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万華鏡

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第六十九話 十二月になってその四

「正直ね」
「里香ちゃんまた一番でしょ」
「いえ、それがね」
「それが?」
「私より凄い子がいるから」
「ああ、A組の」
「そう、男の子いるわよね」
 こう景子に話すのだった。
「あの子が最近凄いから」
「だから里香ちゃん学年で一番じゃないのね」
「そうだと思うわ」
 自分でこう言う里香だった。
「どうやらね」
「里香ちゃん医学部志望よね」
「お父さんもお母さんもお医者さんだからね」 
 だからだというのだ。
「兄さんも姉さんも医学部だから」
「八条大学のよね」
「そう、だから私もね」
 自分もだと言う里香だった。
「医学部目指してるわ」
「じゃあお医者さんね、将来は」
「試験に合格したらね」
 その時はというのだ。
「そうなるわ」
「医学部ね」
「そう、目指すから」
「頑張ってね、お医者さんになる為に」
「有り難う、景子ちゃん」
「ただ。里香ちゃんって特に成績の順番にこだわってないわよね」
 琴乃が里香にこう尋ねてきた。
「そうよね」
「うん、私はお医者さんになりたいから」
「順番はなの」
「特に見ていないの」
「お医者さんになることに順番は関係ないのね」
「だって。学年で一番でも医師試験に落ちたらお医者さんになれないのよ」
 里香は静かな顔でこの現実を指摘した。
「そうでしょ」
「それもそうね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「私は順位は気にしていないの」
「そういうことなのね」
「そうなの。あとお医者さんになってもね」
「ああ、それからもよね」
「大変だから」
 医師になるまでも大変だがそれからもだというのだ。
「研修医は不眠不休で。その後もね」
「夜勤とかもあってね」
「物凄い勤務時間で失敗が許されないから」
「そう思うと過酷よね、お医者さんって」
「そうよ」
 その通りだとだ、里香は琴乃に答えた。
「物凄く大変な世界よ」
「そうよね」
「そう、けれどね」
「けれどよね」
「そうしたことがわかってね」
 そのうえでだというのだ。
「私はお医者さんになりたいの」
「それはどうしてなの?」
「誰かを助けられるから」
 里香は琴乃に真面目な顔で答えた。
「そうしたお仕事だから」
「それでなのね」
「そう、なりたいの」
 医者、それにだrというのだ。
「そう思うから」
「そういうことなのね」
「そう、だからなのよ」
 この決意を里香は話した、琴乃だけでなく他のメンバーにも。 
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