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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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第一章 光の使い魔たち
  王都-トリスタニア-part1/その名はゼロ

 平賀才人の失踪。それはたちまち学校中のビッグニュースとして広がった。星人の侵略行為に巻き込まれてしまい、さらには事件のさなかに起こった思わぬアクシデントによって姿を消した。新聞記事には『勇敢なる少年 空に消ゆ』と、サイトが明らかに死んだとしか思えない見出しと記事が記載されていた。それは無理もないかもしれない。彼が取り残されたクール星人の宇宙船が青い光と衝突し木端微塵に破壊されたのだから。
 メディアはすぐに彼の義母であるアンヌや、同じくクール星人の魔の手に巻き込まれた高凪春奈にも及び、度々自宅に押しかけてきては傷をえぐるようなインタビューをしてくる。彼女の場合、一日ほど入院し退院してから通った学校でも、特にサイトと親しかった男子から質問攻めにあった。一体平賀はどうしたんだ。一体どこへ行ってしまったんだ。果ては、実は死んだのではと、考えてもおかしくはないが縁起でもないことを口にする者まで出る始末。その時は仲のいい女子の同級生が「デリカシーなさすぎ」と一蹴する一言のおかげもあったりで何も言わずに済んだ。
 まあ、3・4年前に自分勝手な野心のためにウルトラマンメビウスの正体を明かした悪名高いジャーナリストよりはずっとマシである。
 サイトは、いない。その日も運動場が見下ろせる教室の窓際にある彼の席は空席だった。
「平賀は、まだ見つかっていないんですか?」
 サイトがいなくなってから四日ほど経ったその日のホームルーム。やはり彼の姿がなかったことをクラスのみんなが気にしていた。男子生徒の一人が担任の先生に尋ねる。
「残念だが、保護者の方に連絡を取っても、GUYSの方に尋ねても、平賀の姿を見た人はいないとのことだ。だが、同じ被害者だった高凪が退院しこうしてみんなと同じ教室で学んでいる。もしかしたら、あいつもひょっこり顔を出すかもしれない。だから気を落とさずに、今日も勉学に励むように」
 先生もサイトがいなくなったことを気にしていた。だがいつまでも気にしていては前に進めないし、自分のことが疎かになる。サイトのことが何もわかっていない以上自分たちのことに集中した方がいい、そう先生が告げると生徒たちは教科書を出して授業の準備に入った。自分の斜め前の空席を見たときのハルナの目は、酷く辛いものだった。
(平賀君…)
 机の下で、膝の上に置いていた手を、彼女はギュッと握り締めた。




 地球・日本の秋葉原と、エスメラルダ・ハルケギニアのトリステイン魔法学院という遠く離れているという一言で片づけていいのかもわからないほど遠く離れた二つの地域+連日のクール星人による侵略行為、さらには無駄な心配をかけたと言う理由からのルイズの折檻(笑)のせいでサイトは正直気が滅入る思いだった。
 クール星人を、鎧を身に着けたウルトラマンが撃退してから三日後。星人の攻撃でボロボロになっていた魔法学院だが、教師と自ら手伝いを申し出た土系統メイジによってある程度修復が済んでいた。それでも星人の攻撃の爪痕は深い。まだところどころ攻撃された外壁、中庭、校舎にひび割れ、焼け跡が残っている。ルイズの失敗魔法で壁にひびが入れられたりガラスを割られたりするなどの被害はあるが、こればかりはそれ以上だった。
 被害状況もだが、同時に学院の教職員が無視してはならない問題があった。赤い円盤、クール星人と、それを撃退した鎧の巨人。これらのことを報告するために学院長であるオスマンは王室に直ちに報告に伝書鳩を飛ばして知らせた。ただし、サイトのことは伏せておくことにした。彼のおかげで星人の魔の手から救われたものがいる以上、恩人を厄介なポジションに立たせたくはない。混乱の中で出せた彼なりの恩返しだった。
 先日の事件は、生徒たちの間でも話題になっていた。クール星人の円盤に対しては、この世界における神『始祖ブリミル』の敵である種族『エルフ』がこの大陸を侵略するために用意した恐るべき兵器だとか、遠く離れた大陸『ロバ・アル・カリイエ』より現れた侵略者だとか。侵略者、という点では間違っていない。だが、この星とは別の星からやってきた種族が現れたと言う点までは当てることができなかった。平民たちはともかく、そもそも自分たちより優れた種族の存在をこの国の貴族はほとんど信じようともしない。人間よりも優れていると噂されているエルフの存在を認知しておきながら、彼らを宗教上の問題からか、とにかく始祖の敵と断定しているために、恐怖している他に見下している面もあったのだ。そんな矛盾じみた事実があるのにそれを無視する辺り、サイトは貴族に対して正直好印象を抱けなかった。まともな印象を抱けた貴族は今のところルイズ(ただし、召喚された直後の態度についてはちょっと根に持っている)やギーシュの一件で、少なくともルイズ・キュルケ・あとはあまり高慢な態度をとらないタバサにギーシュに二股をかけられたモンモランシーくらいだ。
 ギーシュについてはあの決闘の詫びとして彼から花束を贈られた。曰く、助けられたことと自分が間違っていたことに気づかせてもらった恩義だという。捨てるのももったいないしせっかく謝りに来てくれたので花瓶に移してルイズの部屋に飾ることになった。あの事件後彼はモンモランシーとケティに土下座して謝って、何とか許しをもらったらしい。ただし、彼氏彼女という形の復縁は流石に無理だった。今回の二股騒動でギーシュの貴族以前に一介の男としての評価は一気に落ちたに違いない。それでもめげないだろう。何せ彼は二人に許しをいただいてすぐに相変わらずのキザな男に戻ったのだから。いつまでも落ち込んだままよりはましかもしれないが…なんだろう、残念な奴である。
話を戻そう、円盤の他に…いや、これこそが驚くべきものだろう。鎧の巨人…正体不明のウルトラマンのことだ。サイトがその巨人を呼称したためか、その名前が不思議なくらい他の人間にも浸透し、鎧の巨人は『ウルトラマン』と呼ばれるようになった。



 星人に襲われたあの日から、シエスタをはじめとした学院の平民出身の厨房師たちはサイトを高く評価するようになった。剣を達人級の腕前で振い、貴族であるギーシュを見事に打ちのめしたことで『我らの剣』と。よほど彼らは、貴族連中の下についていることをよく思ってないようだ。わだかまりなく話してみれば結構それなりに話せる子もいるが、そうなるにしてもずっと先の話だろう。ともあれ『我らの剣』はサイトにとってとても照れくさい呼び名だった。
 中庭を歩いて厨房へ向かうサイト。よほど床の上の粗末な朝飯が答えたのか、サイトは自分からアルヴィーズの食堂に入るのを拒否するようになった。本当なら自分の言うことなら何でも聞いてくれる存在であってほしいとは思うルイズはいい顔をしなかったが、あまりサイトの意思を無視したらかえって使い魔からの信頼と得られなくなる、それではただの暴君でしかないと、サイトがこれまで自分にぶつけてきた言葉を思い返し、少しは彼の行いを黙認することにした。


 厨房へ向かうサイトは自分の左腕に付けられた腕輪を見る。これはただの腕輪ではない。見かけは、まるでSF映画に出てくる超合金性の腕輪のようでもある。クール星人の襲撃の時、この腕輪が鎧に変形しサイトの左腕を覆っていき、最後には鎧を身に着けたウルトラマンとなった。
 サイトの記憶の中で鎧を身に着けていたウルトラマンと言えば、メビウスと共に『暗黒大皇帝エンペラ星人』や『高次元捕食体ボガール』をはじめとした怪獣・星人の侵略から人類を守った青き戦士、『ハンターナイトツルギ』こと『ウルトラマンヒカリ』。
 だが、自分が変身した鎧のウルトラマンはツルギとは違う。それにサイトは変身した時に、あの鎧があまりにも着心地が悪くて動き辛いものにしか思えなかったのだ。成行きとはいえ命のやり取りをしていたと言うのに、わざわざハンディを付けるなど愚かなことだ。だったら、どうして…?
