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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員

作者:木偶の坊
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 第9話 戻ってこない日常

 
前書き
“裏”レポート②

数日前に、公安0課が“裏”の排除を決定した。
“裏”とは1つの勢力のようなものであり、勢力が強い“裏”は武装検事や凄腕の武偵とも、協力する方針だ。
方法はシンプルだ。女、子供、問わずに虐殺だ。武装検事が動く程の凶悪犯罪者は、“裏”の出身であることが多い故、未然に凶悪犯罪を防ぐためにも不安定要素は潰しておかなければいけない。
既に勢力の小さい“裏”はほんの少し程度だが排除に成功している。

東京都の“裏”に関しては最後に排除すると決めており、まさに総力戦となり犠牲者も今までの比にならないと予想されている。 

 
アドシアードが終わり数日――


「屋上はいつ来ても気持ち良いね~」
「快晴の日なんて最高だよな~」



屋上で2人の武偵が話している。



「なあ、勇人、凍った手は大丈夫なのか?」
「うん、なんとかね。はあ……最近ついてないよね。カルテットとか、アドシアードとか、アドシアードとか」
「アドシアードが2つ入ってるぞ。そしてカルテットで何があった――ああ、察した。組む奴がいなくて参ってたんだな」


「何故分かったし……」
(雄一ってエスパーなの?)


「中学の頃からの縁だぜ? 流石に分かる」
「そういえば雄一、今度、武偵ランク定期外考査があるけど大丈夫なの?」



武偵ランク定期外考査とは、武偵校の生徒のランクを上げる事を目的とした考査。筆記・実戦試験の成績や解決した事件の多さなどのデータを見て、教務科が許可を出した生徒のみ受けられる。PCを使った記述式試験・CQCと射撃による技能試験・教務科が定めた相手と1対1の対戦を行う実戦試験が主な内容だ。



「ああ、心配するな。とっとと終わらせてCかBになりあがるさ。でも、お前はなんで受けられないんだ?」
「筆記・実技試験の成績が悪いからだろうね」
「それじゃあ、真面目にやればいいじゃないか……お前、他のクラスの連中から落ちこぼれ扱いされてるんだぞ。見返してやろうとか思わないのか?」
「そういうのって面倒くさいからな~。早い話、雄一たちが僕の活躍を広めてくれたらいいんだけど……まあ、武偵高出たら本気出すよ」
「絶対に誰も信じないぞ……つーか本気出すの遅すぎだろう……。武偵じゃなかったら積んでるぞ」
一々、ご尤もなことを言う。



「雄一は武偵高出たらどうするの?」
「俺は……普通に武偵だな。お前は?」
「僕も普通に武偵かな……行く所もないし」
(誰も“裏”を故郷なんて思う奴はいないだろう。もし、いたら……変わった趣味をお持ちなのだろう)

「じゃあ、俺と組まないか?」
「え?」
「俺は実家に戻る気なんてないし、お前も行く所がないなら丁度いいじゃないか」
「……そうだね。確かにそれも良いかもしれない」
「よし、男同士の約束だ!!」
雄一が拳を突きだしてくる。


「……ああ!」
勇人も拳を出して雄一の拳に軽くぶつけた。



「ところで勇人よ……」
「なんだい?」
「俺たちHRサボってるけど……大丈夫だろうか……」
そう、腕時計を見てみたらすでにHRが始まってる時間だった。しかし勇人は……。


「僕はあらかじめ、間宮たちに救護科に行ってるからHRにでれないって先生に伝えてもらえるように言っておいたから大丈夫だよ」
「…………。裏切ったな勇人!!! 許さんぞおおおお!!!!」
「なんでや!! 誘ってきたのは雄一だろう!?」
「ええい!! 最早、そんなことはどうでもいい!! 一発殺らせろ!!」
雄一がとんでもない事を言ってきた。



「ええ!? 初めてが男とかトラウマだよ!! 履歴書に「男性経験あり」とか書かないといけないじゃん!!」
「そっちの「犯らせろ」じゃねえよ!!! こっちの「殺らせろ」だよ!! それに履歴書にそんなもんかくんじゃねえよ!!」



日本語って難しいね。








学校からの帰り道――


「はあ……雄一には殺られかけるし、中間テストも近づいてきたし、嫌な事ばかり起こるな……」
勇人が俯きながら寮へ帰っていた。


「ちょっと―!! そこのキミー!」
誰かが誰かを呼びとめている。
(なんだ? 中年で無職のおっさんが小学生をいやらしい目つきでみてたのか?)


