのことについても語られる。
「そこに取材に行かれた方が語っておられましたね。そんな事実は聞かれなかったと」
「それは」
「そもそもです」
 櫻井の容赦ない攻撃は続く。
「当時赤線等があって娼婦という存在がいましたね」
 そのうえでこの事実についても言及するのであった。
「吉原のような。そうですね」
「それは」
「それなのにどうして慰安婦を狩り集める必要があったのです?」
 櫻井はそのことも指摘するのだった。
「どうしてですか。娼婦から募集すればよかったのに」
「何か必要があったのでしょう」
「ありませんね。何しろ慰安婦はかなりの高給が支払われましたから」
 今度はこのことを指摘した櫻井であった。
「ですからそれもありませんよ」
「まあ慰安婦は」
「強制ではありませんでした」
 櫻井はここで断言してみせた。
「それは絶対に有り得ません」
「いや、それは女性の権利を踏み躙った」
「ではソープランドやデートクラブもですか?」
 現代の風俗産業である。
「デリバリーヘルスも。貴方はそれを言われるのならそちらに対して抗議されてはどうでしょうか」
「しかし強制連行は」
 話を摩り替える田中であった。
「あれは事実です」
「つまり貴方が仰っていた慰安婦は貴方の嘘だったと仰るのですね」
 言葉の端を確かに取られた。
「その通りですね」
「うう・・・・・・」
「そしてです」
 櫻井は畳み掛けるように攻めてきた。
「その強制連行にしろです」
「何か問題でも?」
「強制連行という定義が成立するには一つの大前提が必要です」
 ここを指摘するのであった。
「その大前提とは日韓併合が無効であったという前提です」
「無効ではありませんか」
「いえ、有効です」
 このことも指摘する櫻井だった。
「何故なら一国の宰相のサインもあります。そうしてそのうえで併合されています」
「しかし臨時政府が上海にできましたし」
「ああ、あれですね」
 その上海の臨時政府と聞いて悠然とした笑みになった櫻井であった。
「あれはサンフランシスコ講和条約の際に連合国として認められませんでしたね」
「それは国連が」
「国連に認められませんでしたね」
 また言葉の端を取られた田中であった。
「そうですね」
「それは国連が不寛容で」
「認められませんでした。合法な政権とは」
 それに尽きるのだった。
「つまり日韓併合は有効だったのです」
「しかしあの条約は銃を突きつけられて無理矢理」
「当時はそれが普通でした」
 ムキになる田中に対して櫻井はあくまで冷静さを保ち続けていた。
「そのようにして結ばれた条約が無効だと定められるのは第二次世界大戦後です。つまりそれを言えば事後立法になりますよ」
「しかし朝鮮の民衆を踏み躙った」
「法律は法律です」
 感情論に訴えようとするがそれも撥ね付けられた。
「それを否定すれば貴方は無法者になりますが」
「それは」
 怯んだがそれでも櫻井の攻撃は続く。
「つまり当時の韓国は日本であり韓国人は日本人だったのです」
 厳然たる事実が述べられた。
「ですから日本人を徴用しただけで強制連行とは成り立たないのです」
「本人の意志にそぐわなくてもですか」
「当時は戦争中で誰もが徴用されていましたよ」
 事実より強いものはない。まさにその通りであった。
「そうですね」
「うう・・・・・・」
「そもそもです」
 櫻井の容赦ない攻撃は田中が言えなくなっても続いた。
 
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