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豹頭王異伝

作者:fw187
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邂逅
  竜と蛇の謎

(ゾンビーの話は本当か、幽霊船を操る海の怪魔を竜王が召喚したのか?
 私がイシュトの話に夢中になっているのを妬んで、邪魔した訳ではあるまいね)
(クラーケンが現れたら馬鹿を言ってる余裕は無いですよ、私にだってわかりますとも!
 些か面白くない事は認めますが、ならず者みたいに埒も無い法螺を吹く気はありません!!)
(嫉妬している訳でもないだろうが、相変わらず彼には冷たいね。
 それで、ケイロニア軍の状況は?)

(グインは自力で目覚め、ギールから夢の回廊に関する説明を受けました。
 下級魔道師を総動員して兵士達を起こし、ゾンビーを焼き払っています)
(カラヴィア軍や聖騎士団、ケイロニア軍の別働隊に奇襲の気配は無いか?
 夢の回廊を展開した念波の痕跡に、竜王の気配は混ざっていないか?)
(他の班は魔道の気配を察知しておらず、厳重に警戒中。
 グインの周囲に感知された念波の残滓は、中原では確認された事の無い物です)

(無人島で遭遇した光の船について、イシュトヴァーンの話が聞けて良かったよ。
 リンダにも聞いたが女性の話と云うのは、現実と空想の境が曖昧な場合が多くてね。
 古代機械に似ていると言ったリンダと異なり、イシュトヴァーンには光の球に見えた。
 精神接触の際にグインから受け取った心象も、光の球と光の船の類似性を指摘している。
 光が下部に移動した後、手足の無い巨大な赤ん坊の様な存在が姿を現しつつあった様だ。
 残念な事に時間が限られていたので、グインと詳細な意見交換は出来なかったのだがね。
 入神状態のリンダは飛び立つ寸前の種子を至高者と呼び、5タルザンの猶予を得た。
 リンダが王太子アモンと対面した際、レムスを通して竜王が語った内容とも符合する。

 ヒプノスの術で現れた竜王が語った、ガング島の地下洞窟に存在していた《神の種子》。
 ガング島と思われる無人島の洞窟で、グインとリンダとイシュトの見た光の球。
 その内部に潜んでいた巨大な赤ん坊の様なものが《神の種子》、《フモール》とすれば。
 スカールが禁断の地グル・ヌーで見た様に、星船の最奥部に本体が宿っていたのか?
 竜王の言を信じれば超越者の種子は、王太子アモンより遥かに無性格であったのだね。
 時至らずして飛び立ち、消滅してしまったそうだが何か痕跡が遺されていないのかな。
 無人島とヤーンの塔、グル=ヌーの他にも星船か古代機械が隠されているかもしれない。
 アグリッパは星船が飛び立ったと明言しているけれど、他に何か言及していなかった?)

 大導師は星船が何処へ飛び去ったのか、どうなったのかを明らかにしていません。
 まさかと思いますが星船の目的地は、ヤンダル・ゾックの故郷だったのでしょうか?)

(私に聞いても知らないよ、大導師アグリッパと対面を果たしたのは君だろう?
 生ける伝説と謳われる世界三大魔道師の筆頭と直接、念波を交わした奇蹟の主人公君。
 冗談はさて置き、氷雪の女王クリームヒルドの言葉も非常に興味深いね。
 北と、西と、海と、地の底に隠匿された世界を破滅させる力だって?
 グル・ヌーが地の底、ガング島が海、ヨツンヘイムが北とすると西は何処だろう?
 パロ西方は大灰色猿が棲息する秘境、カブールの大森林だが《西の果て》ではない。
 大森林の更に西には、頑なに鎖国を続ける神秘の太古王国ハイナムが在る。
 パロ魔道師ギルドは聖王家に内緒で、竜人族に関する情報を隠匿していない?

(私みたいな下っ端に魔道師の塔を統べる総帥、カロン大導師様の御心は窺い知れません。
 パロと国境の接する隣国、謎の太古王国ハイナムに関する情報は聞いた事が無いですね)

(ドールに追われる男はヴァレリウスに、ハイナムのイェライシャと名乗ったのだったね?
 九百歳を超える彼は大導師アグリッパに、カナリウムのイェライシャと名乗りを挙げた。
 水の王国ハイナム第1王朝の創始者ナーガ1世は、竜の血を引く竜王と伝えられている。
 中原の西に位置する太古王国ハイナムは果たして、キタイの竜王と無関係か?
 竜《ドラゴン》に対する偏見だ、と苦情《クレーム》を付けられるかもしれないが。
 東竜王が18年前にキタイに現れる以前、彼等は何処に居たのだろうね?

