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万華鏡

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第六十九話 十二月になってその五

 その話を聞いてだ、美優が唸って言った。丁度彼女の歌が終わったところだ。
「凄いな、里香ちゃんは」
「凄いかしら」
「ああ、凄いよ」
 実際にだというのだ。
「そんなさ、はっきりと目的を持ってお医者さんになりたいとかな」
「ううん、そうなのね」
「そうだよ、あたしなんかそこまで考えてないからな」「
「美優ちゃんも大学進むつもりよね」
「一応な」
 美優はこう里香に答えた。
「そのつもりだよ」
「そうよね」
「ああ、それでもな」
 どうかとだ、美優は自分のことを話した。
「特に深く考えてないんだよ」
「そうなのね」
「まあ料理好きだからな」
 それでだというのだ。
「調理師の免許手に入れて。そっちの世界で生きようかなってな」
「シェフとか?」
「ううん、シェフかっていうとな」
 それはというのだ。
「違うよな」
「じゃあ給食の調理員さんとか」
「ああ、それいいな」
 里香の今の言葉にだ、美優は両手をぽんと叩いてそのうえで言った。
「給食とかのな」
「美優ちゃんに向いてると思うし」
「だよな、いい仕事だよな」
「それじゃあね」
「ああ、ちょっと考えておくな」
「そうしてみてね」
「いいよな」
 また言った美優だった。
「それじゃあな」
「そういうことでね」
「私は正直一つしかないのよね」
 景子はここでこうしたことを普通の顔で言った。
「神社の娘だから」
「他の神社の奥さん?」
「そうなるの?」
「多分ね。お家は兄さんが継ぐし」
 このことも決まっているというのだ。
「私はそうなるわ」
「じゃあ景子ちゃんは宗教学部ね」
「そこに入るつもりなの」
 試験を受けてだとだ、琴乃に話す。
「そこを目指して勉強中よ」
「ううん、巫女さんになるのね」
「結婚したら神社の奥さんよ」
「どちらにしても神社なのね」
「ひょっとしたらお寺の奥さんか天理教の教会長の奥さんかも知れないけれど」
 違う宗教の名前も出す景子だった。
「牧師さんの奥さんかもね」
「とりあえず宗教関係なのね」
「多分そうなるわ、そんなお話お父さん達もしてるから」
「成程ね、ただね」
「ただ?」
「いや、牧師さんの奥さんって今言ったわよね」
 琴乃がここで言うことはこのことだった。
「キリスト教の」
「ええ、言ったわよ」
「牧師さんって結婚出来ないんじゃ」
「出来るわよ、牧師さんは」
「出来るの」
「プロテスタントの場合は結婚出来るの」
 キリスト教の聖職者でもだというのだ。
「カトリックの神父さんは公には出来ないけれどね」
「公には、なのね」
「そう、公にはね」
 実際はどうかはあえて言わないことになっている、尚バチカン市国には何故か子供もいたりするが誰もあえて言わない。 
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