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インフィニット・ストラトス 自由の翼

作者:ren sagiri
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ボーイ・ミーツ・ボーイ……です。

○side天地

今日から訓練機を用いた実技研修が始まる。俺たちはISスーツに着替えるため第2アリーナの男子更衣室に向かって走っていた。

俺と一夏はデュノアの世話を織斑先生に任されたのだ。手を抜いたり蔑ろにすると出席簿による制裁が加えられるから俺たちは指示に従う。

「とりあえず、デュノア。こいつの姉貴の制裁はタチが悪いので授業には遅刻しないことを心がけろよ?」

「ああ。千冬姉の出席簿の威力はハンパないからな。」

俺と一夏はとりあえずどういう状況かをデュノアに走りながら説明する。

すると、デュノアは素直に頷いて「わかったよ。」と一言。

「僕のことはシャルルでいいよ、二人共。」

「OKだ。俺のことも天地でいい。よろしくな、シャルル。」

「んじゃそう呼ばしてもらうよ、シャルル。俺のことも一夏でいいぞ。」

二人とも器用だな……しかし、デュノアって童顔というか女顔だよな。声も男子にしちゃ高い。

……まさかな。

と、俺は何か嫌な予感がして後ろを見た。

「あ、織斑くんと七ノ瀬くんだっ!」

「噂の転校生もいるよッ!」

「者共、あやつらを引っ捕えよ!」

ん?いつの間に武家屋敷になったんだ、この校舎は。

「金髪、赤髪、黒髪ぃ~……」

「しかも瞳はアメジストだよぉ~!かぁいぃぃぃ~!」

……なんかどっかで聞いたことのある口調だが、あえてスルーさせてもらおう。

教室から出てきていたのは別クラスの女子たちだった。まぁ考えてもわかるよな。

おそらく情報収集の尖兵として俺たちを包囲、質問攻めにしようと言う魂胆なのだろう。

だが、甘い。

「俺たちが相手で悪かったな。」

「ひゃ!?て、天地!?」

俺は、ヒョイっとシャルルを抱き上げてトンズラする。男同士だしお姫様抱っこでも問題はないだろう。……しかし、妙に軽いなこいつ。

「おい、俺を置いていくなよ!」

「て、天地くん。お、おろし―――うわぁぁぁ~!?」

俺たちは疾走した。女子の質問攻めはゴメンだからな……なーんてな。




○sideシャルル

僕は今日、初めてお姫様抱っこと言うイベントを体験した。見かけは細い天地の腕は逞しくて、立派なものだった。

こんなふうに抱き上げられるというのは慣れていない僕は天地にとある秘密がバレていないかと内心穏やかじゃないよ……はぁ。

でも、案外居心地は良かった。彼に抱かれているとき、僕はあの人に感じる男の恐ろしさが一瞬だけ感じなくなった。

こんな気持ちは初めてだった。多少強引なのはちょっと癪だったけど。

「シャルル、着替えたのか?」

「う、うん!じゃ、じゃあ二人とも、いいい、行こう!」

「お、おう。……緊張してんのか?」

「そ、そんなことはない!」

「……そ、そうならいい。」

いきなり話しかけられた僕はあからさまに動揺してしまった……恥ずかしいよぅ。

天地くんも勢いよく僕がまくし立てたので若干仰け反って引いている。

「ほれ、さっさと行くぞ。」

僕と天地は一夏くんに手を引かれてようやく動くことができたのだった。

なんか、僕たちはいろんな意味で似ているような気がしたのは気のせいだとはこの時は思いたくなかった。




○Noside

第2グラウンドには訓練用のIS[打鉄]と[ラファール・リヴァイヴ]がISハンガーに固定されて待機していた。

「今回はISの装着と歩行訓練を行う。後ほど各自で訓練機を取りに来るように。と、まぁまずは専用機もちの模擬戦を見てもらおう。あいては……」

「ど、どいてくださ~い!?」

「へ?」

春奈は上を見た。すると、何かが猛スピードで彼女に迫っているのに気がついた。

「え、あれって……」

「きゃぁ~!」

どうやらいつも慌ただしいあの人が得意のあがり症で機体制御を誤ったのかこちらに落ちてきたのだろうか。

瞬時にIS[フリーダム]を展開した春奈が飛翔して、その飛来する人物を優しく受け止めた。

「大丈夫ですか、山田先生。」

「ご、ごめんなさい。助かりました、織斑さん。」

春奈に突っ込んできたのはIS[ラファール・リヴァイヴ]を装備した真耶だったそのISの脚部には〈教〉と言うステッカーが貼られている。

極度のあがり症のせいで真耶は機体バランスを取れなくなって墜落しかけたのだ。

春奈は彼女の実力を知っているが、その欠点にも今気がついたようだった。

