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戦国異伝

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第百五十九話 巨寺その十

「よいな」
「では棟梁もですな」
「ご自身も」
「無論じゃ、わしが先頭に立つ」
 そして攻めるというのだ。
「そうして敵の大将はこの手で討ち取ってくれるわ」
「天下の雑賀衆の棟梁が」
「ご自身で」
「わしに適う者はそうはおらん」
 雑賀は己の自信と共に言った。
「風魔の風魔小太郎、甲賀の滝川一益、それにじゃ」
「伊賀のですな」
「服部半蔵に」
「百地三太夫じゃ」
 この四人だけだというのだ。
「わしと張り合えるのはな」
「百地三太夫ですか」
「あの者もまた」
「そう思う。あの者については全くわかっておらぬが」
 伊賀者ということはわかっていてもだ。
「どうも伊賀は二つの流れがあるな」
「服部半蔵と、ですな」
「その百地三太夫ですな」
「服部家とその一党は徳川家の下に入った」
 そしてそのまま家康の忍となっている、徳川四天王や本多正信、石川や鳥居と並んで家康の腹心と言える。
「しかし百地は」
「まだ伊賀にいますし」
「動きがわかりませぬな」
「主も持たず動きもわからない」
「おかしな者達ですな」
「うむ、忍は隠れるもの」
 このことは忍ならば絶対のことだ、雑賀衆にしても普段は影の者として顕如を支えつき従っているのだ。
 しかしだ、その百地はというと。
「あの者達はまるで」
「闇ですな」
「それですな」
「影ではなくな」
 それだというのだ。
「どうもな」
「影と闇は違う」
「また別ですな」
「うむ、影は命じられれば表に出られる」
 今の彼等の様にだ。
「十勇士もそうじゃな」
「真田幸村の下にいる」
「あの武田の」
「十人の猛者達ですな」
「天下無双の豪傑揃いと言われている」
「あの者達も影にしてもじゃ」
 忍である、だがそれでもだというのだ。
「そうしたものじゃがな」
「あの百地達は」
「それがですな」
「その下に三人いるのはわかってる」
「三人ですか」
「百地の下に」
「その名もな」
 わかっているというのだ。
「石川五右衛門、楯岡道順、音羽の城戸だ」
「その三人がですか」
「百地の下におるのですか」
「左様じゃ、百地が棟梁でじゃ」
 伊賀のもう一人の棟梁だというのだ、服部と共に。
「その下にその三人が上忍としておる」
「それが伊賀の百地達ですか」
「あの一派ですか」
「服部とはまた違う」
 もう一方の伊賀の棟梁と彼に従う者達ちは、というのだ。
「何もかもがわからぬ」
「謎に包まれている」
「そうした者達ですか」
「影におるといってもわからぬにも程がある」 
 その百地達のことがだというのだ。 
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