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万華鏡

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第七十三話 雪その十二

「その他は殆どよ」
「雪なのね」
「ええ、勿論大阪もね」
 神戸のすぐ傍のこの大都市もだというのだ。
「たこ焼き真っ白よ」
「あまり食べたくないたこ焼きね」
「東京もね」
「東京も大雪なのね」
「そう、あそこもね」
「東京で雪っていったら」
 どうかとだ、ここで琴乃はこう言った。
「あれよね、桜田門外の変とか」
「赤穂浪士の討ち入りも雪の時よ」
「それに二・二六事件の時も」
「あそこで冬に何か起こる時は大抵雪が降るのよ」
「じゃあ今度は」
「まあどうなるかわからないけれど」
 それでもだというのだ。
「東京は雪よ」
「実際になのね」
「あそこもね」
「ううん、何も起こらないといいわね」
「本当にね。物騒なことはね」
 二人でこのことを話す、何故か江戸の頃から東京では冬に何かが起こる。そしてそれは雪の時に多いというジンクスがあるのだ。
「火事とか地震もね」
「火事、ね」
「雪だから大丈夫だと思うけれど」
 それでもだというのだ、母は。
「東京って冬は特に空気が乾燥するから」
「ああ、からっ風よね」
「だから火事も多いのよ」
「火事と喧嘩は、よね」
「そう、東京は多かったのよ」 
 喧嘩hともかく火事が多いのは迷惑なことだ、親父はともかく地震と火事と雷それに台風は戦争より恐ろしい。
「とりわけね」
「だからなのね」
「そう、火事とかなかったらいいけれど」
「地震はもうね」
「言うまでもないでしょ」
「ええ、あれはね」
 琴乃は顔を顰めさせて答えた。やはりこれが一番怖いからだ。
「絶対にね」
「どうしても起こるものだけれど」
「それでもよね」
「起こって欲しくないからね」
 こればかりは、と言う母だった。
「もうあんな思いは沢山よ」
「阪神大震災大変だったのよね」
「ええ、あんなのはもう嫌だから」
 それでだというのだ。
「地震だけはね」
「正直起こって欲しくないわね」
「特に今は寒いからね」
「そうよね、雪の中の地震はね」
「絶対に勘弁して欲しいわ」
「全くよね」
 このことについて話された、そしてだった。
 琴乃はこの日はそのまま夕食を食べて風呂に入り後は勉強をしてから眠りに入った、そして朝目覚めると。
 窓を外を見ると予想通りだった、雪は昨日の三倍は高く積もっていて。
 どうにもならない感じだった、琴乃はこれもう、と思いながらリビングに向かった。するとだった。
 父がだ、スーツ姿でテーブルに座っていてこう言ってきた。
「おはよう、琴乃」
「おはよう、お父さん」
「今日はもうね」
 こう娘に言うのだった。
「電車が停まってるから」
「じゃあお父さんは」
「そう、さっき会社に連絡してね」
 そのうえでだというのだ。
「休むって言ったよ。有給取ってね」
「そうなのね」
「こっちもだよ」
 テーブルには弟もいた、彼も言うのだった。
「警報出てるからね」
「小学校は、よね」
「うん、だからね」
 こう姉に話すのだった。
「今日は休校だよ」
「そうなのね」
「それで姉ちゃんは?」
「警報出てるのよね」
 まずはこのことから言う琴乃だった。 
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