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I want BRAVERY

作者:清海深々
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十三話 夏中



 月光館学園に入学して、もう4ヶ月は過ぎた。

「ふぁ〜」

 いつもの学校へ行くときよりも遅めの時間に起きる。
 ベットから起き上がり携帯を開いて時間を確認する。


8月22日 9:30


 なんたって今はまだ夏休み。
 この時刻に起きてもなんの問題もない。

「んーー」

 グッと体を伸ばす。
 ペキペキと肩や腰から音がする。

「ふぅ」

 その音に満足しながらベットから降りる。
 寮は長期休暇では朝食が一定時間までにリビングに下りると、寮母さんが作ってくれる。

 服を着替えて、顔を洗い下へと向かう。
 ちなみに今の部屋は2階にある。

「おはよー」

「おーう」

 この時間に起きているのは俺と友近と数人だ。
 元々この寮にはそれほど人数はいない。
 かと言って原作の主人公達の寮ほど少なくはないが。

 どうやらこの寮は最近できたらしく、居るのはほとんどが1年生。
 たまに2年生を見かける、その程度だ。
 3年生に関しては一人もいない。

 学生にとってたかが朝食代と侮ることは出来ない。
 だからと言って毎日朝食抜きというのもどうかと思う。
 
 だからなのか、寮の大抵の人間は朝食を食べる時間に起きてくる。
 しかし、起きてこないのが一人。

「順平はまだ寝てんのか」

 友近が呆れながらテーブルの上に置かれた朝食をとる。
 この寮が小さいためなのかはわからないが、席の数がそれほど多くはない。
 そのためほとんど皆、毎日決まった席で朝食をとっている。

「あいつのことだ、どーせ夜中までネトゲやってんじゃないの?」

 そう言って、友近の前に座っている俺も朝食をとる。

「なん言ったっけ?・・・えーと、デビ、デビなんとか」

「デビバスターズ・オンラインだろ?」

「そうソレだ」

 最近は毎日のようにそれについて語ってくるのだ伊織は。

「ま、どうでもいいけど。んなことよりさ、今日暇?」

「大抵暇だろ。毎日が日曜日みたいなもんだし」

「そうだなー。あーでもそろそろ宿題とかやんなきゃなんねぇのか」

「お前まだやってないのかよ」

 呆れ気味に言う。
 前世ではありえなかったことだが、この世界で俺は優等生なのだ。
 なんてたって、

(勇気が!勇気がある!)

 というのは関係ないのだが、前世ですでにやったことであるし、子供の頃に高校生用の勉強を既にしていた。

「嘘!?おまっ!・・・もしかして終わってんの?」

 友近が一瞬固まった後、声を潜めて聞いてくる。
 この寮の人間は何故だか知らないが、あまり頭の良い生徒がいない。

 言うなれば伊織のような人間ばっかりが集まっているようなものだ。
 そんな場所で既に自分は宿題が終わっている、などという発言を大声でしようものなら、その日のうちに同級生の寮生へと俺のノートは、俺の意図しないところで回っていくだろう。

「・・・もちろん。俺を誰だと思っている」

 ふんぞり返りながら言う。 
 正直、前世の記憶とかズルすぎることこの上ないのだが、できるのだから仕方がない。

 そのうえ、学力5だ。5はデカイ。
 なんの勉強をせずとも上位4分の1に入れてしまう。
 これは1学期の最初の中間テストで確認した。

 前世の知識を使わずとも(使う、使わないなんてできるわけではないのだが)この成績。
 期末テストでちょっと頑張ってみると、なんとなんと簡単に3位という成績が取れてしまった。

 前世の俺は一生懸命やっても精精、平均を超えるかどうかというカスっぷり。
 なんてすばらしいんだ、今の頭のスペック。

「彩・・・いや、彩様・・・見せてください!」

 そう言って、声は小さいままで頭を下げる友近。

「おいおい、俺達は親友だろ?」

「・・・さ、彩・・・グス・・・お前ってやつは」

 感動したのか、友近はわずかに涙をにじませている。

「お前がそういうことは、とうの昔にわかっていたさ」

「ありがとう・・・さっそく今日の昼にでもみせて」

「だが断る」

「・・・ぇ」

 友近が文字通り固まる。
 その間にカチャカチャと食べ終えて空っぽになった食器を重ね、キッチンの方へと持っていく。

 返却場に置いて、戻ってきてみると、友近がまだ固まっていた。

———ポン

「冗談だ」

 友近の肩に手を置く。

「・・・さ、彩ぃぃぃ!!」

(どうせ、伊織のやつも見せてくれと言いに来るんだろうな)

 目の前で俺の服を掴んでブンブン揺さぶっている友近を見ながら思った。







 案の定だろうか、伊織にも宿題を見せることになった。

 朝食後、友近と、昼と朝が兼用になる伊織とでラーメンを昼飯に食いにいった。
 そのときに、伊織にも頼まれた。

 正直、まだまだ夏休みが終わるまでは余裕がある。
 ギリギリになるまで普通は焦ったりしないのだが、この二人はちゃんと自分のことが分かってるらしい。

「期限が迫ったからといって焦るなんて漢じゃない!ましてや期限なんて他人に決められたものに従う気もない!」

 っとさっき伊織が自慢げに言っていた。
 要するに、

(どーせ、夏休み最終日になってもやらない、てことか?)

 なんて、内心で伊織のセリフを思い出して呆れつつ、目の前で必死の形相で俺の宿題を写している二人を見る。

「ったく、なんで現代文に宿題が出てんだよ・・・」

「・・・あークソっ!数学とか、もやは暗号だぜ!」

 二人ともこの後の夜にゲーセンに行く気らしく、この昼の4,5時間で終わらせるつもりらしい。

「おい、髭。そこの問題はお前じゃ解けないから空白にしとけ」

「うぉ!?マジか。助かるぜ!」

 時々、伊織の頭じゃ、どんなに頑張っても分からないであろう問題に差し掛かったときには、そう言って空白にさせる。

 それにしても、この調子じゃ、今日中に終わるかどうかかなり怪しいラインだ。

 そんな苦労している二人を見ていると、

(頭がイイってさいこぉぉ!!)

 いや、ほんと内心叫ばずには居られない。

 
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