I want BRAVERY
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十七話 戦後
例の死闘の次の日、俺はいつもと同じように起床した。
結局あの後は、先輩と二人だけの秘密ということで誰にも話さないと約束し、携帯のアドレスを交換した。
その時、俺が『二人だけの秘密』と言った時の先輩の顔は今でも忘れられない。
あの長い前髪の下からニヤリと笑ったのを俺は見てしまった。
そして、先輩の笑顔とシャドウという、まさにダブルパンチを食らった上に、伊織と友近に怪しまれないようにコンビニもう一度行って同じ物を買って寮へ帰った。
しかしコンビニに二度入る。
そして同じ店員に、同じ物を渡し、同じ金額のおつりを貰うといった行為を、間隔を5分と開けずに行うのはかなり恥ずかしかった。
出来れば二度としたくない。
寮に帰った時は、ズボンに付いた血らしきものがバレないように隠すのに苦労をした。
伊織達は、結局午前2時くらいまで俺の部屋にいた。
正直、シャドウの戦闘の後疲れてそれどころではなかったのだが、なんとか伊織達が帰るまで踏ん張った。
二人が部屋を出た瞬間、気絶するように俺は寝た。
(これからどうするかな・・・)
影時間に入れたということは、適正が俺にも見つかった、といことだ。
そして、もちろんあの先輩にも。
そして、適正が見つかったということは、これから俺は、毎日影時間に入るということになる。
当初予定していたのは、適正が見つかった後は、影時間にとにかく例の原作の寮まで逃げて、そこで偶然真田先輩か桐条先輩と鉢合わせする、というものだった。
その寮へ直接助けを求めるのが出来ないので、偶然を装うしかなのだが真田先輩はかなり好戦的だったはず。
だから、かなり頻繁に影時間にシャドウを倒しに行っているはずなので、容易に出会えると思っていた。
いや、今もそう思っているのだが。
(・・・あの二人に会うという事は、原作介入か)
そう、二人に会うという事は原作介入を意味する。
ここで問題にあがるのが、あの先輩と俺、つまり二人のイレギュラーがいてもいいのか、ということだ。
二人がいるとなると、原作の序盤の3人PTというところから変わるし、その上戦闘経験のある人間が先にいれば原作の主人公ではなく、俺やあの先輩がリーダーになる確率が高い。
もしそうなってしまうと、原作にあった伊織と主人公とのいがみ合い(まぁ実際は伊織が勝手に嫉妬しただけなのだが)が起こらない。
つまるところ、伊織が人間的に成長しない可能性がある。
それは伊織の死亡フラグへと繋がるのではないかと思うのだ。
(と、まぁ色々考えているのだが)
これらは全て言い訳だ。
正直に言おう。
(原作介入・・・怖くてできません!)
というのが俺の本音。
最もシャドウ戦で俺にとって重要だった『勇気』は何故か全く役に立たない。
つまるところめちゃめちゃ怖いのだ。
そして、『勇気』のない俺=前世の俺。
つまりは『キング・オブ・チキン』なのだ。
シャドウと戦うなんて無理。
命がけの戦闘とか無理。
銃を頭に向けて撃つとか無理。
結論、
(原作介入は諦めるか)
自分の中でそう結論付けて、俺は部屋を出て、寮の一階へと降りる。
時刻は昼の1時。
完全な寝坊だ。
「あれ?彩が寝坊ってめずらしいな」
一階に下りると、同じ寮住まいの同級生にそう声をかけられる。
友近以下のモブキャラ、所謂、友人Aだ。
「昨日、伊織達が俺の部屋に遅くまでいたんでね」
「あー、なるほどね。彩も何か知らんが苦労してるな」
ポン、と俺の背中を叩いて友人Aは、自分の部屋へと戻るのか二階へ上がっていった。
(あーくそ。これが所謂『疲労』か?めちゃめちゃ体がダリぃわ)
ペルソナを召還したわけではないが、やはり戦闘というものは疲れるらしい。
主人公達も初日の次の日には疲労状態になっていたはずだ。
(しかし、原作介入しないとなると、ペルソナはどうするかな・・・)
問題は山積みだった。
原作介入しない=召還機を貰えない。
つまりはペルソナが出せない。
いや、出せないわけではないのだろうが、自力で出すにはかなり面倒くさそうだ。
『PERSONA - trinity soul - 』での主人公達は踏ん張って出してたし、『ペルソナ3ポータブル』でもストレガは普通に出していた。
しかし、これを先輩に説明するには、俺が転生者であることまで話さなければいけない。
できれば俺が転生者であることは自分の墓場まで持って行きたい。
しかし先輩はペルソナがないと戦力にならない。
自分の身を守ることすら出来ないのだ。
「はぁ〜」
思わず口からため息が出る。
原作介入すれば危険が付きまとう。
しかししなければ、あの先輩を見殺しにすることになる。
自分はしたくない。
怖い、ただそれだけの理由だが、俺にとってはかなり重要なことだ。
でもしなければ・・・
「どうしたんだよ彩。ため息なんか付いちゃって」
一階のロビーにいた俺に、さっきとは違う同級生が話しかけてきた。
つまりは友人B。
「ん〜、伊織の馬鹿さ加減に、つい」
「なるほど。ま、ガンバレ」
またしても俺の背中をポン、と叩いて友人Bは去っていった。
伊織の馬鹿さは皆、重々承知しているのだろう。
ともかく、原作介入するにしてもしないにしても、今日の夜までに何か対策をしなければいけない。
(はぁぁ・・・学力5は何処へ消えた・・・)
内心ため息を付かずにはいられない。
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