『俺のことがそんなに気になるか?』
「!」
 また声が聞こえてきた。変身した時に聞いた、自分とは別人の若い男の声だ。キョロキョロと辺りを見渡すサイト。もしかして、俺の中から話しかけてきているのか?早速サイトは、自分の中にいるウルトラマンに話しかけた。
「あんたは、一体…どうして俺の中にいるんだ!?」
『まあ落ち着け、順を追って話してやる』
 こほんと咳払いする声も聞こえた。このウルトラマン、思った以上に人間臭くて砕けた喋り方をする。地球人からのイメージだと、結構神聖な存在とも取れるので予想外。とある悪徳ジャーナリストに正体を暴露されたメビウスも、GUYSのメンバーとも打ち解けていたらしいし、心に関しては人間とは遜色ない存在かもしれない。
『俺はゼロ。ウルトラマンゼロだ』
ゼロ!!?
「あの…それ本名?」
『本名だ。なんだよ、何かの聞き違いとでも思ってんのか?』
 これは一体何の因果なのか。まさか、ルイズの不名誉なあだ名と同じ名前のウルトラマンだったとは。しかし、これはこれで不味い気がする。下手にマウンテンガリバーなんてトイレで気張っているような名前を付けられたりすることは、できれば避けたい。でも『ゼロ』という名前もご主人様権限(サイト命名)で許されないだろう。何せルイズは悪い意味でゼロと呼ばれているのだから。しかもたちの悪いことに自分と同化しているウルトラマン曰く本名だと言う。これは厄介極まりない。
「はあ…ルイズのことだから、『変な名前つけるな!』って一蹴されるんだろうな…」
『変とは失礼な奴だぜ。好きで名乗っているわけじゃねーけど、これが俺の名前なんだからな』
 まあ、違う名前にしろとか言っても嫌だろうし、サイトはゼロの名前を受け入れた。実際名前の響きは嫌いじゃない。どこか中二病臭いが、漫画のキャラクターのようなかっこいい名前だとは思う。が、ルイズからすれば間違いなくただの悪口にしか聞こえないだろうから、特にルイズに何かをされたわけでもないのにげんなりした。
「…とりあえず自己紹介な。俺は…」
『ヒラガサイトだろ。サイトと呼ばせてもらうぜ』
 軽く自己紹介でもしようかとしたその前に、ゼロがサイトの名前を言い当てた。
「もう俺の名前もご存じか」
『そりゃそうだ。俺とお前は同じ肉体を共有している身だ。だからお前の思考のこともある程度は知っている。
年齢17、東京って街に住んでる高校二年生、好物はテリヤキバーガー、彼女いない歴=年齢で夜な夜なパソコンに保存していた秘蔵データを見て鼻の下を伸ばし…』
「ちょっちょっと待てええいい!!人のプライバシーってものを考えてものを言って!!」
 最後の方で絶対に明かされたくはない情報を漏えいされかけたサイトは思わず喚き散らしてしまう。ゼロはそれを聞いて言葉を切らした。黙ってくれたようだ。
「ふう…ったく。質問続けんぞ」
 思わず大声を出してしまったことを恥じたサイトは、引き続きゼロに質問する。聞きたいことが山積みだ。これまで浮かび上がった疑問すべてに答えてもらいたい。
「あんたは、どうして俺の中にいるんだ?」
そうだ、なぜ彼が自分の中にいるのだ?
『地球でクール星人に襲撃されたのは覚えてるだろ?あの時お前がルイズってチビ助の作った召喚のゲートに手を突っ込んで抜け出せなくなったのを偶然見てな。人間ってのに興味があったから真っ先に目に入ったお前の体を借りさせてもらったってわけだ。俺たちウルトラマンはずっと姿を保ってられないし、宇宙船と運命を共にするはずだった俺と命を共有することで生き長らえた。一石二鳥だろ?』
 ああ、やはりあの時見た青い光がゼロ自身だったのか。ウルトラマンは自分を光そのものの姿に変えることもある。ゼロもその姿で地球に訪れたのだ。
 でも、特に特別な意味があって自分と一体化したわけではなかったようだ。心なしか少し残念な気持ちになる。普通こういう時は、自分に何か特別な要素か何かがあるのかと思ったが、さすがに漫画の読みすぎだったと反省した。いや、実際漫画の読みすぎという表現では留まりきれない。自分はウルトラマンと同化した、それ自体現実的にありえないのだ。それに…。
「ギーシュとの決闘で、俺5メートルは軽くジャンプしたんだけど。体も軽くなったし。後あの鎧は何?変身して倒れからしたら、すっごく動き辛かったんだけど…」
 人間がほんのちょっと足に力を入れたからってあんな超人的な跳躍力はあり得ない。
『落ち着けよ。そんなに質問を一度に何度も吹っかけられても答えられねえっての。順を追って話すから落ち着いてちゃんと聞けよ』
 いけない。答えを知りたくて焦りすぎたようだ。サイトは深呼吸して落ち着きを取り戻す。
『あのギーシュって奴とお前の決闘の時のことだが、あの身体能力は俺と同化した影響によるもんだ。そして変身した時に俺が来ていたあの鎧はテクターギア。俺たち宇宙警備隊のウルトラマンの訓練用プロテクターだ。身を守ると言うより、筋力増強と厳しい環境下においても有利に戦えるようにするためとか言っていたって話だ。
今、お前の左腕についてるそれがそうだ。ったく、人間に憑依しても外れねえとか、厄介なもんだぜ』
 あの人間のモノとは思えない身体能力は、彼と同化している影響からか。それなら納得がいく。テクターギアのことも、ようするにランニングとかをするときに足に付ける砂入りの重りみたいなものか、とサイトは納得した。通りで…でもあの重さは尋常じゃない、変身した途端体が鉄球そのものになったような重みを感じたのだ。あんな動き辛いものを、どうしてゼロは身に着けていたのだろうか。右腕に身に付けられていた、ブレスレッド状態のテクターギアを見るサイト。
「じゃあ、なんでそんな厄介なもん外さなかったんだ?実戦だとさすがに外すだろ、あんな鎧」
すると、ゼロは黙り込んだ。そんなゼロにサイトは目を細めた。なぜ何も言わない?
