魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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感謝の気持ちはいつまでも
†††SideリインフォースⅡ†††
みなさん、おはようございます、リインフォースⅡです。今日は、わたしのオリジナルでもある初代祝福の風・リエイスの事を紹介します。
クレーム対策やらで遅れに遅れた裁判も終わって、はやてちゃんとわたしの居る海上警備部に配属されることになったリエイス。融合騎としての能力も健在な上、単独戦力としても管理局トップクラスなのです。
管理局従事となってからまだ日は経ってないですけど、“ヴォルフラム”スタッフとも打ち解けてます。
(今日も朝早いですね~)
現時刻は朝の6時半。今日は八神家全員が揃う滅多にない休日です。わたしも普段ならこの時間は寝てるんですけど、リエイスの事を紹介するために頑張って起きました♪ ですからちょっぴり眠かったりしますけど・・・ふわぁ。そんなわたしはこの時間に起きるリエイスをこっそり観察中なのです。
「今日もいい陽気だな」
リエイスは黒のトレーニングウェアを着て、靴ひもを結んでいます。毎日の習慣、早朝トレーニングに出かけるようです。最後に銀色の長い髪をシグナムのようなポニーテールにして、「よし」と気合を入れました。そんなリエイスはわたしを大人にしたような姿(正確にはわたしの姿がリエイスを子供にしたような、ですけど)で、すっごく美人さんなのです。
「それって遠回しに自分も美人って言ってないか?」
「うるさいですよアギト。地の文にツッコミを入れないでください」
いつの間にか背後に佇んでいたアギトの事は放っておいて、リエイスが帰ってくるのを待ちます。
「それにしても何やってんだ?」
「リエイスを観察してるんですよ」
「何でまたそんな突拍子もないことを・・・?」
アギトが心底理解できないって顔で訊いてきた。
「まぁ何となくと言いますか義務感と言いますか」
「なんだそれ。まぁいいや。観察すんなら追いかけねぇとダメなんじゃねぇの?」
アギトが指を差すのは玄関のずっと先、リエイスの後ろ姿です。
「いや~、無理ですよ。アレについて行くなんて」
わたしはどちらかと言えば体育系じゃなく文化系です。そんなわたしが、軽く流してるとは言ってもそれなりの速さで走るリエイスについて行けるはずがないです。ついて行ける云々以前の問題、疲労で逝ってしまうこと請け合いです。それが解っているからこそアギトも、
「だ~か~ら~、あたしらにはあたしらなりのやり方ってのがあるだろ」
そう言って笑う。少し考えて、「あっ」とそのやり方に行きついた。今のわたしとアギトは十歳くらいの姿を取ってますが、わたし達にはもう一つの形態があります。
「「モードチェ~ンジ♪」」
30cmくらいの妖精形態(命名ははやてちゃんとルシルさん)に形態変化。しゃらん☆と華麗にへんし~んです♪
「というか、アギトまでどうして?」
わたしの隣で浮遊しているアギト。アギトは「面白そうだからついてくよ」と、わたしを置いてリエイスを追って行きました。わたしもすぐにアギトと追う。追いつくと、アギトが「おっそいぞ、リイン」って不満そうに言ってきた。
「わたしを置いて急に飛び出したアギトの言うことじゃないですよねっ!」
「わっ、バカ! リエ姉に気付かれるだろっ」
わたしの口を覆い隠してきたアギト。視線の先、ポニーテールを揺らしたリエイスが走ってるです。犬の散歩をしてるお爺さんとお婆さんと挨拶を交わしたりするリエイスを観ていると、本当に良かったと思えます。
リエイス――リインフォースの後継として生まれたわたし、リインフォースⅡ。ずっと逢いたかった、ずっとお話ししたかったです。でも叶わない事だと諦めてもいました。
