ロザリオとバンパイア 時空の狭間で
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第7話 想い
あのとき聞いたことがこの事とはな
まさかな
今この場にいるのは刈愛と心愛、俺、使用人たち、そして萌香だ。なぜかアカーシャと亞愛、美優の姿が見当たらない。
うあぁ~んっ! いっぢゃやだよぉ、おねえざまぁぁぁ! あだじ置いでいがないでぇ~!」
「心愛……」
涙や鼻水を垂らしながら号泣する心愛を抱きしめる萌香。
「いつものじょうぶはどうずるのよ~! 勝ち逃げだなんでゆるざないんだから~!」
「すまない。私にもどうすることができないんだ……」
ポンポンと優しく背中を叩いた萌香が心愛を離す。心愛はまだ離れたくないのか、萌香を追いかけようとしたが、背後から刈愛が抱き留めた。
なんだ、刈愛姉さんも泣いているのか。姉さんが泣くと怖いんだけど」
「仕方がないじゃない。だって可愛い妹が出て行ってしまうんだもの」
萌香は困ったように笑うだけだ。
「心愛を頼む。私がいないと何かと心配だからな」
「ええ、わかっているわ。モカちゃんも身体には気を付けてね」
モカが俺に目を向ける。その表情は複雑で、色々な思いが渦巻いているのが俺でも分かった。
「ミナト……」
「そんな顔をしないで?別に一生会えなくなるわけじゃないんぞ?時々、俺から会いに行くよ」
「……そうだな。ミナト、家や母さんのことよろしく頼むな」
「ああ。 それが俺の任務だからね」
「お嬢様、そろそろ時間です」
運転手の声に萌香が踵を返す。
その姿が見えなくなるまで見送り続けた俺は館に目を向ける。
そこには窓から悲しげな顔をしたアカーシャと美優の姿があった
アカーシャに問い詰めてみるか
家族でないけれどこれは流石に虫の居所がわるい
一茶さんは任務でいないが
なにかわかるだろう
「見送りは行かなくていいの?」
アカーシャの元へ急ぐ道中、声がして反射てきに気配を消した
アカーシャは振り返らず口を開いた
「……行って萌香の顔を見たらきっとこの決心が鈍ってしまう。だからあなたもここにいるんじゃないの? 亞愛」
亞愛は頬をかいた
「あや~、その様子だと私の正体はもうバレてるみたいね。お父さんも一足先に仕事に行っちゃったし、もしかして誘ったの?」
正体?
目的か?
「私には夢があるの。かつて人間を滅ぼそうとした真祖アルカード、その彼を滅ぼしたとされる三人の妖怪。後に三大冥王と呼ばれ、骸となったアルカードの傍らでその眠りを永遠に見届けているという」
この世界の歴史か…
破滅なんて俺の柄じゃないからなあ
困惑する俺を余所に亞愛は一歩一歩アカーシャの元に近づいていく。アカーシャが何も答えないということはその話の信憑性は確かな者だということなんだろうか。
「私の夢は世界を手にすること。そのためには伝説の真祖の血が、力が必要なの。そう、三大冥王首領――もう一人の真祖であるアカーシャ・ブラッドリバーの血がね」
かつて忍世界を破滅に追い込もうとしたマダラだな あれは
真祖ってのはまああっちでいう、千住かいやはや六道みたいなもんか
まあ一緒だな
三代冥王もきいたことがある
詳しくはしらないが、戦乱の世を収めた三人に大妖怪…
それがアカーシャさんとはびっくりだけど…
「アカーシャさんは後悔していないの? 萌香を家から追い出したことを。大方、私の正体を知っての対応なんだろうけど、正直意外だったもの。あなたたち母娘は何があっても離れないって思っていたから」
目を伏せる亞愛の顔にはある種の感情が浮き上がっていた。
「いつも一緒にいて、当然のように支え合って、誰よりも深い絆で繋がっているようだった。ずっと、羨ましいって思ってた……」
それは、羨望。亞愛の過去に何があったのかは知らないが、今の発現から考えると、ずっと家族を欲していたのだろう。ここに家族がいるのに、なぜ気が付かないのか……。
「……萌香はね、すごい難産で、生まれてきた時は殆ど死んでいたのよ」
な?
