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インフィニット・ストラトス 自由の翼

作者:ren sagiri
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戦いのあとはスイーツ日和!?……コラボその2です。

 
前書き
今回は交流と春奈の変化の序章。

簡潔に言えば日常編です。

―――では行きましょう。 

 
○side???

「お~。Aいっくん、おかえりなさ~い。」

束の住み着いているRCI社秘密区間に黒いISが帰還した。

「客をこき使うのもどうかと思うがな。束さん?」

「いやいや、等価交換ってものだよAいっくん。宿の代わりにリボくんがソレスタルビーイング号に案内してくれるらしいよ?」

「……ソレスタルビーイング号?」

「正確には外宇宙航行用コロニー、ソレスタルビーイングだね。束さんも行ったことあるけどスゴイところだったよ?」

「無重力区間もあるのか?」

「もちろんあるよ。束さんもあそこでふわふわ浮いて遊んでたからね。」

それを聞きながら一夏は鹵獲したGNバスターソードの残骸を作業台に置く。

「そうか、宿泊先は宇宙か。……それは楽しそうだな。」

そう言いながら一夏はにやりと笑う。すると、そのタイミングに合わせたかのようにスライドドアが開き、リボンズが現れた。

「ここにいたのかい、織斑一夏……ややこしいね。君をどう呼べばいいか。」

「む?……A一夏でいいぞ?」

「何だい?そのDQのスライムAみたいな呼び方は。」

「そのほうがわかりやすくないか?……DQのスライム―――俺はそこまで弱くないぞ。」

リボンズの例えに口を尖らせるA一夏。

「まぁそれは置いておくとして、ついて来てくれるかい?君をソレスタルビーイング号に招待しよう……特別にね。」

「ふっ、監視と保護のためだろう?」

A一夏の意地悪な笑みにリボンズは動じない。

「そうとも言えるさ。君に何かがあってからでは遅いからね。」

「その点の配慮には感謝している。まぁ、この世界からすれば俺は異物(イレギュラー)だからな。」

「そこまで理解して頂ければ結構だよ。さぁ、行こうか。A一夏。」

「わかった。どうやって転送するんだ?」

「今から転送装置の起動を行う。それで行けるよ。」

リボンズは束にあることを頼みながらその秘密区間を後にした。

A一夏を偶然でこちらに招いた束に頼んだことは神と彼女のみが知ることである。




○Noside

夕日の差し込む病室には春奈とクラス副担任の真耶がいた。

「はい、これで事情聴取は終了です。織斑さん、おつかれさまでした。……怪我をしているのに無理はしてませんか?」

「いえ、もう大丈夫ですから。情報の共有は優先するべきと思ったので。」

「それはそうかもしれませんが……無理はしないでくださいね?」

「分かりました。」

真耶は春奈が進んで望んだ事情聴取を明日に回したかったらしいが、即日の医療室で行われた。

「無人機と謎のISについては箝口令が出ていますので、誰かに喋るなんてしないでくださいね?」

「了解です。」

「今日はこの医務室で泊まっていってください。怪我も治ってないですしね。」

「明日、リボンズさんに再生医療を施してもらえると聞いています。」

「そうでしたね。さて、報告書をまとめてと……先生はこれで失礼しますね?」

「はい。おつかれさまでした。」

そう言うと真耶は病室を後にした。

「……ちょっと眠ろうかな―――」

緊張の糸が切れたのか、春奈の意識はそこで途切れた。

眠りに落ちるさなか彼女を呼ぶ声が聞こえる。

[―――春奈。]

(……誰?)

[―――はじめましてね。]

(―――あなたは誰?ここはどこなの?)

その声は聞き覚えのない女性の声であった。

[私はクリスタルハートの思念とも言うべきかしらね?私の名前は―――ル・コボル……善の性質を持つ方のル・コボル。()からは姫君(ディーヴァ)と呼ばれていたわ。]

(ディーヴァ……思念とはどういうことなんですか?)

[この世界の根本はジェネレーションシステムによって守られてきた。でも、彼と私が分離したことで全ての歯車が狂い、瓦解した。]

(―――なんのことなのですか?)

[いづれ分かるわ……そこであなたは選択を迫られる―――それだけを伝えたかったの。それと、あなたに[可能性]を授けるために。]

(私の可能性……?)

[……私もいつでもあなたと喋れるわけじゃないわ。今回みたいにあなたの魂と私が深層同調(ディープ・シンクロ)した時に、少しの間だけ話すことができる……時間って残酷よね。]

(―――また会えますか?)