そんなリエイスとこうして一緒に過ごせる事がとても不思議で、それ以上に嬉しくて・・・。リエイスを蘇らせてくれた今は亡きセレスさん、そしてリエイスを世界に留まらせてくれたシャルさんにありがとうと言いたいです。
「あ、リエ姉が止まった・・・?」
リエイスは防波堤を越えて、砂浜に降り立ったです。そのまま軽くストレッチに入って、シャドー?とかいう仮想敵を相手に体を動かし始めました。リエイスの戦い方を眺めていると、
「リイン、お前ってさ」
「なんですか? アギト」
「リエ姉を元にして生み出されたんだよな・・・」
アギトがわたしとリエイスを見比べながら呟いた。
「急に何を言い出すかと思えば・・・。まぁそうですよ。外見を見ていれば判ると思うですが・・・?」
「リエ姉ってシグナムみたいな気高さがあるよな。スゲェ美人だし」
「な、な、何が言いたいですかね~?」
「見た目だけそっくりで、おまえはチンチクリンだよな」
「んなっ・・・!」
カチンと来ましたよ。わたしは怒りを抑えて「そういうアギトだって出逢った時からチンチクリンな派手な恰好してましたよね。見てて恥ずかしかったです」と言い返す。すると今度はアギトの動きが止まった。
「リインが幻術で大人の姿になっても、リエ姉とはきっと雲泥の差だよな」
「な、ななな・・・っ! そんなことないですよっ! わたしだって大人の姿になれば、たぶんリエイスやシャルさんのような綺麗で面白い人になれますっ!」
「確かにシャルさんは綺麗で面白くて良い人だったけど、シャルさんのようになりたいとは思わねぇな・・・」
「・・・・言わないでください。よく考えればわたしもそうです」
わたしの知るシャルさんの巻き起こしたトラブルの数々を思い出します。シャルさんのように明るくて誰とでも仲良くなれるところは尊敬できますが、あのイタズラ好きなところだけは正直願い下げです。よく犠牲になっていたルシルさんを思い出すと、泣けてきますし。
「そこで何をしている? リイン、アギト」
「「あ」」
防波堤の上に立って、わたしとアギトを見上げているリエイスと目が合ってしまいました。手招きをするリエイスの元まで降りて、どうして尾行していたのか訊ねられる。腕を組んで仁王立ちなリエイスの視線を受けたわたしとアギトは、ちょっぴり泣きそうです。
「えっと、リインの奴が・・・」
「あ! 何言ってるですかアギト! リエイスを追おうと言ったのはアギトですよっ!」
アギトの裏切り発言に反論します。確かにリエイスを観察していたのはわたしですけど、リエイスを尾行し始めたのはアギトの方。まぁついてきた事に関してはわたしの自己責任ですけど・・・。
「別に怒っているわけではない。しかし、そうだな。いい機会だ。リイン、アギト。二人とも子供の形態に戻れ」
アギトと顔を見合わせて、リエイスの言う通りにフェアリー・モードから通常形態へと戻る。リエイスは続いて「騎士甲冑装着」と言ってきました。さすがにそれは、と思って戸惑っていたのですけど、アギトがそれはもう有能な犬のように言われた通り騎士服に早変わり。
『リインも、ほら。もしかしたらなんかの特訓させられるかもしんねぇ。ここは大人しくリエ姉の言うことを聞いた方がいいぜ、きっと』
アギトの焦りの含んだ思念通話。リエイスもわたしが騎士服になるのを待っていますし、仕方なく騎士服へ。
「よし。それではここから家まで走るぞ」
「「え゛?」」
リエイスに背中を叩かれて、わたし達はたたらを踏む。ここからお家まで3kmもありませんけど、でもわたしにとってはそれは遥か遠く。
「さ、行くぞ♪ 飛行魔法なんてズルはもちろん許さないからな」
「「ひぃぃ~~~~~~~~!!!」」
あぁ、どうやらわたしはここまでのようですぅ・・・。
†††SideリインフォースⅡ⇒ヴィータ†††
朝起きてみたら、玄関で仰向けでぶっ倒れてるリインと、うつ伏せで倒れてるアギトに気付いた。しかもスゲェ汗。そんでぜぇはぁぜぇはぁ、って見るからに疲労MAX。特にリインの顔色がマジでシャレになんねぇ・・・。つうか何で騎士服なんか着てんだ?