「死んでた?」
「そう、その時初めて神様に祈ったわ、『私の事はどうでもいいから、この子だけは助けて下さい』ってね。その思いは何も変わっていないの、当然美優もね」
そっとわが娘を抱きしめる
呆気にとられていた亞愛が小さく笑みをこぼした
そう言って笑って美優を抱きしめたアカーシャが綺麗だった
「そうね、私も萌香のことは大好きよ。あの子と一緒にいると不思議と暖かい気持ちになるの」
「貴女にはよく懐いていたものね」
クスクス笑うお袋に亞愛もカラカラと笑う。
「是是(そうそう)。性格は違うのに相性は逆にピッタリでね! まあ、兄様には敵わなかったけど」
すまない ホントに
「だから感謝しているの、あの子を避難させてくれて。本当はもっと早くに行動するつもりだったけど、萌香のことを考えるとどうしても二の足を踏んでしまった。その結果、気が付けば一年以上も経っていたわ。だって――あなたがここで死んだら、萌香が悲しむもの」
壮絶な冷たい笑みを張りつけた亞愛が強烈な殺気を発する。あまりの強さに、クナイを抜き、思わず戦闘態勢を取ってしまいそうになった。慌てて心を落ち着かせる。
(あいつ…ホントに)
(まあ、落ち着けクラマ、まだ話の最中だ)
突然でてきたクラマにもおどろいたがまだ話しはおわってない
アカーシャは気にした風もなく変わらない笑みを浮かべている。流石は三大冥王と言ったところか。
「あなたはここが嫌い?」
「……正直に言えば、嫌いじゃない。むしろ居心地がいいわ。まるでぬるま湯のようで、いつまでもここにいてしまいそうになる」
「なら――」
その言葉を遮った 無理をしているのか?
「私の目的を果たすためにはここにいる訳にはいかないの。最強と呼ばれたアルカードのように“真祖の力”を手にするまで、私は立ち止まるわけにはいかない。だから血が必要なのよ。アルカードを倒して三大冥王と謳われたあなたの血が」
「それで……真祖の力を手に入れてどうするの? アルカードのように、自分を苦しめた人間たちを滅ぼすつもり?」
アカーシャの言葉にビクッと身体を震わせる亞愛。その反応だけで応えは如実に表していた。
――そうか、亞愛は人間に……だから、世界を手にしたいなんて……あれ? ということは、亞愛は人間である俺も嫌いなんだろうな
「ミナトも嫌いなの?」
「ミナトは嫌いじゃない だけど彼は人間… 人間は嫌い…」
刺さるなあ まあ言われて確かなんだけど 複雑だな
「そう。それについては何も言わないわ。それはあなたが自分で向き合わなくちゃいけないことだもの。ただ、私としてはミナトを、人間としてではなくこの館の暗部、霧島ミナトとして見てほしいわね。じゃないと、あの子が可哀想だわ、何かとあなたも気にかけてくれていたし、一茶さんの頼みで警護もしてくれていたからね」
「……」
話が脱線したわ、と話を戻す
この棟には誰にも近づくなと言いつけてあるから。邪魔は入らないわ。だから遠慮せずに掛かってらっしゃい。私は母として、貴方の想いを受け止めてあげる、美優はさがってなさい」
こくっと頷きさがる
微笑むお袋に亞愛は先程の冷たい笑みを浮かべた。
「……謝謝。恩にきるよ、アカーシャさん」
そろそろ止めないと
なんで美優がいるの?
まあ3人ともたすけるか
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