[ええ、それまでは私も眠るわ。おやすみなさい私の可愛い娘―――春奈。]

そこで声は途切れた。

「おかあさん……?」

「なにを……春奈?」

目を覚ました春奈の傍らには千冬がいた。

「―――千冬姉?どうかしたの?」

「いや、何でもない。それより、体の調子はどうだ?」

「うん?……あれ?体の痛みが消えてる……?」

「……は?ってよせ、春奈!」

千冬は焦りながら春奈を止めようとするが春奈は包帯を解いてしまう。

「火傷が……治ってるのか……!?」

その背中には搬送された時に負っていた火傷があった。それをRCI社で治す予定だった。

将来に傷跡が残るような深刻な火傷だった、が再生医療であれば完治させることができる。

しかし、現在。春奈の背中の傷は完全に癒えていた。

―――医者も生きているのが不思議だと言っていた程の火傷を負い、全治5ヶ月の診断が下ったにも関わらずだ。

「な……この痣は……」

「……え?どうしたの千冬姉?」

千冬は絶句した。春奈の、その背中にある幼少の頃からある痣。

彼女の、春奈の白い背中を汚す黒い鳥の翼のような痣。それが大きくなっているのだ。

「春奈……お前は一体何者なんだ……?」

「……わからないよ、千冬姉。私がなぜここにいるのかが。」

それを聞いた千冬は何も言えなかった。否、かけるべき言葉が見当たらなかった。

初夏の訪れの近づく季節に起こった奇妙な出来事であった。




○Noside

その翌日の日曜日。春奈はRCI社にいた。

「いつ見ても大きい会社ですね……ここは。」

「そうだな。そんだけの大企業ってっことに違いはないだろう?」

春奈はどこか憂いを帯びた表情をしていた。昨日の晩の出来事は千冬が口を封じた。

『今回のことは忘れろ。私も見なかったことにする。―――いいな?口外するなよ?』

と念を押されていた。千冬は春奈にかかる危険を先に封じることにしたのだ。

春奈が特異な存在であると分かればその身に降りかかる火の粉は自ずと激しくなるだろう。―――と予測したのだ。

「とにかく、転生者ってことがバレなかっただけ儲けもんだと思えよ。」

「……はい。」

天地が話しかけてもうわの空、もしくは返事を返すだけの春奈に彼は手を焼いた。

「気持ちは分からなくもない。でも、気にしすぎだ。」

「……」

「春奈、いいか?俺たち転生者には何らかの役目がある。」

「千冬姉に嘘をついてしまいました……それが……」

「さて、着いたぞ。―――今は忘れろ。客がいるとも言っていたしな。」

天地は春奈の反論を封じた。それ以上喋るなという雰囲気とともに。

「分かりましたよぅ……。」

少々むくれながら春奈は指示に従った。

そして、数分後。

「キャアァ~!―――束さん!やめてください!……怒りますよ!?」

「にししし、はるちゃんの悲鳴は可愛いね~。束さん全然聞いてても飽きないよ。」

何故か服を脱がされて前をタオルギリギリで隠す春奈。……どうしてこうなったと彼女は内心嘆いていた。

「生体データを取らせて欲しいのだよ束ねさんは、クリスタルハートと深層同調(ディープ・シンクロ)した人間ははるちゃんが初めてなのだよ~だからこそ生体データを取らせて欲しいの。」