「りこりんだよぉー!」
変わった名前だな……。あだ名かな?


「ちょ、ちょっとー! 無言で歩いていかないでよぉー」
「え? 僕?」
振り返ると金髪で島麒麟のように制服を改造している女子生徒が立っていた。


「やっと気づいてくれた~」
「あの……髪を染めているような不良とは付き合わないようにしているんで……」
直感でわかる、この人は話してると疲れるタイプだ。


「染めてるってひどっ! これは地毛だよ!!」


「はあ……用件はなんですか、峰先輩……」
「あ、理子のこと知ってるんだぁー。キミ、理子のファンだなー?」
「……さようなら」
「ゴメンったらー! だから、行かないでぇー」
僕がこの人のことを知っているのは、単にこの人が有名だからだ。
探偵科Aランク、峰理子。
まあ、おバカキャラってやつだ。猫被ってるけどね。


「だったら、早く用件を言ってください。猫なんて被ってないで」




「くふふ、やっぱり面白いねぇー。天原勇人、おまえに話がある」
「話……ですか?」
「そうだ、おまえに話がある」
先ほどとは違って、男のような口調で話す峰先輩。


「あなたにはあるかもしれませんが僕には無いです。」
そう言って、帰ろうとした時だった。


バン!


「いてっ」
撃たれた。


「何をするんですか!? あなたは理不尽ですね!!」
「悪いが、聞いてもらう。おまえにも関係あることだ」
(何言ってるのこの人……さっきまで赤の他人だったじゃん)


「そう、『イ・ウー』のな」
また、イ・ウーか……面倒だな。って、ええ!?この人もまさか……


「勧誘にでも来たんですか? 一応言っておきますが絶対に入りませんからね。大体、あなたの様にいきなり撃ってくるような、理不尽が服着て歩いてる様な奴ばかりがいる所にどうしてこちらから行かないといけないんですか? 僕は変わった趣味は一切ありません!!」


「お前はイ・ウーをどういう風に捉えてるんだ!?」
「知ってますよ。国際規模の犯罪組織でしょう? 生憎、犯罪者はもう卒業しているんで」
「そういわれてもゆっくんはもう……」
ゆっくんて……

「もうターゲッティングされてるからね」




「……………………」





「ファッ!?  ぷじゃけるな!!! 峰先輩から誤解を解くように言ってやってくださいよ!!」

「それは無理かなー、理子も狙われている立場だから」



「はぁ!? 峰先輩もその組織の一員なんでしょ? なんで!?」
どういうことだ? 先輩も狙われてるって……


「イ・ウーは無法者の集団なの。メンバー同士の私闘を禁じてないんだよ。それに理子、この前退学になっちゃったし」
「…じゃあ、返り討ちにすればいいじゃないですか。峰先輩、強いでしょ?」
イ・ウーのメンバーならSランク並の実力だってあるはずだ。


「……無理。そいつはあたしなんかじゃ相手にもならない」
先輩は苦虫をつぶしたような顔でうつむいた。
「先輩が相手にならないって、どんな人なんですか?」
「人じゃないよ……」
「は?」
「ねえ、ゆっくんは吸血鬼って知ってる?」
 
 

 
後書き
皆様、お待たせしました!!  

やっとテストが終わり更新を再開できそうです。
しかし、まだ文化祭などの「ボッチ殺し」の行事が控えているため、また更新が遅れてしまう可能性がありますが今回のように全く更新できないというわけではないので気長に待ってくださるとありがたいです。

これからも「落ちこぼれの皮をかぶった諜報員」をよろしくお願いします。 
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