「な、なぁおい、リエイス。リインとアギトに何させたんだよ」
玄関の先、庭でストレッチしてるリエイスに声をかける。リエイスがストレッチを中断して、あたしへと視線を向けてきた。
「ん? ヴィータか。二人には私のトレーニングに付き合ってもらったのだ。とは言っても、帰りのランニングだけだが」
そりゃ御苦労さんだ、リイン、アギト。よく頑張ったな。あたしは八割方死体になってるリインとアギトに、「水、要るか?」と訊いてみる。
「ぜぇはぁぜぁはぁ、み、み、みす・・・くらさい・・・」
「はぁはぁはぁ、あね・・・ご・・・あたしにも・・・」
哀れだ、リイン。呂律が回ってねぇ・・・。アギトは、地球暮らしん時にアリサさんに借りたDVDに出てきた貞○みてぇに這ってきた。あたしは「待ってろ」と告げて、二人分の水を取りに行く。
「どうかしたのか? ヴィータ」
そこに、あたしら守護騎士ヴォルケンリッターのリーダー、シグナムが起きてきた。ちょうどいいタイミングと思ったあたしは、シグナムに事情を話してリインとアギトの汗を拭く為のタオルを用意するように言っとく。
シグナムは「解った」とだけ言って、タオルを取りに行った。あたしもコップ二つに水を注いで、玄関に戻る。リインとアギトは騎士服から私服に戻って、シグナムに抱きかかえられて汗を拭いてもらっていた。
「ほら、水だ」
「はぁふぅふぅ、あ、ありがとうです、ヴィータちゃん」
「ありがとう姉御~~」
あたしからコップを受けとった二人は水を一気飲み。それから少しして、ようやく落ち着いてきたリインとアギトは風呂に向かった。二人を見送ったあたしとシグナムは、自前のタオルで顔を拭きながら戻ってきたリエイスへと声をかける。
「しかし何でまたリインとアギトがリエイスのトレーニングに付き合ってんだ?」
「あの二人自ら参加したとは思えん。何があったんだ? リエイス」
「リインとアギトはどういうわけか私を尾行していてな。ちょっとからかい半分で走らせてみたんだが・・・まさかあそこまで体力が無いとは・・・」
アイツら何やってんだよ。つうかお前も何やらせてんだよ。リインとアギトとリエイスに呆れていると、「さて。では私もシャワーを浴びようか」リエイスもリイン達が先に向かったバスルームに向かう。あたしはシグナムと顔を見合わせてリビングに戻ろうとしたとき、バスルームからリインとアギトの悲鳴が聞こえた。
「「どうした!?」」
バスルームに突入して、あたしは・・・きっとシグナムも目を点にしてんだろうな。
「ひゃぅぅ~~!」
「リ、リエ姉~~~~、もう勘弁してぇ~~~っ!」
信じたくねぇが、リエイスがリインとアギトの胸を神妙な面持ちで弄ってた。今はもうやってないけど、リエイスがやってることは昔のはやてそのままだ。あたしももちろんやられたし、つうかはやてと仲が良い奴は全員やられてる。
「・・・・・・ヴィータ」
「・・・ああ。アイゼン」
シグナムがこめかみを押さえて、呻くようにあたしを呼んだ。あたしはシグナムの意思を察して、“アイゼン”を静かに起動。助走のために数歩下がって、ダッシュ、そしてジャンプ。ちょーバカな事をしているリエイスの頭目掛けて“アイゼン”を振り下ろす。
あーくそ。あたしの“アイゼン”がいつかツッコミ用ハンマーになってそうで恐ぇ。とにかく、リエイスの頭を粉砕しないように力を押さえてブッ叩く。“アイゼン”の一撃を受けたリエイスが「うぐっ」リインとアギトを解放した。
「痛いじゃないか。ツッコミにグラーフアイゼンはやり過ぎだと思うぞ?」
「アホか。なに朝っぱらからセクハラしてんだ。つかホントに変わったよな、お前」
リインとアギトにタオルを巻いているシグナムを横目に、涙目でそう訴えてくるリエイスに“アイゼン”を突き付ける。あーもうその前にタオルかなんかで、そのデケェものを隠せよな、こんちくしょー。あたしの意思が伝わったのか、バスタオルを体に巻くリエイス。
「これが八神家のスキンシップではなかったのか?」
「は? ってあれ?・・・わっ!? ちょっ、やめろ・・・!」
リエイスを一瞬見失ったと思ったら、背後に回り込まれてスキンシップって言う名のセクハラを受けた。ギガントフォルムで吹っ飛ばそうかとするのを理性でギリギリ抑え込んで、ジャンピング頭突き。手応え、じゃねぇな。頭応えがあった。リエイスの顎を確実に捉えた。背後からドサリってリエイスが倒れた音がした。
「ったく、一体何の影響でここまでバカになったんだよ・・・?」
あたしら全員に見下ろされた仰向けに倒れてるリエイスはわきわきと両手を動かして、何度も頷いてやがる。そしてあたしとリインを何度も見比べる。なんだよ、何が言いたいんだよ。
「ふむ。ヴィータはリインより小さいんだな。フッ」
あはは、こっからあたしの記憶が無ぇんだけど、まぁいいよな。
†††Sideヴィータ⇒はやて†††
「う・・ん・・・なんや・・・いまの・・・?」
ドォーン!と大きな音で目を覚ます。家が少し揺れたようやし、一階でなんかやっとるんやろか?