『俺だってな、好きで身に着けてたわけじゃねーんだ。それに、あの鎧は外れねえんだよ』
「外れない?どうして?」
『………』
 またしても口を閉ざすゼロ。
「お、おい。何とか言ってくれよゼロ。無言じゃわからないって…」
『それより、お前だって少しはやるんじゃねえの?俺には遠く及ばねえけどな』
「へ、俺?」
 いきなり自分のことを問われたサイトは自分を指さして首を傾げた。なんか明らかに話をすり替えられた気がする。
『いくら俺がお前と同化しているからって、あのキザ小僧相手に見せた剣捌き、初めてのモノとは思えなかった。お前剣術とかに通じてたのか?』
「まさか!俺はこれまで剣を握ったことなんか…」
 そうだ、思えば自分が真剣を握ったこともあれが初めてだ。だが、ゼロから借りた身体能力があったとはいえ、一朝一夕であんな達人クラスの剣捌きができるなどあり得ない。やろうとしても体がもつれて転んでしまいかねない。
「あの、サイトさん」
「へ?」
 名前を呼ばれてサイトはふと、自分の背後を振り返る。
「お一人でどうなさったんですか?傍から見たらちょっと怪しいですけど…」
 シエスタだ。どうもゼロの声はどう介しているサイト以外には聞こえないらしく、傍から見ればひとりごとをブツブツぼやく怪しい男にしか見えなかったのが気になったようだ。
「あ。あはははは!ルイズが頭をぶってくるから幻聴でも聞こえてたのかな〜?」
なんとも胡散臭い言い訳。サイトは笑ってごまかした。
「それにしても、先日現れたあの巨人はなんだったんでしょうね?教師や生徒の方々は皆あの日の光景を口々に話していましたよ」
 サイトを厨房に案内しテーブルに座らせると、シエスタはサイトと会ったその日から頼まれていた賄食を皿に盛りつけ、彼の前に置く。
「ウルトラマンのこと?」
「サイトさんはあの巨人をご存じなのですか!?」
 テーブルの向かい側に座っていたシエスタが身を乗り出しながら飯をもらっていたサイトに問い詰めてきた。彼女の顔が眼前に飛び出し、さらには服の上から見ても大きい胸がたゆんと揺れたものだから、サイトは思わず息を呑んでしまったが、なんとか自分の煩悩を戒めて頷いて見せた。
「う、うん。まあね…俺の故郷じゃ、彼らのことをウルトラマンって呼んでいるんだ」
サイトはそれからシエスタに、ウルトラマンが約50年前から長きにわたって自分の故郷・地球を何度も守ってきてくれたこと、そのたびに地球人もまたウルトラマンと共に肩を並べて戦い成長してきたことを話したのだが…。
「サイトさん!いくら私が平民の田舎娘だからって、からかっているんでしょう!?」
 ウルトラマンのことは聞き入れたのだが、シエスタはサイトが地球に関する説明を入れたときに信じられないと言った。まさかこことは違う星に月が一つで魔法のない、だが人間が存在する世界が地球だと話したところでそう言ったのだ。まあ、無理もないかな…とサイトは思った。もし宇宙人が架空の存在だとしたら自分も本気で信じることはなかったに違いないから。
「まあ…信じられないのはしかたないけどさ、俺の言ったことは本当のことだよ。からかってなんかない。命賭けてもいいくらいに」
 命を懸けるのは流石に大げさかな?と思いつつもサイトはシエスタに言った。
「はぁ…そこまで仰るのなら…」
 シエスタも半信半疑なままだが、とりあえず彼の言っていることは本当だと無理に納得してみることにした。しかし、彼女はふとサイトの話したと自分の記憶を照らし合わせ何かを思い出した。
(あ、でも…なんか似たような話を聞いたことあるかも…)
 不思議なことに、彼女は聞き覚えがあるのを感じたのだ。でも、どこで聞いた話だっただろうか?
「そうえいばシエスタ、あの日の怪我は?」
 確かシエスタはクール星人に襲撃されたあの日に足を汚して逃げ遅れてしまったはず。それを思い出したサイトは彼女の足を見やる。
「え?あ、はい。ミス・モンモランシが治療の魔法をかけてくださったので、もう平気です。でもまさか、貴族の方から治療をしていただけるなんて、未だに驚いてしまいます」
 シエスタはほんのりと頬を染めながら笑みを浮かべた。ああ、この人は勇敢であると同時に優しい人なんだ、と。しかも偶然にも自分と同じ黒い髪。何かこの人と通じるものがある。…いや、一つ忘れていたことがある。この人に対して言わなくてはならないことがある。
「あの、サイトさん…」
「何?」
 妙に申し訳なさげに言うシエスタに、サイトはどうしたんだろうと首を傾げる。
「ミスタ・グラモンと決闘をなされた時のことですが…」
そう言うと、彼女はサイトにぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。怖くなって逃げ出したりして。私の失敗のせいでサイトさんが殺されるんじゃないかって思ったら…」
 確かにシエスタはギーシュから因縁吹っ掛けられ、それを止めようとしたサイトがギーシュからの決闘を受けたとき、彼女は青ざめて走り去っていった。
「ほんとに、貴族は怖いんです。私みたいな魔法を使えないただの平民にとっては。
でも…もう怖くないです!私、サイトさんを見て感激しました。平民でも、貴族に勝てるんだって!それどころか、貴族さえ恐れ慄いたあの空飛ぶ赤いものにも物怖じせず勇敢に皆さんを助けに向かったサイトさんは、私たちの憧れです!」
ぱあっと擬音が聞こえてきそうなほど、その表情は明るかった。
「そ、そう…はは」
頭を掻きながら乾いた笑い声をあげる。
「じゃあシエスタ、俺そろそろルイズのところに戻るから」
「あ、はい。またいつでもいらしてくださいね」
 シエスタはにこやかに笑みを見せ、サイトに食い尽くされた料理を乗せていた皿を持って洗い場へと去って行った。ちなみに彼女の視線が熱を帯びていたことに、サイトは気が付かなかった。



 その頃、トリステインの存在するハルケギニア大陸から遠く離れたエスメラルダのとある大陸…。
 その大地はひどく荒れ果てていた。爪痕や足跡などが生々しく残っている。その原因と思われる、二つの巨大な影が互いに暴れまわっていた。もうお分かりだろう、クール星人より以前に、すでにこの星には怪獣と言える巨大生物が存在していたのだ。だがその怪獣たちが本当にこの星の大地から生まれた存在なのか、それとも宇宙から飛来した存在なのかは定かではない。
 一方の怪獣が、口からひゅんひゅんと糸のようなものを吐いてそれを鞭のように振り回した。それを受けた敵の怪獣はそれをもろに受ける。一見細くて軽い攻撃。敵の怪獣は全く痛くなさそうだった。今何かやったか?そう言っているように自分の肌をぼりぼりと掻いて余裕を示したのだが、その次の瞬間、その怪獣の体がまるで子供の手によって崩れ落ちていく積み木の城のごとく、バラバラに砕け散って行った。
