戦国異伝
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第百五十九話 巨寺その十一
「一体何者かな」
「それがですか」
「全くだというのですか」
「現に御主達も知らぬ」
忍である彼女達もだというのだ。
「百地が何者かをな」
「そして他の者達もですか」
「その氏素性を」
「何もわかっておらぬ」
そうだというのだ。
「それが証ではないのか」
「あの者達について誰も知らぬという」
「そのことへのですか」
「証だと」
「そうじゃ、わしも一度伊賀に入ったことがあってだ」
そしてその時にだというのだ。
「服部殿はお会いしたが」
「百地殿にはですか」
「全くですか」
「その居場所すらな」
わからなかったというのだ。
「全くな」
「左様ですか」
「そうじゃ」
天下でも屈指の忍である雑賀ですらだ、伊賀にいる筈の百地達の居場所をわからなかったというのだ。
「あの者達だけはわからぬ」
「そうなのですか」
「棟梁ですらも」
「わしは一度果心居士殿と会ったことがある」
ここで雑賀はこの名前を出した。
「忍とも妖術使いとも仙人とも言われておるが」
「その素性はですな」
「誰も知らぬ方ですな」
「あの御仁が言っておられた」
その果心居士がだというのだ。
「天下には光もあれば闇もありじゃ」
「闇、ですか」
「それがですか」
「闇の中におる者は恐ろしいとな」
「では百地殿は」
「若しや」
「わからぬ、しかしじゃ」
それでもだというのだ。
「あの者達程怪しい者達はおらぬと思う」
「忍の中でもですか」
「そうなのですか」
「うむ」
そうだというのだ。
「わしはそう思う」
「そういえば織田家には飛騨者もいますが」
ここで忍の一人が雑賀に言ってきた。
「その果心居士殿が育てられた」
「あの者達じゃな」
「あの者達はどうなのでしょうか」
「あれははぐれじゃな」
「はぐれですか」
「忍の中のな」
そうした者達だというのだ。
「十勇士と同じく忍の中でも風変わりよ」
「だからはぐれですか」
「そうじゃ」
それになるというのだ。
「あの者達は少し違う忍じゃ」
「ではどう違うのでしょうか」
「忍は影の者」
それだというのだ、忍は。
「先程も言ったな」
「はい、確かに」
「しかしあの者達は影にはおらぬ」
「では光ですか」
「そこにおる者達じゃ」
それが彼等だというのだ。
「忍ぶよりも戦う」
「そこが違いますか」
「我等も戦うがそれ以上にじゃ」
彼等は術で闘っているというのだ。
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