ベッド脇のモニターに表示されとる時刻は、朝の8時半ちょっと前。久々の休暇ゆうことでちょお寝過ぎたな。パジャマから私服に着替えて、階段を下りる。と一階に下りてすぐ、フローリングの床に波打っとる銀髪を見つけた。
「リイン? リエイス?・・・・」
この八神家で銀髪なんはリインとリエイスだけや。つまりはそのどっちか。窺うようにそろ~りそろ~りと近づいて、私は見た。
「え?・・・・リエイスぅぅ~~~~~~~~~っ!?」
バスタオル一枚でぶっ倒れとるリエイスを見て、私は寝起きすぐやって言うのに思いっきり叫んだ。
「つまり、リエイスの失礼な発言で怒ったヴィータが、アイゼンでリエイスを沈めた、ゆうことやな」
リビングのL字型ソファの縦棒部分に座るシグナムとヴィータ、それにリインとアギトとリエイスに訊ねる。ソファに座る(横棒部分)私とシャマル、ソファの側に座るザフィーラ(狼形態のな)の視線を受けたみんながそれぞれ頷く。
(あれ? でもこれって私にも非があるんやろか? あのスキンシップは元々私がやっとったことやし・・・)
「ねぇ? リエイス。どうしてあなたは知っているの? はやてちゃんがそういうスキンシップをしていた事に・・・」
シャマルがリエイスに少し遠慮しとる感じで訊ねる。言われてみればそうや。リエイスは私が9歳の頃に居なくなって、25歳んときに“テスタメント”の一人として蘇った。その間の事なんてリエイスが知るわけないし・・・。
「そのことか。私はルシリオンとそれなりに深いところまで一緒になっていた」
ヴィータとシャマルとリインとアギトの頬が赤く染まる。ちゃうよ、四人とも。きっとリエイスはユニゾンのこと言うとるんや。とゆうかそう思わなルシル君を・・・ふふふ。アカンよぉルシル君。フェイトちゃんがおるのに、二股なんて・・・。
「ふふ、ふふふ・・・」
「ど、どうしたですか、はやてちゃん・・・?」
「主はやて? 少し怖いですよ・・・?」
「あ、コホン。まぁなんや。で?」
なんでか引いとるリインとシグナム。とりあえずリエイスの話の続きや。
「ルシリオンとのユニゾン。私はそこでルシリオンの今までを知りました。彼が界律の守護神となる前、大戦と呼ばれていた時代でどう過ごしていたか。守護神となってから、主はやて達と出逢うまでどういった事をしてきたのか。私が居なくなってから、みんながどう過ごしてきたか。全て知りました」
リエイスはすごく悲しそうな顔をして淡々と語る。ルシル君の過去がどうやったかは大体知っとる。悲しい顔になんのも無理ない。それだけ辛い人生やった、って言うたらルシル君がまるで・・・。
(死んどる様な言い方やな・・・)
アカン。バカなこと考えてしまっとる。
「というわけで、主はやての好むスキンシップが騎士たちや御友人の方々を胸を揉む、という事をルシリオンの記憶の中で知ったのです」
「なるほどなぁ。てかさ、はやてがああいうスキンシップする時ってさ、周りに男が居ない時に限ってだったよな?」
ヴィータに「もちろんや」と答える。周囲に男性がおったらやるわけはない。見せもんちゃうし。もし見られたら絶対に口封じのために、まぁ色々と、な。
「じゃあなんでセインテストは知ってんだ?」
リビングがシ~ンとなる。そう言えばどうやったやろ。ルシル君の前でもそんなことしとったかなぁ? う~ん、思い出せんなぁ・・・。でもリエイスが知っとるんやったら、ルシル君も見たことあるってことやし。
「あ、セインテスト君? おはよう♪ 今いいかしら?」
