原作に介入=生 不介入=死 何だ!この世界は!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
36話
本日、夕はある山に来ていた。夕は月に2回ほどの頻度で山に体を鍛えに来ている。山の中を走る方が平地を走るよりバランス感覚などを鍛えることが出来るからだ。
「一旦休憩するか 」
山道を走っていた夕は近くにあった岩に腰かけて水分を取っていた。
「ヴィクターの言ってた通りこの山はトレーニングに最適だな。険し過ぎず、楽過ぎず」
夕がこの山にくるのは初めてである。ここはヴィクターに教えてもらった山なのだ。 ヴィクターも友人に教えて貰った場所らしい。
「そういえばこの山にいたりするのか?ヴィクターの友人とやらは」
夕がこの山に入って3時間ほど経過したが誰とも会ってはいない。
「いないならいないで何の問題もない…よし!再開だ。次は座禅でも集中力強化の訓練だ」
夕は少し不安定な石の上に座り座禅を組み。感覚を研ぎ澄ませ始めた。一時間ほど座禅を組んでいると夕の気配探知に引っかかるものがあった。しかし、敵意を感じないので放置する。すると気配はすこしずつ近づいてきて夕の目の前までくる。相手はこちらの様子を伺っているようで話しかけてこないので夕は自分から話しかけることにする。
「何かようか?」
「ひゃあ!」
目を閉じていた夕が行きなり話しかけてきたので相手は驚いたようだ。声から察する女子だ。
「じゃっ邪魔してごめんなさいあっあのうち!「別に気にしてないから落ち着け 」うっうん」
夕が目を開けるとそこに見えたのは長い黒髪をツインテールにしている同い年くらいに見える少女だ。
この子、どこかで見たことある気がするが………思い出せない。気にしないでおこう。
少女が落ち着いたのを見計らって夕はもう一度口を開く。
「それで何かよう?」
「あっうん。山の中を歩いてたら人が通った形跡があったから誰かおるのか気になって見にきたんよ。山の中で迷子になる人もおるし」
なるほど、俺の足跡かなんかを見て探しにきたのか
「それはすまなかったな気を使わせたようだ」
「あっ気にせんでええよ。うちが勝手にしたことや「ぐ~」っ!」
そのとき人間が空腹を知らせる音が響く。発生源の少女は顔を真っ赤にしてうつ向いている。夕はそのことに一切触れずに自分の荷物を漁りおにぎりを取り出す。そして少女に差し出す。
「迷惑かけたお詫びだ。食べてくれ」
「…ええの?」
少女は顔を真っ赤にしながら聞いてくる。しかしその目はおにぎりをしっかり捉えている。
「悪かったら渡さない。とっとと食べな。ちょうどいいから俺も昼ご飯にする」
夕は少女におにぎりを二つ掴ませて自分も食べ始める。山にくるときは多めに食料を持ってきているのですこしくらい上げても問題はない。少女も最初は遠慮していたが夕が食べているのを見て食べ始める。
「あっ美味しい」
「そいつは良かった。多めに持ってきてるから好きなだけ食べるといい」
夕は非常食以外の食べ物を荷物から出す。少女は遠慮しながらもそれなりに食べたのだった。そして夕が食後のお茶を飲んでいると少女が話しかけてくる。
「なあ?」
「何だ?」
「君は「ユウだ。ユウ・ミカワ」ユウくんは何でこんな山の中におったんや?」
行きなり下の名前か、まあいいけどな。
「トレーニングだ。平地ばかりで鍛えるとバランス感覚とかが鈍るから月2くらいで山に来てるんだ。この山には今日初めてきたけどな」
「トレーニングか、ユウ君は格闘技をやるやねDSAAには?」
「DSAAに興味はないんだが今年は知り合いに強制的に出された。結果は都市選抜の決勝で負けた」
「ええとこまでいったんやね。ユウ君は強いんやな」
感心したように言う少女。