「嫌です!」

「……君は何をしているんだい!?篠ノ之束!?」

部屋に入ってきたリボンズはその惨状に驚いた。なにせ春奈が全裸(タオルで前を隠している)でそれを束が追い回す状況である。

「お~リボくん遅かった~……ぶへっ!?」

束の顔にリボンズの完璧なドロップキックが炸裂。束は一撃で沈んだ。

「―――と、思っていたのかな~?」

「相変わらずデタラメな身体能力だね、君は!」

呆然とする春奈をよそに格闘戦を始める二人。春奈はどうしてこうなったと思うのが精一杯だった。

「なんの騒ぎだ―――ってなんだこれ!?」

「天地君!?」

「へ……?」

振り向きかけた天地に春奈は羞恥心のあまりボロボロのフリーダムのドラグーンを展開すると―――

「こっちを見ないでくださいィィィッ!!いって、ドラグーン!」

「なぜだあぁぁぁぁ!?」

天地はその後10分間ドラグーンに追い回されることになったのはまた別の話である。

「省略すんなあぁぁぁぁ!?!?」



○sideRCI社ISハンガー

「ひどい目にあった……」

「気が動転してまして……すいませんでした」

しょんぼりしている春奈の頭を気にしていないと言いたげに撫でる天地。若干春奈の顔が赤いのは羞恥心か、それとも嬉しいからなのか。

「さて、ISを見せてくれるかな?はるちゃん。」

「分かりました。」

春奈は束の指示に従ってフリーダムを展開する。そのISアーマーはかなりのダメージを負っていた。その分春奈を守っていたとも言えなくはないが。

「う~む、手酷くやられたようだね~。束ねさんのフリーダムがここまでになるとは。」

「アリー・アル・サーシェスの実力さ、それがね。」

「これは修理に時間がかかるねえ。はるちゃん、ちょっくら遊んでおいで。」

「……え?」

「それがいいね。時間がかかる。……その間に彼の相手でもしてくれないかい?」

『彼?』

首をかしげる二人、と天地が気配に反応する。

「誰だ!?」

天地が反応してGNソードⅡを展開して構える。

「この距離で気配を読めるか……かなり鍛えているな。」

声音から天地は同い年の男性と判断して一層警戒を強く持つ。

「安心しろ、敵じゃねぇよ、俺は。」

「……な……に?」

「はじめましてだな、織斑春奈、七ノ瀬天地。」

「……一夏……なの!?」

「正確には異世界の一夏だな。……俺のことはA一夏と呼べばいい。」

暗がりから現れたのは春奈、天地も身近にいてよく知る存在の春奈の弟である一夏だった。




○Noside

「まぁ、俺がここにいる理由は偶然、うちの世界とここが繋がったからでな。」

事の転末を聞いた春奈と天地は最初は驚いていたが後半あたりからなるほど、と頷いていた。

「しっかし、どこまでもぶっ飛んでるな篠ノ之束って存在は。」

「そうですね。……そっちの束さんは完全にトチ狂っていて千冬姉は残姉さんですか。」

「まぁな。しかし、こっちの千冬が直死の魔眼持ちとはな。台所を両断するとかどんだけだよ……包丁でというのも恐ろしいな。」

「モノの死を理解してしまったから……うちの家系に伝わる異能だそうです。」

「……なんだ、ここは。いろいろな要素が混ざりすぎだろおい。」

「まぁ世間は広い。ほかの世界にも似たようなものはあるだろ。」

「ふははははっ!そんなものを気にしていては楽しく生きることはできんぞ、若造ども!」

「あ、ギムさん。招待ありがとうございます。」

新たに現れたのは銀河甘隊の社長、ギム・ギンガナムその人だった。

現在春奈たちは銀河甘隊のVIPルームにいる。元来はリボンズの専用席なのだが彼女の好意でここに座らせてもらっている。

「ふっ、礼はあの小娘に言うことだな。」

「そうでしたね。遠慮なくご馳走になります。」

「10代女子の幸せを守るのが吾輩の、銀河甘隊のモットーだ!キサマらもゆっくりとくつろいでいくがいい!」

「ほう、甘味か。俺は甘いものが好きでな……いや、待て。リボンズが小娘?」

「ああ、この世界のリボンズ・アルマークは女性だぜ?」

「……はあぁぁ!?いや、確かに髪は長かったが……美形の中性的な顔立ちはイノベイドの特徴だろう!?」

「まあな。まぁ気にしてたら時間がなくなる。ここのケーキは美味だからな。」

「これは、新作ですか?ギムさん。」

「名づけて季節の宝石箱(ジュエル・ボックス)。吾輩の自信作だ!」

「果物のタルトか。……どれどれ―――っ!?」

待ちきれんとばかりにA一夏は合掌してタルトを頂いた。

芳醇で調和の取れた果物の甘さと、しつこすぎないカスタードクリームは脇役に徹しながらもほんのりと自己主張をする。

しっとりとしたタルトも柔らかすぎない適度な硬さを残している。

それらが完全に調和した季節の宝石箱(ジュエル・ボックス)にこれまた合う甘めのロイヤルミルクティーを暫し堪能する3人は終始無言だった。

特にA一夏は何らかのタガが外れたのか他のケーキを4個も平らげて春奈、天地を驚かせた。

「実にうまいケーキだった。ああ、シャルやセシリアにも食わせてやりたいな……味は覚えたんだがな……。」

「そうか、気に入って貰えて何よりだ。餞別にこれをくれてやろう!」

ギムさんはA4のプリントファイルを持ち出すとA一夏に渡す。

「これには貴様の食べたケーキのレシピが記載されている。帰って妻に食わせてやるがいい!」

「なに!?いいのか!?」

「構うことはない。吾輩はいい食べっぷりに惚れたのだ!武士に二言はあらずだ!」

そんなこんなのお茶会はリボンズからの呼び出しがあるまでの3時間も続いたと言う。

余談だがこの世界の弾が春奈をエスコートするA一夏を見て積年の思いを瓦解、失恋を認識したのはまた別の話である。

「なぜだあぁぁぁぁぁ!!?」

続く 
 

 
後書き
RCIに帰還した春奈、刻一刻と迫る別れを前にA一夏がVR空間での模擬戦を提案する。

次回インフィニット・ストラトス 自由の翼

双零と自由VS.漆黒の狂戦士

ご期待下さい。感想、評価も待ってます!!

コラボ回も残りあと僅かですね……ではこのへんで 
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