『シャマル? おはよう。ってなんだ、八神家が勢ぞろいじゃないか。おはよう。はやて。リエイス。ヴィータ。シグナム。ザフィーラ。リイン。アギト』
いつの間にかシャマルがルシル君に通信繋げとるし。律義にみんなの名前を呼ぶルシル君に、私らはそれぞれ挨拶を返す。そこにヴィータが『一個お前に訊きたい事があるんだけどさ、今時間いいか?』と訊いて、ルシル君は『少しだけなら構わないが』と答えた。
『あっと、少し待ってくれ。フェイト、先に行っていてくれ』
モニター越し、映っとらへんけどフェイトちゃんの『ん? 通信? 誰から』ってゆうんが聞こえた。そしてモニターの端からフェイトちゃんがひょっこり顔を出して、映りこむ。
『あれ? はやてにシグナム達も。おはよう。どうしたの?』
そんなフェイトちゃんとルシル君に事情を話す。と、フェイトちゃんの顔がみるみる赤くなっていく。そんでルシル君は『プライバシーの侵害なんてレベルじゃないな』ってヘコんだ。
『何でそう言うことを訊くかなぁ君たちは。男の私にとって答え辛いにもほどがあるって判るだろ?』
まぁそうやろな、と思う。こんな話、女同士でも恥ずかしいしな。そやけどお構いなしに話を進めようとするヴィータ達。
「で? どっちなんだよセインテスト。見せられてた? それとも見てた?」
『はぁ・・・。前者だな。君たちは知らなかっただろうが、はやてがそのスキンシップをしている時の映像がシャルから送られてくるんだよ。どうしろっていうんだ。そんなモノを送られて、知らずに再生して、そのあとで顔を合わせた時の妙なく・う・き!』
私まで頬が熱くなんのが判る。なんや、ごめんとしか。とゆうかシャルちゃんの隠し撮りはホンマ判らへんな。モニターに映るフェイトちゃんが徐々に外へ外へ映らんように移動していっとる。ルシル君もそんときの事を思い出したんか若干頬を染めて、デスクをバシバシ叩く。
“テスタメント事件”後のルシル君は表情がハッキリするようになった。“終極テルミナス”戦前まではどこか一線引いとった感じやったけど、今はありのままを見せてもらえとるって思う。やっと本当の親友になれることが出来た感じやな。
『っと、これからフェイトと仕事だからもう切るけど』
「あ、あーごめんな朝からこんな話で」
『はは、まったくだ。まぁ普通の話ならいつでも歓迎だよ、はやて』
ルシル君が私らを見渡して笑顔で小さく手を振る。それに私らも手を振り返して通信を切る。
「セインテスト君、幸せそうですね」
「ああ。よく笑うようになった」
シャマルとシグナムも良い方向に変わったルシル君を見て嬉しそうに微笑む。まぁそんなこんなで八神家の朝は過ぎていったのでした。
†††Sideはやて⇒リエイス†††
「そうそう。リエイスは包丁さばきが上手やな」
「そうですか? ありがとうございます、主はやて」
朝食を終えた私は今、主はやてに料理を習っている。私が料理を習う理由は色々とある。主はやてが仕事で疲れている時に、代わりに料理が出来れば主はやての負担が少なくなる。八神家の末娘であるリインとアギトは料理が出来る。腕もなかなか。負けてはいられない。
だというのに、本来料理が出来ればいいはずである上の娘シグナムとヴィータとシャマルは出来ない。今まで何をやっていたのだろうか。つい先日シャマルの料理を食べてみたが、微妙過ぎて感想に窮したものだ。シグナムとヴィータは論外問題外。あの二人はしない方がいい。それだけしか言えん。
(私の料理はルシリオンに喜んでもらえるだろうか・・・?)
