ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第3章
月光校庭のエクスカリバー
第68話 死人の兵士
前書き
今回は若干のホラー要素があります。
「……あいてつつつ…」
……先ほど、お尻が死んだ…兵藤一誠です…。
部長のお仕置きが終わった後、俺達は帰路に着いていた。
「……大丈夫、イッセー兄?…」
「……見てるこっちが痛かったわよ…」
千秋と燕ちゃんもなんとも言えないって顔をしていた…。
「おかえりなさ~い♪」
「なッ!?」
『ッ!?』
アーシアが家のドア開けて、挨拶をしてきたが、俺達の口から出たのはただいまの挨拶ではなく、驚きの声であった。
アーシアが出てきて挨拶をした、それに関しては何も問題は無い。
問題はその格好であった。
アーシアは今、エプロンを身に付けている。
これも別に問題じゃない。
問題は何故か露出が多い。
ぶっちゃけ裸エプロンであった。
……尻の痛みが一気に吹き飛んだぜ…。
「遅くまでおつかれさまです。今すぐお夕飯の支度をしますので」
「アーシア!?…その格好は?…」
「え~と、クラスメイトの桐生藍華さんに、疲れた殿方を癒すにはこの格好が一番だと…」
……またあのエロ眼鏡女か…。
「なるほど!そう言う手があったわね!」
「ヘッ…」
「アーシア、貴女は魔性の女悪魔になれるわ。エッチな子ね」
「ええッ!?私、エッチな悪魔になりたくないですぅッ!!」
「と、とにかく、着替えないとぉ!こんなの母さんに見られたら…」
「あ~ら、母さん、こういうの大賛成よぉ♪うふふ、おかえり♪」
キッチンのから母さんが顔だけ出して言う。
「って!?違うんだ母さん!これは…」
「私がお手伝いしてあげたのよぉ♪」
「え…」
「あ、イッセー君、おかえり~」
母さんの言葉に呆気に取られていると、キッチンから鶇さんが出てきた。
って言うか!
「姉さん!?なんて格好してるのよッ!!」
「?裸エプロンだよ~」
……そう、鶇さんも裸エプロン姿になっていたのだった…。
しかも、アーシアよりも際どい格好であった。
「お母様!私にも裸エプロンをお願いします!!」
「おばさん!私にも!!」
ええぇぇぇッ!?
何故か部長と千秋がそんな事を口走っちゃってるよ!
「ええ、もちろん♪さあさあ、奥へいらっしゃい♪」
「失礼します!」
「………」
部長と千秋が母さんに招かれるままにキッチンに向かって行く。
「せっかくだから、燕ちゃんも~」
「なッ!?なんで私までッ!?ちょッ!?止めてッ!!引っ張るなぁぁぁッ!?!?」
……絶叫をあげながら燕ちゃんが鶇さんに連れさられて行ってしまった。
……なんなんだ…この空間は…。
「……イッセーさん、あの、ご迷惑でしたか?…」
アーシアが不安そうに聞いてきた。
「ああ、いや、似合ってるよ。似合ってる!うん!とりあえず、それだけは言いたい!」
ちょうど二人っきりだし、言いたいと思ってた事も言っちまうか。
「それに、この間の教会の連中が来ても、俺が守ってやるから!アーシアが怖いと思うものは全部俺が追い払ってやる!」
「……イッセーさん……私、悪魔になった事、後悔してません…」
「え?」
「信仰は忘れられませんけど…今は主への想いよりも大切な物が私にもありますから!部長さん、部員の皆さん、学校のお友達、イッセーさんのお父様、お母様、そして、イッセーさん。皆私の大切な方々です!ずっとずっと一緒にいたいです!もう一人は嫌ですッ!!」
そう言い、俺に抱き着いてきた。
「大丈夫だよアーシア。絶対一人になんかさせないからな…」
俺はアーシアの頭を撫でながら言ってやる。
……そこでふと気付いてしまう…。
……後ろが全開丸裸だったと言う事を…。
い、いかん、手が!