「キシャアアアアアアアア!!!!」
 その怪獣は物足りないとばかりに吠えた。そしてもうこの大地に用はないと吐き捨てるかのように、自分の倒した怪獣の遺体を食い散らかしてすぐに飛び去って行った。
まっすぐ、ハルケギニア大陸のトリステインへと…。



 夜、奇妙な出来事にサイトは直面した。フレイム…キュルケの使い魔の火蜥蜴が、サイトがルイズの部屋の前に差し掛かったところで自分の服の裾を掴んでキュルケの部屋へと引っ張り出してきた。ほぼ無理やり彼女の部屋へ連れてこられたサイトを出迎えてきたのは、なんと下着姿のキュルケだったのだ。曰く、決闘時にギーシュを圧倒した姿に惚れてしまったとのこと。しかもいつの間にかダーリン呼ばわり。サイトも好意を向けられること自体は嬉しいし年頃の男子ゆえの劣情に火をつけられかけたのだが、直後にキュルケの彼氏らしき男子生徒たちが次々と乱入、一人ずつ炎の魔法で追い払っただが、最後には一斉に何人もやってきてフレイムの炎で追い払われた。サイトはこれを見て、ちょっと惜しい気持ちがあったのだが、あの彼氏たちみたいに飽きられて捨てられるくらいなら…とキュルケの愛を拒むことにした。部屋を出ようとした途端、ルイズがお冠状態でサイトを引っ張って部屋に連れ戻したのだった。
「別にあんたが誰と付き合おうが勝手だけど、キュルケだけはダメ!ツェルプストー家にヴァリエール家は代々、殺しあったり恋人を奪われたりと苦汁を飲まされてるんだから!!」
 部屋に戻ったルイズはサイトを正座させ、キュルケと付き合うのだけは止めろと一方的な説教をしてきた。それも長々と。そしてルイズは、聞いても無いのに、彼女の実家ヴァリエール家と、キュルケの実家ツェルプストー家との長きに渡る因縁を語りだした。両家の領地は、トリステインと、キュルケの出身国ゲルマニアとの国境沿いに位置しており、戦争の度にお互いの領地が真っ先と殺し合いとなってきた。それだけ聞けば、確かに両家との間には、只ならぬ因縁と言うものがある。だが、先祖の話に飛び込んだとたん話は一気に下らないものへと格下げされる。やれひいひいおじいさんは、キュルケのひいひいおじいさんに婚約者を奪われただの。ひいおじいさんは奥さんをキュルケのひいじいさんに奪われたりと…。しかもこれらのラ・ヴァリエール家のNTR話は200年前からさかのぼっていたものだったとも言った。
「はあ…」
「ちょっと!聞いてるの!?」
 ルイズの文句も耳に入らなくなってきた。自分の実家の汚点を語っていることに気づかないとは、よっぽどキュルケの実家が嫌いらしいが、正直サイトにとってどうでもいい話だ。
「あんたあくびしているようだけど、呑気なものね」
「あ?」
ため息交じりに呟くルイズにサイトは、彼女が何を言いたがっているのかわからず首を傾げる。
「あんたがキュルケのことをどうも思わなかったとしても、次の日からあんた、あいつの男どもに因縁吹っ掛けられるわよ?ギーシュの時みたいに」
 それはなんとも嫌な話。サイトとしては避けたいことだ。
「じゃあルイズ、剣を買ってくれよ」
「持ってないの?」
「あるわけないだろ?この前握ったのは、ギーシュの人形からぶんとったもんだし」
 ゼロにも言ったことを言うと、ルイズは呆れたとばかりに腕を組んだ。
「剣士なんでしょ?ギーシュとの決闘では自在に操ってたじゃないの」
「それなんだけどさ…剣なんか握ったこともないぜ。ただ、剣を握ったら左手のルーンってのが光っていたのはわかったけど…」
そこまで聞いてルイズは考え込んだ。
「使い魔として契約したときに、特殊能力を得ることがあるって聞いたことがあるけど、それなのかしら」
「特殊能力?」
 以前は確か、使い魔は主人の目にも耳にもなるみたいな話を聞かされた。
「そうよ。例えば、黒猫を使い魔にしたとするでしょう?」
ルイズは指を立てると、サイトに説明した。
「人の言葉をしゃべれるようになったりするのよ」
「俺は猫じゃないぞ」
「知ってるわよ。古今菓西、人を使い魔にした例はないし。だから、何が起こっても不思議じゃないのかもね。剣を握ったことのないあんたが、自在に操れるようになるぐらいのこと、ありえない話じゃないと思うわ」
「ふーん」
 でも、ただ振れるだけじゃなかった。まるで羽みたいに、自分の体は軽やかに動いた。その上、ギーシュのゴーレムは青銅で構成されていた。いくら剣術の能力が身についたとしても、あんなに簡単に金属の塊が切り裂けるものじゃない。
「そうね…あんたに、剣、買ってあげる」
「え?」
 結構けちんぼに見えるルイズ。寧ろ自分の方が使い込んでそうなほど我儘な印象がこびりついていたから、サイトは明らかに意外に思って目を丸くした。
「何よ、その意外そうな顔。まあいいわ。明日は虚無の曜日で休みだから。早いうちに出るからさっさと寝なさい」
「う、うん…」
 部屋の明かりを消したルイズが自分のベッドにくるまると、サイトもパーカーを脱いでそれを毛布代わりに掛けて藁の上に寝転んだ。背中が痛い。地球にいた頃に使ってたベッドが懐かしい。
「…ねえサイト。まだ起きてる?」
 ふと、もう寝たと思っていたルイズがサイトに声をかけてきた。
「どうしたんだよ?寝付けないのか?」
「あんたは私に聞きたいこと言ってきたけど……あの時の巨人が、あんたの言ってた『ウルトラマン』って奴?」
 初めてサイトを召還したその晩、サイトの世界のことを聞いたルイズは当然ながらウルトラマンのことを聞いている。あの鎧の巨人もそうなのではないのかと思い、尋ねてみた。
「あれが、本当にあんたの故郷を守った奴なの?」
「…みたいだ。見たことない個体だったけど」
 ルイズは、実をいうとウルトラマンに対して懐疑的な考えがあった。本当にあれがサイトの言っていたヒーローなのか、戸惑いを覚えていた。もし、実はあの円盤同様人間に対して危害を加えてくるようなことになったらと疑いばかりが湧き上がる。
「俺は…信じるよ。ウルトラマンのおかげで、俺は生きているようなもんだから…」
「…そう」
「ルイズは、信用できないのか?」
 サイトは顔を上げてルイズを見る。彼女は月明かりの差し込む窓の方を見ているせいか顔が見えなかった。
「正直私はあの巨人を信じてない。不用意に心を許すことは命取りだって、お母様たちから教わったから」
「そっか…」
 無理もないか。この世界はウルトラマンのことを知らないし、宇宙生命体の脅威に晒された経験もない。得体の知れないものに対してどうしても警戒をしてしまいがちなところは地球人とて同じだ。それでも、踏み込んではいけない領域というものは存在するのも確かだが。