私はルシリオンの全てを知り、数年と共に居た事で彼を慕うようになった。恋、だというモノなのかは判らない。ただ彼には幸せになってもらいたいのだ。私が見たルシリオンの数千年という長い時間の記憶。悲しいものばかりだった。中には、友を作り、学校に通い、人並みの生活をして楽しそうなものもあった。
しかし最後はどのような世界であっても、たくさんの色々な種類の別れだけだった。戦い傷つき、そして死ぬ。想いを寄せられても切り捨て、諦めて、身を引いて消える。この感情はもしかすれば同情かもしれない。しかし、それでも・・・・。
「よしっ。切った野菜を添えれば完成や♪ なんやリエイス。初めてやのにすごく上手やけど、なんでなん?」
皿を取りだす主はやての背を見詰めながら、私はその疑問の答える。
「それは・・・これもルシリオンの記憶から受け継いだものです。ルシリオンはもちろん主はやての調理も見ました。見よう見まねです」
私リエイスとしての腕ではなく、主はやてとルシリオンのコピーだ。どうしても二人の動きを真似てしまう。私は私の動きで料理をしてみたかったが、いつの間にかコピーしてしまっている。
「そうか。私も役に立っとるんやったら嬉しいな。あ、記憶ってことはもしかしてルシル君のレシピとかある?」
「え? あ、はい。あります。幾つか憶えていますので、試しに作ってみますか?」
ルシリオンとのユニゾンで得た知識や魔法にはメリット・デメリットがあると改めて思う。魔法に関してはメリットだろうが、知識に関してはデメリットだ。まぁいい。これから少しずつ自分のやり方というのを確立させていけばいいのだから。
「そうやなぁ、うん、やってみよか。ルシル君のことやですごいレシピあるんやろ? 次元世界に無いようなやつとか。結構気になってたんや~。材料教えてもらえるか? シグナム達にお使い頼むで。あ、でも次元世界に無い食材を使うやつはアカンなぁ・・・」
「その辺りは代替でもいいかと。どの世界でも食材は似通っていたようですので」
私は憶えている限りのレシピを主はやてに教える。ルシリオンには後で私から謝っておこう。主はやての興味深々と言った風にメモを取る姿を見ていると今さら、無しです、などとは言えない。シグナム達を買い物に行かせ、私と主はやては私の作った料理を試食。
「うん。なかなかやな。これやったらすぐに上手くなるやろね」
う~ん、主はやてがそう言ってくれるが、何とも不味くもないし美味くもない。まずい、これではシャマルの料理にケチをつける資格がない。料理の腕を真似たとはいえ、味付けまでは真似できなようだ。なんなんだ、この中途半端さは。いや、それでいいのか。味付けくらいは私だけのモノでありたいのだから。
「主はやて。これからも時間があれば、その・・・」
「もちろんええよ♪ 私からお願いしたいくらいや。すごく嬉しいよリエイス。こうして一緒に料理出来るんが」
主はやてはそう笑って、私の作った料理を食べてくれる。私も微妙な自作料理を食べながら、主に微笑み返す。
「私もですよ、主はやて。私が夜天の書の頃より願ったこの日常。愛おしい家族と過ごす、何でもないですがそれでも幸せな時間・・・」
今こうして私が主はやてや騎士たちと共に過ごすのは奇跡だと言っても過言ではない。多くの助けがあって、私はここに居る。感謝してもしきれない恩だ。
「ホンマに感謝しやなアカンな。セレスにも、シャルちゃんにも、ルシル君にも」
「ですが礼を出来るのは今となってはルシリオンのみ・・・」
主はやて達がルシリオン達と出逢ったこともまた奇跡だ。私たちはどうやら奇跡の叩き売り市場に迷い込んでしまっているらしい。だが、だからこその今なんだ。
「そうやなぁ。近い内にルシル君にはきちんとお礼せなアカンな。いつも言葉だけやし。ちゃんとした形ででも」
「そうですね・・・。ルシリオンに喜んでもらえたらいいな」
さすがにまだ出せないモノだが。しかしルシリオンの記憶の中にあった、“ヴァルキリー”の開いたバースデーパーティ。その中でも不格好な料理もあったようだったが、ルシリオンは気にせずに食べていた。彼は心がこもっていればいい派だ。だから今の私の料理でも喜んで・・・くれるだろうか。
「へ、へぇ。リエイスが料理習いたい理由って、ルシル君やったんやなぁ」
「あ、主はやて・・・?」
そこには妙に迫力のある主はやてが居た。
†††Sideリエイス⇒ルシル†††
「うぉっ!? なんだ!?」
空を翔けていると、全身を駆け抜ける悪寒に襲われた。なんだ、いつだったか同じ種類の悪寒を感じた事があるようなないような。
「ルシル! ボサッとしてる場合じゃないよ!」