「女子DSAAチャンピオン、ジークリンデ・エレミアに言われるは光栄だ」
「…知ってたんやね」
「さっきまで忘れいて今、思い出した」
「そっか」
ジークリンデの雰囲気は僅かに暗くなる。
「ああ、あんたの試合は友人と観戦にいったときに見たんだ」
「そうなんか」
どうやらジークリンデは肩書きで見られるのが嫌なようだ。だが
「まぁ、あんたがどんな経歴を持ってようが、俺にはどうでもいい話だ」
夕にとってはそんなことどうでもよかった。
「え?」
信じられないような目で夕を見るジークリンデ。
「今なんて…」
「あ?あんたの肩書きや経歴に興味はないって言ったんだか、何か悪かったか?」
「うっううん!何でもあらへんよ。なぁユウ君、もっとお話しにつき合ってほしいんやけど駄目かな?」
上目遣いで聞いてくるジークリンデ。
「別にいいけどトレーニングもしたいからそんなに時間はないぞ」
「なら、うちも一緒にトレーニングする!」
「…好きにしろ」
「うん!後、うちのことはジークって呼んでや!」
肩書きや経歴を気にしない夕の対応が余程嬉しかったのかジークは無言で行うトレーニングのとき以外は夕に何度も話しかけた。夕も普通に相手をしていたのだった。
そして数時間が過ぎる。
「はぁはぁはぁ!」
ジークはへばっていた。
「大丈夫か?」
「ユウ君は化け物やどうしてあれだけのトレーニングをこなして汗を少しかいただけなんや」
「鍛え方が違うからな。このくらいなら余裕だ」
大会の様な制限をつけられていない状態の夕に体力で敵うものは少ない。体力が減ってもデロドロンドリンクを飲んですぐに回復してしまうからだ(DSAAでは選手に飲ませるものではないとデロドロンドリンクは持ち込み不可だった)
「動けそうにはないな………しょうがない」
夕はジークを背中におぶる。
「あっあのユウ君!?」
突然おぶられたことで慌てるジーク。
「暴れるな落ちるぞ」
「でも~」
唸るジークを放置して夕は自分の荷物の置いてある所に移動を開始する。
「うち、重ない?」
「軽過ぎるくらいだ。ちゃんと飯食ってんのか?」
「………食べとるよ」
「何だ。今の間は?」
こいつちゃんと食事とってないな。夕は自分の荷物を回収し、ジークに彼女の荷物が置いている場所を(おぶったまま)案内させる。そしてそこで見た光景は夕は絶句させる。そこに置いてあったのは荷物ではなくテントだったのだ
一人暮らしではなくテント暮らししてんのかこいつは!………ヴィクターが言っていた所在不明の友人ってのは恐らくジークのことだ。
「ジークお前がちゃんと飯を食べてないのはこの生活のせいもあるのか?」
「………」
無言のジーク、恐らくは肯定の意だ。こんな生活してたらまともに体調を維持できるわけがない。だが、言って聞くようなタイプでもなさそうだな。ほうって置いてもいいんだがそれで倒れられても目覚めが悪い、
だが…………………ああ!考えるのがだるい!こうなりゃ自棄だ。あの手で行く。
「ジーク、俺と手合わせしないか?」
「…別にええげど、どこでやるん?」
突然の申し出にきょとんとするジーク。
「お前と俺の共通の友人。ヴィクターに頼めば用意してもらえるだろ」
「ユウ君、ヴィクターのこと知っとるんか!?」
「そもそもこの山はヴィクターに教わった場所だ。お前の話もヴィクターから多少聞いてる。まぁヴィクターの話に出てきた友人があんただと気付いたのは今さっきだけどな」
「そやったんかぁ」
それからあの手この手でジークを説得し手合わせを受けさせる夕だった。ヴィクターに連絡を取ると明日なら場所を用意できると言うのでお願いした。 そしてその日、夕はジークのテントの周辺で夜を明かした。一度戻ってまた来るのが面倒だったからだ。
夕のあの手とはいったい?
ページ上へ戻る