「何をやっているんですか、山田先生。」

「す、すいません織斑先生。」

「教員は生徒の模範となるのですから。山田先生のあがり症については他の教員も知っていることですのでとやかくは言いませんが。」

ため息を漏らしながら千冬は真耶に注意を促した。

「はい、以後気をつけます。」

消え入るような声で真耶は返事した。意気消沈しているのも無理はない。

「織斑姉、よく止めてくれたな。」

「間に合ってよかったです。訓練は大事ですね、やっぱり。」

春奈は褒められたのが意外だったのかうんうんと頷いて照れを隠していた。

「さて、授業に戻るぞ。七ノ瀬とオルコット、前に出ろ。」

「「はい。」」

呼び出された両名は列の前に出る。

「お前たちには、山田先生と模擬戦をしてもらう。いつもはなんな感じだが「織斑先生!?」彼女は元代表候補生だ。くれぐれも侮って相手をしないように。」

千冬は天地とセシリアに模擬戦をさせるようである。

「よろしくな、セシリア。」

「はい、天地さん。エスコートを頼みますわ。」

「頃合は私が判断して試合を止める。では、用意しろ。」

言われてすぐに二人はISを展開して飛翔した。

「セシリア、俺が切り込むから援護頼むぞ。」

「承知致しましたわ。援護のタイミングはどうなさいますの?」

「そっちに任せる。誤射しないのは知ってるしな。」

二人は軽く言葉を交わして頷きあった。

「では、始めろ。」

その言葉が戦いの口火を切った。

「行きますよ、二人共!」

アサルトライフルを呼び出し(コール)した真耶は二人に向かって弾幕を張り制動する。

「セシリア、俺の後ろに来い。刹那、GNフィールドをッ!」

[了解。]

天地は言ううがままにGNドライヴを懸架しているアームを前面に出してGNフィールドを張る。

「さっきの声は……?」

「後で理由を話す。今は切り返すぜ!」

天地はGNフィールドでひとしきりの銃弾を弾くと弾切れとなった真耶に向かってGNフィールド解除しながら突っ込む。

[天地、このままでは粒子が足りないぞ。]

「問題ない。直ぐに終わる!」

言いながら天地は真耶にGNソードⅡで切りかかる。

「甘いですよ!」

真耶は近接ナイフを呼び出し(コール)して斬撃を受け流し、先に呼び出していたのであろう近接散弾銃(アサルト・ショットガン)《ナックル》の銃口を天地の腹部に添える。

が、ちょうどいいタイミングで飛来したレーザーを紙一重で避ける真耶。

しかし、レーザーは曲がり彼女の肩を狙う。これは偏光制御射撃(フレキシブル・ショット)

「いただきましたわ!」

「っ!そうはいきませんよ!」

真耶は物理シールドでレーザーを受け止めてやり過ごすが、そこへ天地が追撃する。

「オオォッ!」

一撃の重さを重視してGNソード改に替えていたのは正解だったようで回避しようとした真耶の左手の《ナックル》を真っ二つに切り裂いていた。

「あれ!?」

「隙だらけでしてよ?」

BITをアサルトレンジで起動したセシリアが真耶に向かってレーザー弾の弾幕を張る。

「意趣返しですか!?」

真耶も紙一重で回避しながら直撃コースは物理シールドでやり過ごす。

と、粒子スラスターを後ろにした天地が粒子を噴出させて迫る。

「獲った!」

天地が上段からの袈裟斬りを放つ寸前

「っ!」

「そこまでだ!」

ピタリ、と天地が止まる。千冬が止めたのである。GNソード改の刃は肩装甲スレスレで止まっていた。

「天地くん、やりますねぇ。」

「お褒めにあずかって光栄です。先生の動きもかなりよかったです。」

今回は二対一だったが、個人戦だった場合天地は敗北していたと悟る。

状況に応じて武器を使い分けていた真耶を見たためである。

「援護うまかったぜ、ありがとな。セシリア。」

「当然ですわ!わたくしはセシリア・オルコットでしてよ?」

「天狗になるな、馬鹿者が。」

なぜかセシリアは天狗になっていた。故にスパァンと出席簿チョップが炸裂したのは言うまでもない。

「七ノ瀬とオルコットに引くことのない戦いだった。諸君もこれからは山田先生に敬意を払って接するように。」

こうして授業は進んでいく。紙一重の勝利を掴んだ天地は心の中でガッツポーズを一つするのであった。

● 
 

 
後書き
各専用機持ちの生徒たちは与えられた役目を果たす。

「ふむ、ではこうして」

生真面目に生徒を指導するラウラの視点とは?

次回インフィニット・ストラトス 自由の翼

ラウラの教導……ドイツの冷水はどこ?

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