手が勝手にお尻の方へと!
「イッセー♪」
っと、言うタイミングで部長達がやって来た!
無論、全員裸エプロンで…。
「どう?」
部長が似合うかどうか聞いてきた…。
……鶇さんに負けず劣らずの際どい姿だった。
「………」
……千秋は恥ずかしいのか顔を紅くし、だがよく見える様に手を後ろで組んでいた。
「見て見て♪イッセー君♪」
「ッッッ!?!?」
……鶇さんに背中を押されて現れた燕ちゃんは恥ずかしさで顔を真っ赤にして、エプロンの裾をギュッと掴んでいた。
ブッ!
皆の裸エプロン姿を見て、盛大に鼻血が吹き出てしまった。
その後、皆でそのままの姿のままで夕飯の支度を始め出す。
……父さんが見たら卒倒するな、確実に…。
なんて思いながら部長達をチラッチラッと見てた俺はふと、明後日の方向を見る。
(……明日夏や木場は大丈夫なんだろうか?…)
やはり二人が心配であった。
ちなみに余談だが、帰って来た父さんが部長達の姿を見て、本当に卒倒したのであった。
『………』
俺の前方でゼノヴィア、イリナ、ライニー、そして木場が無言で走っていた。
ユウナとアルミヤさんは俺と並走している。
廃屋でフリードとバルパーが逃げ去り、それをその場に駆け付けた教会の五人が追い、バルパーを逃がすまいとする木場と、その木場を追う俺も教会の五人に着いて行き、現在に至る。
「……たくッ…ようやく見つけた足取りとは言え、深追いし過ぎだぞ!アイツら…」
「……その意見には私も同意だが…」
「……あの様子じゃ…言っても止まらない…よね…」
俺達は町から少し離れた森を疾走していた。
辺りの景色は、夜の暗さもあってか、大分見通しが悪い。
……待ち伏せなんかやられたら非常に厄介だな…。
ふと、俺の視線が木場達よりも大分先にあった、なんの変鉄も無い、ちょうど俺達を挟むように生えている二本の木の間に何かを捉えた…。
「ッ!?」
(マズイッ!!)
それの正体が分かった俺は、前方にいる木場達に向けて叫んでいた。
「止まれッ!!お前らッ!!」
叫ぶのと木場達の前方の地面にマジックキラーを投げ付けていたのはほぼ同時であった。
木場達は突然、目の前の地面にナイフが突き刺さり、その事に驚き、足を止める。
「なんの真似だ!」
ゼノヴィアが非難混じりの声で怒鳴るが、俺はそれを無視し、木場達の前に出てマジックキラーを拾う。
そして、刃先を前方に突き出し、上へと一閃すると、何かを斬り裂いた感触が手に伝わってきた。
「……糸?…」
イリナがボソッと呟く。
俺が斬ったのは糸の様な物だった。
「……ピアノ線だ…」
しかも…。
「……ちょうど、首の位置だな…」
二本の木に両端を縛り付け、首の位置の高さに張られていた。
木場達があの勢いのまま走って進んでいたら、喉や頸動脈ぐらいなら切られていただろう。
その事実に木場達は冷や汗を流していた。
「……よく、見えたものだな…」
……全くだ…。
我ながらよく、この暗さの中で、ただでさえ見え難いピアノ線を見付けられたものだ…。
しかし…。
「……バレても別に問題無しか…」
『?』
俺の言葉に皆、怪訝そうな顔をする。
「……君も気付いたか…」
「……ああ…」
どうやら、アルミヤさんだけは気付いている様だ。
『ッ!?』
他の皆もようやく気付いた様だ。
……俺達が囲まれている事に…。
周りを見渡すと、神父服を着込んだ男達が、ざっと二十人くらいいた。
さっきのピアノ線は、そのまま突っ込ませて首を切っても良し、バレても足止めと言う二重の罠(トラップ)だった訳だ。
