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万華鏡

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第七十三話 雪その十三

「それで電車も停まってて」
「バスもだよ」
 父がここでまた言ってきた。
「だからね」
「それじゃあ」
「そう、学校に行くことすら出来ないよ」
「じゃあ仕方ないわね」
「うん、今日はね」
「休校だね」
「それしかないよ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 琴乃はテーブルの自分の席に座ってだ、キッチンで料理を作っている母に顔を向けてこう言った。着ている服はパジャマのままだ。
「お母さん、今日はね」
「ええ、わかってるわ」
 料理を作りながらだ、母は娘に応えた。
「今日はどうしようもないわ」
「予想通りね」
「あまり予想通りになって欲しくなかったけれどね」
 それでもだというのだ。
「仕方ないわね」
「それじゃあ今日は」
「休むしかないでしょ」
「学校行けないからね」
 大雪のせいでだ、言うまでもなく。
「これだと」
「そう、じゃあいいわね」
「うん、朝御飯を食べたらね」
「皆で雪かきよ」
「えっ、雪かきなの」
「そう、お家の周りをね」
 そうするというのだ。
「いいわね、四人でね」
「そういえば雪かきね」
「そう、雪が降ったら仕方ないでしょ」
「そうね、じゃあ」
「運動にもなるし」
 実際に雪かきは相当な運動になる。これだけで相当なカロリーを消費する。雪国の重労働と言ってもいい。
「厚着で行きなさいよ」
「わかったわ」
「朝はしっかりと食べてね」
 そしてだと言う母だった。
「身体を温めてね」
「それから雪かきね」
「わかったわね」
「ええ、じゃあね」
 こう話してだ、琴乃は家族四人で昼食を食べた。その昼食を食べる中で父がトーストを食べながらこんなことを言った。
「それにしても」
「?どうしたの、お父さん」
「いや、平日で家族揃って朝ごはんはな」
「そういえばないわね」
 琴乃も言われてこのことに気付いた。
「うちの家でそれって」
「お父さんがいつも早いからな」
「私も部活の朝練があるし」
「俺が一番起きるのが遅くてね」
 弟も言ってきた。
「朝は家族ばらばらだよね」
「そうなのよね、まあうちのお家だけじゃないけれど」
 母も自分の席で座っている、そこでサラダを食べながら言ってきた。ドレッシングはオニオンをかけている。
「朝はばらばらよね」
「もっと言えば夜もだよな」
 父は夕食の話もした。
「お父さん帰るのが遅いから」
「俺も塾だし」
「私は部活の後は何もないけれど」
 父も子供達も言う。
「だからな」
「どうしてもだよな」
「平日で一家揃ってってないわよね」
「今日は貴重よ」
 母はこうも言った。
「大雪だけれどね」
「一家団欒になれたから」
「そう、だから皆で食べてね」
 そしてというのだ。
「皆でね」
「雪かきもして」
「そうしましょう、四人でね」
 家族でだとだ、嬉しそうに言う母だった。そうしてだった。
 一家は朝御飯の後で厚着になってそのうえで外に出て雪かきをした。大雪がもたらした思わぬ団欒であった。


第七十三話   完


                             2014・3・17 
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