万華鏡
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第六十九話 十二月になってその三
「あそこのお家騒動も酷いから」
「オーナーに問題があるのね」
「どう見てもね」
将軍様とさえ呼ばれる程に独善的かつ専制主義者のオーナーだ。こうした輩がのさばること自体が戦後日本の救い様のない腐敗の象徴だ。
「あそこはね」
「だからあんな風になったのよ」
「最下位になの」
「そう、なったのよ」
そしてだった、景子はさらに言う。
「今もお家騒動起こしてるでしょ」
「監督交代ね」
「そう、まだ次の監督決まってないでしょ」
「やたら揉めてるわね」
「コーチの人事までね」
とにかく何もかもが揉めている、それが今の巨人だった・
「何が何だかわからない位に」
「どうなるかしらね」
「さてね」
「わからないのね」
「だってね、巨人のことだから」
憎むべきあのチームのことだからだというのだ。
「正直どうなってもいいから」
「変な人がコーチになって欲しいとか思わない?」
「それは思うわ」
それは何故かというと答えは簡単だ、おかしな人材がコーチになればまともな指導が行われなくなり選手が駄目になるからだ、巨人の。
「けれどね。揉めてくれるだけでね」
「景子ちゃんは充分なのね」
「どうせ変なことになるから」
今の巨人のフロントなら、というのだ。
「あの調子だとね」
「確かに酷い状況ね」
「もう上から下まで大騒ぎでしょ」
「親会社の方もね」
「あそこのお家騒動は他のチームより酷いから」
この傾向は昔からだ、とかく巨人のお家騒動は騒がしくなる傾向が強い。
「酷い結果になるわよ」
「どちらにしても」
「もうお金もないし」
「ああ、親会社も遂に赤字に転落したしね」
「新聞売れなくなったからね」
「テレビも観なくなったし」
マスメディアの凋落だ、これまで戦後日本を長い間支配してきたマスメディアも遂にその時代を終えようとしているのだろうか。
「だからよね」
「そう、親会社も赤字転落で」
「チームにお金も回らなくなって」
「これまでお金だけのチームだったのに」
これが巨人の本質だ、金のチームなのだ。
「お金のある北朝鮮だったのにね」
「お金がない北朝鮮ってあれじゃない」
彩夏がそれは何かと言った、資金のない北朝鮮はというと。
「今のままじゃない」
「そう、食べるものもない究極の独裁国家よ」
「今の巨人がそれなのね」
「そうよ、北朝鮮よ」
尚且つマスメディアの洗脳も効かなくなっただ、それは何かというのだ。
「もう何の力もないから」
「凋落する一方なのね」
「本当に北朝鮮みたいにね」
まさにというのだ。
「落ちていくだけだから」
「じゃあ私達はその凋落を見ていればいいのね」
「私はそう思うわ」
景子は真顔で琴乃に答えた。
「このままね」
「そうなのね」
「そう、まあ巨人のことは置いておいて」
景子は何かを持つ手の動きを見せた、そのうえでその両手を真ん中から右手にやってそれでこう言った。
「テスト終わったから」
「ほっとしたわ」
今度は里香が景子に答えた。
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