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万華鏡

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第七十四話 冬化粧その一

             第七十四話  冬化粧
 琴乃は家族全員で雪かきをしたその後で。
 家に戻るとだ、母が家族に言ってきた。
「じゃあお風呂入れるから」
「そこで温まれっていうのね」
「そう、汗もかいたから」
 その汗を流す為にもというのだ。
「皆順番で入ってね」
「最初は誰なの?」
「まずはお父さんよ」
 家長でもある父だというのだ、やはりこうした場合は夫でもある相手を立てるのが妻というものであろうか。
「それであんたで」
「最後は俺だね」
「いや、お母さんが最後でしょ」
「あっ、そうか」
 弟は琴乃のその言葉に笑って頷いた。
「お母さんも入るから」
「そうよ、お母さんは最後でいいから」
「いつも思うけれどな」
 ここで父が母に言ってきた。
「何で母さんはお風呂いつも最後なんだ?」
「そのこと?」
「そう、何でなんだ?」
「だってゆっくり出来るから」
 それでだとだ、微笑んで答えた母だった。
「最後だとね」
「ああ、だからか」
「そう、もう後に入る人いないでしょ」
「そりゃ最後だとな」
「私お風呂はゆっくり入りたいから」
「そうか、だからなんだな」
「あのね、ちょっとね」
 ここでだ、母はというと。
 夫の耳元にそっと口を寄せてだ、こう囁いた。
「一緒に入る時は別よ」
「おいおい、子供達がいるから」
「だから小声で言ってるの」
 夫の顔を横目で見ながら告げた言葉である。
「いいわね」
「そうなんだな」
「とにかくね」
 顔を元の場所に戻してだった、母は夫にまた言った。
「最後が一番落ち着くから」
「それでか」
「今日もお母さん最後でいいから」
 こう言うのだった。
「皆先に入ってね」
「じゃあお父さんが最初でな」
「ううん、私飲んでるから」
 ここで琴乃がこう言った。
「暫くね」
「じゃあ姉ちゃんが飲んでる間俺が入るよ」
 弟は姉の言葉を聞いて母に言った。
「お父さんの次は」
「そうね、じゃああんた先に入りなさい」
「それじゃあね」
 こうして二番目に入る人間も決まった、母はその話をしてから琴乃に顔を向けて笑顔になりこんなことを言った。
「じゃあ暫くね」
「うん、二人でね」
「飲みましょう、お酒をね」
「そうね、暫くね」
「ただ。後でお風呂に入るから」
「深酒はよね」
「どうせならお風呂あがってからでもいいし」
 母のその言葉を聞いてだった、琴乃はすぐに母に返した。
「じゃあお風呂からあがってからにするわ」
「そうね、それがいいわね」
「じゃあ暫くゲームしてるから」
「それじゃあね」
 こう話してだった、まずは父と息子が入ってだった。
 次は琴乃だった、琴乃は風呂で身体を温めた後で飲みはじめた。テーブルの自分の席に座ってそうしてだった。
 日本酒を飲んでいた、そのうえでリビングのテレビを使ってゲームをしている弟を見ながらこんなことを言った。
「ねえ、最近のあんたってね」
「何だよ」
「野球ゲームよくしてるわね」
「新作入ったからな」
 だからだとだ、弟はその野球ゲームをしつつ姉に答えた。 
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