「でも、あんたが信じるなら…」
「え?」
 何かルイズが小さく呟いている。何を言っているんだろうと思って声をかけてみた。
が、次に飛んできたのはルイズの張った声だった。
「な、なんでもないわよ!それより早く寝なさいよ!キュルケに悟られる前に出かけないと、またあの女のせいで厄介なことになるんだから!」
そう言ってルイズはガバッと毛布を頭までかけて夢の世界へと飛び込んでいった。
「へいへい」
 ため息交じりにサイトもパーカーを毛布代わりに掛けて再び藁の寝床の上に寝転がった。
 サイトの表情は、どこか浮かないものだった。恐らく父…いや祖父の代。そのあたりからウルトラマンたちは地球を守ってきてくれた。自分の人生は、ウルトラマンの存在会ってこそ成り立っていると言っていい。でも、その時のサイトは、心中複雑な表情になっていた。
(信じるって、言うだけなら簡単なのにな…)
 サイトはウルトラマンを信じる、と言った。でも、どうしてか自分で言っておきながらその言葉に甘んじているようには見えない。
(鎧に、青い模様のウルトラマン…)
 眠気によって、暗闇にまどろむ直前のサイトの脳裏に映ったのは…。

今、窓から青い光を差し込ませている青い月と同じ光を放っていた、中学時代にこの目で見たことがあった、青い鎧を着たウルトラマンの姿だった。



 ハルケギニアには、地球とは異なり曜日が五つとなっている。火、水、風、土、そして休日に虚無の曜日と言うものが存在する。その虚無の曜日の朝のことだ。予定通り、サイトとルイズは馬に乗って街に繰り出した。ルイズの狙い通り、キュルケはその日の朝からサイトを口説こうと思って早く起きたのだが、そうなる前に早めに起きた二人はキュルケが目覚める前に校舎を出ることに成功していた。すでに二人が出かけていることを知らないキュルケは、こともあろうか校則で禁じられているコモンマジック『アンロック』でルイズの部屋を開けたのだ。愛さえあれば何でも許される。それは彼女の実家の家訓。しかし自分の求愛をサイトのご主人様であるルイズどころか、当のサイト本人も拒んでいることを露知らないキュルケであった。
 部屋の扉を開くと、二人の姿はすでになかった。ヴァリエールなんかに出し抜かれた。それがキュルケの心に火をつけた。
「タバサ!起きてる!?」
 直ちにキュルケは大慌てでタバサの部屋に入ってきた。
 他人にどう思われるより、放っておいてほしいと思っているタバサにとって趣味である読書の時間は誰にも邪魔されたくないもの。せっかくの休日、虚無の曜日だから一人静かに本を読みたい。だから、音を消し去る効力を持つ風の魔法『サイレント』の魔法をかけて騒音をシャットアウトしようと杖を手に取ろうとする。が、そうなる前にキュルケがタバサの杖を奪いとって彼女の膝元に縋りつく。
「今日は虚無の曜日…」
「ああん待って!わかってるわ!あなたにとって虚無の曜日がどれだけ大事なのかは!
でも話を聞いて!サイトを口説きたいけど、ルイズがすでに街に連れていったのよ!彼の
ハートを射止めたい!!これは情熱の恋なのよ!」
 サイトがギーシュとの決闘で、その勇姿を見せただけでキュルケはサイトに惚れてしまっていた。それはもう皆もご存じだろう。しかしキュルケは惚れっぽいのと引き換えに、すぐに冷めてしまうタイプなのだ。昨日サイトを部屋に連れ込んだその日に、キュルケに追い払われた彼らを含め、今まで無理やり自然消滅された男たちは数知れない。困ったものである。
「…わかった」
しかしタバサは、キュルケとの友誼からなのか、それとも他の意図からなのか、キュルケの頼みを聞き入れる。
「えっ!?わかってくれた!?」
「シルフィードで追う…馬で行ったの?」
「そうよ。馬二頭でいったわ」
 タバサは使い魔のシルフィードを口笛で呼ぶと、呼び出された彼女の使い魔だる風竜『シルフィード』が窓際まで飛んで来てくれた。
「馬二頭、食べちゃダメ」
 二人はシルフィードに飛び乗り、ルイズとサイトを追ってトリスタニアまで飛んでいった。



「鎧の巨人…ですか」
 トリステインの城下町、王都トリスタニア。魔法学院から馬で三時間もかかる距離にある。白い石造りの建物やレンガで出来上がった建物の並びはまさにテーマパークのようだった。
 街の中心の丘の上にそびえる、この国象徴たる城『トリスタニア城』ではオスマンからの、先日のクール星人の円盤によるトリステイン魔法学院襲撃の報せが届き、宮殿では重臣達を急遽集める大騒ぎとなっていた。
「マザリーニ枢機卿、本当なのですか?トリステイン魔法学院が謎の飛行物体に襲われ壊滅し掛けたと言うのは?」
「はっ。トリステイン魔法学院長オールド・オスマン殿の報せによれば、その様に書かれております」
 年齢差を感じさせない程の美貌と貴賓溢れる貫録を持つ女性と、痩せこけた男性が神妙な顔で話し合っていた。女性はトリステインの王妃であるマリアンヌ王妃。今は亡きトリステイン王の妻である。傍らには娘である王女、『アンリエッタ・ド・トリステイン』も同席していた。一方で灰色の帽子を被るやせた壮年の男性の名はマザリーニ。彼は亡き王の妻であるマリアンヌと彼女の娘である王女『アンリエッタ』を支えながら、この国の政治を取り仕切っている。事実上彼が王ともいえる存在であった。そのためか、民衆から『王家は華だけ』だの、マザリーニは『灰色帽子の鳥の骨』と揶揄されている。
「魔法学院のメイジ総出で放った魔法でも、傷一つ付ける事が出来なかったと」
「そんな!!魔法が効かないなんて…」
 マザリーニの口から放たれた、オスマンからの報告に驚愕するアンリエッタ王女。貴族にとって魔法は唯一の攻撃手段。しかし自分たちはその力に、人によっては傲慢にもとれるほどの多大な自信がある。それが通じないとなると打つ手が何もないではないか。
「そして魔法学院を救ったのは何処からともなく現れた巨人だそうです」
「巨人?」
 巨人、という単語にマリアンヌは目を丸くした。
「はい。魔法学院にその巨人の知識があるものが居たらしく、その名を知る事が出来たそうで」
「その巨人の名は?」
「超人、という意味から『ウルトラマン』と…」
「ウルトラマン…ですか」
 どこからともなく現れた巨人戦士、ウルトラマン。突如学院を襲撃しに来た謎の円盤も気になるが、そのウルトラマンについて誰もがいろいろと考えさせられた。円盤の正体は結局なんだったのか、その円盤を倒した鎧の巨人ウルトラマンとは何者だったのか。なぜ学院の者たちを救ってくれたのか…。
「た、大変です!」
 突如部屋の扉が開かれ、息を切らせた騎士の男性が入ってきた。
「何事だ!騒々しい!」
「も、申し訳ありませぬ!ですが、緊急事態を知らせんがためにこのトリスタニアへはせ参じた次第にございます!」
