原作に介入=生 不介入=死 何だ!この世界は!
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35話
ニードと女子の都市選抜を見に行ってから数ヶ月。男女のDSAAが終了し、夕も学園の生徒に追われることはなくなった。
本日は日曜日、夕は高級車に乗っていた。ことの始まりは数日前、夕の家にある手紙が届けられたのだ。差出人の名前は執事エドガーとなっていたのですぐにDSAA会場で出会った人だとわかった。
「しかし、差出人名に執事を入れる必要があるのか?」
それだけエドガーが執事であることに誇りを持っているということだろうか?手紙にはおにぎりの正式なお礼をしたいから空いている日を教えてほしいというものだった。夕としてもいつかくるものだと思っていたのですぐに書いてある宛先に空いている日を複数書いて送っておいた。その手紙に返信が来て、現在に至る(住所を知られていたことは突っ込んではいけない)。
車を運転しているのはエドガーさんの同僚らしい。エドガーさんの主に言われて迎えにきてくれたらしい。車で走って40分ほどで目的地に到着する。車を下り、建物を見た夕が最初に思った感想はでかいであった。地球でバニングス家や月村家を見慣れているので挙動には出なかったが。確かにそう思った夕だった。車を下りるとすぐにエドガーさんが待っていた。
「お久しぶりです。そしてようこそおいでくださいました。ミカワ・ユウ様」
「お久しぶりですエドガーさん。お招きありがとうございます」
エドガーも夕も互いに頭を下げる。
「早速ですが、私の主がお待ちです。お会いして頂きたいのですが宜しいですか?」
「はい。そうなると思っていましたから大丈夫です」
豪邸に呼ばれて主に合うのは当たり前のことだから予想はしていた。
「ありがとうございます。それではご案内します」
エドガーは夕を連れて屋敷の中を進んでいき、一つの部屋の前で止まり扉をノックする。
「お嬢様、ユウ・ミカワ様をお連れしました」
「ご苦労様、入ってもらいなさい」
中に入ると夕と同世代かすこし年上に見える女性がいた。女性は夕の正面に歩き、スカートのすそを持ち上げて夕に向かって優雅に礼をする。
「初めまして私はエドガーの主、ヴィクトーリア・ダールグリュンと申します。先日はお食事を分けて頂きありがとうございます。私の友人も喜んでおりましたわ」
ああ、この人とその友人も食べたのか…よかったのか男の握ったおにぎりなんか食べて?
「初めまして、ユウ・ミカワと言います。本日はお招きいただきありがとうございます。私程度が作ったおにぎりであなたとその友人の方を喜ばせられたなら嬉しい限りです」
頭を下げられので夕も(ファリンに習った)礼儀作法で対応する。
「最低限の礼儀作法は学ばれているんですね」
「友人の使用人の方に教えていただきました」
「そうでしたの。でもそのままだと話づらいでしょう。私も普通に話すからあなたを話しやすい話し方でけっこうよ。私の呼び方もヴィクターでいいわ」
それは助かる。やっぱりこの話し方は面倒だ。
「お言葉に甘えて普通に話させてもらう」
夕は口調を崩す。
「ええ。そちらの方が私も楽ね」
ヴィクターの口調がすこし変わる。
「それで俺を呼んだ理由は何だ?おにぎりのお礼だけなら屋敷に呼ぶ必要はないと思うんだが?」
夕はずっと思っていた疑問をぶつける。
「お礼をしたいと言うのは真実よ…でもそれは次いでの理由。本当は話して見たかったのよ。雷帝の血を引き継ぐ者としてベルカ時代の近接最強を誇った獅子王の血を引き継ぐ人物と」
なるほど王関連の人間か、下手な理由より納得できる。夕は納得したよう頷く。
「あなたが獅子王の血縁者であるとわかったときは本当に驚いたわ。戦乱時代に失われたと思われていた獅子王レグルスの血が今も続いていたんだから」
聖王教会の偽装記録には夕は別世界(第97世界)に渡った獅子王の血縁者で数年前にベルカ時代を知る考古学(ユーノ・スクライア)に発見されたことになっている。
「俺も王の記憶が行きなり頭の中に現れてたときは驚いたよ。俺の世界の歴史を調べてもそんな王ははいないし、家の倉に俺にしか読めない(古代ベルカ語)書物はあったけど資料はそれだけ。俺を鍛えてくれた人に協力してもらって記憶にある技は再現できるようになったけどそこで手詰まりだ。ベルカ時代の歴史を知る考古学者と出会わなければ今だにわからずじまいだったろうな」
「そう、記憶を思い出した時は大丈夫だったの?」
「かなり混乱したな。いきなり誰のものかもわからない記憶が入ってきて数日は記憶がごちゃごちゃして変な気分だった」
「大変だったのね」
同情してくれているヴィクターを見て嘘をついていることに僅かに罪悪感が沸く夕だった。
「まあ、自我が確りしてからだったから記憶にそこまで振り回されることがなかったのが唯一の救いだ」
「そう」
夕はヴィクターがどうだったのか敢えて聞かなかった。彼女の様子を見て王の記憶で苦労したのがわかったからだ。
「そう、それはよかったわ」
それから10分ほど王の記憶について話をした。それから先はもっぱらどんなトレーニングしているかという話になった。ヴィクターは試合を見て自分より夕が思っているらしくどうやって修行している気になったようだ。なので夕は自分のトレーニングメニューやマグロにならった効率の良い鍛え方をヴィクターに教えたりした。夕食もご馳走されヴィクターの友人の話も聞いたりした。
「そう言えばあなたは来年もDSAAにでるの」
ヴィクターの質問に夕は腕を組んで考える素振りをする。
「正直迷ってる。そこまでDSAAに執着しているわけじゃないからな」
「アキラ・ハルズへのリベンジはどうなの?」
「う~ん。形はどうあれ俺の負けで決着はついてるからなぁ…」
夕は本気で悩んでいた。
「エドガーの言っていた通りあなたは戦いが好きではないのね」
「ああ。だるいし戦いで一番になりたいと思ったこともない。俺にとって戦いは手段であって目的じゃないからな」
「では何で体を鍛えているの?」
夕のトレーニングは常人なら完遂することもできない過酷なものである。何も目指す目標ないのにそこまでの鍛練をこなしている夕に疑問を覚えるヴィクター。
「自分の生きたいように生きるためだ」
夕は言い切る。
「数年前にいろいろあって俺の人生では強くないと生きたいように生きられないって結論に達してな。それからは本気でトレーニングするようになったんだ」
「生きたいように生きるためですか…」
ヴィクターにも思うことがあった様だ。
それから一時間ほどして帰る時間がやってくる。ヴィクターは家の前まで送ってくれた。
「夕食までご馳走になって本当にありがとう。ヴィクター」
「私もユウと話せて楽しかったわ。私の友人にも是非会ってほしいけど…あの子何処にいるかよくわからないからな」
話に出た。特定の家を持たないトレーニング好きの友人かことか。
「そうだな。機会があれば俺も会って見たいな」
話に聞く限り、かなりの変わり者ようだ。いったいどんな人物なのやら。
「それじゃ失礼する」
「ええ、連絡するからまた会いましょう」
夕は送ってくれる車に乗り込みダールグリュン邸を後にした
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