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無様な最期

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第三章


第三章

「半分だけはな」
「全て真実ではないですけれどね」
「二割程度は絶対に本当のこと入れてるだろうが」
 つまり確信犯の虚言家ということだった。
「違うか?それは」
「そうですね。それで先生」
「ああ。何だ?」
「この討論の申し出受けますか?」
「叩き潰してやるさ」
 自信に満ちた言葉であった。
「ババア一匹。何だってんだ」
「そうですか。それじゃあ」
「おう。あとな」
 仕事の話の後でさらに言う田中であった。
「今日の夜だけれどな」
「銀座ですか?」
「いや、デリヘルだ」
 風俗だというのである。
「女世話しろ。いいな」
「家には帰らないんですか」
「かかあのところに?馬鹿言えよ」
 家族をせせら笑いさえする。
「そんなところに戻って何しろってんだよ」
「じゃあ今日はそのままホテルですね」
「ロイヤルスイートでな。楽しくやるぜ」
 そのロイヤルスイートには相応しくない下卑た顔での言葉であった。
「今日もな」
「わかりました。じゃあ手配しておきます」
「しておけ。それとな」
 その言葉は続く。
「あいつに言っとけ。もっと書けってな」
「はい。じゃあゴーストライターにも伝えておきます」
「やっとけよ。金は弾むからってな」
「それではそれも」
 こんな話をしたうえで櫻井との議論に挑むのであった。それは夜の九時からの政治番組であり視聴率の高い番組であった。二人はその番組で対峙したのであった。
 まずは田中が口火を切る。櫻井は何も言わない。田中はいつものように外国のいい部分を言ってからそのうえで日本をこき下ろす。そうしてこう言うのであった。
「だからね。日本人はガキなんですよ。駄目なんですよ」
 これで勝ったと思った。櫻井が何も反論してこないからである。しかし櫻井は彼の話を聞き終えてから。悠然と笑ってこう言うのであった。
「お話になりませんねえ」
「お話にならない!?」
「そうです。お話になりません」
 余裕に満ちた笑みでの言葉であった。
「それでは」
「お話にならない!?」
「貴方の仰っていることはです」
 これが櫻井の反撃のはじまりであった。
「嘘ばかりではありませんか」
「嘘!?」
「そうですよ」
 落ち着きに満ちた顔での言葉であった。
「嘘ばかりですよ」
「私が何時嘘をついたんですか!?」
 当然ながら田中は反論する。しかしその様子は何処か狼狽したものであった。
「一体何処が。嘘をついたんですか」
「まず慰安婦ですけれど」 
 櫻井が最初に言ったのはこのことであった。
「あれは強制ではありませんよ」
「いえ、強制です」
 田中はあくまで反論する。
「ちゃんと証拠もあるじゃないですか」
「証拠とはこれですか?」
 こう言ってある記事を出してきた。それはとある大手新聞のある日の一面であった。ここでそれを出してきたのである。
「この軍の関与を示すものですか」
「そうです、それです」
 田中はにやりと笑った。こいつは墓穴を掘った、と見てそのうえで櫻井に対して圧倒的優位に立ったと確信したからである。しかしこれは主観でしかない。
 
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