 大事な話をしている最中だったので、その騎士に激怒するマザリーニだが、それをマリアンヌが宥める。
「マザリーニ殿、落ち着きなさい。まず彼の話を聞きましょう。何があったのですか?」
「はい!このトリスタニアの方角へ、北の方から謎の巨大生物が接近しているとの事です!」
「巨大生物!?」
 この場に呼び出されたトリステイン貴族の一人『ウィンプフェン』が驚いた様子を見せたが、同時に別の貴族『ド・ポワチエ』が鼻で笑う。
「どうせはぐれドラゴンでしょう。何を慌てているのですか」
 だがここへ訪れた騎士は呑気なド・ポワチエの発言を一蹴するかのごとく言い放った。
「ドラゴンなどではありません!もっと恐ろしい…推定50メイル以上もの巨体を持つ怪物です!そいつを食い止めるべく各地のメイジをかき集め応戦しましたが、全く手も足も出ず応戦した部隊は壊滅したとのことです!」
「なんと…」
 応戦した部隊が、全部倒されてしまったと言うのか。
「すぐに魔法衛士隊を集めよ!その怪物をこの街の餌食にさせてはならん!国と民のためにも、死んでも守り通すのだ!」
(謎の円盤に巨大生物…これは、何かの前触れだと言うのでしょうか…)
 近日に二度も渡る、かつてないトリステインの危機。アンリエッタは、この現実そのものが脅威に思えた。
(魔法学院には、確かあの子が入学していたはず…できることならすぐに確かめたいのだけど…)



 その頃のルイズたちは…。
 白い石造りの建物が建ち並び、いかにも中世ヨーロッパ時代らしく見える町並みが目の前に広がっていた。老若男女問わず数多くの人々が町を行き来している。サイトはそれを、遠い目で眺めていた。まるで外国へ修学旅行に来た気分で、ちょっとわくわくしてくる。
「へえー、ここがトリステインの城下町かあ」
 初めて馬に乗ったサイトは3時間も馬に揺られていたせいか、腰が少し痛くなった。とはいえ、これもゼロと同化した影響だろうか。思ったほど痛みは長続きしなかった。
「そっ、ブルドンネ通りはトリステインで一番大きい通りよ」
「狭いんだなあ」
『同感だな。光の国のクリスタルタウンと比べたら、まるでジオラマのようだぜ』
 自慢気にない胸を張る張るルイズだが、サイトの予想外の感想にコケそうになった。ルイズには聞こえなかったが、サイトと同化しているゼロも、サイトの目を通して同じようなことをつぶやいた。
「俺の世界の都市はこれの何倍かはあったぞ。道の幅も」
 見たところ道幅はたったの5mだけしかない、大勢の人が通るのならもっと広げていた方がいいのではないか?とサイトは思った。
「どんな街よ…あんたの故郷って…」
 そんなサイトの言ってることが本当なら、ルイズから見れば想像もつかない。
「まあいいわ。それより上着の中の財布に気を付けなさい。寄り道もしないことスリが多いから」
 ルイズにそう言われ、サイトは彼女から持たされた財布が無事か確認する。ずっしりと重い。流石は貴族のお嬢様だ。寧ろこんな重いものをするのは誰だと思ったが、ルイズは魔法さえあれば一発だと言ったので用心することにした。
 街の建物にほぼひとつずつ付けられている看板を見て、サイトは興味深そうに足を止めた。
見たところ看板には、本の形をしたものもあれば、魚の形をしたものもある。壜の形をした看板は酒場、×印のような形をしたものは衛士の詰め所と、建物の役割によって形が決まっているようだ。
「字の読めない平民も多いからね」
「俺看板見てもなんの店かわかんね〜な」
 おどけたような口調でサイトは言った。この世界に来たばかりだから致し方ない。
「迷子になっても知らないわよ。ほら、とっととついてくる!」
 ルイズに引っ張られてきた先は、悪臭漂う裏通りだった。鼻を抑えるサイトを見て、ルイズも顔をしかめる。当然ながら彼女も来たくなかった様子だ。
 中には中年の男店主がおり、ルイズを確認すると驚いたように警戒した。一瞬は胡散臭げに見ていたが、彼女の制服の胸にある五芒星を見て、吹かしていたパイプを置いてすぐに姿勢を整えた。
「こ、これは貴族様!うちはまっとうな商売をしておりますので、お上に目を付けられるようなことは…」
「客よ」
ルイズは腕を組んでそう言った。
「へぇ、最近の貴族様は剣を扱いになられるのですかい?」
「私じゃなくてこいつのよ。」
 そういってルイズはサイトを指差した。そのサイトは店の中をキョロキョロ見回していた。結構好奇心が良くも悪くも高いのだ。
「剣のことなんかさっぱりだから適当に、でも貴族の下僕にふさわしいものを用意して頂戴」
「かしこまりました」
 そう言って店の奥に消えた店主は、へへへと嫌な笑みを浮かべていた。鴨がネギをしょってやってきた。せいぜい高く売りつけてやろう、と企みながら。しばらくして店主は美しい装飾の施されたハンドガードつきのレイピアを持ってきた。
「これなんていかがでしょう?」
「おお!」
「あらキレイ!」
 レイピアの見かけに対しサイトとルイズは目を輝かせた。
「へぇ!最近の貴族様は下僕に剣を持たせるのが流行でして。それはそんな貴族様に人気の品でして」
「剣を持たせる?どういうことかしら?」
 店主の言葉にルイズは疑問を感じた。ちなみにサイトは子供のようにはしゃいでレイピアを振り回している。
『サイト、その剣気に入ったのか?』
「まあ、悪い剣じゃないってのはわかるよ。細い分すげー振り回しやすい」
 そう言いながらサイトは『秋沙雨!』と吠えながら突き攻撃の練習をし始める。
「いえね、最近やたらと物騒な噂を聞くんですよ。以前からあった土のメイジの盗人で現場に自分のサインを残していくことで有名な『土くれのフーケ』の噂が絶えねえですだ。その影響で貴族様も従者に剣を持たせる始末でして」
 しかしルイズは特に、その『土くれのフーケ』の話に興味を示さなかった。
「でも、この剣細いわね。すぐに折れちゃいそうで。もっと大きくて太いのがいいわ」
 店主の話が終わり、レイピアを見たルイズは別の剣を注文した。
「お言葉ですが人と剣には相性というものが――――」
「大きくて太いのがいいと言ったのよ」
「へ…へい」
 口には出さなかったが、店主は素人め!と心の中で舌打ちする。続いて店主が持ってきたのは、金ぴかで宝石が所々にちりばめられた大剣だった。店主曰く、ゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿による業物で、剣にかけられた魔法で岩をも一刀両断とのことらしい。
「おお!かっけーーー!!!」
『…』
 豪華な剣を一目で気に入ったサイトだが、彼の中にいるゼロは唸っている。何か思うところがあるのだろうか。サイトが気に入ったようなので、ルイズはその剣を買うことにした。