俺は雷刃(ライトニングスラッシュ)を抜き、木場は魔剣を作り出し、ローブを脱ぎ捨てた教会の五人、ゼノヴィアとイリナはエクスカリバー、ライニーとユウナはそれぞれ十字架を取り出し、十字架をライニーは二丁拳銃、ユウナは一振りの鍔無しの刀に変え、そして、アルミヤさんは両手に二本の聖剣を作り出す。
それぞれの得物を手に取った俺達は神父達に対して構える。
「……まさか、これ程の数の輩が堕天使に協力しているとはな…」
「……理由が何だろうと、堕天使に協力しているのなら、断罪するだけだ…」
ゼノヴィアとライニーは遠慮無しと言った様子だった。
神父達が一斉に襲い掛かってきた。
俺は拳銃の弾を避けながら、拳銃を持つ神父に近付き、一閃、肩口から横腹までの斬り傷から鮮血を吹き出しながら神父は倒れる。
(……何だ?……この違和感は?…)
他の皆が神父達を倒していく中、俺は妙な感覚を味わっていた。
人を斬っているはずなのに、まるで、無機物を斬っている様な感覚…。
バンッ!
「ッ!?」
突然の背中に感じた衝撃に俺は驚愕する。
俺は今、背中を撃たれたのだ…。
今さっき、心臓を確実に斬り裂かれ、絶命したはずの神父によって…。
幸い、戦闘服のお陰で激痛はあったが無傷だった。
だが、そんな事はどうでもよかった…。
「……どうなってやがる!?…」
周りを見ると、他の神父も、明らかに致命傷にも関わらず 、平然と動いていた。
「ちょっと!?どうなってるの!?」
「致命傷のはずなのに!?」
イリナとユウナも目の前の光景に動揺していた。
「……どうやら…既に死人の様だ…」
「何!?」
「……彼を見たまえ…」
アルミヤさんは一人の神父を指差す。
俺と木場は誰だか分からなかったが、ゼノヴィア達は知り合いだったのか驚愕していた。
「……知り合いか?…」
「……事前調査に来ていた神父の一人よ…死亡が確認された…」
「何!?」
イリナが答えた。
コイツが事前調査に来ていた神父の一人…。
しかも、死亡が確認された奴だど!
「どう言う事だ!」
俺は声を荒げて聞く。
「……事前調査に来ていた神父は六人…」
「……内三人を死体で発見したの…」
「……私達はその三人を丁重に埋葬した…はずなんだが…」
「……現在、目の前にいるって訳か…」
つまり、遺体を掘り起こし、何らかの方法で動かして操ってるって訳か。
とりあえず、神父達が致命傷にも関わらず動ける理由が分かった…。
(……なら…)
俺は先ほどの神父の首を斬り落とす。
結果、神父はピクリとも動かなくなった。
……いや、正確には首だけになった顔は動いていた。
「……どうやら、脳を破壊もしくは体から切り離せば倒せる様だな…」
……まるで、映画に出てくるゾンビそのものだな…。
他の皆も頭を狙い出す。
パチパチパチパチ。
『ッ!!』
着々と神父達を行動不能にしている中、突然、この場に似つかわしくない拍手音が響いた。
俺達は発信源の方に視線を向ける。
そこには、眼鏡を掛けた一人の男が今もなお拍手を続けていた。
男は戦闘用と思える服を着用し、その上に白衣を纏っていた。
……そして、俺はその男の顔に見覚えがあった…。
「全員、なかなかなものですね…」
「……何者だ?…」
「おっと、これは申し遅れました。初めまして、私はカリス・パトゥーリア…そこの彼にははぐれ賞金稼ぎ(バウンティーハンター)と言えばよろしいでしょうか?」
「……カリス・パトゥーリア…」
そう、この男がカリス・パトゥーリア、兄貴が言っていたコカビエルに協力しているはぐれ賞金稼ぎ(バウンティーハンター)であった。