――プラズマバレット――
質量兵器の闇ブローカー集団を潰す為に駆り出された私とフェイト。そして今は戦闘中。前衛のフェイトに「すまない!」と謝り、戦闘に意識を集中させる。先日完成させた“ラインゴルト”。その存在意義である三機同時魔導術式並列処理をフル稼働させる。
――クロォストゥア・ミーネ・マディラ・ハティア・マルキダエラ
火統べりし猛烈なる赤天、其は天使マルキダエル
リーエ・ティートリア・ハティア・アースモデラ
土統べりし不動なる緑天、其は天使アスモデル
アゥダー・メイラ・ティムリア・ハティア・アンブリエラ
風統べりし流動なる黄天、其は天使アムブリエル
ロット・ストリエラ・マデェイエ・ハティア・ムリエーラ
水統べりし創造せし白天、其は天使ムリエル
クロォストゥア・ミーネ・アストル・ハティア・ウェルキエラ
光統べりし守護せし金天、其は天使ウェルキエル
リーエ・ティートリア・ウートリス・ハティア・ハマリエラ
闇統べりし破壊せし黒天、其は天使ハマリエル
アゥダー・メイラ・ソルバディータ・ハティア・ズリエーラ
雷統べりし洗練なる青天、其は天使ズリエル――
『フェイト、カマエル行くぞっ!』
『了解! 一気に決めちゃって!』
フェイトが射程範囲外へ離脱するのを確認。敵の妙な機械兵器がフェイトを追撃しようとする前に、
「コード・カマエル・・・ジャッジメント!」
コード・カマエルの詠唱、そして発動。2ケタ台の本数の場合は詠唱など要らないが、
「千槍の嵐、その身に刻め」
詠唱を用いると4ケタ(最大で1050)の数を展開する事が出来るようになる。槍一本につきAAAランクの魔力を込めている。早々防がれない。魔導師となってまだ日も浅いが、それなりに頑張れていると思う。
(シャル。君は今どこで生きているのだろうな・・・)
長年の相棒であり、ときには敵同士でもあった彼女を想う。シャル。私は今フェイトと共に生きている。君のおかげだ、ありがとう。
†††Sideルシル⇒はやて†††
リエイスから教えてもらったレシピどおりに料理を作る私とリエイス、そしてリインとアギト。盛り付けとかはシャマルが手伝ってくれとる。この日常は親友からの贈り物。楽しそうに笑うみんなを見とると、嬉しさのあまりに泣いてしまいそうになる。そやから私は毎日欠かさず感謝をする。
「シャルちゃん。ホンマにありがとな」
今もどこかで、契約の中で人として過ごしとるはずのシャルちゃんにお礼を言う。
「主はやて、そちらのスープの味見をお願いします」
「あーーー! 何やってるですかアギト! つまみ食いはダメですよっ!」
「いいじゃん少しくらい。料理をする奴の特権だよ、つまみ食いは」
「ほらほら、ケンカしないの」
「あはは、しゃあないなぁアギトは」
この賑やかな日々が、いつまでも続きますように。
†◦―◦―◦↓????↓◦―◦―◦†
レヴィ
「ねぇ、ちょっと待って。砂粒程度とはいえ、もしかしたら、と期待してたのにどうして出番が無いの?」
ルーテシア
「新章の第二話は八神家の話だったね。当然私たちが出るような回じゃないと思うけど・・・」
レヴィ
「つまらないぃぃ~~~~っ! 誰も望んでないよ、こんな真面目な話なんて!」
ルーテシア
「こらこら。そんなこと言っちゃダメ」
レヴィ
「わたし達にはアギトって言うパイプ役が居るのに、どうしてどうしてどうしてぇぇぇ~~~~!」
――紫光掃破――
ルーテシア
「お、落ち着いてレヴィ。とりあえず、ところ構わず砲撃を撃つのはやめよ?」
ルシル
「騒がしいと思って来てみれば、何をやっているんだ?」
ルーテシア
「あ、ルシルさんが私たち唯一の出番のミニコーナーに不法侵入してきた」
レヴィ
「なにをぉぉぉう!? 本編で出番がある奴は、わたし達の許可なくして出てくるなっ!」
ルシル
「素で怖いな、今のレヴィは」
レヴィ
「フンだ。・・・テスタメント事件のような活躍したいもん」
ルシル
「要するに暴れたいだけか。シャルの自称後継者はどうやら別の意味で猪娘のようだな。そもそも接点が少なすぎる。ミッドに移住するか管理局にでも入れ。それなら出番が増えるかもしれない。それが嫌なら通信で声オンリーででもいいが」
レヴィルー
「え~~~~~~~」
ルシル
「どうしろというんだ。まぁいい。もう少し待ってやってくれ。全力で本エピソード全体の流れを練っているのだから」
レヴィ
「もし出番が無かったら・・・・殺」
ルーテシア
「レヴィがどんどん黒くなってく・・・」
ルシル
(退散退散)
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