「おいくら?」
「エキュー金貨2000、新金貨で3000になりやす」
 それを聞いた途端、ルイズはびっくりした。
「な!? なによそれ!立派な家と森つきの庭が買えるじゃない!!」
 あまりの値段にルイズは激怒したが聞き入れられなかった。この日ルイズは新金貨100しか持ってきていない、とても買えるような値段ではなかった。
「気に入ったのにな…」
残念そうに呟くサイトだが、ここでゼロが彼に声をかけてきた。
『サイト、はっきり言うぜ。その剣を買う金があったとしても買うことは勧めないぜ』
「!い、いきなり話しかけるなよ…で、なんでそんなこと言うのさ?」
 ルイズたちに聞こえたらまずい。サイトはわざと名残惜しそうに剣を眺めているふりをしながら小声でゼロに返事する。
『その剣、このウルトラマンゼロから見れば使い物にならないなまくらだぜ?多分剣の型に鉄を流し込んでから金メッキを張り付けただけの飾りもんだ』
「…マジ?」
 この剣がなまくら?見たところそんな風には見えないのだが。だがゼロの話が本当だとすると、ルイズのなけなしの金を結果的にドブ川に捨てることになるだろう。まあどうせ買う金もないし、この剣は店主に返してしまうのが無難だろう。
「おい坊主、剣もまともに振れねような体つきで生意気言ってんじゃね!てめぇには道端に転がる棒切れがお似合いだぜ!」
 サイトが剣を店主に手渡した途端、どこからか男の声が響いてきた。
「んだと!誰だ!!…ってあれ?誰もいない?」
「やいデル公!商売の邪魔すんじゃね!」
 悪口を言われたサイトは声の方を見たが誰もおらず、そこには樽に入れられていた沢山の武器があっただけだった。サイトは不思議に思って首をひねっていた。主人の反応からして誰かいるのは確かなはずだ。すると、ゼロが声の主がどこにいるのかを教えてくれた。
『そこの樽から声がするぜ。カタカタって金具が勝手に動いてる奴だ』
 サイトは言われた通り店の端にある、剣がいっぱい詰まった樽に視線を向けてみる。言われて見れば、確かに一本だけ奇妙に、剣の鍔のあたりの金具が人間の口のようにカチカチと音を鳴らしながら動いている。
「もしかしてお前か!!?」
 見るとボロボロにさび付いた剣が喋ってた。サイトは面白がってそのボロ剣を手に取った。
「すげー!!!剣が喋ってる!!おもしれー!!」
 喋る剣というコンセプトが、サイトの好奇心旺盛な心を刺激した。
「これって、『意思剣(インテリジェンスソード)』じゃない」
ルイズはサイトが手に持った剣を見て当惑した声を上げた。
「ルイズ、そのインテリなんとかって何?」
サイトはルイズに説明を求める。
「簡単に言えば、人間と同じように意思を持った剣のことよ」
「おう、当たってるぜおじょーちゃん」
喋る剣は、口代わりにカタカタと金具を動かして喋っている。
「お前が喋ってたのか?名前は?」
「俺っちはデルフリンガー様だ。ん?」
 デルフリンガーはサイトの左手にあるガンダールヴのルーンを見ると、驚きの声をあげた。
「おでれーた。おめえ『使い手』か?」
「使い手?」
「なんだ知らねーのか?まあいい。俺っちもわかんねえし。まあいいさ。俺っちのことはデルフでいいぜ」
 自分で意味深なこと言っておいてなんだったんだよ…とサイトはデルフリンガーの意味不明な発言に首を傾げたが、この喋る剣がなんとなく気に入っていた。
「そうだな…ルイズ、これがいい」
「ええ!?こんな錆びた剣?」
 ルイズは目を丸くした。他にも錆びてないキッチリした剣があるのに、この使い魔はこのおかしな剣を気に入ったのか?
「喋らなくて綺麗な剣を選びなさいよ」
「いや、だって…金あんまり持ってきてないだろ?」
「う…」
「ゼロもいいよな?」
『ま、さっきの奴よかずっとました。いいんじゃないか?』
 確かにサイトの言う通り、新金貨100しか持ち合わせがない。しかもデルフリンガーの値段もちょうど100。ゼロもとりあえずその剣が一番いいだろうと言う。仕方なくルイズはサイトのリクエスト通りデルフリンガーを買い、武器屋を後にした。
 と、来た通りを出てきた途端二人は予想もしていない人物二人と鉢合わせする。キュルケとタバサの二人だ。
「あ…あんた達!!何でここにいるのよ!?」
 指をさして物申すルイズに、キュルケは余裕の態度を示す。
「あらルイズ、奇遇ねえ…ちょっと剣を物色しに来たの。ある殿方に贈るためのね」
 そう告げたときの彼女の視線は、まっすぐサイトの方に向けられ、見られたサイトは俺?と自分を指さした。
「その贈る人って、うちの使い魔じゃないでしょうねえ!?」
「それはあなた次第よルイズ。あなたが私の手に届かない程の剣をダーリンに贈れば、私は何もしないわ。でも、鈍を贈る様なら私が彼の為に剣を贈るわ。主人の選んだ剣の所為で、彼が死んじゃったら彼が可哀想過ぎるものね」
 ルイズのこめかみがピクピクしている。ああやばい、もう沸点を超えようとしている。さわらぬ神にたたりなし。サイトは何とか逃げ場を探そうと考えていると、街の人たちの話声が聞こえてきた。
「聞いたか?魔法学院、妙な空飛ぶ円盤に襲われたってよ」
 話題は、どうやら先日クール星人の円盤に襲われた魔法学院のことのようだ。
「空飛ぶ円盤?おいおい冗談だろ?」
「冗談なもんか、俺はなんたって魔法学院に勤めてるからな」
話をしている平民の一人は、魔法学院で勤務している身のようだ。料理人か?それとも衛兵だろうか。
「でも、自業自得って気もするよな」
「!」
 ルイズはその言葉を聞いて、耳をピクリとさせた。自業自得?こいつらは何を言ってるのだ。立ち止まったルイズはそのままの状態で平民たちの話を聞いていた。
「ああ、最近の…特にトリステインとアルビオンの貴族連中は傲慢で気に入らねえ能無しばっかだしな。ロクな政をやってる奴なんか数えるほどしかいねえ。何やってんだって話だ。真っ先に影響受ける俺たちの身になってほしいもんだ」
「連中は野蛮だとか言ってるけど、ゲルマニアを見習うべきだよな。なのにどいつもこいつも古臭いしりたりとか地位にばっかこだわりやがって…ガリアだってそうだ。最近ジョセフが王位を授かってからロクなもんじゃない」
 ルイズはもうここまで聞いたときには、怒りと屈辱で顔を真っ赤にしていた。
「あいつら…貴族に対してなんてことを…!!」
 我慢ならず、ついに貴族への失言を吐き続ける平民たちの方へと歩き出そうとしたが、キュルケが彼女の肩を掴んで引き留めた。
「ヴァリエール、落ち着きなさいよ」
「キュルケ、あんたはいいわよね。見習われる側の国の出身なんだから。でも、私たちトリステインの貴族を全員侮辱したのよ!あの平民たちは!」