「……コイツらはお前が操っているのか?」
「いえ。死人なのは正解ですが、操ってる訳じゃありませんよ。ただプログラムしただけです…」
「……プログラム?」
「生前の彼らの戦闘行動パターンと指定した対象に対して戦闘行為を行うと言うプログラムをですよ」
カリスにアルミヤさんが聞く。
「……彼らは一体何なのだ?」
「え~とですね、私の研究が産み出した…失敗作…ですかね」
「……失敗作?」
「私、今とある研究をしていましてね。テーマは死人の兵士です…」
「……死人の兵士だと!」
「ええ。どんなに優れた人間も死んでしまったらおしまいです。そんなの勿体無いじゃないですか。優れた能力が訪れる死によって価値が無くなるなんて。中には悪魔の駒(イービル・ピース)によって悪魔へ転生する人もいるかもしれませんが、全員がそうなる訳じゃない。そこで、生き返らせるとまでは行きませんが、死人を生前の能力をそのままにして戦う事のできる兵士にすると言う研究を始めたのですよ」
「死んだ人達に対する冒涜行為よそれは!」
カリスが語った研究内容にイリナが声を荒げて言うが、奴はどこ吹く風と言った様子だった。。
「まさか!お前がこれまで人を殺してきたのは…」
「ええ、実験素体集めの為ですよ。賞金稼ぎ(バウンティーハンター)になったのは理由は、良い素体が賞金首の中にいたのと、研究資金を得る為ですよ。もっとも、資金はついでですが」
「お前は自分の研究の為に五万人以上の人を…」
「正確には六万と百八人ですね」
「……ご丁寧に数えてるのかよ!…」
「几帳面なもので。そして、彼らの被験体名は研究テーマをそのまま流用して、死人の兵士(デッド・ソルジャー)と名付けました。とは言え、先ほども言いましたが、彼らは失敗作ですよ。動きは単調ですし、生前の能力をほとんど引き出せて無いですし。とりあえず、多少の身体能力強化を施しましたけど、それでも、大した戦闘力はありません。まあ、数だけはいますが…」
パチン。
そう言い、指を鳴らした瞬間、複数の魔方陣が現れ、そこから三十人くらいの動く死人が現れた。
神父以外にも犯罪者風な奴もいれば、明らかに一般人風な奴もいた。
「貴方達はなかなかの素体ですから、あまり損傷無く仕止めたいですね…」
パチン。
もう一度指を鳴らすと、死人達が一斉に襲い掛かってきた。
だが、奴が言った通り、多少は身体能力が強化されているのか、常人とは比べ物にならない身体能力を持っていたが、動きが単調な為、はっきり言って、これだけの数がいても、有象無象であった。
俺達は特に難無く死人達を撃退していった。
俺は死人達の相手をしながら、カリスの動向を警戒していた。
奴はただ笑みを浮かべて傍観するだけで、戦闘に参加しようとはしなかった。
(……何だ?何を企んでる?…)
俺は奴の笑みを見て、嫌な予感を覚える。
ふと、死人の一人の胴体を斬り裂いた時、妙な手応えを感じた。
それは骨とも内臓とも違う、人体に無い固形物の感触…。
(まさかッ!?)
俺はカリスの方に視線を向ける。
「ま、多少は傷物になっても仕方ありませんか…」
奴が指で眼鏡を軽く押しながら、そう呟かれた瞬間、俺は皆に向けて叫ぶ。
「お前らッ!!離れろぉぉぉッ!!!!」
俺の叫びを聞き、皆が訝しげな表情になった瞬間…。
ドガン!ドガン!ドガン!ドガン!ドガン!
死人達は一斉に爆発した。
後書き
敵オリキャラ、カリス・パトゥーリアの登場です。
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