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万華鏡

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第七十三話 雪その十一

「もうお家の中でゲームをしてね」
「そうしてなのね」
「一日過ごそうかしら」
「そうするのね」
「うん、それかお風呂に入るか」
 そうしてだというのだ。
「そうしてね」
「お酒は控えなさいね」
 飲んでもだというのだ。
「そっちは」
「ううん、じゃあゲームして」
「一日ゆっくりしなさい」
 そうしろというのだ。
「出られないのなら仕方ないわ」
「明日の晩御飯は」
「こう買って来たわ、今日のうちにね」
 既に、というのだ。これは済ませたというのだ。
「大雪だっていうから明日出られないと思ってね」
「それでなの」
「そう、もう買って来たから」
「だからなの」
「明日出られなくても安心していいわよ、お米もあるし」
「ああ、お米があったらね」
 琴乃はそれもあると聞いて笑顔で述べた。
「それだけで大丈夫ね」
「そうよ、まずはお米があることよ」
「それが第一よね」
「日本人はお米よ」
 何といってもだというのだ、これがなくてはというのだ。
「あれさえあれば何とでもなるでしょ」
「インスタントカレーもあるしね」
「そう、それも買ってあるし」
「おかずもなのね」
「それも買っておいたから」
 母は娘ににこりとして話す。
「明日一日大丈夫よ」
「明日凌いだら」
「明後日は雪も止んで溶けるらしいからね」
「お外にも出られて」
「買いものも出来るから」
 だからだというのだ。
「安心してね」
「そうなのね、じゃあね」
「明日はお家でゆっくりするのよ」
 若し外に出られず学校が休校になった場合はというのだ。
「わかったわね」
「わかったわ、じゃあ明日はね」
「お風呂も入って」
 そしてというのだ。
「ゲームしてね」
「そうしてゆっくり過ごすわね」
「じゃあ今日はね」
「今日は?」
「グラタン作ったから」
 今夜の夕食はこれだというのだ。
「それ食べてね」
「温まるのね」
「グラタンも温かいからね」
「というか熱いわよね、グラタン」
「後はオープンで焼くだけだから」
 そのグラタンを、というのだ。
「それでもぬくもってね」
「それじゃあね」
「さて、それにしても」
 ここまで話してだ、母は腕を組んで窓の方に顔を向けた。そうして今も降り続いている牡丹雪を見てこう言うのだった。
「本当によく降るわね」
「日本中がよね」
「そうよ、北海道から九州までね」
「降ってないのは沖縄とか位よね」
「流石に沖縄では降ってないけれどね」
 常夏と言っていいこの県では流石に降らない、しかしだというのだ。 
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