インフィニット・ストラトス 自由の翼
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ラウラの教導……ドイツの冷水はどこ?
○Noside
「では、諸君。各専用機持ちのもとに出席番号順で6人の班を作るように。最後の余りは私と山田先生で面倒を見よう。では、移動開始。」
『はい!』
生徒たちは一斉に動きだした。一夏と天地、シャルルに当たった生徒たちは内心でここでリードしてやると燃えていた。
もっとも、一夏はかなりの鈍感なので身内である春奈を篭絡して彼女を伝にアプローチする考えを持つ策士型の女子もいるのも確かだ。
各専用機持ち達は忙しそうに動き出す中、スムーズに教導が行われている班があった。
「ふむ、ではそうして安定させながら10歩歩いてみたまえ。」
「は、はい。」
ぎこちない動作で[ラファール・リヴァイヴ]を駆る生徒を教導しているのはあのラウラだった。彼女は黒ウサギ隊の隊長を勤めており教導は得意なのだ。
ほとんどの生徒が基礎に還り、歩行訓練から開始するのは珍しいことではない。
最初の入学試験での試験官を相手取る模擬戦もISの適正と状況判断能力を見るために行う簡単なものだったのだから無理もない。
「よし、そこまででいいだろう。しゃがんでISを停止させるところまでいってみようか。」
丁寧で手際のいいラウラの教え方は班の女子たちには好評であった。
そして、数十分後。一番先に訓練を終わらせたラウラの班に続いて春奈の班、シャルルの班が終わらせていく。因みに一夏と天地の班は最後のほうであった。
理由としては逐一女子がISを立ったままで停止してそのたびにコックピットまで一夏と天地が運んでいたためであったのは言うまでもないだろう。
「織斑弟、七ノ瀬。言うことはあるか?」
「「言い訳はございません。すいませんでした、織斑先生。」」
「そうか。……次は気をつけろ。」
千冬はそう二人に言い残すと「後片付けは頼むぞ」といってその場を後にした。
「……後片付け?」
「何の話だ?」
「織斑くん、七ノ瀬くん後片付け手伝って~」
「……千冬姉の言ってたのってこう言う事かよ。」
「まぁ、男なら黙って女のいう事は聞いてやろうぜ、一夏。」
若干押し付けられた面倒ごとと感じつつも天地と一夏は他の女子の手伝いをするのであった。
「おう、そうだな。ここで聞かぬ振りは男が廃るってやつだ。」
体育会系女子と協力して一夏と天地はISを格納庫に移動していった。
●
○side箒
[今日の昼一緒に食べないか?]
一夏は確かにそういって誘ってくれた。現在位置は昼を少し過ぎたあたりの校舎屋上。
そこにある緑地化されたテラスで昼食を一夏と二人きりで食べる予定だった。
―――しかし、現実は甘くはなかった。
テラスには春奈がいた。それまでならまだ我慢できた。しかし、おまけのようにセシリアに鈴まで同席していた。
そして、天地とシャルルも申し訳なさそうな顔をしながら在席している。
「どういうことだこれは?」
「いや、大勢で食べたほうが楽しいだろ?」
「……やっぱり俺学食に行こうか?」
空気を読みながら気を遣う天地の言葉は私の心に刺さった。
「いや、かまわん。そうだな、昼餉は大勢で団欒とするのがいいやも知れん。」
「箒?なんか俺したか?」
「なにがだ?」
むぅ……人の心に気がつかないこいつには慣れたつもりだったがそうでもなかったようだ。悪意のない行為だからこそ咎めることもできないが「はい、そうですか」で片付けるのも癪だと私は思ってしまった。
「いや、侍口調になってるから……その口調の箒って何か不機嫌になってる時だし。」
「ふん、そんなことは気にするな。ほれ、お前の分だ。」
私は一夏に弁当を渡しながら……唐変木は相変わらずかと考えた。でも、一夏の小さな心遣いにはなぜか胸が躍る。
「もしかして俺の分?」
「そうだ。たまには毒味役がいてもいいだろう?」
ん?今私はなんと言った?
