I want BRAVERY
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十二話 夏前
入学してはや3ヶ月。
気付けばもう夏休み。
「いよっしゃあぁ!夏休みだぁぁ!」
終業式が終わり、鞄を取りに教室に入った途端伊織が騒ぎ出した。
もちろん騒いでいるのは伊織だけではないのだが。
「うるせぇよ」
何故、俺の耳元で叫ぶので、迷惑で仕方がない。
「しゃあああぁ!!ラーメン食いに行こうぜぇえ!!」
「お前、ほんとそればっかだな。もっと野菜食え野菜」
友近も伊織と同じような感じで叫んでいた。
「とりあえず最近買った『デビルバスターズ・オンライン』をするか!」
伊織はどうやらネットゲームのカセットを買ったようだ。
原作では、男主人公にネットが復旧して貸していたはずだ。
「なぁなぁ、お前らも一緒にやらね?」
俺は、前世で携帯ゲーム機、PSP、DSをそれなりにやりこんだ。
そのうえPS2、PS3、そしてクソ箱と呼ばれたXBOXなど浅く広くではあるがやり込んだ。
所謂ゲーマーだ。
そんな俺がネットゲームに手を出していない、なんてことはないのだが。
「俺はパス。ネットゲームは人間を腐らせる」
これに尽きる。
ネットゲームにハマりこみ、どれだけ苦労したことか。
小遣いは全て課金へと消えた。
そもそも基本無料でアイテム課金と言うのは、ハマった人間にとっては際限がない。
月5000円の小遣いと、参考書を買うと言って親からもらった金は全てゲームへ。
学校の宿題をすべき時間や睡眠時間はゲームへ。
本来学校の授業を受けるべき時間は睡眠へ。
今思い出しても、あれは駄目だ。
あそこから俺は終わったんだ・・・
「・・・彩、お前過去になんかあったのか?」
伊織がorzの形で落ち込んでいる俺に心配げに声をかける。
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「そうは言っても・・・」
流石に俺があまりにも落ち込んでいたため、
「聞いちゃダメなことだったのか?」
伊織は首をかしげながら友近を見た。
「いやいや、俺はなんも知んないから」
「・・・まぁ、いいか。友近はやらね?」
「・・・まぁ、いいな。やらんわ」
親友がこんなにも落ち込んでいるというのに、なんとも薄情な奴らだ。
(※普段の行いのせいです)
「にしてもさ、数学さ宿題出しすぎじゃね?」
伊織が学校出て暫くしてから愚痴りだす。
「確かに!終わる気しねぇよ」
宿題に文句を言うのは学生だから当たり前だ。
たとえ、その宿題があまりに簡単でもだ。
たぶんだが、今回の宿題は前世の時と比べると遥かに量が少ない。
1年だからと言って加減したのだろうか。
「終わらせる気がないの間違いだろ」
真面目にやれば、誰でも結構すぐに終わらせれるだろう。
「いやマジありえねぇって!」
「彩は頭いいから問題ないけどさ、たぶん俺らレベルじゃあれ無理だし!」
「お前らが底辺過ぎるんだろ!」
他愛のない話をしながら寮へと向かう。
「まっ!そんな堅苦しい話は置いといて!」
突然伊織が元気な声を出す。
ついでに一人鼻息が荒い。
「やっぱ、夏と言えば海!水着!綺麗なお姉さん!」
「そう、だよ!勉強どうせもいいし!」
「そんなこと言って、夏休み中に見せてくれなんて言いに来るなよ?」
「・・・」
「・・・」
途端二人は固まる。
「おい」
「そん時はそん時だ!」
「そうそう。まっ、そん時は任せたぜ!親友!」
そして何故か開き直る。
「お前・・・」
「んなことより海だよ!海!」
またもや伊織が騒ぎ出す。
「夏休みこそは、エミリーと仲良くなってみせる!」
友近も騒ぎ出す。
「お前、まだ諦めてなかったのか」
「当たり前だろ!こっからだよ!」
「そうだぜ、友近!夏休みから全てが始まるんだ!」
「じゃ、明日勉強会でも開始するか?」
つい先日発表された試験結果で、二人の成績は散々なものだった。
ちなみに俺はキッチリ3位をキープ。
「勉強会?んなもんイラネー!」
「人生に一回しかないんだぜ?高校1年の夏休みは!楽しまなくてどうする!」
「その理屈で行くと、お前は一生勉強しねぇよ!」
「チクショウ!これが学年トップ3の余裕なのか!?」
突如友近が逆ギレしはじめる。
「俺なんて・・・学年ワースト3だし」
友近の横で地面に蹲る伊織。
「まぁ、なんか友近もバカみたいな扱いになってるけど、お前平均だからな?平均ジャストだからもう、どんだけ悪ぶっても、所詮モブだから!てか、全科目平均とか、ありえないくらいモブだから!」
「クッソォ!言われると思ったよ!これでも頑張ったんだよ!なのになんで平均なんだよ!これがモブの宿命なのか!?」
地面を蹴る友近。
蹲っている伊織。
呆れている俺。
最近なんかカオスな状況が多い気がする。
「おぉぉぉ!!とにかく夏休みなんだ!」
「そうだ!夏休みなんだぁ!!」
何故か叫びだす。
付いていけない。
はぁ、とため息を吐いて、俺は空を見上げる。
なんて黄昏ているようにいえるかもしれないが、
(いつになったらペルソナ目覚めるんだよぉぉ!)
とか思ってたりする。
それにしても、
(部活の特訓合宿とかいらねぇ!俺の夏休みがぁ!)
帰宅部のこいつらにはわからないが、そこまで好きではない陸上で、夏休みの一部を潰されるというのは中々に辛い。
(夏休みぃ!)
内心叫ばずにはいられない。
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