「だからってあなたが彼らに手を挙げていい理由にならないじゃない。それとも、あいつらで鬱憤を晴らすためなら、あなたの暴力で余計にトリステイン貴族の名に泥を塗ってもいいのかしら?」
「ぐう…」
 キュルケも嫌なことを言われたりしたら怒りたくもなる。だが冷静に考えてみよう。ここでルイズが迂闊に彼らに手を出したら、それこそ平民からの怒りと不満を余計に買ってしまうだけ。信頼されるべき貴族が民からの信頼を余計に失うことになる。それをもし実家の家族に知られたら、罰としてずっと自宅で軟禁生活を送られるようなことにもなりかねない。平民たちがあんなことを言うのも、自分たちに不義理があるが故だ。でも…納得できるわけもない。自分たち貴族だって必死なのだから。
「でも、気になるのはやっぱ噂の鎧の巨人だよな」
「ああ、今日学院から来た貴族連中が噂してた奴か。ええと…ウルトラマンって奴?」
 気が付くと、話は貴族への不平不満から、学院の危機を救った鎧の巨人の話にすり替わっていた。サイトもこの話ばかりは聞き逃さずにはいられない。
「貴族連中が敵いもしなかった円盤をあっさりとやっつけたんだ。正直圧巻だったぜ」
 すごく興奮気味に語る平民たち。キュルケは、ウルトラマンの名付け親のような立場にあるサイトを見やる。
「ウルトラマンって名前を広めたの、ダーリンだそうね。どれぐらいウルトラマンのことを知っているの?」
そうだな…とサイトは腕を組んで知りうる限りのウルトラマンのことを説明してみることにした。
「俺の故郷にはたくさんのウルトラマンが、俺が生まれる以前から姿を見せていたんだ。初代ウルトラマン、ゾフィー、セブン、ジャック、エース、タロウ、レオ、アストラ、80…そして俺が実際に生で見たことがあるメビウスとヒカリ。光の国って呼ばれる星から来たから、まだ同胞が数えきれないほどいると思う」
「と、とんでもない世界ね…」
 あんな巨人たちが何人も確認されているとは予想外だったので、ルイズとキュルケはかなり驚いていた様子。タバサも相変わらず表情一つ変えず本を読んでいたが、ちゃっかり本を読みながらサイトの話を興味深そうに聞いていた。
「でも、それならあの鎧の巨人にも名前を付けてあげたらどうかしら?他にも仲間がいるのに、あの鎧のウルトラマンだけ名前を持たないなんて寂しいじゃゃない」
「『あ〜…』」
 すると、キュルケから突拍子もなく名前を付けてみないかと提案した。
 やばいな。確かルイズの不名誉な二つ名とかぶっているから『ウルトラマンゼロ』って言うのを控えてたんだけどな…サイトは自分の変身するウルトラマンに変な名前を付けられることはできれば避けておきたい。それは彼と同化しているゼロ本人も同じだった。
 すると、ルイズが真っ先に意見を出してきた。
「ふふん、それならいい名前があるわよ!ウルトラマンジャイ…」
「ジャイアンって…どこの餓鬼大将だ。俺反対」
「ご、ご主人様の意見に反対する気!?」
『…俺もそんな名前はやだな』
 どのみち反対しておきたいのだ。ゼロと同化している身としては。はあ、でもどうやって彼の名前をうまく伝えられることやら。
「だったらウルトラマンスーパーデラックス!」
「言いにく過ぎて舌を噛むわ」
 キュルケもあきれ顔だ。名前が長いことには、自分たちがそうであるので敢えて突っ込まない。しかも極めつけはタバサの止めの一言。
「ネーミングセンスなさすぎ」
「う、ううううるさいわよタバサ!」
「あなたの方がうるさいわよ?なんたってタバサは基本無口だもの」
「ぐぐぐぐ…!!」
 歯ぎしりしながらキュルケとタバサを睨みつける。が、それでもなぜか意地を張って諦めきれないルイズ。どうも皆から反対意見を出されている状況が、いつものようにクラスメートたちから『ゼロのルイズ』と馬鹿にされている状況に似ているように感じたのだろうか。大体文句を言うくらいならお前らも考えとけと言いたい。
「だったら…ウルトラマン…!!ウルトラマン…」
何か言おうとしているが、何もいい名前が思いつかない。
「ウルトラマン…なんなの?」
「えっと…ルイz」
 なんというか、もうお手上げだったせいかルイズは自分の名前を言おうとしていたのだ。自己アピールも甚だしい。自分の名前を付けるとか、もう何ともいえない。こりゃダメだと思ったその時、突如サイトはグワッ!と目を見開いて大声で叫んだ。

「違う!あの巨人の名前は『ゼロ』!!『ウルトラマンゼロ』だ!間違えんな!!」

シーン。

 あまりにもすごい剣幕だったのか、ルイズたちはおろか町の人たちまでサイトに注目してしまっていたのだ。…実をいうと、このときのサイトはサイトであってサイト自身ではない。
実際には、サイトの中のゼロが、あまりにもおかしな名前を付けようとするルイズに我慢ならず、強制的にサイトの姿のまま自分が表に出てきてしまったのだ。
『ちょ…ゼロ!お前何勝手に表に出てきてんだよ!しかも堂々と本名名乗って!』
 人格を強制で交代させられたサイトは、自分に成り代わっているゼロに文句を言う。
『うっせーな!変な名前つけられるくらいなら堂々と名乗った方がいいわ!』
『いや、その本名が問題であって…』
 そう、嫌な予感ばかりが的中しているのだ。今、彼のご主人様ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール嬢の美しいピンクの髪の毛が、妖怪のごとく黒いオーラを放ちながら波立っている。
「へ、へえ…そう、ウルトラマン『ゼロ』ね?」
ひきつった笑みを浮かべ、やけに『ゼロ』を強調するルイズ。
『あ、俺ギャラリーな』
「ああ!ずりーぞお前!」
 しかも事の発端であるゼロは悪びれもなくまたサイトの中へ引っ込んだ。
「せっかく虚無の曜日にと・く・べ・つ・に!剣を買いにご主人様が連れてきてあげたって言うのに…よっっっっっぽどあんたはご主人様を怒らせたいのね…」
「いやいやいや!あの巨人が俺を助けたときに自分から名乗ってたんだよ!決してお前を悪く言うために言ったんじゃなくて!」
「問答無用!そこに直りなさい、この馬鹿犬うううううううううう!!!」
「り、理不尽だああああああああああああああ!!!」
 しばらくの間、サイトは烈火のごとく怒ったルイズに追い回され続けた。先日までルイズに大きな態度をとっていた時もあったサイトだったのだが、これが本来の彼の姿なのだ。
 このルイズが起こした癇癪のせいで、鎧の巨人は奇妙な名前を付けられる前に本名である『ウルトラマンゼロ』と知れ渡ったのだが、それは同時にルイズにとってあまりにも屈辱的なことでもあった。 
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