「……やっちゃった弁当なのか!?」
「ち、違う!今回は成功だ!!と、とにかく食べろ!」
―――結局命令口調になってしまったか……どうしても素直になれないな。
「え、箒も弁当を持ってきてたの!?」
「箒さんまで…鈴さんだけではなかったのですか!?」
「え、まさか二人も弁当を……?」
一夏は若干引いている、セシリアの発言に対してだが。
と言うかこの二人に加えて春奈も作ってきていそうな雰囲気なんのはなぜだ?
「大丈夫だよ、一夏。セシリアの弁当なら私が付き合って面倒を見たから。」
「まて、春奈。セシリアに料理を教えたのか!?」
なん……だと……なんて余計なことをしてくれたのだ春奈!?と言う言葉が出かけたが鋼の意志で飲み込む。
春奈は料理が上手で私も何度か手ほどきを受けたこともある。かなりの腕前だったのは記憶に新しい。
それでいつも以上の自信をセシリアから感じていたのか、私は。
「んー?何か箒ちゃんに都合悪かった?」
「いや、なんでもない。ただ、セシリアがまともな料理を作ったためしがあるのかが気がかりでな……食べるのは一夏だし……な。」
「んなっ!?どういう意味ですか、箒さん!?」
「どうどう、セシリア。私が付いてたからだいじょーぶ!」
まぁ、春奈なら大丈夫か。
「みんな。そろそろ、食べない?僕お腹空いてるんだけど……」
新参のシャルルがそう言った。いや、空気を読んでくれたのだろうか。
「それもそうだな。さっさと食って俺たちも戻ろう。」
天地の提案に乗っかった私たちは一夏の音頭で合掌と共に『いただきます』と声を揃えた。
「一夏の弁当はどんなのよ?」
「そんなに食いつくことかよ……お、見た目はまったく問題ないぞ箒。」
「当たり前に決まっているだろうが!」
失礼なことを言ってくれる。確かに、唐揚げは出来の良い物だけを残して一夏の弁当に詰めたが。
「唐揚げに銀シャケと卵焼き……野菜も入っててバランスは良好だね。」
春奈が一夏の弁当を覗き込む。高評価だな!と心の隅で小さな私がガッツポーズをしていた。
「鈴ちゃんのは……酢豚だけ?」
「こ、これで十分でしょ!?」
「バランス悪いし、ご飯を忘れるのはおかしいでしょ……それとも、何か下心でも持ってたのかな?かな?」
「っ!?ソンナワケナイデショウ!?」
「じゃあ鈴さん、何で片言になっていますの?」
「あ、あんたは黙ってなさいよ!春奈の手助けがなかったらBLTのサンドイッチすらまともに作れなかったくせに!」
「そ、それは何かの間違いですわ!!大体、自分を棚に上げてわたくしに意見をおっしゃるのは筋違いでしてよ!?」
……騒がしい上この上ないなこの二人は。ひとしきりギャーギャーと騒ぐと二人は落ち着きを取り戻してコホンッとわざとらしい咳払いをする。
二人を眺めていた春奈の視線はいい加減に黙れと威圧感を出していたのだ。
「ははっ。これが団欒と言うものなんだね。」
「まぁな。仲間で集まって駄弁るとか買い食いするとかも団欒みたいなもんだよ。」
天地の言っていることは間違いではない。でもシャルルは首をかしげていた。
「ふーん……そうなんだね。」
今の態度の中にシャルルの闇を見た気がした。何か引っかかると思った。が、今はおいて置こうと思う。
「さて、そろそろ食うペースを上げないと起こられるぜ?」
「それもそうだな。」
こうして我々の他愛のない昼は過ぎていく。こんな平和が私には似合っているのかもしれないなという思いを胸に秘めながら。
●
後書き
「お前もしかして……シャルルなのか?」
「そうだよ……」
シャルルの抱えた秘密が天地に露見したそして。
「ここはこうして……荷電子の収束率を高めて上げれば」
「……それだと……エネルギーに問題が……出ちゃう」
春奈がであったのは控えめなシャイガールだった。
次回インフィニット・ストラトス 自由の翼
シャルルの秘密と春奈の新たな友達
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