 イェライシャとヴァレリウスを招待した齢3千年の大導師、アグリッパも言及していた。
 竜王がキタイに出現する遥か以前、星船内部で蘇生した先祖が存在したのではないかと。
 星船から外に出た彼らが数世代に渡る混血を行い、竜王を産み出したのは何処だ?
 東方の大国キタイが鎖国を始めたのは、ヤンダル・ゾックが王となった事実を隠す為だ。
 他国に知られては都合の悪い事を隠し、真実を糊塗する為に鎖国が行われている。
 千年の長きに渡り鎖国を続ける神秘の太古王国、ハイナムは何を隠しているのだろう?

 レムスを幻視した際に連想した古代怪獣、ウロボロスは竜と蛇を合わせた様な姿だった。
 竜頭人身族が数世代に渡って混血を行った場所とは、古代帝国ハイナムの領域ではないか?
 世界の西は広大な海だけれど、キレノア大陸の西端は地図にも明記されていない。
 レムリア大陸の西岸は星の霊剣を得た黒鷹族の英雄を中心に、連合王国が栄えた様だがね)
(ナリス様、そんな異世界の伝説を何処から御存知になられたんですか?
 ドール教団の先代最高司祭とは聞いていますが、イェライシャ老師の出身地も謎ですね)

(太古王国ハイナムが建国され、氷雪の地にヨツンヘイムが創られたのは千年前だ。
 世界を破滅させる力を封じた偉大な魔法使い達とは、何者だ?
 北の賢者ロカンドラスが誕生したのも、千年前と云う事になる。
 イェライシャもグラチウスも誕生していない千年前に一体、何があったのだろうね?
 齢三千のアグリッパが地上から姿を消したのも、千年前の出来事と関係があったのか?
 三千年の歴史を有するパロ聖王国も幾度か王朝が交代した為、記録が遺されていない)

(魔道師ギルドの記録係を総動員して調査する様、カロン大導師様に要請します。
 大導師アグリッパと対面の際、ヨツンヘイムに関する事項は何も語りませんでした)

(パロの若い王子マリオンは何故、氷雪の国から生還する事を許されたのだろう?
 失われかけていた王国を立て直す為、《ルアーの目》を授けられた上でね。
 太陽神の名を冠する至宝は《何か》を見張る為、クリスタルに配置されたのかもしれない。
 中原の宝石パロ、聖王家が三千年も続いた要因は太古帝国ハイナムを監視する為ではないか?
 <セカンド・マスター>として管理が委託され、古代機械に仕えた代償と思えるのだがね。

 ユラニアは闇の司祭に操られて破滅し、モンゴールは竜王に操られ黒竜戦役で潰えた。
 キタイからの移民が建て竜を紋章とする第三勢力、クムのみが唯一破滅を免れている。
 紅都アルセイスは大火に襲われ、トーラスも放火や略奪の憂き目にあった。
 水の都ルーアンが唯一、戦火を免れているのは偶然だろうか?

 ハイナムの守護神は西竜王ではなく人面のくちなわ、年経て魔力を持つに至った大蛇セトだが。
 グインから聞いたキタイの旧都フェラーラの守護神、人面蛇アーナーダを連想させる。
 或いは大きいものは船ごと飲み込む、と伝えられる怪物ダネインの水蛇が原型かもしれないが。
 鎖国の陰で竜と蛇の合いの子ウロボロスが混血を重ね、竜頭人身族が誕生したのではないか?)

(カロン大導師様は実戦には参加してくれませんが、その位は調査して貰えると思います。
 イェライシャ老師は教えてくれそうにないし、豹頭王様も其の辺は御存知ではないでしょうね)
 ゴーラ軍は浮き足立ったが、恐慌状態に陥る事無く黒魔道の奇襲を切り抜る事に成功。
 早目の対処が功を奏し、ゾンビーの夜襲は殆ど実質的な被害を与える事無く撃退された。


「イシュトヴァーン、ゴーラ軍は少し後方に下がっていてくれぬかな。
 魔道の戦いとなれば、若者の多いゴーラ軍の方が動揺し易いだろう。
 俺は魔道師との戦い方も多少は心得ている故、先鋒は任せてくれぬか。
 ゴーラ軍には最も注目を浴びる檜舞台、クリスタル突入の際に活躍して貰えぬかな」

「そいつは、お断りだ。
 豹の旦那、俺はな、お前の部下じゃねぇんだ。
 思い通りに動かそうったって、そうは問屋が卸さねぇ。
 ケイロニア軍が魔道師を相手に、どうやって戦うのか拝見させて貰うぜ。
 確かに俺の部下共にゃ、化物や魔道師と戦った経験は無いけどな。
 ゴーラ軍の連中にも真近で、じっくり勉強させてやりてぇんだ。
 大いに参考にさせて貰う心算でいるから、頑張って戦ってくれよ!」

 コルドの弟子は老獪な戦士の策謀に乗らず、断固として拒絶。
 傍らで見守る野心家の同族、ナリスの瞳が輝く。
 憮然とした表情で眺める上級魔道師は無関心を装い、灰色の眼に何の感情も浮かべておらぬ。
 グインも瞳を煌かせるが、猫撫で声とも取れる優しい口調で言葉を継いだ。 
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